K6Aエンジンに強化メタルヘッドガスケットを使用するために最低限必要なこと
ただ純正のガスケットと入れ替えればいいというものではありません!
●K6Aターボをハイパワーチューニングする上で欠かせないのはなんと言ってもモンスタースポーツ製
の強化メタルヘッドガスケットです。 これは今までにも何度も書いています。

↑モンスタースポーツ製の強化メタルヘッドガスケット。 当然、私のJA22ジムニーにも使用しています。
もうすでに5年以上使っていて、SPL仕様HT07-A/R12タービン&ワークスRカム、圧縮比8.45で最大で
ブースト1.7kg/cm^2(常用は1.3kg/cm^2)での連続全開での最高速アタックを何度もくり返していますが、
耐久性にまったく問題もなく、安心して全開することができ抜群の信頼性を誇ります。 ただし、後述する
ようにこのモンスタースポーツの強化メタルヘッドガスケットのポテンシャルを最大限引き出すためには
「シリンダーヘッドとシリンダーブロックの合わせ面の超高精度面研加工」が絶対必要です。ただノーマル
ガスケットと取り替えればそれでいいというものではありません。

↑こちらは純正のヘッドガスケット。K6Aエンジンはノーマルでもメタルガスケットを採用してますが、
両面のゴム(ラバー)製のシール層が弱いため、ある程度パワーアップチューンするといとも簡単に
高い燃焼圧力で吹き抜けてしまいます。 それに、このゴムのシール層は断熱性を持つため、ヘッドと
ブロック間の熱伝導を悪化させるので冷却効率が悪化しオーバーヒートやノッキングの原因にもなります。
これらの理由から、純正のヘッドガスケットはとてもハイパワーチューニングには向きません。 これは
なにもK6Aエンジンに限ったことではなく、ほとんどの純正メタルガスケットに言えることです。
●強化メタルヘッドガスケットの性能を活かすも殺すも「加工精度次第」!
先日、こんなメールが来ました。「新規格K6Aエンジンでモンスタースポーツのメタルヘッドガスケット
を使用したのにIHI RHB31改タービンでブースト1.3kg/cm^2でハードな走行をくり返していたら、
ほんの千キロほどでガスケットが吹き抜けてしまいました。何がいけなかったのでしょう?」。これに
対し、私はいくつか組み込みに関しての質問をしました。そうしたら「そんなんじゃ吹き抜けて当然」
と言える「ずさんな組み方」をしていたことが原因だとすぐにわかりました。
この人はモンスターの強化ガスケットを組む際に、ストレートエッジでブロックとヘッドの歪みを測定し、
サービスマニュアルに書かれている使用限度である「0.05mm以内」だったので、機械による面研もせず
軽く表面をオイルストーンで合わせ面を擦ってそのまま組み込んだというのです。 しかし、これでは
強化メタルヘッドガスケットに要求される面精度および粗さを満たすことはできません。 結果、吹き抜
けて当然なのです。

↑これはK6Aエンジンではありませんが、純正のヘッドおよびブロックの合わせ面は意外なほど平面度が
アバウトで、なおかつ切削目が粗すぎるため、オイルストーンで面を修正した程度でそのまま社外品の
強化メタルガスケットを組むのはタブーです。 こんなに荒れた酷い合わせ面のままの状態ではどんなに
高性能な強化メタルヘッドガスケットを組んでもすぐに吹き抜け、あるいはオイル漏れや水漏れを起こし
てしまいます。 とにかく、強化メタルヘッドガスケットを組む際は歪んでる、歪んでないにかかわらず
ヘッド側、シリンダーブロック側ともに機械加工による高精度面研が必要不可欠です!
●その理由とは
同じメタルヘッドガスケットとは言っても純正のそれと社外の強化ガスケットを見比べれば一目瞭然です
が、純正のメタルヘッドガスケットは前述したように両面に厚いゴムシール層があるため、多少ヘッド
およびブロックの表面が粗くて歪みがあっても、この柔らかいゴムのシール層がそれを吸収してしまう
ため、吹き抜けたり漏れることがないのです。 それに対して、社外の強化メタルヘッドガスケットの
両面は金属の表面に直接薄いモリブデンコーティングが施されているだけなので、少しでもヘッドおよび
ブロックの合わせ面が粗かったり、歪みが多いとそれを吸収できずに漏れてしまうのです。つまり、社外
の強化メタルヘッドガスケットを使用するときは「金属同士が直接強く接触しただけで漏れないだけの高度
な平面精度および面粗さが必要」なのです。ほんの僅かな擦り傷や歪みさえ許されないのです。

↑これは私のK6Aエンジンのヘッドとブロックの合わせ面の精密研磨後の写真。 このように強化メタル
ヘッドガスケットを使用するときは鏡面に近いくらいまで極限まで面粗さを細かく研磨し、なおかつ平面度
もミクロンオーダー、すなわち1/1000mm単位まで高精度を追求しなければなりません。ここまでやって
はじめて強化メタルヘッドガスケットのポテンシャルを引き出すことができ、ヘッドとブロックの密着度
が上がり、気密性および熱伝導が最大限発揮されるとともに、ヘッドとブロックの締結剛性も大幅に向上
するので、エンジン全体の剛性も上がるため、かなりハードなパワーアップチューニングにも抜群の耐久性
を発揮するのです。 つまり、高精度にブロックとヘッドの合わせ面を研磨してさらに強化ガスケットを
使用して組みあげることは、ガスケットのみならず、エンジン全体の強度アップにつながるのです。
●なので強化メタルヘッドガスケットを組む時は必ず「高精度面研」が必要です!
まずはじめに私が言いたいことは「高性能なチューニングエンジンを組む時はもはや自動車メーカーの
サービスマニュアルの数値は役に立たない。サービスマニュアルに記載されているよりワンランク上の精度
を出さなければならない」ということです。
たとえば、前述したヘッドおよびブロックの平面度がサービスマニュアルでは0.05mmとなっていたならば
それより一桁上の0.005mmまで追求するということです。 まぁ、現実には一般的な内燃機加工屋さんで
0.005mmの平面度を出すことは難しいでしょうから、せめてサービスマニュアル指定の半分の数値、つまり
0.025mm出ていればとりあえずは問題ないでしょう。

↑ちなみに私のK6Aエンジンのシリンダーヘッドは一般的なフライス加工ではなく、平面研削盤でおこなった
ため、加工後の測定では1/1000mmのダイヤルゲージの針さえ動かないほどの「超高精度仕上げ」となって
います。 これはもはやF1エンジンレベルと同等の超高精度な加工をしたうえで組み上げたのです。

<参考例> ダミークランクシャフトを製作しての面研およびボーリング

↑これはオートバイ(CBR1000RR)のシリンダーとクランクケースですが、面研およびボーリング加工に
あたり、より高精度を出すために1/1000mmの精度で製作したダミークランクを組み込んであります。
こうすることでよりブロック全体の剛性が高まるためより高精度な加工が可能となるのです。 ただし、当然
ながらコストはかかります。ストリート用のエンジンではまずここまではやりませんが、レース用のエンジン
ではこういったところまで妥協をせず精度を追求します。
●まとめ 純正ヘッドガスケットとモンスタースポーツ強化ヘッドガスケットの比較
<スズキ純正メタルヘッドガスケット>
1) 価格が安い
2) ヘッドおよびブロックの合わせ面が多少歪んでいたり粗くても問題なく使える
3) チューニングによるパワーアップには非常に弱く吹き抜けやすい
4) 熱伝導性が悪いのでノッキングやオーバーヒートの原因になる
<モンスタースポーツ製強化メタルヘッドガスケット>
1) 価格が高い
2) ヘッドおよびブロックの合わせ面に高精度な面研加工(平面度、面粗度)が必要
3) チューニングによるパワーアップの高い燃焼圧力でも吹き抜けに強い
4) 熱伝導性が良好なのでノッキングやオーバーヒートを起こしにくい

●最後にヘッドボルトの締め方について
どんなにヘッドとブロックの面精度を高く仕上げても、最後の組み立て作業でのヘッドボルトの締め方
が悪ければすべてが水の泡です。 ここでも「サービスマニュアル通りの締め方ではまったく通用しま
せん」。 たとえば、K6Aエンジンのサービスマニュアルでは「まず規定トルクの80%で締めてから、
規定の100%のトルクで締める」と書かれています。 しかし、こんな「乱暴な締め方」では高性能
チューニングエンジンやレーシングエンジンでは到底通用しません。

↑これはK6Aエンジンのヘッドボルトの締めつけ順序。これはマニュアル通りで構いません。 ですが、
問題はその締めつけの「回数」です。 まず、ボルトには必ずスレッドコンパウンドを塗布します。
その上で、まずはソケットを被せ手の力だけで締めます。 そこから先は最終規定トルク(モンスター
スポーツのガスケットの場合は700kg-cm)の10%づつくらいの力で少しづつ締めつけていきます。
まさに「真綿でジワジワと締めつける」感覚で平均的に、均一にガスケットに圧力がかかるように締めて
いくのです。 こうすることではじめて強化メタルヘッドガスケットの性能を最大限活かすことができ、
大きな燃焼圧力に耐えられる耐久性の高いエンジンが組み上がるのです。 もっとも、ネジの締めつけ方
にはこの他にも様々あり、角度法、塑性域変形法、また、ある程度締めてから一度少し戻して再度締める
など、追求すればするほど奥が深いもので「どれが真理なのか」なんてことは一概には言えません。
私の知人のレーシングエンジンを組み立てるチューナーの中には、ヘッドボルトを締めつけるのに50回
にもわけて少しづつ締めていく人もいるくらいです。 もちろん、この際に使用するトルクレンチは
プリセット型では精度がバラつくのでNGです。きちんと高精度なダイヤル式(直読式)のトルクレンチ
を使用しないといけません。 これは個人的な意見ですが、トルクレンチはトーニチ製のものがもっとも
高性能で信頼できると思っています。 実際、私の周りのエンジンチューナーさんもトーニチ製のレンチ
を使っている人が多いです。 むしろスナップオンなどはトルクレンチに関してはあまり信頼されていま
せんね。 ただ、どんなトルクレンチでも「定期的な校正」は必要ですよ。

↑ダイアル式トルクレンチの例。 このボルトの締めつけトルクや計算式、正しいトルクレンチの使い方
などはまた別の機会に記事にしてまとめたいと思いますが、絶対にやってはいけないことは「トルクレンチ
はボルトを緩めるときに使ってはいけない」ということです。これがいちばんの「狂う元」になります。
●最終的に高性能パーツを活かすも殺すも「加工精度と組み込みの腕次第」です!

結局、どんなに高性能なパーツを使っても、その性能を活かすも殺すも、加工精度としっかりとした
組み立てのノウハウ次第なのです。 そういう意味では私のJA22ジムニーのK6Aエンジンはかなり
精度レベルの高い加工をし、緑整備センター様でしっかりと組み込みをしていただいたからこそ、
ハードな走行のくり返しでもまったく不安のない全開走行が可能となっているのです。 皆さんも自分
でエンジンを組むにしてもショップに任せるにしても、とにかくこうした「ツボ」を押さえた妥協の
ない加工と組み込みを心掛けることが肝心です。 世の中には本当に作業が早いだけでいい加減な
「手抜き仕事」をするチューニングショップやチューナーが多いですから気をつけてください。
●世の中にはこんなずさんな仕事をする自動車整備士もいるのが現実です

↑これはネット上で見つけたとあるQ&Aの回答ですが、ちょっと信じられませんね。 ヘッドボルト
を締めるのに「いちいちトルクレンチを使っていては仕事になりません」なんて「現役自動車整備士」
が言うセリフとは思えません。こんな奴は整備士失格です!なのであえて名前も隠しません。
たしかに整備書に記載されている締めつけトルクが絶対ではありませんが、ボルトの伸びや軸力を考慮
した「基準値」なのでそれを無視して組むなんていい加減すぎます。 しかし、もしかしたら世の中の
現実はこんなもんなのかもしれません。 あえてショップの名前は言いませんが、年間多数のF6A/K6A
コンプリートエンジンやリビルトエンジンを製作しているショップなどはこんな低レベルの仕事をしている
と考えたほうがいいでしょうね。そう考えるとほんと、ヘタな整備工場やチューニングショップに大切な車
を預けるのが怖くなりますね。 有名ショップだからといって信用できるわけではないのがこの業界の常識
ですから。

↑私のJA22ジムニーのK6Aエンジンもオーバーホール兼ファインチューンしてから早くも5年以上が経過して
いますが、しっかりした精度での加工と、信頼できるチューナーさんに組んでいただいたこともあり、今でも
「絶好調」なコンディションを維持しています。