私の使用している「HITACHI SPL HT07ターボチャージャー」について
今さらながら、やはりコイツはかなり謎の多い「超レアモノ」タービンのようです

↑私のJA22ジムニーに使用している「SPLハイフローHT07」ターボチャージャー。
<参考リンク> →このターボチャージャーを入手したときの記事(2003年)
●私のJA22ジムニーのK6Aエンジンにもう12年ほど使っているターボチャージャーですが、当初は
「スズキスポーツのK10エンジン用のN2タービン、4RA36-T20」と同等のものだと思っていました。
つまり、1000ccのワゴンRワイド用のN2タービンのことです。 ところが、先日、このページの読者
の方からメールをいただき、この4RA36-T20ターボチャージャーの「現物」の写真を見ることができ
ました。それを見て明らかに私の使っているターボチャージャーとは違うことが判明、なんと、私の
SPL HT07のほうがスズキスポーツ製N2よりはるかに大きいコンプレッサーサイズであること
がわかったのです!
●スズキスポーツ製ワゴンRワイド用N2ターボチャージャー「4RA36-T20」の現物写真

↑これがスズキスポーツのワゴンRワイド用N2タービン。見てのように、基本はラージコンプレッサーの
HT07ですが、入り口径(インデュース径)が奥に行くに従い絞られており、最内径部は間違いなく通常の
HT07と同じ32Φほどになっています。 また、ブレード(羽根)の形状も通常のHT07となんら変わりま
せん。なお、排気側ハウジングは間違いなくA/R12となっています。
つまりこのスズキスポーツのワゴンRワイド用N2タービンはコンプレッサー側は純正とまったく変わらず、
排気側ハウジングのみA/R12にしただけという仕様になっているのです。 要するに、このスズキスポーツ
のタービンは私が最初に作った「HT07ラージコンプレッサー(4Aコンプレッサーハウジング)にA/R12の
エキゾーストハウジングを組み合わせただけのもの」と同じということなのです(ちなみに純正はA/R9)。
私は今までこのスズキスポーツのワゴンRワイド用N2タービンはコンプレッサー側も当然ハイフロー化されて
いるものとばかり思っていましたが、現物はハイフロー化されていたのは排気側だけで、コンプレッサー側は
純正と何も変わらないものだったのです。 今回、この事実を知り私は非常にガッカリしてしまいました。
<参考リンク> →HT07-A/R12タービンの製作(2002年)
●それに対して、私の使用している「SPL HT07」ターボチャージャー

↑これが私の使っているSPL HT07ターボチャージャー。 注目してほしいのはとにかくインデュース径が
大きいこと。入り口から奥に至るまで絞ることなくΦ36のストレートでコンプレッサーホイールまで達して
います。 さらに、ブレードの形状もより多くの空気を掻き込みやすい形状となっており、上記スズキスポーツ
のワゴンRワイド用N2ターボチャージャーとは大きな違いがあります。 排気側はもちろん、コンプレッサー側
も大幅にハイフロー化されており、おそらく、風量としてはIHIのRHF4に相当するほどのキャパシティーがある
ものと思われます。上記スズスポのN2タービンとは比べ物にならないほど大きなHT07になっているのです。

↑左が通常のHT07(ラージ)、右が私のSPL HT07。こうやって並べて比べると一目瞭然ですね。 私の使用
しているSPL HT07のブレード径がいかに大きいかがハッキリとわかります。インデュース最奥径の実寸では、
通常のHT07がφ32、私のSPL HT07がφ36となっていて、その面積比は実に約27%の差になります。
●排気側エキゾーストハウジング、タービンブレードについて

排気側については同じA/R12なのでエキゾーストハウジングおよびタービンホイールに違いはありませんが、
私のタービンブレードにはカットバック加工が施されています。 相違点はそのくらいですね。
●調整式強化アクチュエーターの違いについて

↑ちなみに、アクチュエーターは両者とも同じで、スズキスポーツ製の調整式強化アクチュエーターとなって
います。スズキスポーツ製の強化アクチュエーターはHKS製の強化アクチュエーターとは違いアジャスト部分
がターンバックル式になっているので微調整が利き、作業も楽です。
●参考までに私が昔から気になっている「もうひとつの」スペシャルなHT07タービンの写真

↑これは今から15年ほど前にネットで偶然入手した写真ですが、左がK6Aエンジン純正のHT06ターボ、
そして右がビッグインデュース径のHT07タービンです。写真で見ても明らかに分かりますが、私のと同じ
ようにインデュース口径が奥までストレートになっているハイフローなHT07です。 しかも、写真をよく
見てもらうと分かりますが、コンプレッサーホイールのブレードの枚数が6枚羽根となっているのです。
通常のHT07のコンプレッサーホイールの羽根は5枚×2のブレードですから、これまた「謎な仕様」の
タービンです。 どうやらこの時期(10年〜15年ほど前)、ハイフローSPL HT07タービンには私の使って
いるモノ以外にも様々なスペシャルバージョンが存在していたようです。 いずれにしても10年以上も前
の話ですので、今となってはまずこのような「超レアHT07タービン」はほとんど入手不可能でしょうね。
●HT07ターボチャージャーの主な種類
これまでにも私はHT07タービンについて「ラージコンプレッサー」「スモールコンプレッサー」があると
おおまかな区分けで書いてきました。 それがいつの間にか世間にそのまま広まった感じがあります。
ですが、この「ラージコンプレッサー」にも種類があり、大別すると以下のような区分けになります。
1) HT07-4 ラージコンプレッサー …これが初期のワゴンRワイドに標準装着されていたもので、HT07
シリーズの中でももっともコンプレッサーサイズの大きなものになります。 排気側A/Rは9が標準ですが、
組み換えることによりA/R12、A/R7にすることもできます。
2) HT07-5 ラージコンプレッサー …これはおそらくマイナーチェンジ後のワゴンRワイドの純正ターボ
で、上記HT07-4よりもわずかにコンプレッサーハウジング、およびインデュース口径が小さくされて
います。 実質的にはスズキスポーツのHT06 N2タービンと同じコンプレッサーだと考えて良いでしょう。
これは排気側A/Rは7が標準ですが、組み換えることでA/R12、A/R9仕様にも改造できます。
3) HT07-6 スモールコンプレッサー …これは明らかに見た目で上記2種類のHT07よりコンプレッサー
ハウジングがひとまわり小さいもので、ワゴンRプラスに標準装着されていたタービンで、もっとも低回転
トルクおよびレスポンス重視のタービンです。排気側A/Rは構造上組み換え不可能でA/R7の1種類のみです。

↑2種類のHT07タービン。左がHT07-6、右がHT07-5です。 ともに4AコンプレッサーのHT07よりは
MAXパワーは落ちますが、そのぶん低回転域から扱いやすいものです。 とくにHT07-6はパワー的には
100PSに届くか届かないか程度ですが、8000rpmあたりまでパワーがついてきますし、それでいて低回転
からの立ち上がりはK6AノーマルのHT06とほとんど変わらない特性なので、街乗りで使うぶんにはもっとも
扱いやすいと思います。

↑モンスタースポーツのMSK6-07タービンもベースはスモールコンプレッサーのHT07-6がベースと
なっています。 ただし、排気側A/R比は8.4と純正のHT07-6よりは若干、高回転寄りとなっています。
●では「4Aコンプレッサー」のA/R12のHT07はどのくらいまでパワーが出せるのか?
これはもちろん、そのエンジンのチューニング仕様(主にカムや圧縮比、ポート研磨など)によって大きく
変わりますが、まったくのノーマルエンジンでブースト圧を1.3kg/cm^2から1.5kg/cm^2あたりまでかけた
として、少なく見積もっても130PSオーバーは楽にいけると思います。 ただし、純正のヘッドガスケット
はそう長くは持ちませんのでそのつもりで。 以前から何度も書いていますが、K6Aエンジンのノーマルの
ヘッドガスケットは本当に弱いので、100PS以上出して調子に乗って走っているとすぐに吹き抜けますから。
さて、これにエンジン本体のチューニング、必須なのは強化メタルヘッドガスケットの使用、ワークスRカム
をはじめとするハイカムやポート研磨などのチューニングを加えた上で同じくらいのブースト圧をかけた場合
はもう150PSオーバーは楽勝でしょう。 ただし、言っておきますがこれらは適切なインジェクターや燃料
ポンプ、抵抗の少ない吸気サクションおよび排気系チューニングがしてあり、そしてなによりキッチリとECU
セッティングをおこなってあることが前提での話です。 それと冷却、たとえば適切なサイズのオイルクーラー
などの冷却系の強化も忘れてはいけません。

↑K6AはノーマルカムからワークスRカムに替えるだけでも5000rpmから上のパワーに違いが出ますので、
HT07-A/R12タービンの高回転パワーをより活かすことができます。 おそらくほとんどの人が9000rpm
のレブリミッターが邪魔に感じるくらいになるでしょうね。それくらい高回転が面白いエンジンになります。
ただし、新規格のK6Aではバルブスプリングを強化しないとサージングをおこす恐れがありますので注意。
なお、一部に「HT07は耐久性が低くタービンブローしやすい」と言う人がいますが、それは使用状況や
オイル管理および温度管理状況など外部的要因によるものがほとんどです。そもそもターボチャージャーは
「精密機械」なのですから、どんなタービンでも壊れるか壊れないかは使い方次第です。 現に私の使って
いるSPL HT07は1.3kg/cm^2から最高1.7kg/cm^2のハイブーストでもう12年も使ってますが、まったく
問題は出てませんので。あと、普段の暖機運転やアフターアイドルをしっかりおこなうこともポイントです。
●HT07ターボチャージャー装着の際には純正サクションパイプの拡大加工も忘れずにおこなうこと!

K6A純正のHT06タービンのコンプレッサーの入口径はφ31程度となっています。当然ながら、そこに繋がる
サクションパイプの径も同じφ31程度しかありません。 それに対してHT07タービンの入口径はφ36もあり
ます。 つまり、ノーマルサクションパイプをそのままつけたのではそこで径が絞られてしまい、せっかくの
HT07の持つ吸入効率を活かすことができません。いわゆるエアリストリクターとなってしまうわけです。
ですので、HT07タービンをつける際には必ず純正サクションパイプの内径をリューター等で削り、拡大加工
してから使用することがたいへん重要となります。 ネット上でのHT07タービン装着記事を見ていると、意外
にここをおろそかにしている人が多いように見受けられます。 しかしここは大変重要なポイントなのです。
このパイプより上流のサクションパイプを太いものに換えている人は多いですが、そんなところだけ太くした
ところで、最も肝心なこのタービン直前のサクションパイプを太くしなければまったく意味がありません。

↑純正サクションパイプの通路拡大加工要領。よく上流のサクションパイプは社外品の太いものに交換して
いる人はいますが、肝心なのはその下流にあるターボコンプレッサーに繋がる下流のサクションパイプのほう
なのです。 ここをHT07タービンの吸入口径であるφ36に拡大するとともに、パイプの内径も可能な限り
径を拡大加工します。何度も書きますがこの加工は「絶大な効果があります」。というより、これをやらない
とHT07、とくにラージコンプレッサーのHT07タービンの性能を活かすことができません。

↑左がK6A純正のままのサクションパイプ、右が拡大加工したサクションパイプ。 この加工の効果は絶大で、
ブーストの立ち上がりから高回転のパワーまで全域で激変します。これをやらなければせっかくのHT07ターボ
の性能がまったく活かせませんので、面倒でも必ずおこなうようにしましょう。 ちなみに私が使用している
サクションパイプは純正の中でももっとも太いEA21Rカプチーノ用をベースに写真のように加工して使用して
います。なお、この拡大加工は出入口だけでなく、内径全域をすべてを削って限界まで拡大加工しています。
ちなみに、このEA21Rカプチーノのサクションパイプのエアクリーナー側入口径はφ45ですが、これは前期型
R35 GT-Rの純正サクションパイプの内径と同じなのです。 そう考えるといかに太いかがわかりますね。
●結論として
今回、こうしてスズキスポーツ製ワゴンRワイド用のN2ターボチャージャーの現物の写真を見ることができた
ことで、あらためて私の使っているSPL HT07ターボチャージャーが非常に希少で特殊なタービンであること
がハッキリしました。 逆に言えば、これによってさらに「謎が深まった」とも言えるのですが、ほんとうに
私が使っているこのスペシャルなHT07タービンはいったい何者なのでしょうかね?(笑)
入手したのはもう12年も前のことですし、誰から買ったのかの記録も残ってないので、調べる手がかりすら
ありません。 たぶんワンオフものではないかと思いますが、詳細はまったく不明のままです。

ただひとつ確実に言えることは、これで私の使っているこのSPL HT07タービンは間違いなく「パワーでは
最強スペックのHT07タービンである」ということはハッキリしましたね。 もっとも、そのぶん低回転
では若干かったるいのですけど、5000rpmを超えると怒涛のように湧き上がるトルクで一気に9000rpmまで
ブン回るドッカンターボが好きな私にとっては乗っていて刺激があり最高に面白いターボチャージャーです。
●今回、情報提供していただきありがとうございました

今回、このスズキスポーツ製ワゴンRワイド用N2タービンの情報提供していただいた方とは今までにも何度か
メールのやりとりをしておりましたが、おかげさまで、大きな謎が解けスッキリました。 まぁ、逆に言えば
私のタービンについてはさらに謎が深まった部分もあるとも言えるのですが、何はともあれたいへん有益な
情報提供をしていただきましてありがとうございました。

<追記> F6A/K6AチューニングターボはIHIが良いか日立が良いか、と、チューニングの「目的」
ネットでいろんなF6A、K6Aボルトオンターボチューンの記述を見ていると、使用するターボチャージャー
のメインは「IHI RHB31FW」か「HITACHI HT06 or HT07」ベースの2派に分かれますね。 これは
スパークプラグで言えば「NGK派かDENSO派か」に近いものがあります。 もちろんどちらのメーカーの
ターボチャージャーにも一長一短はありますが、基本的に低回転の実用域から扱いやすいのはIHIのほう
でしょうね。タービンホイールおよびコンプレッサーホイールの外径が日立のタービンよりも小さいため
レスポンスが良いのです。 逆にHITACHIのほうは高回転パワー重視という感じで、レスポンスや低回転域
のトルクではIHIには負けますね。 ただ、ひとことにRHB31、HT07と言ってもショップオリジナルで様々
な仕様がありますし、また、私のように個人でもパーツを組み換えたり加工したりしてオリジナル仕様の
タービンも多々ありますので「どれが良いのか」は一概には言えません。 また、IHIのRHB31タービンには
ボールベアリング仕様のタービンもあるようですが、たしかにボールベアリングにすることで5%ほど低い
回転数から過給がかかるようになりレスポンスも向上しますが、タービン軸回転数が100000rpmを超える
回転域になると逆にボールベアリングタービンのほうが回転抵抗が大きくなるというデメリットもあるので、
ボールベアリングタービンがすべての面において優れているわけではありません。

↑<参考> ターボチャージャー用ボールベアリング
結局、ターボチャージャーの特性には人それぞれ好みがあり、低回転からすぐブーストが立ち上がるのを
重視する人、逆に私みたいに5000rpm以上でのドカーンとくる刺激を求める人など様々ですから。
「このタービンは良いよ」と言っても「その人にとっては良いタービンかもしれないが、それがすべての
人に良いタービンであるとは限らない」ということなのです。それが「個性」というものでしょう。
人それぞれ好みや目的の違いがあるからこそ様々な仕様のタービン、様々な仕様のエンジンがあるから
こそチューニングというのは面白いんだと私は思います。「速い」とか「遅い」とかじゃなく、いかに
「自分好みのクルマに仕上げるか」がチューニング、カスタマイズで一番大切なことではないでしょうか。
しかし最近は自分のチューニングポリシーを持たず、ショップや他人に薦められるがままに、あるいは
ネットや雑誌などで得た情報を真似てパーツを交換、装着し、クルマを弄っている人が多くなってきている
ような気がします。ユーザー本人がそれで満足ならべつに構いませんが、本当にそれが「自分が追い求めて
いたクルマ」になっていますか? ただの「人真似しただけのチューニングカー」になってはいませんか?
他人が何を言おうと「自分が求める自分好みのクルマ」にするのが一番大切だと思います。
