ステアリングギヤボックスの交換
強化品による思わぬ落とし穴。同様のパーツを使用している方は要チェックです
●私のジムニーのステアリングカップリング(ステアリングブッシュ)は2001年から純正のゴム製
から変えてスチール製の強化リジッドカップリングを使用していました。
それで、今まではそれによる弊害というのはとくに感じていなかったのですが、ここ1年ほどハンドル
の切りはじめの異音や中立付近のガタを感じるようになっていました。 当初、この原因がわからな
かったのですが、最近、一気にガタが広がったため「これはどこかおかしい」と思い、ステアリング
ギアボックスのギアのクリアランス(バックラッシュ)調整ネジを回したりしたのですが、症状は一向
に改善せず、どこが悪いのか悩みました。 ところが、偶然にもステアリングカップリング部を手で回
したところ、なんとギアボックスとステアリングシャフトを繋いでいるスプライン(セレーション)部
が摩耗してガタガタになっていました。

↑問題のスプライン部。 このオス/メスのスプラインが摩耗してガタガタになってしまっていました。
車の構造をある程度わかっている方なら理解できると思いますが、これは非常に危険な状態です。この
まま摩耗が進めばハンドルが空回りして、走行中の方向制御が一切できなくなってしまうわけですから。
それで、この原因として考えられるのが「ステアリングリジッドカップリング」です。 純正ではラバー
製の柔軟な素材でできている「緩衝継手」となる部分を硬質な素材に変えてしまったため、走行中の車体
の捻れなどによる変型を吸収する部分がなくなり、そのストレスがこのスプライン接合部にかかり、次第に
微動摩耗して今回のようにガタガタになってしまったというプロセスです。
●交換する部品

↑パーツリストのステアリングギアボックスASSY。 スプラインのあるギアだけを交換すればいいのです
が、残念ながらこの部品だけでは出ず、ギアボックスアッセンブリーでの交換となります。

↑パーツリストのステアリングシャフト付近。 このギアボックスにつながるフランジを新品に交換します。
さらに、ラバーカップリング関係の部品も純正部品を取り寄せ、リジッドカップリングからノーマルのゴム
カップリングに戻します。 今回のような事態になることは安全上2度と避けたいですから、リジッド化は
もうおこないません。
●ステアリングギアボックス
さて、今回交換する部品でもっとも高額なものはこのステアリングギアボックスASSYですが、もっとも安く
あげる方法はやはりヤフオク等で中古品を購入することです。 ただ、もちろん中古ですのでどういう使われ
方をしたかわかりませんし、その内部の程度がわからないというリスクがあります。
ちなみにJA22W用の新品ギアボックスの価格は2012年8月現在で約36000円となっています。
そこで、いつも車検などでお世話になっている(有)緑整備センターさんに相談したところ「もしかしたら
リビルト品があるかもしれない」と言うので調べてもらったら、新品より約10000円安い金額でリビルトギア
ボックスがあることがわかりました。 中古をそのままつけるよりは高いですが、リビルト品は内部やオイル
シールなどの消耗品はリフレッシュしてありますし、2年または2万キロ保証もついているので今回はこの
リビルトのギアボックスを使うことにしました。

↑リビルドステアリングギアボックスの保証書。 2年または20000kmとなっています。
程度のわからない中古品を使用するよりはずっと安心感があると思います。
●交換
今回の交換作業はギアボックスを購入した緑整備センターさんでそのままお願いしました。

↑スプラインジョイント、カップリング等のパーツはすべて純正新品部品に交換しました。

↑リビルトステアリングギアボックス。 「自作クイックピットマンアーム」はそのまま継続使用します。
このクイックピットマンアームによる負担増加も今回の要因になるのでは?と考える方もいるかと思います
が、私はこのジムニーをオンロードでしか使用しておらず、それほど過大な負荷がかかるような使い方は
していませんので今回の原因にはなっていないはずです。 私に比べたら本格的にオフロードを攻めている
方や、215サイズなどの太く大径なタイヤを履いて走ってる車のほうがずっと負担は大きいはずですので、
このピットマンアーム延長程度の負担などは問題にならない程度です。
●交換後のインプレッション
とにかく自然なフィーリングになりました。 たしかにリジッドカップリングに比べればハンドルを回した
初期のダイレクト感はやや落ちますが、逆に滑らかさというかスムーズな感じは純正のゴムカップリングの
ほうがいい印象です。 リビルトギアボックスもまったく問題ありません。
●取り外した部品

↑外したステアリングギアボックスのスプライン部。 見てもわかると思いますが、かなり磨耗して痩せ
細っております。こんなになるまで気がつかなかったというのも恐ろしい話ですが。
なお、この取り外したギアボックスのコアはリビルト業者に返却します。 リサイクルされるわけです。

↑こちらは組み合わされていたフランジ内径のスプライン。 こちらのほうが摩耗は激しくて、部分的には
ほとんどスプラインの山がなくなっている箇所もあるほどでした。 非常に危険な状況でした。
●まとめと「警告」
今回は「強化パーツはそこを強化したぶん、どこかしらにそのシワ寄せがくる」というのを身を持って知る
こととなりました。 たしかに強化カップリングにすることで若干のステアリングのシャープさは上がるかも
しれませんが、それと引き換えにした「安全性リスク」を考えると安易に強化すべきパーツではありません。
もし現在、私と同じようにカップリングを強化品(スチールやアルミだけでなく、ジュラコンやMCナイロン
などの硬質樹脂製のものも含みます)をつけて乗っているジムニーオーナーさんはすぐに状況をチェックし、
悪いことは言いませんからなるべく早く純正のラバーカップリングに戻してください。 これは最悪は走行中
にハンドル操作が利かなくなり、大事故に発展する可能性がある非常に危険な部品です。
スチール製やアルミ製はもちろんですが、ジュラコン(デルリン)製やMCナイロンなどの硬質プラスチック
でも柔軟性が不足なうえ、くり返し応力による疲労でカップリング自体が割れてしまう危険性があります。
もし、このカップリングブッシュが割れてしまったら今回の私の事態よりさらに危険な状況になってしまいます。
もちろん、ウレタン製などは強度不足で論外です。 やはりこのカップリングは純正部品を使用するべきです。

↑すべての元凶となったリジッドカップリング。 安直な気持ちで強化するとたいへん危険です。
やはり自動車メーカーはちゃんと各部のバランスと機能を考えて設計してあるものだなと改めて思いました。
<追記 2013/5/23>
●ステアリングロッド折損の事例も
http://minkara.carview.co.jp/userid/1386076/car/1017587/2345384/note.aspx

上記URLはみんカラの記事ですが、写真を見てもわかるようにこの人はリジッドカップリングを使っています。
私の所見ではこれも間違いなくリジッドカップリングブッシュによる悪影響によって折れたものです。
純正のラバーカップリングではこんな場所が折れるはずがありません。 カップリングをリジッド化したことで
ストレスの逃げ場がなくなり、ステアリングシャフトのフランジの溶接部が折損してしまったのです。
もしこれが公道走行中に起きたら・・・と考えるだけでゾッとします。 こういう危険な例も発生していますので、
くれぐれもこんな危険なリジッドカップリングは使用すべきではありません!
●最後に、これと同類のパーツを販売している方へ
いまだにヤフオクとかを見るとこのリジッド「ステアリングブッシュ」の類を売っている方がいますが、一刻
も早く販売を中止してください。 これは「競技用部品につき一切の責任は負いません」では済まされない危険
な部品です。 万が一、公道走行中にこのパーツが原因で事故になった場合、この「競技用部品につき…」
という文言はまず免罪符にはなりません。 裁判になれば「ユーザーが一般公道で使用することを想定できた」
として製造、販売者の責任が問われることを免れることはできないでしょう。 製造者の責任として安全第一に
考え、ユーザーや他者を事故に巻き込まないためにもこのような危険なパーツは販売すべきではありません。
私自身も同様に車やバイク用の改造パーツ設計、製作する立場ですから、この点については強く警告しておきます。