「ヘビーウエイトシフトノブ」の弊害、リスク、問題点について
何も考えずにシフトノブを重くしすぎるのはミッションに過度な負担をかけるだけです

●よく市販でヘビーウェイトシフトノブなどという名称でステンレス製やら真鍮(しんちゅう)製の
無垢材削り出しで、重量が400gも500g、さらには600gなんてバカみたいに重いシフトノブをつけて
「シフトが入りやすくなった!」なんてアホ丸出しで喜んでつけている人がいますが、こうした製品は
ミッション内部のシンクロやシフトロッドのロッキングボールやスプリングに過度な負担をかけるだけ
で、良いことなんて何もありません。 さらにはシフトレバーの座面の摩耗が早まったり、負担をかけ
ますので、こんなものはミッションにとってデメリットばかりで何一つメリットなどありません。

↑シフトフォークの位置を決めるロッキングボールとそれを押さえるスプリング。 シフトノブを重く
するとこの位置決めが走行中の振動などで微妙に動いてしまい、シフトフォークやそれと接触している
シンクロハブなどに負担がかかり、摩耗を促進させてしまいます。
このヘビーウエイトシフトノブというものの原理は要は、ノブの質量による「慣性の勢い」を利用して
「エイヤッ!」って強引にシフトを入れているだけですので、言わば「力技」で強引にギアを叩き込んで
いるだけです。 そのため、ヘビーウエイトシフトノブは、シンクロメッシュ機構による回転合わせ
(回転同調)の時間を与えずに「無理矢理ギアをブチ込む」ので、シンクロコーンやシンクロナイザー
リングなどに無理な負担をかけて摩耗、消耗を早めるだけなのです。 そういう構造を知らない無知な
ドライバーは「シフトが入りやすくなったと勘違いしているだけ」で実にバカな話です。 まずは
トランスミッション、シンクロ機構の構造からきちんと勉強してください。 そうすれば、いかにこの
ヘビーウエイトシフトノブがミッションにとって悪いものであるかがよくわかるはずです。
なお、これはノンシンクロのドグミッションでも同様です。こんなパーツでシフトタイムを短縮しようと
するくらいなら、まずはうまく回転を合わせてギアを入れられるよう練習をすべきでしょう。回転が合え
ば「シフトレバーが吸い込まれる」ように軽くギアが入るようになります。
さらに、このロッキングボールのスプリングがヘタっている場合などは走行中の振動などでシフトロッド
が微妙に動いてシンクロの一部が僅かに接触し続ける状態にもなりかねず、摩耗が促進されてしまうという
デメリットが生じます。 また、これは自分でも経験がありますが、工事現場などの大きな段差、ギャップ
を超えたときなどの大きな衝撃でシフトノブの重さの勢いでシフト抜け(ギア抜け)を起こすこともあり、
突然ニュートラルに入ってしまうことがあります。 さらにひどいときは急ブレーキや急発進(とくに坂道
発進)の際の前後G(急減速時、急加速時の勢い)でギア抜けを起こしてしまうことさえあります。
そんな時にアクセル全開だったりすると、エンジンが即オーバーレブしてしまうなんて事態も起こり得ます。
そう考えると、このヘビーウエイトシフトノブはミッションだけでなく、エンジンにとってもかなりリスクが
高いものということができるのです。
●結論「ヘビーウエイトシフトノブには何もメリットなし!」
これまで書いたように、重すぎるシフトノブはトランスミッションには悪影響ばかりで良いことなんて何も
ないわけで、私に言わせればこんな商品を売ってるほうも買う方も頭が悪すぎます。マニュアルミッション
の構造と原理をきちんと理解していれば、シフトノブは軽い方が良いというのはレース界でも常識です。
実際、フロアシフトのレーシングカーやラリーカーを見ればそれは明らかなんですけどね。 しかし悲しい
ことにバカな連中というのは盲目らしく、いくら説明しても解らないみたいで、まさに馬の耳に念仏です。
無知は罪であるとはよく言ったものだと思います。

ヘビーウエイトシフトノブを販売する側は「シフトチェンジが楽になります!」なんて大袈裟な宣伝を
してますが、人間が楽をしたぶん、機械(ミッション)に負担がかかってしまうことを忘れてはいけません。
皆さんもよく勉強して「本当に良いモノ」であるかどうかを見極められるようになってください。 世の中
のチューニングパーツには車に害悪しか与えないものも多いのです。
もっとも、「ミッションなんて所詮は消耗品、壊れたら直せばいい」というスタンスならば私も反対はしま
せんけどね。 しかし、できるならオーバーホールしないでできるだけ長くミッションを使いたいのであれ
ば、ヘビーウエイトシフトノブなんて何のメリットもないバカげた製品は使うべきではありません。
●<参考> 重量調整式シフトノブ

↑これは三菱純正の「重量調整式シフトノブ」。 内部のワッシャー状のウエイトの枚数で自分に合った重さ
で使用できる凝った構造のノブです。とはいえ、これでも最大で200グラムまではいかないので、このくらい
がシフトノブの重量の上限かと思われます。 もちろん、車種によって純正シフトノブの重量は様々ですので、
ノブを社外品に交換するときは純正の重さを基準に考え、それより過度に重いものは避けるべきでしょう。
●私のJA22ジムニーに使用しているシフトノブとトランスファーノブ

↑ちなみに私はジュラコン削り出しの軽量自作シフトノブを使用しています。 完全なオリジナル設計で、
もっとも使いやすいボール形状のいわゆるWRCノブと呼ばれている形状で、その球の直径も自分の手のサイズ
に合わせてベストなサイズにしてあります。さらに首部分の長さも純正より若干長くして、ベストポジション
になるように工夫してあります。同様にトランスファーノブもジュラコン削り出しです。

↑ジュラコンノブ以前はやはり自作のアルミ削り出しノブを使用していましたが、シフトレバーの長い
旧型ジムニーにはこれでもやや重いようで、走行中にある程度激しいギャップを越えたときなどにギア抜け
をおこすなど、ミッションへの負担が大きいと判断したため、より軽量なジュラコンで再製作したわけです。
ジュラコン製にしてからはギア抜けなどは一切なく、まったく問題ありません。やはりシフトノブは軽いに
越したことはありません。

↑車検対策も自作のシフトパターンプレートで万全です。 ステンレスプレートにインスタントレタリング
で文字とパターンを入れ、上からクリアーコートしてあります。

↑くり返しになりますが、トランスミッションの事を考えたらできるだけ軽量なシフトノブを使用しましょう。
市販の既製品ならできれば樹脂製、重くてもせいぜいアルミ製までにしておいたほうがいいと思います。
チタン製も内部が肉抜きしてあってアルミ製並みに軽ければ問題ないと思います。 ステンレス製や真鍮製の
無垢材のものなどは重すぎて論外です。前述したようにミッションを傷めるだけです。 ちなみに素材の比重
としては、ジュラコンが約1.4、アルミが約2.7、チタンが約4.5、ステンレスが約7.8、真鍮が約8.5です。
マグネシウムも比重1.7と軽量なので良いと思いますが、酸化しやすいので製品としては見たことはないですね。
逆に重い金属で言うと純金やタングステンが約19.3なので、同じノブならアルミの7倍、ステンレスの2.5倍の
重量の「超ヘビーウエイトノブ」になります(笑)
<参考> →ジュラコン製シフトノブとトランスファーノブの製作
●おまけ グループA R32 スカイラインGT-Rの「ホシノシフト」
グループAレースでR32GT-Rをドライブしていた星野一義氏のシフトアップ技はとても「強引」だったらしく、
0.1秒でも0.01秒でも速くシフトアップするために、クラッチも切らず、さらにアクセルも戻さずガンガンと
シフトアップしていったらしいです。もちろん、点火カットなどのオートシフターなんてない時代の話ですから、
ミッションへの負担はハンパではなく、メカニック泣かせだったという話です。 これを当時、関係者達は
「ホシノシフト」と呼んでいたらしく、とにかく、「レースディスタンスだけ持てばいい」という考えだから
こそできた「荒技」だったわけです。もちろん、グループAマシンのミッションはノンシンクロのドグミッション
ですので、素人がこんな真似をしたらシフトレバーに手を弾かれて痛い思いをするだけですよ(笑)。 しかし
星野氏が速かったのはこうしたテクニックがあったからこそで、この「ホシノシフト」は極端な話、現在のF1の
「シームレスシフト」を普通のマニュアルミッションでやっていたわけですから凄いと言わざるを得ませんね。
DCTよりはるかに速い変速をしていたのですから。さすが「日本一速い男」と呼ばれただけのことはありますね。

↑このグループA R32GT-Rの「片輪コーナリング」もアンダーの強いグループA GT-Rをいかに速く走らせるか
ということから星野氏が生み出した走法です。アテーサE-TSの4WDシステムを最大限活かしたGT-Rならでは
の走法ですね。 客観的に見てもこうした見た目の「迫力」も手伝って本当に当時のGr.AのR32GT-Rはとても
速く、そしてカッコよかったものです。 だから私は今でもGT-RはBNR32がいちばん好きです。
※お詫び
一部、本文中にアホとかバカなど不適切な表現があったことをお詫びいたします。 が、これは私の本心ですので
訂正するつもりはありませんので悪しからず。