エンジン腰下の状況と回転バランス取り、重量合わせについて
エンジンオーバーホールにて解ったダメージなど
●前回はとりあえずシリンダーヘッドを開けてみての現状でしたが、今回はブロックを分解
して解った各部の状況をとりあえず報告です。
●2番シリンダーライナー

↑前回も写真を載せましたが2番シリンダーのピンボス方向の縦傷です。
この程度であれば軽くホーニングをかけてクロスハッチをかけ直すことで修正可能です。
とくに2番シリンダーは若干とはいえクリアランスを広げることで多少なりともこのカジリが
低減できるかもしれません。
●2番ピストン

↑セカンドランドが激しくカジッています。 これはもう使い物になりません。
1番および3番ピストンにはまったく問題はありませんでした。 やはり3気筒エンジンの
真ん中のピストンは熱的に辛いということの証明でもあると思います。
前回の記事でも書きましたように、1番と3番に比べより高温になることでピンボス方向の
熱膨張が過大になることでクリランスが詰まり、このようにカジッてしまうと思われます。
言い方を変えると、この症状が出るのは本当にパワーが出ていてなおかつ連続全開走行など
本当にそのエンジンのパワーを限界まで使い切っているような使い方をしているからだとも
言えます。
とりあえず、カジリのみで棚落ちやリング膠着は起こしていなかったのは幸いでした。
もちろんピストンはリングとともに3個とも新品に交換です。
●コンロッドメタル

↑パワーアップによる燃焼圧力をもろに受けるメタルですのでダメージはある程度は仕方ない
とは思いますが、これはけっこう傷んでいます。 3気筒とも同じような感じです。
おそらく、まだオイルクーラー&油温計をつけていない頃に酷使したことが要因ではないかと
思います。 油温をしっかり管理していればまず防げるものと思います。
なお、クランクメタルについてはとくに問題はありませんでした。(もちろん新品交換します)
クランクシャフトのジャーナルについては若干の線状傷があるので、軽く磨いて組み込みます。
●重量合わせやバランス取りについて
よくオーバーホールついでにクランクシャフトのダイナミックバランスやピストン、コンロッドの
重量合わせをすることが多いですね。 それを勧めるチューニングショップも多いようです。
しかし今回、私はクランクその他のダイナミックバランスやピストンやコンロッドの重量合わせ等
はおこないません。 これはチューナーさんそれぞれ考え方はあるかと思いますが、正直言って
バランスを取ったからといって理論的にも体感的にも変化を出す(感じる)ことが難しいからです。
これはK6Aのようなフルカウンターでないクランク(2番シリンダーにクランクウエイトがない)は
仮に動バランスを取ったとしても2番シリンダーのバランス率が「実質ゼロ」なのですから構造上どう
しても回転中に「暴れる」のは避けられないので精密バランス取りの効果がほとんど出ない為です。
つまり、クランク全体での動バランスは取れても各スローごと(各シリンダーごと)ではバランス
は取れないということですので、バランス取りの有無に関係なく理論上どうしても振動が出ます。
逆に言うとこれがフルカウンタークランクでウエイトに充分なバランス率があれば多少の意味は
あります。 これはクランクの動バランスだけでなくピストンやコンロッドの重量合わせとセット
で考えるべきことなのですが、「ピストンやコンロッドは何に対して重量合わせをするのか?」と
言えばそれはクランクのカウンターウエイトに対してです。
つまり、ピストンやコンロッドの重量合わせはそれに対向するカウンターウェイトとセットで考え、
その両方の重量バランスのバラツキが抑えられていてはじめて意味をなすものなのです。
ここまで書くとわかると思いますが、K6Aのように2番シリンダーにウエイトのないクランクでは
もともとクランクのウエイトの重量が各気筒でバラバラなわけですから、それをそのままにして
ピストンやコンロッドの重量合わせをしたところで無意味なのです。 とはいえ、部品として重量
のバラツキは少ないほうが良いのは言うまでもありません。 ですが、「ピストン、コンロッドの
精密重量合わせはフルカウンタークランクと組み合わせることでより一層の効果が出る」のは間違い
ありません。
さらに直列3気筒のクランクシャフトでは1番シリンダーと3番シリンダーのクランクウエイトと
つり合う質量部分がないため、クランクが高回転になればなるほどエンジンの前端と後端を左右に
ふり回そうとする力「偶力」が宿命的に発生します。 これはダミーウエイトをつけてダイナミック
バランスを取ったとしても絶対に消すことはできない振動です。(これはV6エンジンも同じであり、
さらに水平対向4気筒や6気筒、振動が少ないと言われているクロスプレーンクランクのV8エンジン
でさえもこの偶力による振動は消せないのです) このような理由から「回転バランスを取れば振動
がほぼ消える」というのが通用するのは実のところ直6エンジンやV12エンジンくらいなものです。
「最近のV6エンジンは直6に匹敵するほど良くなった」と言われますが、やはり完全バランスの直6
にはV6もV8もとうていかなわないと私は思っています。
その他では、直4エンジン(2次バランスシャフトつきは除く)では左右方向の2次振動が必ず発生し
ますし、F6AやK6Aの3気筒では前述のように「2番シリンダーの暴れ」と「1番、3番シリンダーの
振り回される力」が1次振動(不平衡偶力)としてどうしても発生しますので、いくら精密にダイナ
ミックバランスを完璧に取っても振動は絶対に消すことはできません。
つまりF6AやK6Aのノーマルクランクでは精密にダイナミックバランスを取り、ピストンやコンロッド
重量をいくら精密に重量合わせしたところで振動は消えないのですから、理論上ほとんど意味はないの
です。 ノーマルクランクでノーマルのレッドゾーン範囲内での使用なら重量のバラツキはピストンと
コンロッド合わせてせいぜい3g程度の範囲で収まっていれば充分ではないかと思いますので、とくに
大きなバラツキがなければ何もせず純正のまま組んで何ら問題ないのです。 もちろん、それでもやり
たい方はやっても良いと思いますが、とくに直3のクランクのダイナミックバランスはダミーウェイト
をつけないとできないので、直4や直6エンジンに比べて高額となるのです。 軽自動車のエンジンで
そこまでやる価値があるかどうか… 費用対効果をよく考えておこなったほうがいいと私は思います。
注釈:これはあくまでも直列エンジンでの話で、これがV型やましてや水平対向エンジンでは反対バンク
のピストンやコンロッドの重量がつり合い錘としての質量になりますので、クランクがフルカウンター
であるかどうかにかかわりなくピストン、コンロッドの精密重量合わせの意味は重要になってきます。
●その他
シリンダーブロックおよびシリンダーヘッドの「歪み」はとくに問題ありませんでした。
使用限度は0.05mmですが、0.03mm未満(0.03のシックネスが入らなかった)の歪みしかあり
ませんでした。 つまりオーバーヒートまでは起こしていなかったということで、今回は完全に
「ヘッドガスケットがパワーに負けた」ということが言えると思います。つまりこれがノーマル
K6Aエンジンの「限界」と考えて良さそうです。
ですのでブロック、ヘッドともにこのまま組み付けても問題はないのですが、せっかくですので
ブロックもホーニングついでに最少面研し、ヘッドも同じく最少面研します。
いちおう整備書ではヘッド、ブロック合わせて最大で0.15mmまで研磨修正可能と書いてあり
ましたので、今回の修正研磨では両方合わせても0.1mmには満たない程度で収まるはずです。
仮に合計0.1mm研磨したとしても計算上、圧縮比は8.5にも満たない(ノーマルは8.4)です。
また、バルブ本体も吸気、排気ともに問題はありませんでした。 ただ、バルブガイドについて
は排気側がややクリアランスが気持ち大きいような気もしましたのでどうしようか悩みましたが
今回は私の判断でガイドの打ち替えはせずにそのまま使用することにしました。
もちろんステムシールは新品交換します。

とりあえず今回はこんなところです。 来週あたりから機械加工に入ります。