パワーメーターiDのセットとシャシダイ等の馬力表示について
なかなか適正値を探るのは難しいのですが
●当サイト内で参考にと頻繁に使用しているBLITZのパワーメーターiDですが、まずはその
基本設定についてあらためて書きたいと思います。

↑私の普段のパワーメーターiDの初期設定です。
以下にその設定理由を書きます。
1)WEIGHT …990kg
まずJA22W(MT)のエアコンつきのカタログ車重は900kgです。
これにドライバーの体重、普段積んでいる工具類など積載物の重量、追加パーツや変更パーツ
による重量増加ぶんを見込んで約90kgとしております。
実際には90kg以上の増加となっていると思われますが、あえて軽めの数値に留めているのは、
仮に実際の重量よりも多く設定してしまうと、同じ加速時間でより重い物体を加速させたこと
になるわけですので、本来のパワーよりもより過大表示されてしまうからです。
※ちなみに4輪車のカタログに掲載される「車両重量」とはガソリン、オイル、スペアタイヤ、
冷却水などを含めた重量です。 バイクのカタログによくある「乾燥重量」とは異なります。
2)2WD/4WD …2WD
これはジムニーはパートタイム4WDですので、通常はフロントへの駆動はトランスファーの
段階でカットしていますので当然2WDと設定します。
3)POWER LOSS …+1
これがいちばん頭を悩ます設定だと思います。 私もかなり試行錯誤しました。
ジムニーは駆動系のシステムが複雑で、普通のFF乗用車などに比べるとかなり駆動ロスも大きく、
また、空気抵抗についても旧型ジムニーは全面が平面ガラス構成で突起物も多く、しかもシャーシ
裏が凸凹だらけという空力的には最悪な条件の車なので、一般的なミニバンなどよりもかなり空気
抵抗係数(Cd値)が悪いので、この2点を考えてもかなりロス値は大きい車となっています。
ですので本来の設定は+3〜+5あたりの数値を入れるべきなのでしょうが、実際に何度も設定を
変えて試してはみたのですが、実際は+0でも+5でもほとんど馬力数値の結果はオーバーラップ
してしまうことが多く、何故かあまりハッキリとした差が出なかったというのが結論です。
ですのでこれは設定を車体の形状や前面投影面積がいちばん近いと思われるワゴンRなどと同等の
数値の+1程度に設定して、あとは絶対値ではなく毎回の比較値として見ることにしています。
●実際はどのくらいのパワーなのかについて
当サイトで何かパーツを換えたり、どこか変更を加えるごとにいちおう全開走行をしてパワーの
変化をパワーメーターで比較していますが、私のジムニーもタービン交換直後は110PS台が多
かったですが、その後いろいろな改造の積み重ねで少しづつパワーアップしてきており、最近の
数値ではだいたい130PSから140PSあたりを表示することが多くなりました。
もちろん実際の絶対数値はこんなに出ているわけありませんので、あくまでも「変更を加えたとき
の相対変化を見る」ことが目的であり、絶対値についてはあまり気にしないようにしています。
とはいえ、やはり実際の馬力はどのくらいなのかということは気になります。 その車のクラスや
駆動方式などによって差はありますが、このパワーメーターiDの場合、軽自動車クラスの場合で
すと表示の15%〜25%マイナスした値くらいが実際の馬力の近似値ではないかと考えています。
つまり、あくまでも推測ですが、私の車の場合でも最低100PSはクリアーしていると思いますが、
上は110PS、気温等の条件が良い場合でも120PSあたりがいいところではないでしょうか。
インジェクターの容量やターボのサイズから考えてもそれ以上は理論的に無理でしょうから。
結局、何度も書いていますがこのメーターは絶対値ではなく同じ設定での相対値を見ることが重要
で、セッティングやチューニングの変更を簡易的に数値で確認できるということが一番の「面白さ」
だと思いますので、結果が正しいかどうかよりもうまく使って楽しめればそれがいちばんではないか
と思います。

↑これはお遊びで高速の若干の下り勾配になっているところで全開してみた時の数値。 下り坂に
よる加速が位置エネルギーとして加わるので、162馬力ととんでもない数値になっています。
いずれにしても、パワーメーターの計測数値は気温はもちろん追い風、向い風、さらに厳密に言えば
湿度などでもその時々でパワーの数値は影響を受けます。 ですので、条件をできるだけ合わせても
5馬力や10馬力程度は誤差の範囲として受け取らないとなりません。
●馬力表示について
現在はkw表示となっていますが、私はやはりエンジンの出力はPSあるいはHP表示のほうがしっくり
くるので今後もその方針でいくつもりです。
で、馬力表示には大きく別けてJIS(ISOと同じ)、DIN(ドイツ表示)、SAE(米表示)の3種類が
あります。 基本的に大差はないのですが、いちおう基準大気状態は以下のような違いがあります。
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これで見ると、たとえば同じ車(エンジン)をダイナモにかけて出た数値に上記基準にあわせるため
に補正をかけた場合、馬力は気温が低いほど、また、気圧が高いほうが数値が上がりますので、JISや
SAEに比べるとDINのほうがやや高い数値になることがわかります。
なお、実際はこの条件に換算するために補正式というのがあるのですが、DINは1種類のみで単純なの
ですがJIS(ISO)やSAEはNA、ターボ、スーパーチャージャー、ディーゼルとエンジンごとに細かく
規定されていて複雑になっています。
なお、馬力単位には「PS」と「HP」がありますが、これも一般的な比較ではほとんど同じと考えて問題
はないのですが、基本的には1HP=1.015PSとなります。 つまり、厳密に言うと同じ馬力数値ならば
HP表示のほうが若干小さい数字になります。 たとえば軽の64PSは約63HPになります。
いずれにしても馬力というのは仕事量ですので、トルク等のように単純な力のモーメントとして測ること
はできませんし、ましてや長さや重量のように基準に対して比較測定できるものでもありません。
ですので、このように「できるだけ条件を揃えて」なおかつ数回にわたり試験してみて平均値、近似値を
出すしかないのです。
ですので、厳密に言うと馬力というのは「測定」ではなく、あくまで「試験」として扱うべきものです。
●ネット表示とシャシダイ数値の比較について
よくシャーシダイナモによって出された数値とカタログNET値との差を比べて「このエンジンはカタログ
値よりもパワーが出ている、出ていない」という話をしますが、カタログのいわゆるNET値とシャシダイ
の測定方法は同じではありません。
カタログの計測値はあくまでもエンジン単体に加え補機類の負荷を加えたエンジンベンチ上のものです。
対してシャシダイの測定方法はご存知のように最終的に駆動輪から出た出力を基に測りますので、当然
駆動系の損失が加わります。 この駆動系の損失は最終的には「ロス馬力」(損失馬力)として計測馬力
に加算されます。
ただ、このロス馬力というのはあくまでもローラー側から回された抵抗ですので、実際の駆動抵抗よりも
大きなロスとして計測される傾向があります。
これは最終減速比の関係で、たとえばFR車のデフギアを手で回すとき、プロペラシャフト側から回すより
もドライブシャフト側から回すほうがはるかに重いということでわかると思います。
また、ローラー自身の慣性質量も誤差を生む要因ともなっており、さらに、タイヤとローラーの間での
スリップロスも少なからずありますので、これも測定ロスとなります。 さらに言えば、測定者がトップ
エンドまで回したあとにアクセルを戻すタイミングやクラッチを切るタイミングの微妙なずれでもロス馬力
に誤差が生じます。
これらの損失(ロス)や誤差があることから、個体差や測定時の補正等の諸条件を差し引いても多くの
場合はカタログのNET値よりもシャシダイ数値のほうが馬力は低くなることが一般的なのです。
また、車軸式のいわゆるダイナパック(ダイノパック)の場合は負荷のかけ方などがローラー式とはまた
異なりますので、測定結果の見方も違ってきます。
とくに車軸式は前述した「ロス馬力」即ち、駆動系の抵抗値が計測できないのが欠点で、計測数値はその
ぶんが差し引かれた数値しか出せません。

↑ローラー式シャシーダイナモのパワーチェックグラフの模式図です。
図の「駆動輪馬力」が本来のタイヤから出力される馬力、「ロス馬力」がミッションやデフ等駆動系の
機械損失となります。 この2つを足したものが「エンジン出力」となるわけです。
ダイノパック等の車軸式はこの「ロス馬力」が出せないため、そのぶん数値が低くなるわけです。
それで、このローラー式の数値に換算するために擬似的に1.1とか1.2という係数をかけて「帳尻合わせ」
をして比較しているのです。
逆に言うと、ローラー式のロス馬力を加算しない数値が車軸式の計測数値とほぼイコール条件になります。
早い話「ローラー式はエンジン出力を」「車軸式は駆動輪出力を」測っていると考えるとよいでしょう。
上記のように、車軸式はロス馬力がないぶんローラー式よりもさらに低めに出るのが当然なので、カタログ
NET値との差はさらに大きくなります(一般的に車軸式で出た数値をローラー式に置き換えて換算するときは
ロス馬力ぶんを考慮して1.1倍〜1.2倍にすることが多いようですが、駆動形式等によって駆動系の抵抗は異
なるため、厳密には車種ごとにこの係数は変えて計算しないと正しい比較値は出ません。 ですのでこの
車軸式で出た数値をローラー式に換算する1.1〜1.2という係数は実際はかなりいい加減なものなのです)。
よく「ダイノパックはBOSCHのローラー式等よりも辛い数値しか出ない」と言われますが、甘い辛いの問題
ではなく、ただ単にダイノパックはこのロス馬力が出せないぶん低い数値になるだけのことです。
これらの理由から考えますと個人的にはダイノパック等の車軸式の場合、不確定な係数をかけて「ローラー式
換算で…」などとやるよりも素直に「駆動輪出力どうしの比較」のほうがむしろ良いのではないかと思います。
つまり、比較するときに車軸式はそのままの数値を、ローラー式はロス馬力を加えない数値を比較すればいい
だけのことです。 そのほうが「駆動輪から実際に出ている馬力の比較」ができますので。
(ただし、これをやるとカタログ値から大きくかけ離れた低い数値になってしまうため、ユーザーもチューナー
もがっかりしてあまり面白くないでしょうけどね)
以上のようにカタログ値とシャシダイでは条件が異なりますので、もし自分の車をシャーシーダイナモに
かけてカタログ値よりも低かったからといって悲観することはありません。
例として書きますと、カタログ値馬力を「100」として比較した場合、おおよその目安でしかありませんが
ローラー式シャシダイで「85〜100」、車軸式シャシダイで「70〜85」あたりが出ていればいちおう
そのエンジンは合格点(アタリとまでは言わなくてもハズレではないという意味)と見て良いと思います。
なお、上記で「カタログNET値よりもシャシダイ数値のほうが馬力は低くなるのが一般的です」と書き
ましたが、現実には(とくにローラー式シャシダイにおいて)ターボエンジン車ではカタログ値よりも
高く出ることが当たり前のようにあります。 とくに280馬力規制時代の280PS車や軽自動車の64PS
ターボ車ではその傾向が顕著です。
これはあくまでも「カタログ表示上の数値を280馬力、あるいは64馬力で統一しよう」というだけの
ものであったため、実際にはそれを上回る馬力が出ている個体がほとんどなためです。
たとえばカタログ上280馬力表記の車が実際には320馬力以上出ていたり、64馬力表記の軽ターボが
70馬力以上出ていたりというのはいわば当たり前なわけです。
逆に、NA車では一般的にはカタログ値に届かないことがほとんどですが、もしシャーシーダイナモで出た
数値がカタログ値と同じかそれ以上に出ていた場合は「立派」としか言い様がないでしょう。

●なお、このパワーメーターiDですが、とくに不都合はないのですが、唯一気になる点として、
たまに何もしていないのに設定がリセットされてしまうことがあります。
当初は接触不良か何かで電源が切れてリセットされるのかと思っていましたが、このメモリーは
電源がカットされても保持されるものでしたので、この現象の根本原因はいまだにわかりません。
もしかしたら外部ノイズか何かの影響かもしれませんが。