ショックアブソーバー交換
まずはショックアブソーバーのみ交換です。
●今まで私のJA22の足周りはスタビ関係を除いてまったくのノーマルでしたが、これはこれで限界が
早いぶん無理な運転ができないですし、前後のバランスも悪くないので大きな不満はありませんでした。
しかしブレーキの強化をして以来感じていたのですが、せっかくの制動力もノーズダイブが気になって
しまって活かせていないのがやや不満に感じるようになりました。
そこで、ここにきてサスペンションを多少リファインしようと思ったわけですが、私は別に競技に出る
わけではないですし、コイルジムニーのホイールアライメントやサスペンションジオメトリーの変化、
各ブッシュへの負担増を考えると、オンロードメインでの使用では車高を上げるのは無意味です。
しかし、社外のジムニーのサスキットはもちろん、ショックアブソーバーもほとんどが車高アップ用
のロングタイプばかりで、たとえ純正スプリング使用可のショックでも、ロングショックではスプリング
のプリロードが下がってしまうので、私には選択対象外なのです。
本来ならば、ワンオフで(たとえばビルシュタイン(エナペタル)など)造ってもらうのが一番なのです
が、いかんせん値がはりますので、今回はそこまでする気はありません。
またノーマルサス自体、別段悪いとも思いませんので、大きく変化させることを望んでいるわけではなく
考え方としてむしろノーマルのバランスの良さを尊重しながら、現在感じる不満を軽減できればそれで
良いという見方で、必要最小限の変更でおこなう方向で考えています。
そこで今回は、とりあえずノーマルコイルのまま、お手軽にSUZUKI SPORTのショックアブソーバーで
どう変化するか様子を見ることにしました。

↑スズキスポーツ ショックアブソーバー。
ツインチューブ型低圧ガスショック、フロント4段、リア8段調整式です。
フロント:4IJ36F30、リア:4IJ36R60
このショックは中古で入手。 とりあえず試してみて、悪くなかったら新品をあらためて購入しよう
かという考えもありますので。 スズスポのJA22、JA12、JB32用パーツはほとんどカタログ落ち
していますが、かろうじてこのショックはまだ新品が入手可能なようです(おそらく在庫ぶん限り
だと思いますが)。
このショックは低圧ガスですので、ロッドを押しこんだときの戻りは高圧ガス、ドカルボンタイプの
ビルシュタインやオーリンズのように縮めたあとに強くは戻ってきません。
ですが、4本とも安定した戻りと、とくにフリクションのひっかかりなどもないので、中古と言えど
比較的程度は良い感じです。
ちなみにツインチューブ型(複筒式)ガスショックは、構造上、単筒式と違いオイル室とガス室が
分離されていないため使用時には向きが決まっていますので、逆向きにしたり横向きにしたりすると
本来はオイルのみの部屋にガスが入り込んでしまうため、気泡が混ざって本来の設計上の減衰力が
得られず、また、作動も安定しません。
つまり、変則的な向きで使用する場合は単筒式のようにガス室とオイル室が完全に分離されている
構造のドカルボンタイプのショックを使用するか、オートバイのステアリングダンパーにあるように
内部の容量変化のない構造のものを使用しなければいけません。 これらのタイプなら向きは一切
関係なく使えます。

↑フロント部のブッシュ。
中古のJA22/12、JB32用のショックの場合、見た目でその程度のわかりやすいところです。
JA22/12、JB32はフロントショックはコイルオーバーなので、このブッシュにフロント荷重のすべて
がかかりますので、走行距離を重ねたショックや、ハードに使用されたショックの場合は、この
ブッシュが車重で潰れてきて、センターのカラーが上側に偏ってくるのです。 見た目でいちばん
よくわかるポイントです。
このショックは写真の通り、多少は潰れかけているものの、まだ良好なほうだと思います。

↑参考までに、こちらは私のクルマから外した純正ショック。
見てわかると思いますが、明らかにブッシュのセンターカラーが上にずれて偏芯しています。
●ストロークおよび全長の違い
ショックの延びきったときの全長はスプリングのプリロードに影響を与えるので、かなり重要な問題です。
クロカン走行の方は主にサスの伸びストロークを重視することが多いようですが、私の場合はこの伸びた時
にスプリングにかかる圧力(=プリロード)を重視します。 これによって同じスプリングでも大きく特性
が変わってしまいますので。
同じスプリングでもプリロードを下げると乗り心地やウエットコンディションなど路面が悪いときには良い
方向に働きますしタイヤにも優しいのですが、逆にドライ路面や高速コーナーでの安定性ではシャープさを
失うのでマイナス方向に働きます。
逆に、プリロードを締め上げると、クイックになる反面、クルマが跳ねるような挙動になりますので、過度に
やるとトラクションをなくしやすいですし、タイヤやボディに対しての負担も大きくなります。
その点、幸いにもこのSUZUKI SPORTのショックは純正と全く同じ長さでしたので、そういう意味では
スプリングには影響を与えずに純粋にショックのみの比較ができるため、都合が良いと言えます。
●フロント (単位mm、最長-最短、アッパーブッシュストッパー上面〜アイセンター間)
410-265
●リア (単位mm、最長-最短、アイセンター〜アイセンター間)
362-245
ジムニー用ではあまり見ませんが、最近は市販の直巻サスキットでもいわゆる「ダブルスプリング」にして、
メインのスプリングにサブスプリングを追加したものもありますが、このサブスプリング(EIBACH流に言うと
テンダースプリング)というのは、本来このプリロード(セット圧とも言う)をセッティングするためのもの
なのです。 決して、ただバネを遊ばせないためについているような単純なものではありません。
つまり、一般的に「車高調」と呼ばれている、ショックケースについているスプリングロアシートを上下させて
調整するのは、正確には車高調整ではなく、このプリロード調整なのです。
車高は本来、上下のマウント部分で調整するべきものです。 (スプリングとショックが別マウントの場合は、
スプリングシート部分で車高を、ショックのマウント部分でプリロードを調整することになります)
バイクのリアのモノショックサス等の調整をご自身でおこなわれる方にはこれは常識だと思いますが、4輪では
まだこのことをプロでもよく理解している人は案外少ないと思います。
ちなみに、直巻きスプリングと荒巻きスプリングの良いとこ取りに見える不等ピッチスプリングもありますが、
不等ピッチスプリングは荷重による応力がバネ全体に分散せず荷重に応じて局部的に受け持つため、直巻バネ等
に比べて反発力が強いためやや乗り心地も悪く、またバネのヘタリも早い傾向にあります。
ジムニーに限らず、純正でついているバネは不等ピッチとはやや違いますが、非線形レート、つまりストローク
と荷重がやや比例しない、いわゆる荒巻きと呼ばれるタイプです。
結局、街乗りやオフロードなどで必要なストロークを充分確保するためには、直巻きばねではスプリングが長く
なりすぎて無理があるため、こうした荒巻きや不等ピッチスプリングが必要になるわけです。
スプリングはよくレート(ばね定数)で比較されますが、私の経験上、レートの低いスプリングをプリロード
を高めて使う(国産車はこのケースが多い)よりも、レートの高いスプリングを弱いプリロードで使用するほう
が初期の反発力がマイルドになるので、オンロードでの乗り心地はいいものです。
サスペンション用の金属バネには主にこのコイルスプリング、トーションバースプリング、リーフスプリング
がありますが、同じバネレートの場合、もっとも反発力が強いのはこのコイルスプリングなので、より初期の
プリロードセッティングが重要になります。
●減衰力
0.3m/sec時の減衰力は以下のようになります。(単位:kgf、伸び/縮み、カタログスペック)
●フロント
純正 100/60
SUZUKI SPORT 最弱 112/56
SUZUKI SPORT 最強 134/62
●リア
純正 115/42
SUZUKI SPORT 最弱 100/40
SUZUKI SPORT 最強 122/54
以上の数値から考えますと、バランス的にはフロントはダイヤル2〜3、リアはダイヤル3〜4あたりを
基準にセッティングを始めるのが妥当かと考えます。
ちなみに、ショックアブソーバーの減衰力比較はこのように通常は0.3m/sec時の減衰力で比較されることが
多いですが、これはあくまで特定条件での減衰力比較であって、決して乗り心地などの比較にはなりません
ので注意が必要です。
サスペンションは常にストロークやピストンスピードが変化していますので、とくに微細ストローク時の
減衰力の立ち上がり特性が重要になります。 言ってみれば「動きはじめの数mm」の減衰力特性がショック
の性能を決めると言っても過言ではなく、これが乗り心地を決定する重要な領域でもあります。
こういった数字には表れにくい微妙な部分の性能を実現するのが、残念ながら低価格のショックでは難しい
のが現実です。
●取り付け


↑装着したところ。
リアはジャッキアップせずともそのまま交換できますが、私のようにノーマル車高の場合はちょっとだけ
持ち上げたほうがレンチが使いやすいです。
フロントはショックアッパーのダブルナットを外し、スタビライザーもホーシング側から外してフリーに
してからガレージジャッキでリーディングアームまたはホーシングを持ち上げ、リーディングアームの
ピポット付近のフレームにウマをかましてからタイヤを外して、ガレージジャッキを降ろすとショック
ユニットが降りてきます。 スプリングコンプレッサーは不要です。
作業自体は慣れている人であれば2時間もかからないと思いますが、私のクルマの場合はフロントショックの
取り外しに少々手間取ってしまいました。 ショック上部のネジが錆で固くなってしまい、ナットの取り外し
がスムーズにいかなかったので、結局、ダイス(M10×1.25)を通してネジをさらいながらの作業となり
ました。 これで30分以上はロスしたと思います。
長期に渡ってこの部分のナットを外したことのない車両は注意したほうがいいでしょう。
それと、たまにこうしたショックのロッド上部のナットをインパクトレンチで外したりする場合がありますが
これはショック内部のパーツの脱落や損傷などを生じる原因になることがあるので、感心しません。

↑このナットが錆などで固い場合は無理をせず、ダイスでネジをさらいながら少しづつ外していきます。
無理してニッチもサッチもいかなくなった場合、最悪はナットクラッシャーを使用することになって
しまいますので。
それと、これはJA22/12、JB32に共通して言えることですが、設計上、このアッパーマウントの強度に
余裕がなく、あまり減衰力の高いショックを入れたり、ロングストロークショックでフルバンプしたとき
にショックが底付きすると、その衝撃でこのマウント部にクラックが入ったり、最悪は突き破ったりする
ことがあるようです。 極端に硬いショックや強化ブッシュは避け、車高を上げてロングショック使用の
場合はバンプストッパーをかさ上げするなどの対策をしたほうが安全です。
●取り付け後の変化。
とりあえずフロント2、リア3から走りはじめましたが、ちょっとこれは柔らかすぎました。
現在はフロント3、リア4にしています。
この状態だと明らかにノーマルよりしっかりした感じになるのですが、そのわりに乗り心地そのもの
はノーマルと比べて突き上げてくる感じが和らげられたようになるので、適度な固さと、角が丸く
なった乗り心地というバランスの良い状態になったと思います。
当然、ハンドルを切った瞬間のロールスピードも抑えられ、気になっていたノーズダイブも適度に
抑えられてますので、ブレーキングも頼もしくなり、また、乗りやすくなりましたので、金額のわり
には狙いに近くなったかなという感じです。
私は決してガチガチに固くするとか、純正に比べてバランスを極端に変えるのが目的ではなく、コーナー
での揺り返しや、フルブレーキング時のノーズダイブが軽減されることでより安定するようになれば
それでOKと考えておりますので、その意味では許容できる範囲に収まったかなという感じです。
街中での通常の走行では上記フロント:3、リア:4がちょうどいい感じですが、高速道路など、速度
が80km/hを超える領域や、フル加速しながらの走行ではリアだけもう1段硬くして、5にしたほうが
安心感が増し、前後のバランスがとれます。
わざとパワーをかけながらコーナリングしているときなども、滑り出しがフロント:3、リア:5のほう
がコントロールしやすいですが、これはおそらく、フロントの強化スタビとのバランス面でリア:5の
ほうが前後のロールバランスが取りやすいからでしょう。
フロントスタビがノーマルならば、全域フロント:3、リア:4で大きな不満はないものと思います。
なお、普通に街中を流して走るにはリア:5のままではやや硬すぎる印象で、ゴツゴツ感はないものの、
ちょっとピッチングが多くて疲れますし、長い時間乗ると気分が悪くなりますので、街乗りではリアは
4のほうが適しています。
フロントは3でほぼ全域で文句なしですが、リアはこの4と5の間で速度域によって使い分けたほうが
良いという感じです。
まぁ、普段はフロント:3、リア:4で走っていて、ちょっと飛ばしたいときにリアだけ5にするという
感じになると思います。

↑調整の邪魔になるので、ショック頭のプラスチックカバーは取り去りました。
ただ、少しペースを上げて、ちょっと無理をしてコーナーを攻めてみたところ、かなり急激に挙動が
変わるポイントがあることがわかりました。
ですが、これはほぼ100%タイヤのせいで、急に腰砕けするのがちょっとヒヤッとさせられます。
考えてみればショックだけでなくスタビライザーも強化しているので、とくにフロントに対する負担
が大きいようです。
ギリギリまで粘ってくれる印象がある反面、限界を超えると一気にふんばりを失うという感じです。
やはり、こういった点はノーマルサスのほうがうまくタイヤとのバランスが取れていたということ
でしょう。 まぁ、タイヤについては追って考えるとにします。
ですが、こういうことができるのも調整式ショックだからこそ(調整段数が少ないのが不満ですが…
できればやっぱ昔使っていたOHLINSのように20段とか欲しいですね)で、固定式では当然ながら
こうした微調整ができない訳です。
たとえば、タイヤの種類を換えただけでもショックのバランスを変えたほうがいい場合も多いので、
そうした場合に調整式は有利ではあります。
サスペンションというのは、エンジンパーツ以上にスペックやデータだけではなかなか予想のつかない
ことが多く奥が深いですので、一気に全部を変えてしまうのではなく、少しづつ変化を見ながら、
不満に感じるポイントを見つけ、なおかつそれが何に起因するかを考えながらおこなっていくことで
より自分の理想に近付けることができます。
●追加

↑タニグチのスタビ強化ブッシュですが、さすがに3年近く使用するとかなりヒビ割れていました。
多分、このパーツ単体では出ないでしょうから、ショアA硬さ70から95程度(おそらく純正は60から
70程度だと思われる)の硬質ウレタンに交換しようかと考えています。
ただ、ウレタンはゴムに比べて弾力を失うのが早いので、寿命は短くなってしまうのが難点ですが。
それと、フロントショック交換の際に試しにマスターシリンダーストッパーを外して走ってみましたが、
やはりマスターシリンダーストッパー有りに慣れてしまうと、これがないと恐いくらいにブレーキが
頼りなく感じますね。 こんなもんでもあるとないとではやはりかなり違うようです。