空冷エンジンオイルクーラーの正しい取り付け方向について

エンジン保護を優先するためには正しい向きで取り付ける必要があります


 

●前回の更新「MOTUL 300Vオイルの選択と適切な油温管理について」で油温とオイルクーラーに

ついて触れたので今回はその続きというか、もう少し突っ込んだことを書きたいと思います。

 

<オイルクーラーコアの取り付け方向>

アフター製品のあと付け空冷オイルクーラーをつける際、もっとも多いのはやはりラジエーター前に

マウントするのが定番だと思いますが、このとき、IN/OUTホースの取り出しニップルの向きを意識した

ことがあるでしょうか。 案外、気にしてない方が多いのではないかと思います。 ですので、今回は

そのへんを書きたいと思います。

 

●一般的なオイルクーラーコア垂直マウントの場合のケースは以下の3通りになるかと思います。

(A)はもっとも一般的なホース出入り口を上方に持ってくる装着方法。

(B)は(A)の逆でホース出入り口を下方に持ってくる装着方法。(逆さ付け)

(C)はオイルクーラー本体を横倒しにしてホース出入り口を横に持ってくる装着方法。(横付け)

※(A)、(B)のホースのIN/OUTは左右どちら側でも良いですが、(C)は必ずINが上側、OUTが下側にくるように装着してください。

下側をINにしてしまうと、重力に逆らってオイルを押し上げなければならないため、そこで圧力損失が生じ、実質的な油圧が低下

してしまうおそれがあるためです。 通常、油圧計はオイルポンプ直後の圧力しか計ってないため、そこから先の流路抵抗による

圧力損失でエンジンに到達するまでに必ず油圧は低下してしまうので、それが最小限になるようレイアウトしなければなりません。

<追記> 2013/10/13

「(C)の向きの場合はINを下側、OUTを上側にしたほうがエアが抜けやすく、すべてのコアに均等にオイルが通るので

下から上に抜けるように配管したほうが理想ではないでしょうか」という意見をいただきました。 たしかに、それも一理

あります。とくに大きめのコアの場合はそのほうがいいかもしれません。 私が上図で示した(C)の配管の方向はあくまでも常識的

なサイズのコアを使用した場合でのケースだとお考えください。 大きめのコアを使用する場合はIN/OUT逆にすることも有効です。

 

●上図の(A)(B)(C)の中で正解というか、もっとも適しているのは「(A)」です。

その理由は、エンジンを停止したあとにもオイルクーラー内部にオイルがちゃんと充満している状態

が理想だからです。 このようになっていれば、次回エンジンをかけたときにオイルポンプからエンジン

本体内部にエンジンオイルが最短時間で到達してくれるため、いわゆる「ドライスタート」による油膜切れ

の時間が最短時間で済み、エンジンにダメージを与えにくいメリットがあるからです。

 

逆に(B)や(C)では、エンジン停止後にオイルクーラー内部のオイルがすべてオイルパンに戻ってきて

しまい、オイルクーラー内部が空気で満たされて空になってしまいます。 こうなると、次回エンジンを

かけた際にはオイルポンプから送られたオイルがまずオイルクーラー内部の空気(エア)を追い出してから

やっと内部にエンジンオイルが満たされ、それからエンジン本体にオイルが流れるということになることで

エンジンオイルがエンジン内部に到達するまでに「大きなタイムラグ」が生じてしまうため、それまでの間、

エンジン内部のシリンダーやメタルなどには油圧がかからないため、言わば「オイル(油膜)が切れた状態

でエンジンが回っている」状態になるので、いわゆる「ドライスタート」の時間が長くなることによる悪影響

で、最悪は各摺動部を傷つけたり摩耗させたりしてエンジンの寿命を縮めてしまう結果になるリスクが高くなる

のです。

「エンジン摩耗の90%はエンジン始動時のドライスタート時に起こる」と言われているのが昔からの

定説ですので、(B)や(C)の取り付け方ではそれをさらに助長してしまうことになるのです。

 

以上の理由から、オイルクーラーは可能な限り(A)の向きでの取り付けを推奨します。 もし、どうしても

レイアウトの都合上(B)や(C)の向きで取り付けなければならない場合は、毎回、エンジンを始動してから

しばらく(30秒から1分弱)はアイドリングのままにしておき、エア抜きとともにエンジン内部にオイルが充分

行きわたるまで空吹かしやギヤを入れて車を動かしたりしないようにしてエンジンの各回転部や摺動部に負荷が

かからないよう留意することが重要です。

 

ただし、車両レイアウトの関係上、オイルクーラーユニットの位置(高さ)がエンジン側のホース取り出し口

(サンドイッチブロック)より低い位置である場合は、(B)や(C)でもエンジン停止後も内部にオイルが満た

されたままになるためまったく問題はありません。

逆にもっともまずいのは(B)のケースで必要以上に大型のオイルクーラーを高い位置につけてしまうパターンで、

この場合、オイルポンプの吐出量が足りないとオイルクーラーコア全体にオイルがいき渡らず「エア噛み」した

ままの状態になってしまい、オイルクーラーの性能が活かせないばかりか、最悪はオイルに大量の気泡が混ざって

メタルの焼きつきなどに繋がる危険性さえあります。

 

↑逆さ付けで高い位置に大型のオイルクーラーをつけると最悪こうなります。 オイルポンプやオイルギャラリー

の吐出量に対しはるかに大きい内部容積を持つオイルクーラーを高い位置に逆付けすると、その内部をオイルで

満たすことができずに「エア噛み」をしてしまい、内部に空気がとじこめられてしまうばかりか、その空気が

少しづつオイルに気泡として混ざってエンジンに入ってしまうため、それがもとで油膜切れを起こし、メタル

や摺動部にダメージを与えることになります。 当然ながら、これではいくら大型のオイルクーラーをつけても

その放熱性能を発揮することすらできません。

ですので、このような「大型オイルクーラーの高い位置への逆さ付けは最悪」なので絶対に避けましょう。

 

ちなみにこの「高い位置への逆さ付け」はよくオートバイで見かける(なぜか純正でもこの付け方してるのもある)

のですが、まったくもって私には理解不能です。 最悪の付け方だと思うのですが。

 

さらに言うと、仮に(A)の正しい付け方をしてあっても、いわゆるオイルフィルターカートリッジを別体にして

取り付ける「オイルフィルター移動キット」の場合などは通常よりも長いホースでオイルラインを引き回さなけれ

ばならないため、これもオイルポンプからエンジン内部にオイル(油圧)が到達するまでに時間がかかるので、

この場合も、やはりエンジンを始動してからしばらくはアイドリングしてオイルを回してやるという気遣いが必要

になります。 そう考えると、どのやり方にせよオイルクーラーのホースは最短距離で取り回すのがベスト

であることがわかると思います。

 

↑私の車のオイルクーラーです。取り付け方向としては(C)となります。 本来は理想ではないのですが、

容積の大きいラジエータータイプではなく単純なパイプチューブタイプなのでこれでも問題ありません。

ホースも最短距離になるようレイアウトしています。 前述したように、重力に逆らわないようINホースが

上側、OUTホースが下側となるように配管しています。

 

●いづれにしても、あと付けのオイルクーラーを取り付けるということはそれだけオイルポンプからエンジンに

至るまでのオイルラインの長さが長くなるということですので、オイルポンプからエンジン内部までの距離による

油圧到達のタイムラグや、ホース内部のエアの混入などの影響も考えると「エンジン始動直後の発進」はエンジン

に良くないので避けた方が安全です。 当然、信号待ちなどでの頻繁な「アイドリングストップ」はもってのほか

で、エンジンにダメージを与え続けるだけです。 こまめなアイドリングストップはその度にオイルの油膜

が切れるため、各部の摩耗を促進しエンジンにとっては良くありません

私も普段からエンジン始動直後の発進はせず、どんなに急いでいるときでも最低でも始動後20秒はアイドリング

させてから車を発進させるよう心がけています。

 

できるだけ流路抵抗の小さいオイルクーラーコア、およびパイピング、ホースを選ぶ。

オイルクーラー本体はもちろん、配管ホースの内径も充分考慮し、できるだけ追加オイルクーラーによる抵抗

(圧力損失)を最小限になるよう配慮することが大切です。 よく「オイルクーラーつけても油圧は下がらな

かったよ」なんて言ってる人もいますが、その油圧はどこの部分の油圧を計っているか知っていますか?

ほとんどの油圧計はオイルポンプ直後の時点での油圧を計っているだけです。その先にオイルクーラーがあり、

さらにオイルフィルターがあり、それぞれで圧力損失が生じますのでエンジンに到達するまでには少なからず

油圧は低下してしまうのです。 大切なのはオイルポンプ直後の油圧ではなく、エンジンのシリンダー

ブロックのオイルメインギャラリーの油圧のほうなんです。 通常、ここの油圧は計っていません。

たとえば、油圧計の数値が5kg/cm^2であっても、エンジンに到達するときには圧損で4kg/cm^2に落ちている

ことだってあるわけです。 ですので、こういったことを考慮すると、後付けのオイルクーラーを装着した場合

は油圧プレッシャーレギュレーター(リリーフバルブ)のスプリングに薄いシムを入れて若干油圧を上げてやる

などの対処をしてあげたほうが理想でしょう。 ちなみに、私のK6Aエンジンの場合は1.5mm厚のワッシャー

を噛ませることで若干の油圧アップを図って対処しています。


●ここで疑問。 しかし(A)だとオイル交換の際に全量交換できない問題が残るのでは?

 

ごもっともです。 (A)のマウント方法の場合、オイルクーラー内部に溜まったオイルがオイル交換の際にも

抜けないわけですので、たとえばですが、オイルパンのオイル量4リッター、オイルクーラーコア内部のオイル

量1リッターとした場合、仮にオイルパンのオイルだけを新品に交換してもオイルクーラー内部の1リッターは

古いオイルのままということになってしまうわけです。

ですので、理想を言えばオイルクーラー内部のオイルも全部抜いて、全量交換が理想ではあるのですが、ここは

ひとつ割り切りというか、この程度は目をつぶって、そのぶん、頻繁にオイル交換をすることで対応するという

考えでよろしいのではないかと思います。

どちらにしても、たとえばオイルフィルターカートリッジを交換しないオイル交換の場合だってカートリッジ内部

のオイルは古いままなのですし、仮にカートリッジまですべて交換したとしても、エンジン内部には案外とオイル

が残っていて、500ccから1リッター近くは古いオイルが内部に残ってしまっているものなのです。 ですので、

あまり神経質になりすぎる必要はないと私は考えます。

 

それでもどうしても「納得できない」方は、まず一度古いオイルを抜いて、それから新しいオイルを本来の規定量

の半分ほど入れ、その状態でエンジンを10分から15分ほどアイドリングで回し、それからそのオイルを抜いて、

フィルターカートリッジを交換し、今度は規定量のオイルを入れるという手順ではどうでしょうか。 この方法で

100%とは言えなくても一度エンジン内部を「すすぐ」ことができるので、かなりクリーンな状態にすることが可能

になります。

 

<参考> フラッシングオイルについて

私はフラッシングオイルの使用は反対です。 フラッシングオイルというのはいわば「灯油」みたいなものなので、

エンジンの潤滑にとっては最悪の物質なので、可能な限り使わないことです。 フラッシングオイルを使用後、それ

を抜いてもエンジン内部には抜け切らなかったフラッシングオイル分が数百ccは残ってしまいますから、せっかく

新しい高性能なエンジンオイルを入れても、そのオイルが残ったフラッシングオイルで薄まってしまい性能が半減

してしまいます。 さらに、アフターパーツのオイルクーラーをつけた場合はその配管ホースやオイルクーラーコア

の内部に入ったフラッシングオイルが大量に残ってしまうため、これがさらに大問題を引き起こす危険性があります。

なので、私はフラッシングオイルの使用には反対です。 とくにあと付けのオイルクーラーを追加装着した場合は

フラッシングオイルの使用は絶対厳禁と言ってもいいでしょう。 実際、純正でも空冷オイルクーラーを装着して

ある車には「フラッシングオイル使用禁止」となっているものもあるくらいです。 そもそも、定期的にきちんと

オイル&フィルター交換をしていればフラッシングなんて不要なはずです。

もし、どうしてもエンジン内部のスラッジやカーボンを落としたいのであれば、何回かディーゼルエンジン用のオイル

を使ってみるというのも手です。 ディーゼルエンジン用のオイルは清浄分散性能が高いので、走っているうちに

次第にエンジン内部の汚れを落としてくれますので。 ただし、ディーゼルエンジン用のオイルは高回転には対応

してないことが多いので、ディーゼル用オイルのままでのスポーツ走行や全開走行は控えてください。


●くり返しになりますが、あと付けのオイルクーラーを付けたらエンジン始動してすぐに走り出すのは避けましょう。

 

これはノーマルのエンジンでも同様なのですが、エンジンをかけるとすぐに油圧計あるいは油圧警告灯のランプが

消えてさも油圧が上がったように見えますが、これはあくまでもオイルポンプ直後の油圧が上がっただけであり、

この状態ではまだエンジン内部の、たとえばクランクシャフトやカムシャフト、ターボチャージャーなどの末端には

オイルは行き届いておらず、充分な流体潤滑状態にはなっていません。 ですので、エンジンをかけてすぐに走り出す

のはエンジン内部を傷めることにつながるのです。 ましてや、アフターパーツのオイルクーラーを付けてオイル経路

が長くなっている場合はなおさらオイルポンプからエンジン各部までオイルが行き渡るまでに時間が必要となります。

ですので、とくに大型のオイルクーラーをつけた場合などはエンジンをかけてから最低でも30秒から1分くらいは

アイドリングのままにしてエンジンのすみずみに充分オイルが行きわたるまで走り出すのは控えましょう。

こうした普段からの小さな気遣いがエンジンを少しでもいたわり、良好なエンジンコンディションを保ち、エンジン

の寿命を延ばすための秘訣となるのです。

 

↑私のJA22ジムニーに使用しているパーマクール社製(Perma-Cool)パイプチューブタイプのオイルクーラー

です。 アメリカ製で、エンジンオイルクーラーとしてはかなり安価な部類に入ります。

本格的なラジエータータイプのオイルクーラーに比べれば放熱性能では劣りますが、圧力損失が少なく、無駄な

容積も少ないため、エア噛みも少なく比較的安心して使用できます。 本格的なサーキット走行やレースなどには

能力不足なので不向きですが、ストリートメインでたまに全開走行して飛ばす程度の使用には充分です。

なお、私はオイルクーラーにはサーモスタットは不要だと考えています。 サーモスタットつきのオイルクーラー

使用時に考えられる問題点は「こちらのページ」に詳しく書いています。

私は空冷オイルクーラーにサーモスタットをつけるくらいなら、純正あるいはあと付けの水冷オイルクーラーを

大容量なものにして、油温がオーバークールになるときは水冷オイルクーラーを逆にオイルヒーターとして利用

し、水温でオイルを暖めて安定させてやれば事足りるので、そのほうがシンプルで合理的であると考えています。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~