エアリストリクターとサクションパイプの吸気抵抗によるエンジン性能への影響
この部分はターボエンジンのパワーやレスポンスに大きな影響を与えます
●以前に私のJA22ジムニーのK6Aエンジンに使用しているハイフローSPL HT07ターボチャージャー
のコンプレッサーのインデュース径(吸入部径)と通常のHT07-4Aターボチャージャーのインデュース
径の差について検証したことがあり、そこでいかに私のSPL HT07ターボチャージャーが通常のHT07-4A
および、スズキスポーツのK10用N2タービンに比べて大きいものであるかという比較記事を書きました。

<関連記事> →私の使用している日立SPL HT07ターボチャージャーについて
今回はこの「ターボコンプレッサーのインデュース径」に注目していろいろな例を挙げながら書いてみたい
と思います。 とくにレースやラリー競技においてこの部分の径を絞ることはエアリストリクターとして
パワーを制限するのにもっともポピュラーな手法のレギュレーションとなっていますので、逆に言えばここ
の径が大きいほどパワーを出しやすいとも言えるわけです。
それと同時に今回は重要な要素であるここに接続される「サクションパイプの内径の重要性」についても
実例を挙げながら徹底的に考察したいと思います。
●基本的にはインデュース径が大きい方がパワー、トルクともに有利である
これは極めて単純で、私が以前に書いたようにターボエンジンはサクション抵抗を徹底的に減らすべき
であるという理屈で、当然ながらターボコンプレッサーの空気の入り口であるインデュース径も大きい
に越したことはありません。 ここの径が大きいほど大気中から多くの空気(酸素)を抵抗なく吸い込
めるわけですから、同じターボサイズならそれだけパワーが引き出せるという至極簡単な理屈です。
<関連記事> →ターボエンジンはサクション抵抗を徹底的に低減すべき
●ターボコンプレッサーにつながるサクションパイプの徹底的な高効率化を図る

これも今までに何度も書いていますが、今だに重要視していない人が多いようなので、しつこいようです
が、また書きます。 K6A、F6AでHT07-4ラージサイズのタービンを使用するなら純正サクションパイプ
の「内径拡大加工は必須です」。これをやらずしてHT07ターボチャージャーの持つ本来の性能(ブースト
の立ち上がり、レスポンス、パワー)を引き出すことはできません。私から言わせれば、この加工をしない
でHT07タービンの評価をしないでいただきたいですね。

↑K6A、F6Aともに純正サクションパイプの内径のいちばん細い部分はφ31mm程度しかありません。
しかしHT07-4Aクラスのターボコンプレッサーのインデュース径はφ36mmもあります。 つまり、
純正サクションパイプをそのままつけたのではそこで穴径が絞られてしまい、まさにエアリストリクター
(吸気制限装置)となってしまい、大きな吸気抵抗になってしまうのです。これでは最高出力はもちろん、
低回転からのブースト圧の立ち上がりが遅くなり(いわゆるターボラグが大きくなる)、アクセル操作に
対するレスポンスも悪化しエンジン性能に大きな犠牲を出してしまうのです。
ですので、この純正サクションパイプの内径をそのままにしたままで、上流のサクションパイプだけ太く
したってほとんど効果は望めません。肝心なのはこのターボ直前のサクションパイプの内径を太くし、
内壁も滑らかにし、インデュース部の吸気抵抗をいかに減らすかということなのです。

↑ですので、このように純正サクションパイプの内径を肉が破れる直前ギリギリまで拡大し、徹底的に
吸気抵抗の削減に努めるのです。これは「絶大な効果を体感できます」。 私自身、この拡大加工をして
乗ってみてその「激変ぶり」に驚いたくらいですから。 全開時のパワーだけでなく、普段の街乗りでの
低速域でのトルク、レスポンスが大幅に改善され非常に乗りやすくなりましたので。 この加工に比べたら
上流のサクションパイプだけを社外の太いものに替えたくらいでは子供騙しのプラシーボ程度の微々たる
効果しか得られません。
●ベースにするならEA21Rカプチーノ用の純正サクションパイプが最適!

↑左がEA21R純正サクション、右がEA11R純正サクション。見てのようにEA21R用のほうがカーブが緩やか
で入り口の径も太く吸気抵抗が少ないため、どうせ使うのならEA21R用のサクションパイプをお勧めします。
もちろん私もEA21R用を加工して使用しています。

↑EA21Rの純正サクションパイプは入り口径も約φ45mmあり十分な太さがあります。これを入口側、出口側
両側の穴からリューターで内径を削り拡大して、内部全長に渡って切削加工します。かなり大変な作業ですが、
それだけの労力に見合うだけの絶大な効果が得られますので、根気を入れて作業します。 さらに私はその隣に
あるブローオフバルブのリターン用の穴にもエアクリーナーからエアを導入し、実質的な空気供給量を増加させ
るよう工夫しています。これにより最も細い部分の断面積でも実質φ41に相当する開口面積を確保しています。
<参考までに> R35 GT-Rも前期より後期のサクションパイプが太くされています

↑日産R35 GT-Rの純正サクションパイプ。 左が後期型で内径φ50.5mm、右は前期型で内径φ45mm。
これを見てもやはりパワーのためにはサクションパイプは太くあるべきというのがよくわかります。これは
まさにメーカー純正チューニングですね。

↑これもR35GT-Rのサクションパイプの内径比較。左から純正前期(φ45)、中央が純正後期(φ50.5)、
右が社外品のHKS製(φ53)。やはりチューニングパーツメーカーもここの径には注目していたようです。
それだけサクションパイプの内径拡大が吸気抵抗低減にとって重要だということの証明でもありますね。
そういう意味では今だにこの「大径サクションパイプ」がどこからも製品化されていないF6A/K6Aエンジン
のチューニングは遅れていると言えますね。 こういうところに軽自動車、とくにジムニー系のチューニング
ショップのレベルの低さを感じます。 私はすでに12年も前にこの純正サクションパイプの大径化加工による
チューニングに着目、それもただいたずらに拡大しているのではなく、サクションパイプ内の吸引負圧まで計測
したうえで、この拡大加工を実践していたのですからね。
●上流の社外サクションパイプも「外観だけにとらわれてはダメ!肝心なのは内部の仕上がりです!」

↑これはとあるメーカーのジムニー用社外サクションパイプですが、一見、太くて効率が良さそうで溶接加工
やバフ磨きの仕上がりも綺麗に見えますが、見た目に騙されてはいけません。問題は中身にあるのです。

↑上記サクションパイプの中身。無意味に抵抗を生じさせるだけのフィンも無駄なことながら、曲がり部分の
輪切り熔接のビードの凸部がさらに大きな吸気抵抗になります。 吸気も排気もパイプの曲がり部分はただで
さえ大きな抵抗になるのに、このような凸凹が壁面にあっては空気の流れが乱れて吸気抵抗が大きくなるだけ
でとても吸気効率のアップなんて望めません。ほんとこの製品は外観が綺麗なだけで肝心な内部は最悪ですね。
ですので私はこの製品「スクリュー内蔵サクションパイプ」はとてもお勧めできません。
せっかく性能向上を目的にサクションパイプを社外品に換えるのなら、こんな外観だけのお粗末な製品ではなく
「内側の滑らかな仕上がり」を重視した「本当に良い製品」を選びましょう。
<補足説明>
私は過去の記事でこのサクションパイプのメーカーの他の製品を褒めたことがありました。ですので今回の記述
を見て「同じメーカーの物を褒めたりdisったりしてまるでダブルスタンダードじゃないか」と疑問に思う人も
多いかと思います。 しかしこれは私の製品評価のポリシーとして「ブランドやメーカーイメージで物を見ず、
個々の製品を見て物を評価する」という姿勢の表れです。 つまり、自分の好きなメーカーの製品だからといって
贔屓目で評価するようなことはせず「良いものは良い、悪いものは悪い」とバッサリ評価しているのです。
もちろん、良いものにはなぜ良いのかの理由を、悪いものにはなぜ悪いのかの理由をきちんと説明したうえでの
評価ですので、このような悪い評価であっても稚拙な誹謗中傷やネガティブキャンペーンとはわけが違います。
「何が重要なのかを考える」これこそが「モノの本質を見極める基本」だと私は考えているのです。
●それでは本題に戻ってコンプレッサーインデュース径のお話し
これだけエンジン性能、とくに最高出力に大きな影響を与えるインデュース径ですから、各種レースやラリー
などではここの直径に制限を設けて吸気量制限装置、いわゆるエアリストリクターの装着を義務付けている
ことが多いです。

↑これはエアリストリクターの一例。グループNの規定に合わせてφ32mmまで内径を絞ってあります。
これにより理論上は最高出力は260PS程度までに抑え込まれます。 ちなみにグループAのラリーカーでは
φ34mmとなっていて、これで最高出力約300PSになっていますが、FIAでは今後このリストリクター径を
φ36mmまで拡大し、最高出力を380PSあたりまで引き上げる計画のようです。
ちなみに、現行のWRマシンではこのリストリクターによって最高出力が抑えられているため、そのぶんを
低回転寄りのカムとハイブースト、ECUセッティングで最大トルクに重点を置いて、1.6リッターという少ない
排気量から実に40kg-m近い大トルクを引き出しています。

↑これはHKSのスーパーチャージャーのリストリクター径の違いによるパワーおよびトルクの違いを表した
グラフ。φ30からφ34まで試していますが、明らかに径が大きいほうがパワーで有利なのがよくわかります。
やはりインデュース径は大きいほうが馬力が出るという証拠です。
●<余談ですが> あまりに有名なWRCトヨタのリストリクター「レギュレーション違反」
これはいまさら書くことでもないと思いますが、1995年、トヨタはWRCのグループAセリカGT-FOURで重大
なレギュレーション違反を犯しました。これは過失ではなく、「故意にチームぐるみでおこなった違反行為」
です。

↑これがその「巧みなレギュレーション違反ギミック」です。 要するに、本来空気を通過させるφ34mmの
リストリクターの外周部からも空気を取り入れられる構造にして、およそ50PSのアドバンテージを稼いでいた
のです。 明らかに他に比べてセリカの直線でのスピードが速いことにFIAが疑念を抱き、ターボチャージャー
を徴収して徹底調査した結果、この一見しただけではバレない巧妙なレギュレーション違反が判明したのです。
図の中心線より上半分の絵が適正状態、下半分の絵が違反状態を示しています。
この違反によりトヨタはその年のすべてのポイント剥奪と翌年のWRC出場停止処分を受けました。 ただですね、
トヨタを擁護するわけではないのですが、この時期、他のチームも構造は違えど似たり寄ったりの「レギュ違反」
をやっていたと言われていて、たまたまその見せしめに日本メーカーであるトヨタが槍玉に挙げられたというの
がもっぱらの噂です。
●あらためて考えると私のSPL HT07タービンのインデュース径の大きさに驚きます
上記のWRCをはじめとするラリーマシンのリストリクター径から出せるパワーを考えると、私のSPL HT07ターボ
のインデュース径サイズはかなりのパワーパフォーマンスを秘めていると言えそうです。 なにせ、φ32で260PS、
φ34で300PSまで出せるわけですから、インデュース径がφ36もある私のターボチャージャーはWRCマシンよりも
多くの空気を吸い込むポテンシャルがあるわけです。 ですので、チューニング次第ではまだまだパワーアップの
余地はあると言っていいと思います。 だからと言って200PSも300PSも出せるキャパシティーがHT07タービン
にあるわけではありませんよ(笑)

↑もちろん、ターボチャージャーにとってインデュース径がすべてではありませんが、これまで挙げた例のように
この部分の径によって出せるパワーは大きく変わってくる非常に重要な要素のひとつとなっていることには間違い
ありません。 なので、前述したサクションパイプと併せて、ターボコンプレッサーへの空気の吸入抵抗は徹底的
に低減する努力をする必要があるのです。
●ターボコンプレッサーの「S加工」について
これはレイアウト上できるタービンとできないタービンがありますが、インデュース部の入り口を可能な限り
大きなアールで加工する通称「S加工」というのがあります。

↑このようにコンプレッサー入り口からインデュース径にかけてカールファンネル状にR加工をするのがS加工です。
実際、これの効果もかなり大きく、とくにブーストの立ち上がりからフルブーストに至るまで大幅に吸入効率が
アップします。 要するにこれはコンプレッサーの入り口にエアファンネルを装着したようなものですから。
●最後にもういちどサクション系のチューニングの重要性について

↑サクションパイプは手前の太いパイプばかりに目が行きがちですが、もっとも重要なのはいちばん奥のターボ
に直接つくサクションパイプなのです。ここの抵抗を最小限にしてやることでターボチャージャーの性能を100%
引き出す努力をすることが肝要なのです。なにかとチューニングパーツは目につきやすいパーツ、手をつけやすい
パーツばかりにとらわれがちですが、本当に性能アップに重要な肝となるパーツは案外目につきにくい場所にある
ものです。 派手で目立つ部分のパーツばかりに目をとらわれず、エンジンチューニングを理論的、科学的に考え、
着目点を間違えないようにしましょう。

↑結局、どんなに高性能なターボチャージャーでもその秘めたポテンシャルをどれだけ発揮させてあげることが
できるかどうかはこうした地道なチューニングの積み重ねなのです。「宝の持ち腐れ」にならないようにする
ことが重要なのです。