クランクケース減圧バルブの使用上の注意点
チューニングパーツにはどんなものにもデメリットやリスクはあるものです

●まずクランクデコンプバルブの基本についてはこちらのページをご覧ください。
上記の記事の中で「凍結によるバルブ閉塞の可能性」という点を指摘したのですが、その後
あるジムニーでは有名なチューニングショップの方からメールをいただき、実際にバルブが凍りついて
クランクケース内圧が上がってトラブルがあったとのご報告をいただきました。
具体的にはエンジン内圧が上昇してオイルレベルゲージが吹き飛んだり、一部オイルシール(パッキン)
が抜けたりということが起きたとのことです。
そのショップさんではこれらのトラブルを体験して以降、この減圧バルブの販売をやめた
そうです。 これはなにもクランクデコンプバルブ(レデューサー)だけではなくT-REVやNAGバルブ
等、どの種類の減圧バルブでも起きる可能性のあることです。
世間では良い話しか聞かないようなクランクケース減圧バルブですが、やはりどんなものにも
メリットとともにデメリットもあるものです。 ユーザーがそれを理解して使用することと
同時に製造、販売する業者はそのデメリット、リスクについて隠さず正直にユーザーに公開
していただきたいと思います。 (今のところ私の知っている限りではこの凍結の危険性について
きちんと情報公開、ユーザーに危険告知しているメーカーはありません)
●とりあえず私のつけているクランクデコンプバルブを外して分解し、内部を見てみました。

↑ケース内部。 それなりに水分とオイル分が溜まっていました。
ただ、バルブ本体がそれらに浸かってしまうほどではないので機能上は問題ありません。

↑バルブ部分。 けっこうバルブ部にも水分等の付着があります。
もしこれが凍りついてバルブが閉じっぱなしになったらと考えるとけっこう恐いです。
バルブが凍りつくとクランクケース内が完全に密閉された状態になってしまいますので、ブローバイ
ガスによって圧力が上がりっぱなしになってしまい、思わぬトラブルにつながります。
上記でも書きましたようにレベルゲージが抜ける程度ならまだましですが、オイルシールやパッキン
が吹き抜けたり、燃焼室やタービンに浸入したオイルによりマフラーから白煙を吹いたり、最悪は
オイルリターン不良によりタービン焼きつき、ブローに繋がることも考えられますので。
●バルブボディ本体の取り付け方向について
これも見落とされがちですが、このクランクデコンプバルブ(レデューサー)の取り付け時の向きにも
気をつけたほうが良いと思います。 上記のように内部にエマルジョン(水分と油分の混合液体)が
溜まりますので、これが自然と抜けるか、たとえ内部に溜まっても害を及ぼさない方向でつけるという
ことが重要です。
具体的には、「水平方向につける」か「出口側を下に向ける」のが正しいつけかたです。 間違っても
入口側を下に向けてはいけません。 この向きだとエマルジョンが内部に大量に溜まることになり、
上記のような凍結によるバルブ閉塞の原因になります。
なお、NAGバルブの場合は理想的には「出口側を下に向ける」のが良いと思います。 入口側を下に
向けるとこれも凍結時にブローバイ通路を塞いでしまう恐れがあるためです。 なお、NAGバルブを
水平方向につける場合は、JB23ジムニー等の製品でおこなわれているようなエマルジョン対策として
インマニ負圧で内部のエマルジョンを吸わせてやるなどの対策をしないと動作不良になりかねませんので
注意が必要です。 ただ、この対策もその細いホースがオイルスラッジ等で詰まってしまったら意味が
ないので、やはり定期的な分解メンテナンス、クリーニングが必要でしょう。
●クランクケース内圧コントロールバルブについてのメリット、デメリットは以下のようになります。
◆メリット
1)トルクアップ、とくに低中回転域でのトルクが「わずかに」向上する
2)アクセルワークによっては若干燃費が向上する
◆デメリット
1)エンジンオイルの劣化が促進されるのでオイル交換サイクルを早める必要がある
2)冬期に凍結するとバルブが閉塞し、思わぬエンジントラブルに繋がる可能性がある
…このようにまとめることができます。
私個人的にはたしかに実用域での効果は感じられるのですが、それと引き換えにリスクを負うことも
事実ですので、使用される場合はよく検討してからにしたほうがいいでしょう。
とくに氷点下になるような寒冷地に住んでいる人、よくそういった地域に出かける人はこの類のバルブ
をつけるのはやめたほうがいいかと思います。 エンジントラブルになるかもしれないリスクを負って
までつける意味はないと思えるからです。
そういう意味ではこの減圧バルブの類はあまりエンジンについての知識のない人が気軽につけて良い
パーツではないのではないかと思います。
とりあえず私はメリット、デメリットともに理解したうえで今のところは使用は続けるつもりです。
最後に、この種のクランクケース減圧バルブの凍結によるトラブルを回避する方法としては
1)できるだけエンジンの近くに取り付け、エンジンから最短距離で配管する
2)気温が低く凍結の可能性のあるときにはエンジン始動後充分にアイドリングで暖機運転して
バルブ本体がある程度暖まるまでアクセルを開けたり走行はしない
このくらいしか対処の方法はないかと思います。
あとは、万が一のことを考えてPCVバルブは殺さないというのもひとつの安全策です。 ブーストが
かかってしまえばPCVバルブは閉じてしまうのでこの意味はありませんが、少なくともアイドリング
時にはPCVバルブがブローバイガスを吸ってくれるため、仮に減圧バルブが凍結して塞がっても
エンジントラブルになることはありませんので、減圧バルブの凍結が溶けるまでアイドリングをして
待っていれば良いわけです。
<追記>
この凍結に対して安全対策の加工をしてみました。 →クランクデコンプバルブ(レデューサー)の改良
●おまけ 内部のバルブの向きによっての変化について

これは私が試した結果なのですが、どうも内部のバルブ向きを「垂直」にするよりも「水平方向」
に向けたほうがなぜかフィーリングが良いです。 つまり、写真左よりも写真右の向きにつけた
ほうが良好な印象なのです。 この理由についてははっきり言ってよくわかりません。
理屈の上ではどんな向き(角度)でつけても変化はないはずなのですが、結果オーライということ
で私は左のようにバルブが水平方向に向くように取り付けています。

※この写真はまだブローバイホース交換前のものです。