ブレーキディスク製作
エンジン系もあまりやることもなくなってきたので(笑)バネ下荷重の低減を目的にセパレート型
ディスクローターを製作しました。

↑製作した2ピース型フロントディスクローター。
ベルハウジング(ベルハット)、ドリルドディスクローター、ボルトの各パーツから構成されています。
全体ではジムニーのノーマルディスクよりも30%、重量にして1枚あたり約1.6kgも軽量になりますので、
バネ下重量の軽量化にかなり貢献することになります。
ディスクとベルはフローティングではなく固定です。 これはキャリパーのほうがフローティングの
ため、ディスクはあえてフローティングにする必要がないためです。
対向ピストンキャリパーのように固定キャリパーの場合は、フローティングにする効果は高いの
ですがフローティングキャリパーの場合は双方ともフローティングさせてしまうとディスクアライメント
がとりにくくなって踏みはじめのフィーリングが悪化することがあります。
なお、ジムニーのフロントブレーキディスクローターはJA71やJA11の時代からこのJA22、現行のJB23
までサイズなどは基本的に同じで互換性があります。 1300ccのジムニーも同様です。
●ディスク

↑ディスク本体。
材質はダクタイル鋳鉄、FCD450です。
FCDには強度で別けて500以下のフェライト系と600以上のパーライト系がありますが、ディスク
ローターに使用する場合は悪戯に強くても磨耗し辛くなってしまい、かえって制動力やフィーリングを
損ねます。 ですので、ブレーキの場合はあえて軟らかめの500以下の材料を使用します。
以前に自分のR32GT-R用に試作でつくったときにFCD600を使用しましたが、ちょっと硬すぎたためか
鳴きが酷くて失敗したことがあります。
硬い材種は食い付きが悪くフィーリングもあまり良くなく、しかも磨耗しにくいために表層にストレスが
溜まりクラックが入る原因にもなります。
そのためにあえて磨耗しやすい材質を選ぶことで、初期の食い付きからハードなブレーキングでのクラック
に対して良好な特性を持たせることができます。 勿論、使用するパッドによっても相性は変わってきます。
最近はこうしたダクタイルやCV鋳鉄の社外品が多いですが、同じ材種でも、たとえばこのFCDの場合で言うと
FCD400、450、500、600とではまったくフィーリングが違ってきます。
これらはパッドとの相性ももちろん重要ですので、これらのことをどこまで考えられて造られているか
で印象は大きく変わってくることを念頭に置いておいてください。
○○材を使用しているから良い… ということではなく、それらの中でももっとも相性の良いものを選択
し、なおかつ熱処理の必要な材種の場合はそれによっても変わってきます。
このへんは技術だけでなく、ノウハウの要るところでもあります。
なお、ドリルド(ピンホール)の穴数および穴縁の割れ対策は以前のノーマルローター加工と同じです。
スリットでもいいのですが、加工が簡単なことと、ブレーキパッドの持ちを考慮してドリルドとしました。
●ベル

↑ディスクベルハウジング
材質はA7079、表面処理は通常のアルマイトです。 とくに硬質なアルマイトというわけではありません。
材質的には当方で製作するフォーミュラニッポンやJGTCマシンと同じものです。 ただし、レース
カーの場合はフローティング構造にすることもあり表面処理はハーダーマイト(硬質アルマイトよりも
さらに硬いものです)を施しますが、今回はそれほどハードな用途ではないので、見た目重視でカラー
仕上げのほうを優先しました。
<余談です>
ちなみに、程度の差こそあれカラーアルマイトは必ず色が褪せてきます。 これはその業者によって封孔処理
が異なるので、一概にどの程度の耐久性があるかはわかりません。
アルマイトというのは酸化によってアルミ表面に微細な孔を作り(これを多孔質層といいます)、その孔に
染料を染み込ませることで着色しております。 色が褪せるというのは要はこの孔に染み込んだ染料が飛んで
しまうことが主な原因で、これを塞ぐ処理が封孔処理です。 この封孔処理の質が業者によって違うのです。
ですので、私などはこの手の部品(高温にさらされたり、直射日光にさらされたり)する部品にはアルマイト
後にかならずクリアーコートしてから取り付けています。 こうするとアルマイトカラーの耐久性は飛躍的に
向上します。 ただし、色が抜けてもアルマイト層の質(硬さや対腐蝕性など)には影響ありません。
ちなみに、市販の製品には一見カラーアルマイトのように見えても、じつは電着塗装によるものも多いです。
カラーアルマイトはロットが異なると色調も必ず異なるので、それを嫌って塗装にしている製品が多いのです。
ホイールでも一見アルマイトのようなものもありますが、そのほとんどが塗装です。 ただし、レイズのTE37
のゴールドのように本当にアルマイトで処理されているものもあります。
アルマイトはアルミの質に左右されるので(鋳物や不純物の多いアルミだと色ムラが出たりして綺麗に染まら
ない)、アルマイトで均一に染まるということは、それだけ質の高い材質を使用しているという証明でもあり
ますね。
●ボルト

ボルトは通常のA2-70規格のステンレスボルトです。 サイズはM5×20。
これも今回はさほどハードな用途でないためです。 通常は強度区分12.9クラスのボルトを使用します。
なお、ストリートの場合はこうした箇所にチタンボルト(Ti-6Al-4v)は使用しません。 長期使用による
疲労破壊をすることがありますので。
ちなみに、写真ではやや褐色にカラーがついていますが、これはかるく焼き色をいれてチタンっぽく着色
したためです。 ステンレスは200度程度で均等に綺麗に焼くとこのようなチタンカラーになります。
ゆるみ止めとして座金には皿バネワッシャーを使用します。 締め付けはきちんとトルクレンチを使用
して締めつけます。
●取り付け
取り付けは純正ローターとそのまま差し換えなので難しいことはありません。

↑装着したところ。
なお、今回の主目的がバネ下過重の低減であることから、今までつけていたキャリパーカバーは取り外し
ました。
●取り付け後の変化。
装着後、50kmほど走りながら積極的にブレーキをかけてアタリをつけた状態ですが、材質の選定がちょうど
良かったのか、いや、むしろ良い意味で誤算だったと言えるほどバッチリ利きます。
純正パッドでこれですから、初期食い付きの良いパッドだとフロントばかりが利きすぎるようになってしまう
と思われます。 とにかくよく利いてくれます。
コントロール性があるので不自然さはありませんが、純正ブレーキに慣れた状態から急にこれに乗るとちょっと
利き過ぎるように感じるでしょう。
それよりも、意外に大きく変わったのが乗り心地です。 バネ下荷重が低減した効果がハッキリと感じ取れます。
リジッドアクスルなのでどうしてもバタバタ感や突き上げ感は独立懸架のサスにくらべると強めに出るのは仕方
ないのですが、このローターに変えてからかなり衝撃のピークが丸くなったような感じになりました。
当然、路面の凸凹の変化に対しての追従性も上がっていることでしょう。
昔からバネ下の1kgはバネ上の15kgに相当する「体感上の効果」があるといわれますが、この意味は実際に感じる
とよくわかります。 とくにバネ上そのものが軽い軽自動車の場合はその比率からしても変化が顕著です。

↑せっかく綺麗に仕上げたベルですが、ホイールをつけるとあまり目立たないのが残念ですね。
さらなるバネ下荷重の低減のためにも、軽量かつ開口部の大きなホイールに替えたいところです。
現在ジムニー用にラインナップされてる中での理想はやはりTE37Xですかねぇ。 高いですが、効果は
絶大ではないかと思われます。
●せっかくフロントを造ったので、機会があれば、今度はリア用にアルフィンドラムを造ろうかと考えています。

ただ、フィン部分も含めて完全削り出しで造るためにディスク以上に手間がかかるので面倒なのですが。
このドラムの場合はさらにバネ下重量の軽減には有効で、純正と同じ肉厚の鋳鉄ライナーを使用しても
計算上で40%、1個で約3.8kgもの大幅な軽量化になります。
フロントディスクの軽量化でこれだけ効果があったのですから、ドラムの軽量化はもっと効果が上がると
思います。