HID化したヘッドライトリフレクターの焼け対策について
きちんとした製品を選べばまず問題にはならないはずですが

●私の車では今のところ問題は発生していないのですが、世間ではあと付けのHID(キセノン)バルブキット
装着後、ライトリフレクターのメッキ面(反射面)が白く濁って白化して変色してしまったり、艶(光沢)が
なくなって曇ったり、虹色に焼けたりするトラブルがわりとよくあるようです。
今回はこの原因と対処方法について私なりに書きたいと思います。
●社外HIDキットによるライトリフレクター焼けの原因は大きくわけて以下の3通りあると考えられます。
1) バーナー装着前の「カラ焼き」不足によるガス発生による曇り

↑HIDバーナー装着前のカラ焼きの様子。通常は5分程度おこなえば充分なはずです。
これはキットによっては「カラ焼き不要」となっているものもあるのですが、新品のバーナーでも製造時および
保管中にガラス表面に付着したわずかなゴミ、ホコリ、油分、水分などが初回の点灯時の熱で蒸発、ガス化し、
それがリフレクターに付着すると、その部分だけ虹色になったり白化や変色したりすることがあります。
もちろん、指で触った際につく皮脂の油もガスの原因になりますので、絶対にバーナーのガラス部分には触らない
ことです。 これは通常のハロゲンバルブでも同様の注意点です。 仮に触ってしまった場合、アルコールなどで
綺麗に拭き取っても、今度はその拭き取った際に残ったわずかな残留成分がまたガス発生の原因になりますので、
再度カラ焼きが必要になります。

↑ガスによって焼けた例です。
これの対処はもちろん、バーナーをライト灯体へ装着前に数分程度点灯させ、空焼きすることですが、もうすでに
リフレクターが焼けて変色しまった場合は、程度が軽いときは柔らかい脱脂綿を水で湿らせたもので軽く拭くこと
で曇りが取れる場合もあります。
ただし、ライトリフレクターのメッキはスパッタリングメッキという1/1000mm以下の薄膜のアルミ層で、しかも
純正のライトリフレクターのメッキは光の反射効率を最優先するために通常おこなうメッキ後のクリアーのトップ
コートをおこなっていないか、おこなっていても非常に薄く弱いものが多いため、外装部品用のスパッタリング
メッキと異なり非常に薄くデリケートなメッキなのでちょっとでも擦りすぎると簡単にメッキが剥がれてしまいます
ので扱いには細心の注意が必要です。 同様の理由で、アルコールやシンナーなどの有機溶剤、揮発性溶剤で拭く
ことやコンパウンドで磨くこともメッキが剥げてしまう危険性があるので厳禁です。 指で直接メッキ面を触ること
も避けなければなりません。
もし、これで曇りが取れなければ完全に焼きついているので、ライトユニットを新品に交換するか、ライトを分解
してリフレクターを再メッキするしか方法はありません。
2) UVカット(紫外線カット)不足な製品を使用した紫外線による曇り
個人的にはこれがリフレクター焼けの原因としてもっとも多いのではないかと思います。 いちおう最近のHIDキット
の多くは「UVカットコーティング済み」と書かれているものが多いのですが、このコーティングの品質には非常に
バラつきがあり、ちゃんとした製品は広い範囲の波長の紫外線をカットしてくれるのですが、中国製の安物や、国産
でも低価格な製品ではこのUVカットコーティングが充分でないものがあるのです。 ひとことに紫外線と言っても
様々な波長の光線があり、それらすべてを効果的にカットできる高性能なUVカットコーティングが施されているのは
ごく一部の高品質なHIDキットのバーナーだけだと思われます。 安い製品のコーティングはこの有害な紫外線を充分
にはカットできる性能をもっていないため、このカットしきれなかった紫外線によるダメージをリフレクターのメッキ
が受けてしまい、リフレクターが白く濁って白化したり、メッキの光沢がなくなったりします。
「UVカットコーティング済みと書いてあるからと言ってすべての製品が信用できるわではない」のです。
むしろコーティングがいい加減で安心できない低品質な製品のほうが大半だと思ったほうがいいでしょう。
こうなってしまったらもうDIYでの復活は不可能です。 やはりライトを交換するかリフレクターを再メッキするしか
方法はありません。 ですので、安さに釣られて低品質な社外HIDキットは買わないということが最大の防衛策となる
と言えるでしょう。

↑私のジムニーの現在のリフレクターの状態です。
私はレイブリッグ(スタンレー)製のマルチリフレクターライトに同じレイブリッグのHIDキットを組み合わせて
使っていて、すでに8年以上になりますが、見てのようにリフレクター焼けはまったく生じていません。 しかも、
プラスチックレンズなのにまったく黄ばみや透明度の低下(俗に白内障と言われる現象)もおきていません。
私はけっこう夜間の走行が多いほうなのですが、やはり、国産の自動車メーカー純正部品を作っている一流メーカー
の製品だけのことはあります。 MADE IN JAPANの値段の高い製品は高いだけの品質はあるということの証明です。
もちろん、車検もまったく問題ありません。
3) ハイワッテージバーナーによる熱害によるメッキ焼け、メッキの剥離
通常、HIDは35Wで充分な明るさが得られますので、それ以上のワット数は必要ないはずですが、なぜか最近は55W
とか85Wとかアホみたいに消費電力の多いハイワッテージなキットが出ています。
「HIDは発熱が少ない」と思い込んでる人が多いようですが、実際はHIDでも発光点付近やバーナー基部はかなりの
高熱に晒されます。 これは私の身近で実際にあった話ですが、ある人がバーナーのシェード(遮光傘)を薄い
アルミ板で製作したのですが、それを装着して数時間走ったら、そのアルミ製のシェードが熱でグニャっと曲がって
しまったことがあります。 アルミの融点は660度ですが、さすがに溶けるまではいかないものの、曲がってしまった
ということは最低でも400度付近までは温度が上がってしまったと考えるのが妥当でしょう。 35ワットのHIDでも
発光点直近ではそれだけ高温になるということなのです。
ですので、55Wだの75Wだの85Wだののハイワッテージなバーナーでは想像を絶する高熱になりますので、この熱
のせいでリフレクターのメッキがやられてしまうのです。
これももはやDIYでの修理方法はありません。 ハイワッテージHIDの使用を止め、そのうえで新品のリフレクター
(ライトユニット)に交換するか、リフレクターを再メッキするしか方法はありません。
<補足説明>
HIDは発熱が少ないと言われていますが、実際の発熱量は35Wバーナーでもハロゲンバルブ50W相当の発熱があります。
ではなんで「ハロゲンライトならライトに積もった雪が溶けるのにHIDは溶けないのか?」という疑問がありますが、
これは主に光線に含まれる赤外線および遠赤外線の量が違うためと考えられます。 ハロゲンバルブよりHIDのほうが
光が白い、あるいは青白いことからもわかるように、HIDやLEDは比較的波長の短い光線をメインに発光します。
それに対してハロゲンバルブは比較的波長の長い赤外線成分の多い光を出しますので、それによってレンズや積もった
雪が温められて溶けやすいのですが、HIDやLEDはもっと波長の短い光線の成分がメインなので(だから紫外線が問題
になるわけですが)この長い波長の赤外線成分が少ないため、光による温熱効果が少ないために雪が溶けにくいものと
私は考えています。 これは、点灯したヘッドライトの前に手をかざしてみるとハロゲンのほうはほんのり手が暖かく
感じますが、HIDではあまり熱を感じないことからもわかると思います。 つまりHIDとハロゲンの違いは、その光線
に含まれる熱線の違いであり、バルブ本体の発熱についてはHIDでもハロゲンと同じくらい熱を持つものなのです。
さらに言えばLEDライトも同様にバルブ自体はかなり熱を発生し、場合によっては冷却ファンさえ必要になります。
●以上の理由から、アフターパーツのHIDキットを選ぶ際、また取り付け時の注意点は以下のようになります。
1) 信頼できるメーカーの高品質な製品を選ぶ。
とくに自動車メーカー純正部品を製造しているメーカーのもの、とくに外国製より日本製のほうが信頼でき確実です。
しかし、国産のものでの安価な製品は紫外線カットコーティングが不十分なものが多いので注意が必要です。
2) あまり色温度(ケルビン値)の高いものは選ばない。
通常、自動車メーカー純正のHIDの色温度は4000K程度ですので、このくらいのものがいちばん明るく見やすいです。
ケルビン数が高くなるほど青っぽくなり、光の波長が短く紫外線成分が多くなるので、高いケルビン数のバーナーほど
リフレクターがダメージを受けやすくなります。
3) ワット数は35Wで充分。
前述したようにHIDバルブは想像以上に発熱しますので、ハイワッテージなHIDはリフレクターのメッキにダメージを
与えるだけです。 そもそも、HIDのメリットは「ハロゲンよりも低消費電力でより明るい」ということなのに、
ハロゲンよりもワット数を大きくすること自体が愚考でありナンセンスなのです。
4) 装着前のバーナーのから焼きをおこなう。
カラ焼き不要と書かれているものでも、点灯テストを兼ねて装着前に数分間点灯させカラ焼き(空焼き)をしたほうが
確実です。
5) 防水、防塵は確実におこなう。
バーナー(バルブ)取り付け後に被せるラバーキャップは確実に装着し、外部からの水分やホコリなどがライト灯体内部
に入らないようにします。 ここのシールが充分でないと侵入した水分やホコリなどが原因となりライト内部でガス化
してメッキを曇らせたりする原因となります。
とりあえず、以上のような点が予防策として考えられます。
ただし、これは現時点で私に解りえる範囲での原因と対策です。 これ以外にもトラブルの要因はあるかと思いますので、
その点についてはご了承ください。
●最近は「◯年間保証」とか書いてあるHIDキットも多いですが、これはあくまでも本体の故障や不具合についてのみの
保証です。車両側のライトリフレクターが受けた損傷やライトユニットまでは補償してくれませんのでご注意ください。

<おまけ> ヘッドライトはどのタイプがもっとも明るいか
ヘッドライトのタイプには大きく分けて3種類あります。 1つは昔からあるレンズカットタイプ。 2つめは最近の車
のメインであるマルチリフレクタータイプ。 3つめはプロジェクタータイプです。
この中で明るさの優位順に並べると「マルチリフレクター>レンズカット>プロジェクター」となります。
プロジェクターは一見、先進的でカッコよく見えますが、実は光の効率としては最悪です。 マルチリフレクタータイプ
は広い面積で効率良く光を拡散し、薄いレンズカバーにより光量の減衰を最小限にできるので非常に明るいのですが、
プロジェクターは小さい面積のリフレクターで反射した光を透明度の低い分厚いガラスレンズを透過させ、屈折、拡散
させるため、この部分で光量の減衰が多く、明るさがかなり落ちてしまうのです。 80年代や90年代のまだハロゲン
バルブ時代のプロジェクターライトが非常に暗かったことを知ってる人ならこれはすぐ理解できることと思います。
しかし、現在は光源であるバルブが明るいHIDやLEDになったことからプロジェクターでも満足な明るさが得られるよう
になりました。 しかしそれでもやはり絶対的な明るさではマルチリフレクタータイプには及びません。
なのになぜ最近またプロジェクターライトが増えているのかと言えば、それはライトユニットをコンパクトにできるため、
オートレベライザー装置が組み込みやすいからなのです。
<参考> 過去のHIDキット組み込み時の記事
●ちょっとひとこと
私は仕事でこのライトリフレクターの再メッキもおこなっているのですが、たまに「リフレクターの再メッキの際に、
トップコートのクリアーにUVカット効果のあるクリアーコートができないか?」とのご要望がありますが、残念ながら
そういうクリアーはありません。通常の2液ウレタンクリアーのみです。
UVカット対策はリフレクターではなく、あくまでもHIDバーナー側でおこなうべきものです。