マフラーのサイレンサー位置、個数による性能や特性の違いについて
同じパイプ径のマフラーでもサイレンサーの位置、個数によって性能や特性は大きく変わってくるものです
●以前に私は社外マフラーのパイプ径およびパイプ長さがエンジンのパワー、トルク特性に与える影響
の違いについて書きました。
<参考> →マフラーの最適なパイプ径について
今回は、同じパイプ径でもサイレンサー(タイコ、消音器)の有無やその位置の違いでマフラーの性能に
違いが出る点をメインに総合的に「高性能なマフラーとは」について取りあげたいと思います。
世間一般ではマフラーのメインパイプ径が何φであるかはよく話題にされますが、サイレンサーの位置や
構造、個数によってのエンジンの特性、性能差、また、パイプの曲げによる排気抵抗についてはあまり
重要視されていないと言うか、ないがしろにされているような気がします。
しかし、同じメインパイプ径で同じストレート構造のサイレンサーでもサイレンサーの位置や個数、大きさ
によってマフラーの性格はかなり変わってくるのが現実で、サイレンサーはただついていればいいという
ものではないのです。 ですので、今回はこれらの要素の違いによってどういう変化の傾向があるかを
書いてみたいと思います。

なお、当サイトはJA22Wジムニーのページですので、あくまでも具体例として挙げるものはJA系ジムニー
の場合で書きます。 また、基本的にK6Aターボエンジン用のマフラーということで、サイレンサー構造は
基本的に「ターボエンジン用ストレート構造、パンチングパイプの吸音材型」を前提として話を進め
ますのでご了承ください。
<ジムニー用社外マフラーのサイレンサー位置、個数別のタイプ例>
●例1)完全フルストレート、サイレンサーレスのいわゆる直管型

これは基本的にストリートでは違法ですが、もっとも排圧が低く排気流速が速いため、パワーロス
がもっとも少ないので、純粋に馬力を出すことを追求したパワー性能面では理想的なものです。
「とにかくパワーを出したい!」のならばやはり「直管」に優るものはありません。ただし、当然
ながら音量は「爆音」となりますので、保安基準に適合しなくなる可能性が高いため街乗りでは
ただの「暴走族」と同じになるためこのタイプをストリートで使うのは現実的ではありません。
あくまでも音量規制のないクローズドコースやサーキット走行などのレース専用と考えてください。

↑直管型の例。ノーブランドのストレートマフラー。 テールにマフラーカッターがついているだけの
完全なストレートで消音器はまったくありません。 ですので正確にはこれを「マフラー」と呼んで
いいのか疑問ではありますが、とりあえずここでは便宜上マフラーとしておきます。
●例2)中間タイコ、中間サイレンサー型

これはジムニー用社外マフラーでは最も多いタイプだと思いますし、純正マフラーもこのタイプ(ただし
純正は内部がストレート構造ではなく隔壁構造ですが)です。 このタイプの特長は、消音性能と低排圧の
バランスが良く、太いパイプ径でも比較的音量を低く抑えることができることにあります。 ただし、
トルク、パワーを追求するといった純粋なエンジンの性能面では後述するテールエンドサイレンサー型
(いわゆる砲弾型)マフラーには劣ります。

↑中間タイコ型の排気の流れのイメージ。 中間タイコ型はパイプの途中で一旦、排気ガスが膨張するのです
が、そこから先でまた細いパイプにガスが押し込められるため、この部分でガスに乱流が生じ、排気流速が
落ち排圧が高くなって排気抵抗が大きくなってしまうため、どうしてもトルク、パワーを出すという面では
若干不利になる傾向があります。

↑中間タイコ型の例。SUXON RACINGマフラー。メインパイプ径50φ。
ジムニー用社外マフラーとしては音量も性能も平均的で無難な製品です。 私が使った経験では低速トルク
は明らかに落ちますが、高回転域ではまあまあ伸びるという感じです。 大幅にパワーアップするとかの期待
はしないほうがいいです。
●例3)テールエンドサイレンサー、いわゆる砲弾マフラー型

ハッキリ書くと、合法ストリートで使用するなら同じパイプ径ならこのタイプがもっともトルク、パワーに
有利です。 上記の中間タイコ型に比べ、パイプ途中で膨張することがないため、排気ガスの流速を速い
ままテールエンドまで維持できるため、慣性排気効果が高く、ブーストの立ち上がりも早くなるため低回転
から高回転まで全域で高いトルクとパワーを発揮できます。 性能重視なら迷うことなくこのタイプを選ぶ
べきです。 ただし、最大の欠点は音量が大きくなってしまうことです。
サイレンサー内部で膨張したガスが、減衰されることなくほぼそのまま大気中に放出されるため、どうしても
消音効果が劣ってしまうのです。 ですので、静音重視のユーザーにはちょっと不向きではあります。
しかし、エンジン性能を引き出す効果では圧倒的に有利で、実際、競技のレギュレーションで音量規制のある
レーシングカー(Super GT)やラリーカー(WRC)でもこのタイプのサイレンサーレイアウトを採用して
いるマシンが多いです。

↑砲弾型マフラーの例。MRS製マフラー。メインパイプ径50.8φ。
このマフラーは私が現在使用中ですが、ハッキリ言って素晴らしい性能です。テールエンドのディフューザー
効果と相まって低回転トルクから高回転パワーまでパーフェクトにアップします。 ただし音量は大きめなの
で夜間の住宅街を走るときにはかなり気を遣います。
●例4)ツインサイレンサーマフラー(中間+リアエンド)コンビネーション型

これは静かさ、消音性能に特化したマフラーです。 上記の中間タイコ型とテールエンドサイレンサー型を
組み合わせて、タンデムに複数のサイレンサーを装着し、エンジン性能を多少犠牲にしてでも、少しでも
音量を下げたい目的の製品に使われます。 2段階で排気ガスが膨張するため排圧が高くなりやすいので、
正直、トルク、パワーともに若干不利にはなりますが、生活環境上どうしても静かなマフラーでないと選択
できない人や、ガキっぽいうるさいマフラーなんて論外という人向けのタイプです。「大人のマフラー」を
求める方にはこのタイプでしょう。

↑ツインサイレンサー型の例。APIOマフラー「静香御前 舞」。メインパイプ径42.7φ。
名前通りほんとに静かなマフラーです。 ただし、このマフラーはパイプ径がやや細いため、ジムニーでは
ノーマルタービン向きですね。 社外のRHB31ターボやHT07ターボなどのビッグタービンに交換している
車には同じツインサイレンサーでもメインパイプ径が50φと太い「HKS ハイパワー409マフラー」のほうが
相性が良いと思います。 両製品ともに近接排気騒音は83dB程度ととても静かでジェントルなマフラーです。

↑これは私が以前使用していたサクソン改ツインサイレンサーマフラー。 サクソンマフラーのテールを
カットして汎用の内径60φパンチングパイプのストレート楕円タイコをテールエンドに追加していました。
これはAPIOの静香御前 舞よりもサイレントなマフラーでした。
以上、JA系ジムニーでは代表的な4タイプのサイレンサーレイアウトの社外マフラーの大雑把な特徴について
挙げてみました。
ちなみに、変わり種として私は過去にスーパートラップマフラーも試したことがありますが、その理論や原理と
実際の効果について詳しくは「こちらのページ」を見てください。

なお、たまに質問で見るのですが、JA11系とJA12/JA22系ジムニーのリアマフラーの互換性についてですが、
ステー関係は多少の寸法違い程度なので、社外の吊りゴムなどで工夫すれば取り付けには大きな問題はないのです
が、フロントパイプとの接合部のガスケットが異なるため、そのままでは互換性はありません。
JA11はフラットシート(板)ガスケット、JA12/22は球面リングガスケットとなっていますので。 ですので、
たとえばフロントパイプごとJA11用に交換してしまえばJA12/22にJA11用マフラーの装着は可能になります。
※ただし、製品によってはJA11用マフラーをJA12/22につけた場合、メインパイプがリアサスペンションの
コイルスプリングと干渉する場合があるので注意してください。
●エンジン性能と消音性能のジレンマ
ひとつ確実に言えることは「消音性能と低排圧は反比例する」ということです。 そもそも、排気ガスの音の
原因は高温、高圧なガスが大気圧に放出されるときの膨張音、爆発音です。 つまりこれは排気ガスの持って
いるエネルギーそのものなのです。 消音するということは、その排気ガスの音響エネルギーをいかにして
落とすか、つまりエネルギーを消費させるという行為なので、そこでロス、要するに排気圧力の上昇を避ける
ことはできない(=パワーロスを避けることはできない)わけです。
これはいくら排気抵抗の少ないストレート構造のマフラーでも避けることはできないもので、サイレンサーの
数が多くなるほど、また、サイレンサー本体が長くなるほどパワーロスが多くなっていきます。
つまり「排気効率を良くすれば消音性能が犠牲になり、消音性能を良くすれば排気効率が犠牲になる」
という物理法則には逆らえないということです。
ましてや自動車メーカー純正マフラーのような仕切り板を使用した隔壁構造の多段拡張型(多段膨張型)の
マフラーではパワーロスがあまりにも大きく、とくに排気の抜けを重視したいターボエンジンのチューニング
用マフラーでは隔壁構造のマフラーは避けたいところです。 なので、現実的な方法としては、寸法が許す
限り容量(内部容積)を大きくして消音性能を高めたサイレンサーを使ったストレート構造サイレンサーと
するしかありません。 マフラーというのは低周波数の重低音ほど消音するのに大きな容積が必要なのです。
なので、この相反する要素を両立させるために、一部の市販車、たとえばレクサスLF Aなどは低回転域では
排気ガスがメインマフラーを通ることで消音し、高回転域になるとマインマフラーをバイパスし、圧力損失
(排圧)を低減してパワーを引き出すような「制御型マフラー」にしています。
●サイレンサー内部パンチングパイプ径の「絞り」について
これはオートバイ用のマフラー(サイレンサー)の構造で多いのですが、たとえばメインパイプ径が50φで
サイレンサー内部のパンチングパイプ径が40φ程度に絞られているマフラーをよく見ます。 この理由は2つ
あり、1つは消音性能向上のため、もう1つは低速トルク向上のためです。なぜ径を絞ると低速トルクが上がる
のかと言うと、要するにベンチュリー効果を狙っているわけです。 隔壁(バッフル)のように流れを乱して
しまうと高回転での性能が著しく低下してしまいますが、ベンチュリーのようにスムーズに絞るぶんには流れ
を乱さずに排気流速を上げることができるため、低回転域での排気ガスの吸い出し効果(イジェクター効果)
を高めることができ、シリンダーへの混合気の充填効率が向上することで低速トルクが上がります。
それでいてなおかつ高回転でのパワー低下を最小限にすることができるというメリットがあるのです。 よく
「適度な排気抵抗があるほうが低速トルクが向上する」と言われますが、同じ抵抗でも「流れを乱す抵抗」と
「流れを乱さない抵抗」ではまるで意味が違ってくるのです。 重要なのは「いかに排気ガスの流れを乱さ
ない最小限の抵抗で排気流速を上げ、排気慣性効果を高められるか」という点にあるのです。

↑内部パンチングパイプ径に絞りがあるサイレンサーの構造例。
ただし、これはあくまでもNA(自然吸気)エンジンでの話であり「ターボエンジンではこのサイレンサー
内部での絞りは原則としておこなうべきではありません」。 というのも、ターボエンジンではエキマニ
直後に「ターボチャージャー」という非常に大きな排気抵抗となる物体があるため、わざわざサイレンサー
で抵抗をつける必要がないからです。
さらに、ターボが効き出すとサイレンサーの絞りはよりいっそう無駄な排気抵抗になって2次排圧が上がって
しまうため、タービンの回転上昇の抵抗となりデメリットばかりでメリットはひとつもないのです。ですので、
ターボエンジン用マフラーのストレート構造サイレンサーの内部パンチングパイプ径はメインパイプ径と同径か、
テールエンドであればかえって径を大きくしても良いくらいです。
さらに言うと、ターボエンジンはターボチャージャーのエキゾーストハウジング自体がある程度の消音効果を
兼ねるため、NAエンジンよりもサイレンサーを大口径にしても音量を抑えることができるメリットがあります。
ですので、なおさらターボエンジン用マフラーでサイレンサー内径を絞るのは無意味、ナンセンスなことなのです。
このあたりが同じストレートマフラーでもNAとターボでは考え方を変えて設計しないといけない部分なのです。
あと、たまにマフラー内部に「フィン」みたいなものをつけて排気ガスに渦を発生させる製品を見ますが、これ
もNAなら若干の意味がある場合もありますが、ターボでは無駄に排圧を上げるだけでパワーアップにとっては
邪魔な抵抗にしかならないのでつけるべきではありません。 NAとターボのマフラーは重要視するポイントが
まったくが違うのです。 ターボエンジンのマフラーはとにかく抵抗なくストレートで抜くことが重要です。
●パイプ途中で径を膨らませる「膨張部」について
ジムニー用でもたまに見るのですが、フロントパイプや中間パイプの途中の径を拡大して膨張管のようにして
いるものがありますが、これは低中速域のトルクの立ち上がりやレスポンス、ピックアップを若干高める効果
はありますが、こと最高出力を上げるという点ではただの抵抗にしかなりません。
吸気管もそうですが、排気管も途中で直径の拡大や縮小をしているとそこで気流の剥離などの乱流が生まれて
流速が低下するとともに壁面渦が発生し、あたかも逆にパイプ径が細くなったようになってしまい、かえって
馬力を出すのには不利になります。 このあたりはチューニングの目的次第ですが、私はあまりこの中間部を
膨らませる形状には感心しません。

↑このような感じで途中でパイプ径を拡大、膨張させる形状にすると壁面剥離流による渦が発生して、実質的な
パイプ径が細くなったのと同じになってしまうのと、この壁面流の渦によって排気ガスの流れが乱され排気ガス
の流速が落ちてしまうため、パイプ径を拡大して低抵抗にしたつもりがかえって逆効果になり排気抵抗が増えて
二次排圧が上昇し、パワーダウンすることがあるので注意が必要です。ですので、パワー重視なら途中でパイプ
径を変えたりせず、同径ストレートパイプのままのほうが無難です。
●排気管のレイアウトは可能な限り「ストレートフロー」を重視し、曲げの加工にもこだわること!
これは言うまでもないことですが、排気パイプは可能な限りストレートにしたほうが排気抵抗は減ります。
つまり、逆に言うと曲がり、カーブが多いほど排気抵抗は大きくなり、とくに避けたいのは「急なきついRで
曲げること」です。 これは大変大きな排気抵抗になってしまいます。

↑どうしても曲げが必要なときは、可能な限り大きな、緩やかなアールで曲げることが重要です。
また、このカーブを形成するときも、可能な限り「ベンダー曲げ」でおこない、できるだけ「輪切りパイプ
の連続溶接によるカーブ」製法は極力避けることが望ましいです。

↑ベンダー曲げなら内部はスムーズな流れが期待できますが、輪切りだとどうしても内部が「段つき」「凸凹」
になってしまうことと、断面積が変化することから、壁面流に乱流が起き、そのせいで実質的なパイプ径が
細くなったのと同じ現象がおきてしまうため排気抵抗は大きくなってしまいます。 ですので、パイプ曲げは
可能な限り断面積および断面形状を変化させないスムーズなベンダー曲げが理想です。 ただし、このベンダー
曲げも曲げる時に内部に砂を詰めるなどして「シワやへこみを生じさせない」ようにしないとなりません。

↑このように輪切りパイプの連続熔接で製作したマフラーやタコ足(エキマニ)は、内部に溶接のビードが
膨らんで出っ張っていることが多く、この凸凹は当然、たいへん大きな排気抵抗になってしまいます。
ですので、この手の輪切りパイプでカーブを作られたマフラー類は私は嫌いです。 もし、どうしてもこの
ような輪切りパイプで作られたマフラーを買う際には外観から見た綺麗さに騙されず、もっとも重要な内部
の溶接部を見るのです。 外から肉眼で見えなくても「スネイクカメラ(ファイパースコープカメラ)」で
覗けばよくわかりますので。 いくらマフラーの径を太くしても内部がこんな状態では性能は最悪です。

↑手曲げやベンダー曲げのマフラーでもこのように曲げの部分にシワや凹みを生じさせては無駄な乱流を生じ
させて排気抵抗になるだけなので、このような粗悪な安物マフラーは性能ダウンになるだけなので選ばない
ようにしましょう。

↑やはりエキパイの理想は内部に砂を詰めて「手曲げ」でおこなうのがベストです。金額は高くなりますが。
現在ではかなり小さな曲げRでもパイプを潰さずに曲げる機械もありますので、可能な限りこういった滑らか
な曲げ加工(手曲げでも機械曲げでも性能は同じです)による製品が望ましいです。
要するにこれは簡単なことですが「自分自身が内部を流れる排気ガスになったつもりになって考える」ことで、
どうすればスムーズに抵抗を最小限にできるか、という答えは出すことができると思います。 たとえるなら、
プールにあるウォータースライダーを排気管に見たて、そこを流れる人間を排気ガスに見たてて考えてみて
ください。 直線やゆるいカーブは速い速度で流れることができますが、きついカーブはどうしても速度が
落ちてしまいますよね。 排気ガスにも質量がありますから、それと同じ理屈できつい曲げカーブでは排気
ガスの排気流速が低下してしまう=排気抵抗が増えるということなのです。
●排気パイプの「分離、集合」はできるだけ避ける
ここで言う分離、集合というのは、いわゆるエキマニの集合とかではなく、エキゾーストマニホールド以降、
あるいはターボチャージャー以降のフロントパイプやリアマフラーなどの主排気管のレイアウト上のことです。
一例ですが、JZA80スープラは純正でリアマフラーが1→2→1という分離、集合になっているのですが、
これはおそらく最低地上高を確保するため仕方なくそうしたものと思いますが、これならわざわざ最後に1本
にまとめずにそのまま左右2本出しにするべきだったんじゃないかと思います。

↑JZA80スープラの純正マフラー。 見てのように一旦分離してから集合させていますが、これは無駄な
排気干渉を生むだけでエンジン性能面ではネガティブ効果にしかなりません。これがNAエンジンならまだ
「抜けすぎ」を防ぐ意味もありますが、ターボエンジンではまったくの無駄な抵抗です。 以下に紹介する
ようなJB23ジムニー用の社外フロントパイプでもわざわざ途中で2本に分離してまた1本に集合させている
アホな製品もあります。こんな構造は無駄な排気干渉を生じさせるだけで性能的にはまったく無意味です。

↑JB23ジムニー用の社外の分離、集合フロントパイプ。 あえてどこのショップの製品かは書きません。
これが腹下の地上高(ランプブレークオーバーアングル)を稼ぎたいなどの目的があるならこのレイアウト
も理解できますが、もしエンジン性能最優先で考えるならば、こんな無意味な分離、集合形態は分離部分
および集合部分で大きな排気干渉が生じるため、単なる排気損失、無駄な排気抵抗にしかなりません。
なぜこのような科学的根拠のないアホな構造にするのか理解に苦しみます。性能的に全く意味ありません。
●効率よく排気ガスを抜くためには「流速」がポイント
これまでの中で書いてきましたが、幾度となく「排気流速」という言葉を使いました。
マフラーやフロントパイプなど、排気系で重要視されるのはとかく「排気抵抗」が多いですが、ただパイプを
太くして抵抗を減らしたところでそれだけではエンジン性能は引き出せません。
「排気ガスは排気行程では自らの圧力とピストンに押し出されて勝手にシリンダーから出て行く」という考え方
ではダメなのです。 排気ガスは最終的にはテール出口で大気圧との差圧で「吸い出される」わけですので、
これを充分に利用しなければ無駄が多くなります。エンジンは、どれだけ多くの混合気(新気)をシリンダーに
取り込めるかで発生するトルク、パワーが決まるわけですから、多くの吸気をするためには、まず先に燃焼が
終わった排気ガスをどれだけ多く、素早くシリンダーから追い出すことができるかを追求しないと性能アップ
は望めません。 「吸気を考えるならまず排気から」というわけです。 一例ですが、レーシングカーなど
は排気口をボディサイドやリアディフューザー、F1の上方排気などもボディ面ツライチになるように開口して
いることが多いですが、これはマシンが高速で走ることで生じるボディ表面を流れる気流によって排気を吸い
出す効果(イジェクター効果)を狙っているものです。 一般市販車でも通常、ボディのリアには負圧域が
生じますから、これを高速走行時にうまく利用して走行負圧によって排気ガスをマフラーから吸い出す効果を
利用することは有効となり得ます。

↑一例ですが、グループCカー日産R92CPマシンの排気管出口。 ボディサイドを流れる相対気流による流速
で排気を吸い出すイジェクター効果を狙って設計されており、排気口直前には積極的に負圧を発生させる浅い
リップ状の凹みが設けられています。
市販車でもリアディフューザーパネルなどの流速を活用して同様な効果を出すことも不可能ではありません。
つまり、シリンダーから押し出される圧力と大気圧との差圧で吸い出される負圧を同時に利用し、排気パイプ
内を流れるガスの慣性による流速を最大限高め、排気ガスを速やかに、素早く抜くことが性能アップに大切な
要素となるわけで、とくにターボエンジンではここが重要です。
こう書くと短絡的な考えの人間は「ならマフラーパイプの径は太いほどいいじゃないか」と考えると思います
が、いたずらにパイプ径を太くしても排気の流れが淀んで排気流速が落ちてしまい「素早く抜けなくなる」
ので、決して「パイプは太いほうが抜ける」なんてことはありません。 とはいえ逆にパイプ径が細すぎても
抵抗が大きくなるだけです。 ですので、そのエンジンのピークパワーを発生する回転数に合わせて、そこで
最大の流速を発生させ、慣性排気効果を最大限利用する最適なパイプ径を選択、設定する必要があるのです。
ですので、たとえばこの排気流速を最大限活用して排気効率を高めることを考えた場合、単純にパイプ径だけ
ではマフラーの性能は決まりません。 たとえばパイプ径60φの中間タイコつきのツインサイレンサーの
マフラーよりも条件によってはパイプ径50φのテールエンドシングルサイレンサーのほうが排圧が低くでき、
トルク、パワーを出すのに高性能な場合だってあるわけです。 これは当たり前のことですが、パイプ径が
太くなるほど音量は増大しますので、たとえば50φのマフラーならテールエンドにサイレンサーが1個あれば
足りるものを、60φのマフラーでは音量低減のためにパイプ中間にサブタイコ(サブサイレンサー)を追加
して2個のサイレンサーにしないと充分な消音ができないことが多くなります。 前述しましたように、中間
タイコがあるとそこで排気流速が落ちて排圧が上がって排気抵抗が増えてしまいますので、これは性能的
には不利になってしまうのです。 それならばまだ多少パイプ径が細くても中間タイコがなく、ストレート
パイプのままテールエンドまで速い流速を維持できるマフラーのほうが全域でトルク及びパワーが出しやすい
場合もあるのです。 このように、マフラー設計というのは総合的に考えなければならず、「パイプ径が太い
ほどトルク、パワーが出る」なんて短絡的で稚拙な考えでストリート用マフラーを作るのは愚の骨頂であり、
エンジンのことを何も理解していない無学な者のすることです。 こういう人達はたいていシャーシダイナモ
のグラフやデータですべてを語るような単細胞な人間が多いのが困ったもので、「シャシダイのデータがすべて
であるかのように勘違いしている人」が多いです。 以前にも書いたようにシャシダイのデーターはあくまでも
「アクセル全開、全負荷の一定条件下のものでしかない」ということをよく理解しなければなりません。
たとえば、シャシダイで15kg-mのトルクが出ていたとしてもそれはあくまでもアクセル全開時の数値でしか
ありません。 しかし、通常の街乗りではいちいち発進時や加速時にアクセル全開にはしません。 むしろ、
低いアクセル開度で使うことが多いわけで、ストリートチューンではこうした「ハーフアクセル以下の領域での
トルク」のほうが大切なのです。 悲しいことに「シャシダイ信者」にはこのことをいくら言っても理解して
もらえない、というか理解する知性すら持っていないようです。

↑ストリート用マフラーや、とくに低いアクセル開度からトルクを立ち上げたい場合は、無意味に太いパイプ
径のマフラーではかえってトルクダウンしてしまいます。 常にアクセル全開か全閉かでサーキットを走る
レーシングカーならばこのシャシダイの全開時のトルクはもっとも重要ですが、我々はレーシングカーを
作っているのではありません、あくまでもストリートチューニングカーを作っているのですから、シャシダイ
のデータなんてものはあくまでもエンジン性能のごく一部でしかなく、もっと街乗りで多用する領域でのトルク
の出方にこだわる必要があるはずです。 それに当然ながらストリートでは音量もできるだけ抑える必要が
ありますので、そういう「静かさと低排圧の両立」にも技術を注ぐ必要があります。
以上のような理由から、全開時の性能のみに重点をおいて開発された純粋なレース用マフラーならまだしも、
ストリート用マフラーでもパイプ径は太ければ太いほど高性能だと考えている人は私に言わせればただの馬鹿
者、無知蒙昧としか言い様がありません。 こういう人達にはほんと呆れます。
●パイプ径とともにサイレンサーの個数、位置によってもトルク特性は大きく変わってくる

↑マフラーは太ければいいというわけではありません。 太くても抵抗となるサイレンサーが多ければ結果
として排圧が上昇してしまうだけです。 それならばまだ、多少パイプ径は細くてもテールエンド1箇所の
サイレンサーで消音したほうが排気流速が維持されて性能的には有利なことさえあるのです。 マフラーは
太ければ抜けるなんて単純なものではありません。 「音量を下げたければタイコの数を増やせばいいじゃ
ないか」なんて考えは愚の骨頂、何もわかってない人間の言うことです。 いくらパイプ径を太くしても
タイコ(サイレンサー)の数が増えれば増えるほど排気抵抗(排圧)は増していき、排気流速は低下して
しまうのですから、パイプ径を太くした意味がなくなってしまうのです。 その排気抵抗を減らした究極の
姿が、いわゆる「直管」となるわけですから。 サイレンサーの数は最小限にするべきなのです。
そうですね、電気回路図で言えば、上図の赤い直線が電線、ギザギザの線が抵抗器(Ω)と置き換えて
考えてもらえれば理解しやすいかなと思います。 つまり、メインパイプが太くて消音器での抵抗が大きい
よりも、多少メインパイプが細くても消音器の抵抗が小さいほうが結果として低速から排気流速を上げる
ことができるので排気慣性効果を活用しやすくなって低回転トルクも向上し高回転でも抵抗が少なく
(=排圧が低い)パワーが出しやすく、全域でバランスよくエンジン性能の向上が図れるというわけです。
そう、ストリートチューニングで重要なのはただアクセル全開時の最大トルク、最高出力の数字さえ上がれ
ばそれでいいという単純なものではないのです。
当然「太いパイプ径でテールエンドシングルサイレンサー」というのがもっとも「全開時のパワー、トルク」
は出しやすいのは間違いありませんが、ただ、これは音量を抑えるのがかなり技術的に難しいです。
もちろん究極は排圧を極限まで低減できる「直管」となるわけですが、我々は暴走族ではありませんから、
音量をあくまでも法律の規制値に収め、そのうえでどう「速い排気流速」と「低排圧、低抵抗」を両立して
いくかを追求していくのかがエンジニアの技術力だと思います。 ですからストリート用マフラーは
「パイプ径」と「サイレンサーレイアウトおよび数」のバランスを考えなければならないのです。
なお、この慣性効果と同時によく「脈動効果」も語られますが、確かにこの効果もパイプの長さを変える
ことで活用できます。 しかし、現実の市販車ではテールエンドまでの排気管レイアウトはすでに決まって
おり、パイプの長さはそう簡単に変えられません。 また、排気抵抗を考えると当然パイプレイアウトは
可能な限りストレートが望ましいのですが、これも最低地上高の関係から車体側レイアウトに従うしかない
ため、無理なカーブは作りたくなくても妥協しなければなりません。 これは、自動車メーカーというのは
エンジンセクションでレイアウト設計するのはせいぜいマニホールドまでで、そこから先のマフラーパイプ
のレイアウト設計はシャーシセクションが担当することが多いためです。
ですので、エンジン屋としては本当はマフラーのテールエンドまで排気慣性効果や排気脈動効果を最大限利用
した設計をしたいのが本音であっても、車体側レイアウトの都合上、妥協して手出しができないというのが
市販車のマフラーレイアウトの現実というわけです。 しかも、この脈動効果というのはそれ自体は排気や
吸気を引き込んだり吸い出したりするほどの慣性マスは持っていないので、排気脈動効果を活用するシステム
というのは排気慣性効果に比べたらその効果は小さいと言わざるを得ません。
結果として、効果の順序としては「排気慣性効果>排気脈動効果」となりますね。
エンジン技術者によってはこの脈動効果(吸気も排気も)を重視して設計する人もいますが、まったく逆に
この脈動効果はまったく無視して慣性効果のほうのみ重視して設計する人もいますので面白いものです。
●このサイレンサーと排気流速(排気ガスの勢いと言ってもいい)の関係を他の例で置き換えて説明すると、
ピストルやライフルなどの銃砲の消音に使うサイレンサー(正しくはサウンド・サプレッサー、減音器)も
基本原理は同じで、このピストルなどのサイレンサーもその消音膨張による圧力損失と引き換えに銃弾の
発射速度(弾丸初速)は遅くなり、銃弾の威力は減少します。 つまり、弾丸を発射させるエネルギーの一部が
消音によって消費されてしまうという物理法則によって、サイレンサーを使うと弾丸の威力が弱まってしまう
わけなのです。

↑実際の銃器のサウンド・サプレッサーの内部構造。 膨張室と4箇所のバッフルによって消音する方式で、
クルマやオートバイのマフラーにたとえると、「ストレート構造の多段膨張式」と言えると思います。
クルマやバイクのマフラーもこれと全く同じで、サイレンサーの消音能力が高いほど、また、サイレンサー
の個数が多くなるほど排気のエネルギーが消費され、排気流速が落ち、圧力損失が増える=排圧の上昇、
つまり排気抵抗が大きくなるという物理法則からは逃れられないのです(だからこそ、サイレンサーのない
ただのストレートパイプ、いわゆる「直管」がもっともパワーロスが少なくなるわけですから)。
ですのでよく「マフラーパイプ径を太くして音が大きくなったのならサイレンサー(タイコ)の数を増やせ
ば済む話じゃないか」と無知蒙昧なことを言っている低脳はこの「消音効果と排圧上昇のジレンマ」という
物理法則を理解していないのでしょう。 たとえ絞りのないストレート構造のサイレンサーであっても、
そこで排気ガスは膨張と減圧をすることになるので、排気抵抗は必ず生じてしまうのです。
「世の中に排気抵抗のないサイレンサー(マフラー)など存在しません」。 ですので、目標音量を
クリアーできるならサイレンサーはできる限り小さく、数は少なくするのがエンジン性能的にはベストと
なるわけです。
たとえば、条件次第ではありますが、同じ排気音量に収めたい場合、より太いパイプ径にして排気抵抗を
小さくしてもサイレンサーを2個、3個とつけてしまえば結果、排気抵抗は大きくなってしまうのです。
それならまだ、若干パイプ径を細くしてでもサイレンサーを1個で済ませた方が排気抵抗が少なくて済み、
結果、全域でトルク、パワーともに有利にすることが可能であるということなのです。 なお、この場合の
サイレンサーの位置は前述したようにテールエンドにもってきたほうが途中で排気流速が落ちないので、
パワー、トルクの両面で有利になります。 そう、キーワードは「排気の流速をいかに落とさないか」と
いうことなのです。 マフラーを語るとき「低排気抵抗、抜けの良さ」と小学生でもわかるようなことを
言う人はやたら多いですが、なぜか重要な「排気流速、圧力変動、慣性排気効果」等について語れる人は
ほとんどいないのが現状で、ほんと勉強不足な人が多くて私の話が通じないのが残念でなりません。

↑サイレンサー(タイコ)の数はできれば1箇所で、かつテールエンドに配置するのがエンジン性能的には
ベストです。 いわゆる「中間サブタイコ」というのは排気流速が落ちて排気抵抗になり、トルク、パワー
をロスするだけの存在ですので本来は無いに越したことはないのです(もちろん、触媒コンバーターも
ないほうがベストなのですが、こればかりは法規上つけなければいけないのですから仕方ありませんね)。
しかしながら、最近のジムニー系の一部のあまり頭のよろしくない系のショップは「ターボエンジンなんだ
からパイプ径は太いほどいい、音量なんてサイレンサーの数を増やせばどうにでもなる」などとバカ丸出し
なことを言っているのを見ると、前述したサイレンサーと排圧の関係を理解していない、いかに無学な
チューナーが多いかがわかります。 どうも最近のチューナーはこういう物理法則を知らない勉強不足な輩が
多いようで、サイレンサーはその大きさ、取り付け位置、個数によって同じパイプ径でもマフラーの性能は
大きく変わってしまうものなのです。

↑サクソンマフラーとMRSマフラー。 同じ50φストレートサイレンサーですが、その性格、トルク特性は
まるで違います。 同じパイプ径でもサイレンサーの位置の違いによって性能や特性は大きく変わるのです。
賢明なユーザー諸氏は、頭の弱いチューナーの話など鵜呑みにせず、きちんと理論と科学的根拠に基づいた
思考でマフラーというものを考え、理解していただければ幸いです。 技術は常に進歩しているので新しい
考えを取り入れていくことは必須ですが、「自然現象の物理法則」にはどうやっても抗えないものなのです。
だからこそ、メリットを最大に、デメリットを最小限にするにはどうするのがベストなのかを考えていくのが
知的なエンジンチューニングと言えます。 「やってみたら結果こうなった。だからこれで良いのだ」で
終わってしまってはとても知的とは言えません。「なぜそういう結果が出たのか」を科学的、物理的に探求し、
説得力のある説明ができてこそ「科学的チューニング」と言えます。 それができなければどんなに声高に
「これは良いものだ!」とわめいたところで知識のない一般の素人ユーザーはうまいこと騙せても、学識の
ある人や技術者には誰にも信用してもらえないし、相手にさえしてもらえず「どこかのバカが何か言っている」
程度にしか受け取ってくれません。それなのに「なかなか他人に理解してもらえない」などと愚痴を言ったり
理論的な説明ができないから挙げ句の果てに「太いマフラーはトルクが落ちるというのは迷信だ」などという
稚拙な逃げ文句を言い放つアホなチューナーもいるようですが、もはやそれでは幼稚園児レベルです。
ぶっちゃけ、無知な素人ユーザーに適当なこと言ってそう思い込ませるのは詐欺師の手口と同じです。
そうではなく、他人、とくに専門家に本当に理解してもらうためには理論、理屈による説得力というのは本当
に重要なことなのです。

「説明には説得力が必要だ」が私のポリシーですが、これができるチューナーはごく一部しかいません。
ましてやジムニー界でこれができるほど学識のあるチューナーなんて皆無なのではないでしょうか。 私が知る
限り、最近のジムニーショップのチューナーはどいつもこいつも適当なことばかり言ってる連中ばかりに見えて
しまいます。 GT-Rなどを得意としているチューナーとのエンジンチューンのレベルの差があまりに大きいこと
を身を持って感じているからです。 正直なところ、ジムニー系ショップで本当にエンジンのこと、マフラーの
ことを理解できているチューナーなんていないのではないでしょうか。
くり返しますが、チューニングは科学であり物理なので「勘と経験、結果論」だけでは納得してもらえないの
です。 私の周りには幸か不幸かそういう学識者(工業大学教授や技術士、工学博士)が多く、私はそういう
世界で生きていますので、こういう人達に納得してもらうことは並大抵のことではありません。 ましてや
「乗ってみればわかる」なんてのも技術者には通用しません。 なぜなら、ほとんどのデモカー等はトータル
チューニングおよびセッティングした状態であり、純粋にマフラーだけの差であることを立証することが困難
なためと、いわゆるプラシーボによる錯覚が大きいためです。 なにより「科学的な裏付け」が必要なのです。
<その他の排気系の要素>
●テールエンドディフューザーについて
通常、テールサイレンサーを出たパイプ部、いわゆるマフラーカッターはストレートになっていることが多い
ですが、ここをテーパーコーン形状にすることで、その範囲でテールエンドまでのパイプ長が無段階に可変した
のと同じ効果を出すことでトルクバンドを広げる効果を出すことができます。これをディフューザーと呼びます。

↑テールエンドディフューザーの効果の模式図。 吸気系で言えばエアファンネルと同様の可変長効果と考えて
もらえば理解しやすいと思います。 ですが、実際の純正および社外マフラーではここまでこだわって造られて
いる製品はほとんどありません。 しかし、レーシングエンジンでは採用されている例は多々あります。

↑MRSマフラーのテールエンドディフューザー部分。
このように出口を適度な角度と長さを持ったテーパー(ラッパ状)にすることで、排気の脈動効果を発生させる
タイミングの回転域を広げることができるので、結果としてトルクバンド、パワーバンドを広げる効果を狙う
ことが可能になります。吸気系で言えばエアファンネルみたいなものです。
しかし、現実にはこのディフューザー効果はマフラー製作のプロでさえあまりよく知っている人はおらず、市販
のチューニング用マフラーでもここまでこだわって製作されているものは私もほとんど見たことはありません。
そういう意味ではこのMRSというメーカーはエンジンのことをよく理解しているものと思います。

↑私は過去に自作でかなり長いテーパーのテールエンドディフューザーを製作しその効果を実験したことがあり
ます。 たしかに全体にフラットトルクになり乗りやすくはなったのですが、逆に言うとパンチ力が薄れてしまい
私の好みに合わなかったため、すぐに外してしまいました。
(私は低速から厚いトルクが出てフラットトルクで扱い易い優等生的性格なエンジンよりも高回転でトルクが
グワッと盛り上がってくる昔ながらの「ドッカンターボ」なエンジンのほうが刺激があって好きなのです)
ディフューザーのテーパーは長すぎず、短すぎずが良いようで、最適な角度、長さを見つけ出すのは案外難しい
ようですが、真面目に開発、設計、試作をくり返して試行錯誤すればそれなりの効果は期待できると思います。
●フロントパイプ、触媒(キャタライザー)、ターボアウトレットパイプについて
もちろん、ターボチャージャー下流のフロントパイプ(中間パイプも含めて)もストレートパイプになっている
ことが理想ではありますが、現実には触媒コンバーター(キャタライザー)は取り外すことはストリートでは
ご法度ですので、ここはできるだけ抵抗の小さいメタルキャタライザー(スポーツ触媒)などを使用し、この
触媒をプリマフラー(サブマフラー)として消音に活用するのが現実的でしょう。

<参考> →R34 GT-R用流用メタル触媒つきフロントパイプの製作
なお、ターボ直後のアウトレットパイプも純正で多い鋳鉄製の肉厚の厚いものでは形状が悪く結構な排気抵抗
になっていることが多いので、これも高効率な形状で製作した板金製、あるいは同じ鋳造でも肉厚の薄い
ロストワックス製法で作られた社外品に交換すると効果は絶大でコストパフォーマンスが高いパーツです。
私の車でもアウトレット交換で劇的に高回転でのパワーが向上しました。

↑左が純正アウトレット、右が社外アウトレット。形状から見ても社外品のほうが圧倒的に排気ガスがスムーズ
に流れそうなのがよくわかります。これによってタービン以降の2次排圧が低減されて排気効率が上がります。
<参考> →トライフォースカンパニー製ターボアウトレットパイプの交換
●結論
合法でとにかくエンジン性能、ターボチャージャーの性能を引き出すことを最優先で考えるなら、アウトレット
パイプからフロントパイプ、リアマフラーまでは可能なかぎり同径ストレートパイプにし、テールエンドの
1箇所だけにストレート構造の内径絞りなしのサイレンサーを装着し、マフラーカッター部をラッパ状の
ディフューザー形状にするのがベストとなります。 ただし触媒は必ず必要になるので、どこかにつけなければ
ならないのですが、エンジン性能を優先するなら本来は排気ガスの温度、圧力が低下したできるだけ下流につけた
ほうが排気抵抗は少ないです(実際、Super GTのマシンなどはそうしている)。 しかしながら、一般量産車の
場合、法規上は触媒は生産車(純正)と同じ位置になければいけないことになっているので、最近の車のように
ターボ直後のアウトレット部に触媒が直付けされている場合、エンジン性能的には排気ガスが高温、高圧の状態
で触媒コアにぶつかるため抵抗が大きく不利になるとはいえそれに従わなければなりません。 当然、ノーマルで
触媒が2個など複数個装着されている車は社外のスポーツキャタライザーも同じ数だけついてなければなりません。

↑JB23-8型、9型のタンデム触媒。 純正でこのように2個の触媒がついている場合は、社外のスポーツ触媒
でも同じ個数ついて(なおかつモード試験に合格していなければなりません)いないと合法とはなりません。

↑これはトラスト製のJB23用スポーツ触媒つきフロントパイプ。 本来、JB23(1型は除く)は触媒はターボ
直後に配置され、さらに8型以降では2個の触媒がついているので、社外のスポーツ触媒もそれに準じなければ
ならないのですが、現在のところでは法整備が追いついていないため、いわゆる10.15モードおよび11モード
試験にさえパスすればいわゆる「ガスレポ」という書類が発行され、「みなし合法」となっているのが現状です。
しかし、厳密に言えばこの状態はJC08モード試験にパスしているわけではないので、実際はグレーゾーン扱い
での合法なのです。このへんはよく理解しておいてください。 実際、ガスレポがあっても車検に落とされたと
いう話も聞いたことがあります。 とくにJC08モードが適用される年式の車は注意したほうがいいでしょう。
そのうち、このトラスト触媒では車検に通らなくなる日が来ると思います。
●最後に、車検対応のための音量数値(デシベル)について
現在、近接排気騒音の規制値はH10年以降の車は96dB、H9年までの車は103dBとなっています(フロント
エンジン車)。 で、たとえばH10年以降の車につけるとある社外マフラーが「94dB」であったとします。
この数字だけ見ればたしかに車検に通りそうですが、これはあくまでも新品時の数値でしかないことに注意して
ください。 とくに社外マフラーに多いストレート構造のマフラーはグラスウールが飛散、消耗したりして次第
に消音性能が落ちていき、必ずサイレンサーが「劣化」していきます。 ですので、新品時にはギリギリ車検に
通る音量だったとしても、2年後の車検では96dBをオーバーして車検不適合となってしまう可能性が高いという
わけです。 ですので、これらを鑑みると、最低3回は車検を通すことを考えた場合、新品時は基準値(規制値)
より「マイナス8dB」は下回っていないと厳しいです。 つまり、H10年以降の車は88dB、H9年以前の車は
95dBがマフラー購入時の近接排気音量の上限目安とするべきでしょう。
ちなみに自動車メーカー純正のマフラーでストレート構造タイプのサイレンサーがほとんどないのは、こうした
経年劣化による消音性能低下が避けられないからです。 自動車メーカーは5年又は10万キロとかの性能保証を
しないといけませんからね。劣化の早いストレート構造吸音材型のマフラーなんか、せいぜいサブマフラーに
しか使えません。
なお、2010年4月以降製造の生産車への社外マフラーに対しての規制はこれまでとはまったく異なり、JARIの
新認証制度(近接排気騒音、加速時排気騒音)に合格したマフラーしか合法にならなくなっておりますので購入、
装着の際はご注意ください。
<参考> →社外マフラーの新たな音量規制について
さらに、2016年10月以降の新型生産車への社外マフラーはより厳しいものとなり、基本的には「音量が新車時の
音量を上回ってはいけない」とされましたので購入時は注意が必要です。
<参考> →2016年4月20日に新しく施行されたマフラーの音量規制について

↑近接排気騒音計測の例。 私のジムニーの場合はノーマルエンジンの最高出力回転数の75%、つまり4875rpm
まで回転を上げて5秒ほど保持、一気にアクセルオフして測定し、103dB以下であれば合格となります。
なお、私は音量は静かに越したことはないと思っていますし、爆音マフラーは嫌いですので、この近接騒音値
にはけっこうこだわります。 ただ、音質については正直なところそれほど気にしていません。 と言うのも、
軽自動車の3気筒エンジンでは音質にこだわったところでたかが知れてるからです。音質、音色、回転フィール
にこだわるならやはり最低でも6気筒エンジン以上でしょう。 私も今までいろいろな排気量、シリンダー数
のエンジンの車に乗ってきましたが、4気筒程度以下のエンジンは正直言ってフィーリングや音がどうこう言える
レベルにはないと思っています。 なので軽自動車でそんなもの追求しても意味がないと考えています。
<注記>
今回の記事中では排気の圧力のことを「排圧」で統一しましたが、一般的には「背圧」とも呼ばれます。
ただ、背圧とはいわばバックプレッシャーという意味なので、排気系だけに使う言葉ではないため、個人的
にはそれで正しいのかどうかは疑問に思っております。 クランクケース内圧も「背圧」ですからね。