私のJA22ジムニーの最高速度と必要馬力の関係を机上計算してみた
BLITZのパワーメーターの馬力数値がアテにならない領域になって久しいので

●私のJA22WのK6Aエンジンの馬力は、だいたい140PSあたりまではブリッツのパワーメーターi-D
でもおおよそ信用できる数値を示してくれていました。 ですが、最近はよりパワーアップしてきて
ホイールスピンの影響もあって平気で200PSオーバーを示すようになり、まったく信用できなくなって
きました。

↑最近はこのように250馬力を超えるような「絶対ありえない数字」をピークホールド表示するように
なりました。 まあ、それだけエンジンパワーが上がっている証拠なのでそれはそれで嬉しいのですが、
やはり「実際はどのくらい出ているのだろう?」というのが知りたいというのが人情と言うものです。
●だからと言ってシャーシーダイナモはリスクが高いので避けたい
もちろん、それを知るいちばん手っ取り早い手段はシャーシダイナモに載せることですが、私の車の今の
「中途半端なセッティング状態」ではシャシダイ上での全開はエンジン壊しそうで恐い(シャシダイは
実走行より軽い負荷でなおかつ冷却風も充分でない状態で全開するため、オーバーヒートを起こして
ノッキングによりエンジンブローするリスクが高く、実際私も今までにシャシダイでエンジンブローした
車を何台か見ているので私の車の現状ではまだシャシダイにかける自信はないのです)ので、今回は
「机上の理論計算」からだいたいの数値を出してみて、現在のエンジンチューニングレベルの確認と、
今後のチューニング方針に活かそうと試みたいと思います。

●最高速度と必要馬力を計算するやり方
はじめに断っておきますが、実際にはかなり厳密な各種要素や係数などが必要なのですが、今回は
おおよその値が出ればいいので、必要最低限のパラメーターだけで計算をしてみます。
なお、断っておきますが、車の走行抵抗というのは時速80km/hを超えると大部分が空気抵抗となり、
160km/h以上になると実にその90%以上が空気抵抗となりますので、高速域での馬力計算は主に
空気抵抗の計算であると言っても過言ではありません。 その他のメカニカルロス、転がり抵抗など
は取るに足らない程度です。
さらに空気抵抗は速度の二乗倍に増加していきますから、たとえば同じ10km/hトップスピードを
上げるのでも高い速度域になればなるほど必要な馬力も加速度的に増加していく点に注目して下さい。
たとえば、100km/hから110km/hにスピードを上げるのに10PSアップが必要だと仮定した場合、
その倍の200km/hから210km/hにスピードを上げるにはその4倍の40PSアップが必要になるのです。

●速度と馬力の関係を求める計算に必要な最低限の要素
1)前面投影面積
JA22ジムニーのタテヨコの寸法は全高1680mmX全幅1395mmです。 これで単純に面積を計算
すると2.3436m^2ですが、ロードクリアランス分や、側面の傾斜分、ルーフ両端のアール部分など
を差し引いて、おおよそ90%とすると「2.11m^2」と仮定できますので、とりあえずこれを定数と
しておきます。
2)空気抵抗係数(cd値)
これが非常に難しいところ。 メーカーがcd値を発表している車であればその値をそのまま用いれば
いいのですが、旧型ジムニーのcd値なんて聞いたことがありません。 ですので、これも推測ですが
おおよそ「0.6」と仮定して定数としたいと思います。 ちなみに、現行のJB23ジムニーは当然ながら
旧型ジムニーより優れたcd値なはずですので、おそらく0.4〜0.5の間だと思います。
参考までに、空力の良いプリウスは0.25と優秀ですし、現行R35 GT-Rも0.27と優秀、私が昔乗って
いたR32 GT-Rが0.38くらい、レーシングカーであるF1マシンはオープンホイールと大きなウイング
によるダウンフォースで空気抵抗係数がとても大きく0.7以上にもなります。
3)大気密度(空気密度)
これも厳密には補正算出する必要があるのですが、面倒なので気温20度、湿度50%、気圧1バールと
して「1.2」の定数とします。 ほんとのところ、この空気密度がけっこう影響するんですけどね。
4)対気速度(相対速度)
これは単純に車速です。 が、当然、風向、風力が影響しますのでその分を足し引きする必要があるの
ですが、これも「無風」として単純に車速をそのまま用います。 ただし、単位はkm/hではなくm/s
に換算します。
以上の4項目がわかっていれば、計算自体は簡単なものです。

↑純粋にcd値(空気抵抗係数)を小さくしたければ、ボンネット上の大型エアスクープやサイドの
エアインテーク、さらにボンネット前端のフードトップモールは無いほうが空気抵抗が減ってcd値
は向上するはずです。が、その反面冷却性能で問題が出るので、そのバランスが難しいところです。
●それでは、実際の計算方法です
小難しい理屈は抜きにして簡単に計算の手順だけを書きます(ただし、あくまで我流のやり方です)。
(cd値 X 前面投影面積(m^2) X 大気密度(1.2) X 車速^2(m/s)) X 0.5 = (A)
((A) X 車速(m/s)) ÷ 735(WをPSに変換する為) = その車速に必要な馬力(PS)
以上のようになります。
計算例)JA22ジムニーで140km/hで走るために必要な馬力は?
まず140km/hをm/sに換算するため140000 ÷ 3600 = 38.9(m/s)の数値を出しておきます。
そのうえで上記の式に各数値をあてはめて以下のように計算をします。
(0.6 X 2.11 X 1.2 X 38.9^2) X 0.5 = 1149.4
(1149.4 X 38.9) ÷ 735 = 60.83(PS) ≒ 61PS
以上のようになります。つまり、JA22で140km/h出すためには約61PSあれば充分というわけです。
ちなみに、この計算方法でK6Aエンジンのカタログスペック馬力である64PSでJA22が出せる最高速度
は約142.5km/hとなります。 実際には旧規格のK6Aターボエンジンはノーマルでも70馬力以上は出て
いるでしょうから速度リミッターさえ無ければ150km/h近くは出ると思います。 なかなか辻褄が合う
現実的な計算だとは思いませんか?
●それでは、上記計算で求めたJA22ジムニーの馬力と最高速の関係を書きます
140km/h = 60.8PS (5速での到達回転数5500rpm)
150km/h = 74.8PS (5速での到達回転数5900rpm)
160km/h = 90.7PS (5速での到達回転数6300rpm)
170km/h = 109.0PS (5速での到達回転数6700rpm)
180km/h = 129.2PS (5速での到達回転数7100rpm)
190km/h = 151.9PS (5速での到達回転数7500rpm)
200km/h = 177.2PS (5速での到達回転数7850rpm)
210km/h = 205.1PS (5速での到達回転数8250rpm)
220km/h = 235.9PS (5速での到達回転数8650rpm)
注)到達回転数はタイヤサイズ185/85-16(外径722mm)での計算数値
…と、まあこんな感じになります。 この計算結果から推測するに、私のJA22のK6Aエンジンは
標準ブースト圧1.3kg/cm^2で、向い風などの悪条件の時で180km/h程度、好条件の時なら200km/h
を僅かにオーバーしますから、最低でも140PS〜150PS程度は出ているのではないかと考えられます
(燃料計算上でも燃圧2.7kg/cm^2の時で約165PSとなりますので)。 もちろんこれは単にスピード
メーターのピークホールドだけをアテにするのではなく、タコメーターの数値とタイヤ外径の計算も
含めての速度からの数字です。 もちろん「実測」では当然もっと落ちるでしょうが、記録会じゃない
のですからあまり厳密にこだわる必要もないでしょう。 実際、たとえばシャーシーダイナモなどでの
パワーチェックだって1回1回計測するごとにバラついた数値になるわけですから、どこまで信用できる
のか怪しいものです。 とくに車軸式のダイナパック(ダイノパック)ではなく、ローラー式シャシダイ
の数値はバラつきが大きくあまりアテになりません。 つまり、自動車メーカーがエンジン開発で使う
ような完璧な計測環境を再現できるエンジンダイナモ室でおこなうエンジンテストベンチでもなければ
けっこう大きな誤差が出るのは避けられないものなのです。 なので、一般的には神経質に気にしても
仕方ないわけですから、多少「ハッピーメーター」くらいのほうがオーナーの気持ちとしては嬉しくて
いいんじゃないですかね(笑)

↑今までの最高記録はブースト1.7kg/cm^2のときに出した214km/hです。 このときは5速8300rpm
ほどまで回っていました。逆に通常のブースト圧(1.3〜1.5kg/cm^2)では「好条件が揃ったときで」
やっと200km/hに届くのが精一杯です。 これがJB23ならJA22よりcd値が小さく空力的にも有利
なのであと10km/h程度は伸びるでしょうね。JA型ジムニーのボディ形状は空気抵抗が大きすぎて最高速
はどうしても不利なのです。つまり、悔しいところですが「同じエンジンパワーで同じギアレシオならば
最高速ではJA22はJB23にはかなわない」ということになります。
<参考> →ブースト圧1.7kg/cm^2での最高速アタック、ついに200km/hオーバーを達成!
<参考> →ブースト圧1.3kg/cm^2のままでの200km/hオーバーへの挑戦!
●ただし、もうひとつ注目しなければならないのはその時の「エンジン回転数」
これはどういうことかというと、通常、エンジンのパワーカーブはある回転数でピークに達し(これを
専門的には「最高回転数」と呼ぶ)、そこから上ではトルクが下がるので、当然パワーも落ちていきます。
つまり、目標とする最高速度の回転数で上記の馬力が出ていないと意味がないわけです。 たとえば上記
計算で190km/hを出すためには約152PS必要なわけですが、このパワーを約7500rpmで出さなければ
意味ないわけです(タイヤサイズ185/85-16の場合)。それ以下の場合は最高出力発生回転数を目標とする
最高速度に合わせる(近付ける)チューニングをしなければなりません。
具体的にはそのためには方法は2つ。1つはカムのプロファイルをよりハイカムにするなどしてパワーの
ピーク回転数を上にもっていくこと。 上記の例で言えば、例えばもともとが152PS/6500rpmだとしたら
152PS/7500rpmになるようチューニングしなければならないということです。 もう1つはギアレシオや
タイヤ外径をハイギアードな方向に変更して、エンジンパワーのピークポイントをできるだけ目標スピード
に近づけるというやり方もあります。 たとえば、5速ギアレシオのみハイギアード化(JA22はこれが可能)
あるいはファイナルギアレシオのハイギアード化、あとは一番簡単なのは外径の大きいタイヤにすることです。

●まとめ
「パワーは麻薬」「スピードは麻薬」とよく言われますが、本当に人間の欲というのは尽きないもので、
「さらに上へ、上へ」と際限がなくなってしまいます。そうなるとお金と命がいくらあっても足りません。
ですので、私も現在の馬力とスピードで「いちおうは満足」しているつもりです。 もちろんモアパワー
でもっと馬力を上げることはできますが、エンジンの耐久性(寿命)との兼ね合いも考えるとこのへんで
止めておかないとノーマルの2倍以上にもハイパワーにチューンナップした軽自動車のエンジンはすぐに
くたびれるので「おいしい期間」が長くは持ちませんからね。 自制心を持ち、ほどほどにしておくこと
が重要なのです。
<参考> →軽自動車エンジンチューニングについて私なりのアドバイス
●2014年最終形態の私のジムニーのエンジンルームの写真

↑エアクリーナーが今までのキノクニ(RUN-MAX)からHKSのスーパーパワーフローリローデッドに
変わっているのに気づかれるでしょうか? 実はこのパワーフローには中身にかなりの吸気効率アップ
のための細工を施してありまして、それは後日の更新記事にて詳細に解説しますのでご期待ください。
2015年のはじめはこのエアクリーナー(パワーフロー)関係をいろいろ試してみたいと考えています。
<補足1> 今回の計算はcd値と前面投影面積を変えることでもちろん他の車種にも適用できます
今回の「馬力と速度の計算式」は簡易なものですが、いろいろなケースを想定して計算すると面白いです。
皆さんもご自分の車に当てはめて計算してみてください。 要は「cd値」と「前面投影面積」さえわかれば
どの車にも適用できる計算ですので。とくにメーカーがcd値を公表している車種は計算精度がより高く出せ
ます。 前面投影面積については一般の乗用車であれば車のカタログスペックにある全高 X 全幅の80%から
90%あたりの面積が近似値になると思います。
<補足2> cd値〜空気抵抗係数について
上記計算式でもわかりますが、車の空気抵抗はこのcd値と前面投影面積の積算値となります。前面投影面積
についてはわかりやすいと思いますが、ことcd値となるとこれが難しい。cd値は車のシルエットももちろん
重要ですが、ほんとに細かい出っ張り、たとえばエアインテークとかウインドウモール、ドアハンドルや
ドアミラーなどの小さな突起物が大きな影響を与えるのです。 ですので、車体の全体の形状もさること
ながら、表面をできるだけ滑らかにする「フラッシュサーフェス」化がとても重要なのです。 だから旧型
ジムニーのようにただでさえ角張った平面構成で形状が空力的に不利なうえに、ドアヒンジやレインガーター、
ウインドウモールの段差等、表面の凸凹が多い車のcd値はとても悪くなってしまうのです。 逆に前述した
トヨタのプリウスのように徹底的にフラッシュサーフェス化を図って良くデザインされた車のcd値はとても
小さく優秀になります。 さらに逆に面白いところでは、たとえば昔のスーパーカーの代名詞とも言える
ランボルギーニ・カウンタックは一見、とても空気抵抗係数が優秀そうに見えますが、実はcd値は0.45以上も
あるのです。この理由は前述しましたように、ボディ形状全体のフォルムがいくら空力的に優れていても、
エアダクトやボディ表面の段差、凸凹などが多くcd値が悪化してしまうからなのです。 cd値というのは単純
な見た目だけではわからないものなのです。 あと、シャーシ裏の凸凹もcd値には大きく影響しますので、
ジムニーのような車はそういう意味でも不利になります。理想はいわゆる「フラットボトム」ですね。

↑JA型ジムニーは全面平ガラスに角張ったボディ形状と、ただでさえ空気の流れが悪い上に、車体表面の様々
な突起物、さらにはシャーシ裏側の凸凹によりcd値は「最悪」です。 まあ、もともと飛ばすような車では
ないので仕方ないのですが。
<補足3> 無視できないフェンダーストレーキの空力効果

↑このバンパー下両端につけているのはフェンダーストレイキ。 最近の新型車には当たり前のようについて
いますが、これはタイヤの回転により巻き起こる空気の乱流を抑えることでcd値低減の効果は非常に大きい
ものがあるのです。 さらにタイヤハウス内の気圧を下げることで揚力(CL値)を低減する効果もあります。
多くの車の場合、時速100km以上の速度域になるとその効果を体感できます。 私のジムニーでも速度が
上がれば上がるほど高速安定性の向上に貢献してくれます。 小さいパーツですがその効果は侮れません。
<参考> →フェンダーストレーキの製作