MOTUL 300Vエンジンオイルの選択と適正な油温管理について

4輪車には素直に4輪用のエンジンオイルを使いましょう


 

●先日「ジムニーにモチュールのバイク用の300V(ファクトリーライン 4T)エンジンオイルを使用する

のは問題ないでしょうか?」みたいな質問がありました。 私に言わせれば「なんでわざわざそんなバカな

ことするのだろうか?」と思えるほど愚問ではあるのですが。

 

↑<参考> オートバイ用エンジンオイル MOTUL 300V 4T Factory Line シリーズ。

 

結論から言えば「ダメとは言わないが、好ましくない」というのが私の見解です。 車には素直に車用の

300Vシリーズを使うべきです。 同じ300Vでも車用とバイク用ではまったく別物と考えたほうがいいです。

と言うのは車の場合、通常はエンジン、ミッション、デフなどが別々に別れていますので、それぞれ個別の

要求に基づく性能、特性のオイルを使えますが、バイクの場合は多くがエンジン、ミッション、クラッチが

一体構造のため、共用のオイルの使用となります。 なので、それぞれに問題なく使える中途半端な成分配合

にしなければならず、純粋にエンジン性能のみを追求したオイルが使えないため、どうしても純粋なエンジン

用オイルには不要な成分、邪魔な成分が入っていて、性能的に妥協した中途半端な性能のオイルになってしま

っているのです。 そんな妥協して性能を落としたオートバイ(モーターサイクル)用エンジンオイルを

わざわざ車のエンジン、さらにチューニングしてパワーアップしたエンジン、とくにターボエンジンに使用

するなんてまさに本末転倒、バカな話です。

 

とくにバイク用のエンジンオイルは「湿式クラッチが滑らないように潤滑性能をわざと落としている」

ため、純粋なエンジン用オイルとして作られている自動車用のエンジンオイルに比べてどうしても潤滑性能が

劣ってしまう、つまり「滑りの悪いオイル」となってしまっているのです。

さらにバイク用のオイルの場合、使用するのがNAエンジンが前提なので、ターボエンジンへの使用は考慮され

ていないため、NAエンジンでは考えられないほどの厳しい高温、熱条件下に晒されるターボエンジンへの使用

はなおさら不適合なものとなります。 詳細は後述しますが、ターボ用エンジンオイルにはNAエンジンよりも

高いトルクによる緩衝特性や超高温に対する耐性が必要なのです。

ですので、自動車には素直に自動車用のオイルを使用し、バイク用のオイルは使用すべきではないのです。


●おそらくこの質問をしてきた人は「自動車エンジンよりずっと高回転で使われるバイク用エンジンオイル

のほうがより高性能なんだろう」と考えてのことなのでしょうが、レシプロエンジン本体にとっての過酷さは

単純にクランクシャフトの回転数で比較するものではなく「平均ピストンスピード」で比較し、その数値が

高回転型が低回転型かを見極める重要な要素になるものなのです。 一般市販車では平均ピストンスピードが

レッドゾーン時に20m/s〜22m/sを超えるエンジンは高回転型と考えていいと思います。 この考え方で比較

するとスポーツバイクのエンジンとクルマの高性能スポーツ系のエンジンとではほとんど変わりはないのです。

<参考> →エンジンの高回転型と低回転型について(外部リンク)

 

それにバイクに比べて車のエンジンのほうが一般にトルクが大きいためピストンにかかる側圧(サイドスラスト)

やメタルにかかる圧力、衝撃力が高く、そういう視点からの圧力負荷の大きさも考えないといけません。

たとえば、リッターSSのバイクとトヨタ86はほぼ同じ200馬力ですが、トルクで比較するとバイクのほうはクルマ

の半分しかありません。 トルクはピストンやコンロッド、クランクシャフトのメタルなどにかかる衝撃力の大きさ

(圧力)そのものですので、同じパワーでもトルクが倍違うとそれだけ摩擦部分に対する負荷は大きくなります。

ターボエンジンではさらにトルクが高いため、極圧下での性能を重視する必要があります。 ただ回転数だけで比較

して考えるなどエンジンのことを何も解っていない者の短絡的な考えなのです。 それにもし単純に回転数だけで

比較するとしても、車のターボエンジンのタービンシャフトの回転数なんか100000rpm〜200000rpmとクランク

シャフトとは比較にならないほどの超高回転で回っているわけですし、それにターボのセンターハウジングなどは

局部的には400度以上という超高温に晒されているわけですから、むしろ4輪のターボエンジンのほうが2輪のNA

エンジンなんかよりずっと過酷な環境で使われており、それだけエンジンオイルに要求される性能も高度なものが

求められているという認識が必要なのです。 チューニングしたターボエンジンならなおさらのことで、バイク

のエンジンなんかよりずっと温度、圧力の面でオイルに過酷な条件下での高性能を要求されているのです。

 

以上のような理由から、オートバイ用のMOTUL 300V Factory Line 4Tオイルをジムニーをはじめ、4輪車の

とくにターボエンジンに使用することは好ましくありません。 素直に通常のMOTUL 300Vシリーズを使用して

ください。 オイルメーカーだってわざわざ4輪用と2輪用とを分けてオイルを作っているのにはそれなりに理由が

あってのことなのですから、素人があさはかな考えで奇をてらうようなことはせず、その用途にあった製品を使用

するのが賢明というものです。

 

同様な理由で、よく「モリブデンが入っているから」などの考えから「ハンマーオイル」などをエンジンオイルに

添加している人もいるようですが、これらも自動車エンジン用に作られたオイルではないため、とくにターボエンジン

に使用した場合、そのモリブデン粒子やスラッジ化したベースオイルがターボのオイルラインを詰まらせたりして

トラブルの元になる危険性があるため、エンジンを壊すリスクを負いたくなければアホなことはやめるべきです。

私は基本的にあまりオイル添加剤の使用は好まないほうですが、もし使用するにしてもちゃんと「エンジンオイル用」

として作られた信頼できる製品を使用すべきです。 実際、私もこのハンマーオイル発売元のAZ社にこの件について

問い合わせしてみたところ「ハンマーオイルはそういう使い方を想定していないのでおすすめできません」

いう返答をいただきました。 エンジンを大切に使いたいのならばヘタな考えはしないほうがいいです。

<参考> →低粘度オイルとオイル添加剤について


●チューニングしたK6Aターボエンジンにお薦めできるエンジンオイル

↑私が普段使用しているMOTUL 300V CHRONO 10W-40。

私もエンジンオーバーホール以前は同じ300Vシリーズでも15W-50のCOMPETITIONや5W-30のPOWER RACING

を使用していろいろ試しましたが、コンペティションではとくに冬場に硬すぎて回転が重く、燃費も悪化しました。

逆にパワーレーシングではやはり純正比200%以上にもパワーアップしている私のK6Aエンジンにはやや粘度が柔らか

すぎて緩衝性能が不足し、メタルへのダメージが大きそうだとエンジンOH時に感じたので、エンジンOH後はクロノ

1種類のみでオールシーズン使用しています。 四季を通じて非常に快調です。

同じK6Aエンジンでも、鍛造ピストンを入れているなど、クリアランスを広めに組んだエンジンなどでは15W-50の

コンペティションでも良いかと思いますが、エンジン本体がノーマル、あるいは純正鋳造ピストンで組み直したK6A

ターボエンジンにはこの10W-40のクロノが最適ではないかと思います。 ほとんどノーマル状態のK6Aエンジン

であれば5W-30のパワーレーシングでも良いと思いますが、ブーストアップ仕様やボルトオンターボチューンで

ノーマル比150%〜200%程度にパワーアップしているK6Aエンジンには個人的にはかなりオススメのオイルです。

とくに100PSを超える馬力にパワーアップしている場合はこの10W-40が最低の粘度と考えたほうがいいでしょう。

 

私も昔はいろんなメーカーの様々なオイルをためしましたが、ここ20年ほどはモチュールばかり使用しています。

もちろん、MOTUL 300Vも銘柄は同じでも年々内容成分は進化をしていますので、性能は常に世界一流です。

おそらく、普段そこそこのオイル(たとえばMobil1クラスの)を使用している人でもMOTUL 300Vを入れると

「オイルだけでこんなにもエンジンのフィーリングが変わるものなのか!」と実感できると思います。 このクラス

のオイルになるともうオイル添加剤など必要ありません。むしろ添加剤など加えると性能のバランスを崩してしまう

可能性のほうが高いくらいですので、オイル添加剤にお金かけるくらいなら、はじめからそのぶん値段は高くても

高性能なオイルを選択すべきだと思います。

 

●ただ、MOTUL 300Vエンジンオイルにも欠点がないわけではありません。

これはあくまでも比較の問題ではありますがモチュールのオイルは初期の性能、フィーリングがあまり長くは続かない、

言い方を変えるとおいしい期間が長くない、つまりライフが短いという感触があります。 これは私だけでなく、多くの

MOTULユーザーがそう感じているみたいです。

これはだいたいどんなエンジンオイルでもそうなのですが、新品から最初の500kmくらいまでは初期の性能を維持でき

るのですが、そこから徐々に性能が低下し、ある距離、期間からほぼ一定になるか、あるいはジワジワと性能(粘度特性)

が落ちていきます。 MOTULはわりとハッキリとこの初期性能が落ちてきたというのが分かりやすいオイルなので、そう

感じたら早めの交換をしたほうが良いと言えるでしょう。

ちなみに、私の場合ですとだいたい3000km〜5000kmが交換サイクルですね。

あと、よく「値段の高いオイルを長く使うより、安いオイルを短いサイクルで交換したほうがエンジンには良い」とか

言っている人を見かけますが、そういう両極端な考えではなく「適切な性能のオイルを適切なサイクルで交換する」

のが最良だと私は思います。 安すぎるオイルというのは新品の時点ですでに数千キロ使った高いオイルの程度の性能

しかないわけですから、ノーマルエンジンならまだしも、オイルに対する性能要求が厳しいターボチューニングを施した

エンジンには使用すべきではありません。


●エンジン運転中の適正な油温について

 

水温もそうであるように、エンジンオイルにも適切な温度範囲というものがあります。 高すぎず、低すぎず安定

しているのが理想です。 油温が高すぎれば当然、メタルなどの焼きつきにつながりますが、逆に低すぎてもオイル

の粘度が高くなって燃費やレスポンスが悪化します。

それより深刻で有害なのは、油温が低いとオイルの中に混ざってくるブローバイガス中のガソリン成分(生ガス)や

水分が揮発(蒸発)しにくくなってしまい、オイルを希釈(簡単に言うとガソリンや水分でオイルが薄まってしまう)

して、オイルの粘度の低下や潤滑性能低下など、オイルの劣化を促進してエンジンオイルの性能を極端に低下させて

しまうのです。

とくにハイパワーにターボチューンして燃料冷却(ガソリン冷却)のためにかなり濃いめの空燃比(リッチA/F)に

セッティングしているエンジンでは、余分なガソリンがエンジンオイルに混入しやすくなるので、油温が低すぎると

オイルに混ざったガソリン分の蒸発がしにくくなるため、エンジンオイルが希釈されてしまい潤滑性能が著しく低下

して、最悪はそれが原因でメタルの焼きつき等エンジントラブルやエンジンブローの元になりかねません。 いくら

高価で高性能な高級オイルを使っていてもこうなってしまったらまったく意味がありません。

ですので、油温は低いほうが安全だと考えるのは大間違いで、かえって油温が低すぎるとオイルの潤滑性能

を大きく低下させエンジンが危険な状態になってしまうのです。

 

それでは、エンジンオイルはどのくらいの温度範囲が適正かと考えますと、エンジンによっても多少は異なりますが、

K6Aエンジンの場合でエンジンが完全に暖まった状態でだいたい90度〜100度の間で常に安定しているのが理想です。

このくらいの温度であれば、高すぎることによる焼きつきなどのトラブルの心配もなく、また、低すぎることによる

燃料希釈や水分の蒸発も阻害されにくく、ちょうどいい「適温」と言えます。

よく油温は低いぶんには問題ないと考えている人もいますが、温度が低すぎると前述した燃料希釈や水分希釈などの

問題が生じるため、最低でも80度以上はキープしておかないとかえってエンジンやオイルには良くありません。

 

 

しかし、過激な高負荷、高回転での連続全開走行や、サーキットでの全開アタックなどをおこなうと、オイルクーラー

をつけていてもこの適正油温をオーバーしてしまうことがありますが、このような場合にどのくらいまで温度が上昇

しても大丈夫かという「限界油温」についてですが、これはそのオイルの性能によってかなり左右されます。

たとえば、通常、油温計のセンサーはオイルポンプ直後の温度を計測していることが多いと思いますが、この時点で

たとえば150度を超えるくらいになると、エンジン内部のメタル部分では局部的には200度をオーバーする危険性が

ありますので、最悪、油膜切れをおこして焼きつきが起こる「臨界温度」に達してしまう恐れがあるので、どんな

高性能なオイルを使用していてもかなりハイリスクになります。

ですので、いちおうの目安として私はMOTUL 300V CHRONOの場合で安全な油温限度としては110度をひとつの上限

としています。 仮にごく短時間であったとしても130度までは至らないようにメーターを監視して、注意しながら

「全開アタック」をしています。

また、当然ながら油温がこのように本来の適温より上がってしまったあとは充分にクールダウン走行をし、停車してから

もアフターアイドルをしっかりおこなってターボ周りの油温、水温、さらには排気温度を充分に下げてからエンジンを

切ることが大切です。 こういう小さな心遣いがエンジンやターボチャージャーを長持ちさせる秘訣ともなります。

なお、もし1回でも130度を大きくオーバーさせてしまった場合はオイルの性能が極端に低下している可能性があります

ので、走行距離に関係なくなるべく早めにオイル交換したほうがいいでしょう。

 

↑私の車にはこの空冷オイルクーラーの他に、スズキスポーツの大型水冷オイルクーラー自作オイルフィルタークーラー

(フィルターヒートシンク)をつけていますが、現在のこの状態でメーター振り切り巡航程度のスピードならばほぼ

100度〜110度以内に収まっています。 しかし、最高速アタックなどの連続全開走行では油温は簡単に120度あたり

まで上がってしまいます。 対して、水温のほうは充分余裕があるので、個人的にはもうちょっとオイルパンの容量を

増やして、あと1リットルくらいオイル量を増やせればだいぶ改善されるのではないかと感じています。

 

<参考>K6Aエンジンのオイル量

↑私の場合、オイル交換時はオイルレベルゲージのFポイントから5mm程度上にくるあたりまで入れます。

もちろん、多く入れすぎるのはクランクウェブなどでオイルが撹拌されて抵抗になったり、泡立ち(キャビテーション)

の原因になるので好ましくないのですが、悪影響が出ない範囲でできるだけ多く入れたほうがオイルの冷却面でも有利

になるだろうと考えてこのようにしています。 とくにあと付けのオイルクーラーをつけている場合は、エンジン回転中

はその容積のぶんオイルパン内のオイル量が減るわけですから、その分量を見越して若干、多めに入れておいたほうが

いいでしょう。

ちなみに私はオイル交換の際2リッターボトル2本、つまり計4リッターを使いますが、手順として、古いオイルを

抜いてから、まず1リッターだけ入れてアイドリングで2〜3分回してからまたオイルを全て抜き、次に残りの

3リッターを規定量まで入れるようにしています。 これで4リッターを使い切るわけです。

つまり、最初の1リッターをいわばフラッシング代わりにするわけです。 市販のフラッシングオイルはいわば灯油

のようなものですのでエンジン内に残留するとオイルの粘度を低下させてしまうのでエンジンに良くありませんが、

使用するオイルと同じオイルでフラッシング代わりに使うのであれば何ら問題ありません。

 

●最後に「MOTULオイルは正規輸入品を使いましょう」

MOTUL 300Vオイルは決して安いオイルではありません。 通常リッターあたり3000円前後はします。 ですので

中にはより安い並行輸入品を買われる方がいますが、同じ300Vという銘柄でも世界に輸出される地域ごとにブレンド

に種類があり、300Vの場合は「欧州向け、北米向け、アジア向け」の3種類のブレンドが存在します。 この内容の

主な違いは「湿度対策」で、もっとも気候が乾燥している北米向けが低湿度用、逆にもっとも気候が湿潤なアジア向け

が高湿度用となっており、当然ながら日本に正規輸入される300Vはこのアジア向けが入ってくるわけです。

逆に、並行輸入で安価に入ってくる300Vは主に欧州向けで、本来の日本の気候には「長期的に見れば」適合していま

せん。(メーカーのコメントでは正規品は高温多湿な日本の気候に合わせて、水分が多量に混入しても乳化しにくく

されているとのこと)このような理由から、レースのような短時間の使用であれば正規品でも並行輸入品でも性能差

は出ないでしょうが、ストリートのように長期間(半年から1年)に渡り安心してその高性能を堪能するためには、

MOTULオイルは正規代理店であるテクノイルジャポンから輸入された正規品を使用したほうがいいでしょう。

逆に言うと、短いサイクルでオイル交換をしてしまうのであれば並行輸入物でも構わないとも言えますが、たとえば、

正規輸入物を6ケ月で交換、並行輸入物を3ケ月で交換した場合の「価格差」を考えれば、かえって並行輸入物のほう

が高くついてしまうということになってしまいますので、ちょっとバカバカしい話です。

やはりMOTULオイルはその仕向け地域向けにきちんと調合された正規輸入品を購入したほうが賢明かと思います。

 

●次回の更新ではオイルクーラーについての少し突っ込んだ内容の記事を書こうと思います。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~