エキマニタフトその後と等長エキマニについて

タフトライドした純正エキマニの中間報告みたいなもの


●エンジンオーバーホールの際、新品の純正エキマニにタフトライドを施しましたが、それから

3000kmほど走りましたので現状どのようになっているのか遮熱板を外して見てみました。

↑エキマニの表面状態。

当たり前ですが、もちろん割れ(クラック)などはありません。

ただ、さすがに熱による変色はしていて、現状でははたして窒化皮膜の効果があるのかどうか

を判断することは難しいです。 これは今後走行距離を重ねて、表面の酸化層が剥離してくる

かどうかで見極めるしかないと思います。

今回の新品エキマニはもともと割れ対策品であり、さらにタフトライドによる効果も期待でき

ると思うので、多分かなり長期(うまくすればこのエンジンの寿命まで)持ってくれるのでは

ないかと思います。

また、ブースト圧も以前よりも下げて(1.5k→1.3k)いることから排気温度ピークも以前より

も40度〜50度ほど下がっていることも割れに対して楽になっている要素となりえます。

いずれにしても本当にその効果があったかどうかを確認するのは相当先のことになりますが。

 

ちなみに、OH前まで使用していた純正エキマニもとくに割れは生じておりませんでした。

ただ、表面の酸化層がところどころ剥離しており、劣化具合は距離相応という感じでした。

こうしたエキゾーストマニホールドの割れも排気温度をしっかり管理しアフターアイドルなども

きちんとおこなえばけっこう割れずに持つものだと思います。 単に高温になることもさること

ながら、赤熱状態から急冷されることが割れのいちばんの原因ですのでたとえば、全開加速した

あとすぐにアクセル全閉にして長い時間エンジンブレーキをかけるのも突然の燃料カットにより

エキマニが急冷されるのでこれも割れの一因になることがあります。

本来ならコストが許すのであれば、RB26DETTのように純正でステンレス鋳鋼製のエキゾースト

マニホールドくらいは奢って欲しいところです。 そうすればエキマニ割れトラブルとも無縁に

なるはずですが。 しかしコストに厳しい軽自動車のエンジンではナトリウム封入バルブなんか

と同様、さすがに純正採用は無理でしょうね。

ちなみにスズキの近年の対策品エキマニにはバナジウム鋳鉄というのを採用しているようです。

耐久性はステンレス鋳鋼には及ばないものの、コストパフォーマンスの高い材料だと思います。

おそらくJA22をはじめとする旧規格K6A用の対策エキマニもこの材料でできているのでしょう。

→ <参考>排気マニホールド用バナジウム添加耐熱鋳鉄の開発

 

あと、エキマニの材料でよく「インコネル(Inconel)」という材料名を聞いたことがあると思い

ますが、これは日本では「耐蝕耐熱超合金」という名称で分類される合金で、要するにニッケルを

主成分(材種によりNiが50%〜90%程度、Crが10%〜20%程度)とする高級材料です。 もはや

鉄鋼(スチール)をベースにしていないため「鋼材」ではなく「超合金」なのです。 JISでは

「NCF」と呼ばれる系統の材料で、別名スーパーアロイとも呼ばれます。

これは主に純粋なレース用として設計されたエンジンに使用されるもので、たとえば排気温度が

1100度くらいで常用するとか本当に極限状態で酷使されるエンジンではじめてその必要性をもつ

ものです。ですので正直なところ多くの市販のチューニングエンジン程度の排気温度(900度以下

程度)ではまず無用の長物です。

あのレクサスLF Aでもインコネル製のエキマニも検討されていたらしいですが、コストの関係から

見送られたとの話も聞きました。 しかし、現在の市販車では環境対策や燃費対策からエンジン本体

の温度も上がり、結果として排気温度もどんどん高くなっているのでそのうち市販車でもインコネル

と同等か、それに近い耐熱性を持つようなエキマニ材料が必要になってくるのかもしれません。

ちなみにチタンも排気系の材質としては使用されますが、少なくともエキマニに使う場合は振動に

対する耐久性や耐酸化性においてはインコネルにはかないません。 素材の比重が軽いので軽量で

あることはメリットではありますが、チタンは排気温度が700度台程度までが実用の限界でしょう。


●ついでなので等長エキマニ(俗にいう蛸足/タコアシ)についての話

よく社外エキマニだととりあえず「等長」であることを強調することが多いですが、実際に

本当に等長であることが必要かどうかという話になると、とくにK6AやF6Aのような直列3

気筒のエンジンでは実はあまり重要ではありません。

その理由としてまず、なぜ等長であることが重要かということですが、なにより排気干渉を

防ぐためという意味があります。 そのために各シリンダーからのパイプ長を等しくします。

具体的には、あるシリンダーから排出された排気ガスと次のシリンダーから排出された排気ガス

が同じタイミングで集合部で「ぶつかりあう」こと、つまり干渉することで排気抵抗となり

スムーズな排気を妨げて無駄な排圧を生じさせてしまうという弊害があるわけです。

(ちなみに過去の2ストロークエンジンのジムニーではわざと集合部でこの排気干渉を起こす

ことにより排気の抜けすぎを抑えるようにしていたようです。本来は避けるべきである排気干渉

を逆に利用することでチャンバーと同様の効果を得ていたわけです)

逆に、排気ガスの合流するタイミングを均等にずらせれば、あるシリンダーから排出された

排気ガスが通過した後に生じる負圧で次のシリンダーから排出された排気ガスが引っ張られる

効果(イジェクター効果やアスピレーター効果)により、より排気をスムーズに流せ排圧を

下げることができるのです。これが等長エキマニの狙いです。

4サイクルエンジンは吸入行程、圧縮行程、膨脹行程、排気行程と4つの行程それぞれクランク角

180度で1サイクルをおこない、合計720度(クランク2回転)となります。

たとえば直列4気筒のエンジンの場合、あるシリンダーが排気をして次のシリンダーが排気を

する間隔はクランク角度で180度ですので、まさに「絶え間なく」次々と排気ガスが出てきます

ので、集合部までのパイプ長が等しくないと排気と排気がモロにぶつかる、つまり干渉してし

まい、そこで排気抵抗が高くなる、つまり排圧が上がってしまい排気効率が落ちます。

(もっとも現実にはオーバーラップぶんがあるので実際は必ず少しは干渉してしまうのですが)

ですので、4気筒以上のエンジンの場合は等長にすることは非常に大きな意味を持ちます。

しかし直3エンジンの場合、あるシリンダーが排気をしてから次のシリンダーが排気をするまで

の間隔は240度あります。 つまり、ひとつのシリンダーが排気をしてから次のシリンダーの

排気ガスが出るまでに240度-180度=60度の「時間的ブランク(空白)」があるのです。

つまり、あえて等長にしなくても長さの差がこのブランクの範囲にさえ収まっていれば排気干渉

はおきないというわけです。 これはV6やフラット6のツインターボエンジンの片バンクについ

てもまったく同じことが言えます。無理に等長にする必要はないわけです。

もちろん、それでも「等間隔」にするためにはできるだけ長さは揃えたほうがいいのですが、

長さを合わせることだけにこだわって無理な曲げ方(急な曲げ方)をしてかえって排気抵抗を

増やしてしまったり、無駄に長くなって熱エネルギーを無駄に放出したりレスポンスが悪化して

は本末転倒ですから、それならば多少の長さのバラツキは問題ないわけですから、なるべく無理

のない曲げRで、なおかつ排気ガスのエネルギーを落とさないよう最短距離でタービンまで導いた

ほうが性能的にはメリットが大きいと言えるのです。

 

しかも、仮に等長(等間隔)にすることを最重視するとした場合、この無理な曲げ(キツい曲げR)

による抵抗が問題で、いくら各シリンダーからのパイプ長が同じであっても排気ポートから集合部

までに到達する時間(タイミング)はそれぞれのパイプの曲げによる抵抗で変わってしまいます。

たとえば、人間が50メートル走するとします。 そのとき、直線コースを50メートル走るのと、

クネクネ曲がったコースを50メートル走るのとでは当然ながら直線のほうが早くゴールします。

これは曲線を走るためには自身の持つ質量によってかかる遠心力(慣性)に打ち勝たなければなら

ないため、その方向に前に進むためのエネルギーの一部が使われてしまうからです。

エキマニの中を流れる排気ガスも同じで、ガスにも当然質量があり慣性も働きますので、仮に

同じ長さのパイプ長であっても、ストレートに近いパイプとクネクネ曲がったパイプとでは排気

ポートから集合部までに到達する時間にはズレが生じるのです。 そうでなくてもまっすぐに近い

パイプと曲がりくねったパイプとでは排気抵抗がまるで違うことは容易に想像できると思います。

これでは何のために等長にしているのかわかりません。 重要なのは「等長」ではなく「等間隔」

であることのはずです。

たとえばK6Aエンジンのエキマニで言えばストレートに近い1番シリンダーとキツイRで曲げなけ

ればならない3番シリンダーでは同じ長さのパイプでも等間隔にはならないということです。

つまり本当の意味での「等長マニホールド」というのは「寸法的に等長」ではなく「時間的に等長」

であることが重要なのです。 果たしてこのことをきちんと考えて設計されている社外マニホールド

が本当にあるのか私は疑問です。

ターボエンジンではありませんが、あのレクサスLF AのV10エンジンの排気マニホールドも一応

「等長排気システム」とは称しておりますが、現実には片バンク5気筒のエキマニのパイプ長は完全

には等長ではなく、±40mmの差があるとのことです。

当然ながらこれだけのコストをかけられる車ですから「完全等長(等寸法)」とすることも別段難し

いことではないはずですが、それでもあえてわざと長さに差をつけているということは、おそらく

等間隔排気、つまり「時間的に等長」にすることを最重視して設計、レイアウトした結果なのでは

ないかと考えられます。 もしそうだとしたらさすがにメーカーはよく理解してるなと思えます。

 

ちなみによくスバルのフラット4エンジン(EJ20ターボ等)で「等長が良いか、不等長が良いか」

という議論も聞きますが、これはどちらが良いかというよりも何を優先するかという「エンジニア

の思想の問題」と考えたほうがいいです。

水平対向4気筒でシングルターボの場合、エンジン軸中心にタービンがマウントできれば自然と

左右のエキマニの長さも同じにできますが、現実はタービン位置は左右どちらかに寄ってマウント

されています。 すると当然ながら遠いほうのバンクからは長いパイプでタービンまで排気を導か

なければならず、等長にするためには短くて済む側のバンクもそれに合わせて長いパイプでタービン

まで繋ぐことになるため、排気ガスの熱エネルギーが無駄に放出されてしまうためにロスが出ます。

逆に、不等長でも構わないから短くて済む側のバンクのエキマニを最短距離でタービンまで繋げれば

より排気ガスの持つエネルギーを落とさずにタービンを効率良く回すことができます。

当然、不等長にすることで排気干渉は起きますが、これについては集合部を若干太くするなどして

できるだけその悪影響を抑えようとすることで対処するしかありません。

つまり「排気干渉を避けようと等長にすれば排気のエネルギーロスが大きくなり、排気のエネルギー

ロスを最小限にしようと非等長にすれば排気干渉が起きる」というジレンマの中でどちらを優先する

かということになるのです。 どちらにもメリット、デメリットの両方が存在するわけです。

あとはタービンをツインエントリーターボにして、タービンハウジング内で4→2→1の「2→1」の

部分を成立させるのもひとつの手法となります。

これは何も水平対向エンジンだけでなくV型エンジンのシングルターボでも同様のことが言えます。

 

さらに言えばV8エンジンになるとこの排気干渉はさらに複雑な問題となり、とくに多くの市販車の

V8エンジンのクランクシャフトは実用域での振動低減を優先してクロスプレーン(前方から見て

クランクピンが十字になって配置されている)のV8がほとんどでこのタイプは片バンクでの燃焼間隔

が均等ではない(8気筒全部で見れば等爆だが、片バンクでみると等爆ではない)ためどうやっても

排気干渉は避けられません。 なのでこのクロスプレーンクランクのV8エンジンでは等長エキマニは

まったく意味がないのです。 (フェラーリ等のシングルプレーンクランクのV8エンジンは片バンク

で等間隔燃焼になるので、直4エンジン同様に等長エキマニの効果はあります)

→V型8気筒エンジンのクランクシャフト別の特性の違いについてはこちらのページで説明しています。

 

●いろいろ書きましたが、私が言いたいことは「エキマニはなんでもかんでも等長がベストという

わけではない」ということです。 シリンダー数や点火間隔、そのエンジンごとの構造的な条件に

よって重視すべきポイントは変わるのです。 このような理由からF6AやK6Aのような直3エンジン

では「完全等長」にこだわってもあまり性能的に大きな意味がないということを理解していただけ

れば幸いです。 また冒頭で「4気筒以上のエンジンの場合は等長にすることは非常に大きな意味を

持ちます」と書きましたがこれもチューニングの目的次第であり、実際のところは等長のメリットは

最高出力が非等長に対して僅かに上回る程度で、サーキット走行のような高回転しか使わないよう

な場面ではメリットがありますが、ストリートメインにおいてはむしろ「非等長でも最短」で繋いだ

エキマニのほうが低回転からトルクがあり扱いやすいチューニングとなることが多いのです。

私に言わせればターボのエキマニの場合、街乗りメインのチューニングに於いては等長であることは

たいして重要な要素ではないと考えていますし、実際そうだと思います。

結局、僅かしかない等長のメリットを重視するより、ターボエンジンなのですからいかに排気ポート

から出た高温高圧のガスのもつエネルギーのロスを最小限にターボチャージャーに導けるかを最重視

し、そのレイアウトの中で「なるべく等長」にできればそれで充分なのです。

さらに言うと、エキマニのパイプの太さも太すぎるとタービンまでの間の「ガスの充填」に時間が

かかることになるため、低速トルクの低下やブーストの立ち上がりの遅れなどの弊害が生じること

になります。 エキマニは排気ポート出口径に対してやたら太くしてもあまり意味はありません。

また、NAエンジンでは集合部までの長さでトルク特性をチューニングしますが、ターボの場合は

やはり最短距離にこだわるべきです。 ターボでも確かに集合部までの長さを変えることで若干の

トルク特性のチューニングは可能ですが、どちらにしてもターボの場合は排気干渉とは比較になら

ないほど大きな排気抵抗となるターボチャージャー(タービンホイール)という羽根車を回さなけ

ればならないのですから、この部分でのチューニングはNAのような自由度も効果もありません。

NAでは排気バルブから出た排気ガスはもうそのまま捨てられるだけですが、ターボの場合は排気

ポートから出たあとの排気ガスにもまだ「タービンを回す」という仕事が残っているのです。

結局、同じエキゾーストマニホールド(タコ足)とは言ってもNAとターボではまるで異なってき

ますので、根本的な考え方(重視するポイント)を変えなければならないと私は思います。

↑個人的に私のJA22につけるとしたらこれが良さそうだと考えているのはハイブリッジファースト製

(NewsのOEM製品と思われる)のGT1エキマニです。 無理に等長にしていないためパイプに無駄な

長さがないためブーストの立ち上がりも早そうですし、パイプも1本ものでなおかつ3mm厚と厚いので

割れにも強そうなので。 メーカーではJA22には適合がありませんが、現行ジムニーJB23-1型と同じ

なので装着は可能だと思われます。

他社のエキマニは等長にこだわるあまり無駄にパイプが長いものが多いです。 たしかに最高出力だけを

見たら等長のほうが若干有利だと思います。 しかしストリートチューンではできるだけブーストの

立ち上がりを速くしたいですし、ましてやボルトオンターボでは絶対馬力だけ追求しても上限は知れて

いますのであまりスペックにこだわるよりも実用域の扱いやすさも兼ね備えたチューニングをしたほう

が利口なのではないかと思います。 そういう観点からも私は等長よりも「非等長でも最短距離」を

重視したエキマニのほうが街乗りでの実用域も含めたトータル性能では軍配が上がると考えます。

そういう意味においては純正のエキマニも決して悪いことばかりではないと言えます。 よくノーマル

のエキマニのことを「何も考えずにただ各シリンダーから出たパイプを繋いだだけ」と非難している

文面も見ますが、逆にそれこそがもっとも大事なことであるとも言えるのです。 無駄にパイプ長を

長くして排気のエネルギーロスを大きくするよりも、もっとも素直に単純に繋げることによるメリット

もあるのです。

 

●あと、エキマニによくヒートバンデージ(ヒートストラップ)等と呼ばれる耐熱グラステープを巻く

ことがありますが、これも一定の効果があります。 前述していますようにターボチャージャーは排気

ガスの持つ熱エネルギーを回収するシステムですので、そこに導かれる排気温度が高いほど効率が良く

なります。なので排気ポートから出た排気ガスの温度をできるだけ落とさないようにサーモバンデージ

を巻いて保温することは有効です。 実際に過去に緑整備センターで最高速アタックしたカプチーノ

(F6Aエンジン+TD04ターボ)ではバンドなしとバンド巻きではシャーシダイナモで180PS→190PS

と最大10馬力の差が出ました。

ただ、ターボまでの排気温度が非常に高い場合は、かえってエキマニの耐久性を損ねたり割れる原因

になったりしますので、排気温度が常に900度を超えるようなエンジンの場合は巻かないほうがいい

場合もあるかと思います。 レーシングエンジンなどではもともとの排気温度が市販エンジンよりも

ずっと高いため素材の持つ耐熱温度を超えてしまう恐れがあることからあえてこういったバンデージ

は巻いてないのが普通ですし。

なお、NAエンジンの場合はこのバンデージを巻くか巻かないかで集合部までの距離が変わったのと

同じ作用が出るので、一概に良い結果が出るとは言い切れない面があります。 基本的には全域で

トルクアップするとは思いますが、場合によってはトルクピークの回転数が変わることでかえって

狙い通りのチューニングができなかったりすることも考えられます。 ただ、逆に言うとバンド

を巻くか巻かないか、あるいは巻く範囲を変えることでトルクバンドの微調整をすることもできる

わけです。 なお、もちろんバンデージにはエンジンルームへの遮熱という効果もあります。

ちなみに2ストのチャンバーなどでもポート出口からバンテージを巻く距離を変えることで排気の

反射波の戻ってくるタイミングが変わることを利用してトルクバンドの微調整ができるようです。

↑私が以前乗っていたHP10プリメーラ・オーテックバージョンのSR20DE(改)エンジンでも

サーモバンデージをエキマニに巻いていました。ECUセッティングとの相乗効果で10PSほど

パワーアップ(実測170PS→180ps)しました。 NAの2000ccで他に変更をすることなく

これだけで10馬力上げるのは結構大変なことですので、それなりに効果はあったと思います。

 

なお、NAでもターボでもバンデージを巻くのはあくまでも「集合部まで」です。 よく集合後の

フロントパイプまで巻いてるものを見ますが、そこまで巻いても意味がありません。むしろ集合後

やタービンより下流では逆に排気ガスを冷やしてやり、ガスの体積と圧力を減少させたほうが排気

抵抗は減り排気効率が上がるはずですので、性能的にはフロントパイプまで巻く必要はありません。

ただ、熱害を防ぐ為や触媒の効率を上げる目的であればフロントパイプに巻く意味は理解できます。


●最後に

終わりに、社外のステンレス製エキマニでもよく問題になる「溶接部の割れ」についてですが、

これの対策としてもっとも有効なのは溶接後に焼き鈍しをすることだと思います。

本来ならこうした溶接構造のエキマニは、通常通り溶接した後に、「応力除去焼き鈍し」をして

溶接時に生じた内部応力をキャンセルすることで、実使用時の割れようとする力を発生させない

ようにしなければならないのですが、社外エキマニのほぼすべてはただ溶接しただけで終わって

います。これでは溶接時に生じた内部応力は残ったままです。

この残った内部応力が実際にエンジンに付けてから熱せられて開放されるのですが、もはやその

状態ではエキマニはエンジンにボルトで取り付けられて自由に変型できる状態ではありません。

それでその行き場を失った力が溶接部に集中してそこが割れてしまうのです。

つまり、この割れの原因となる内部応力を除去するために溶接加工後、熱処理炉に入れて実際の

排気ガスの温度(たとえば900度)より高い温度まで上げて(たとえば1000度以上)一定時間

保持し、その後ゆっくりと徐冷することで内部の歪みやその歪みによって発生する力を消して

やるのです。これが「応力除去焼き鈍し」です。 ちなみにこれをよく「焼鈍(しょうどん)」

と呼ぶ人もいますがこれは正しい熱処理用語ではありません。

当然、この焼き鈍しをすると溶接時に生じた内部応力によってフランジ面が若干、歪みますから

そこで最後にフライスのフェイスカッターで一発「面研」して仕上げてやります。

(なので溶接前にはフランジの厚みには2mmから3mm程度余裕を持たせておく必要があります)

本来ならこうした工程を経て製作されなければならないのですが、市販のエキマニのほとんどは

溶接後の「美観」のほうを重視しているのか、この焼き鈍し処理をおこなっていません。

たしかに応力除去焼き鈍しをすると表面は真っ黒になりますし、その後サンドブラストをかけます

ので、見た目には「灰色でザラザラ」となりますのであまり綺麗ではありません。(もちろん

その後にバフ仕上げでもすればピカピカになりますが、手間がかかってコスト高になります)

しかもどうせターボエンジンの高い排気温度ではどんなに綺麗にできたエキマニも使っているうち

に真っ黒になってしまいますので、この辺は装飾より機能優先と割り切ったほうがいいと思います。

ただ、この方法でも「溶接の技術そのものに原因がある」などの場合は対処しきれずに割れる場合

がありますし、振動の多いエンジンの場合も割れますので、さすがに完璧とまではいきません。

また、エキマニにWPC処理をかけると割れにくくなるという話もありますが、たしかに効果はゼロ

ではないでしょうが、ショットピーニングならまだしも、WPC程度では残留圧縮応力を与えられる

層が非常に薄いので、実際の効果としてはほとんど望めないと考えます。


●追記 2011/7/20

上記の文面で「クロスプレーンのV8エンジンでは等長エキマニはまったく意味を持ちません」と

書きましたが、これに対して「現行BMW M3はクロスプレーンV8なのに純正で等長エキマニを

採用しているので何かしらの意味があるのではないか?」とのご意見をいただきました。

これは事実ですが、この理由は主に「サウンドチューニング」のためでしょう。 エンジンパワー

やトルク的にはクロスプレーンはシングルプレーンに対して不利なのは否定しようがない事実で

ありサウンド的にもクロスプレーンはいわゆる「ドロドロ」とした音になりがちです。 そこで

各シリンダーから集合部までの距離を等長にし、テールエンドの開放端までの距離を揃えること

で排気の脈動波のタイミングを音響的に揃え、すべてのシリンダーからの排気音を揃えることで

少しでも「きれいなサウンド」にすることを目的としているものと考えます。

同じV8クロスプレーンのレクサスIS FもBMWとは手法は異なりますが、やはり音をできるだけ

綺麗にするための各シリンダーのエキマニの径や長さに工夫をしてあるようです。

逆に、メルセデスベンツのAMGのV8エンジンはまったくこういったことは考慮していないのか

単純に非等長のエキマニを使用しているようです。 これはこれで「クロスプレーンのV8なんか

どうやったっていい音にはならないのだから、下手な小細工はしないぜ!」みたいな割りきりが

感じられて個人的にはこのベンツのエンジンのほうが技術屋として潔いという気さえします。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~