K6Aエンジンオーバーホール写真
エンジンオーバーホールの際の写真と説明です
●今回のエンジンオーバーホールはヘッド加工など一部の加工や部品手配は自分でおこない
ましたが、主たる作業は(有)緑整備センターさんでおこなっていただきました。
緑さんとはもう20年近いつきあいで、私も作業を緑さんに依頼しますが、私自身も緑さんから
パーツの設計製作や加工の仕事を受けたりもしてます。
緑さんというとGT-Rのイメージが強いと思いますが、もうだいぶ昔の話になりますが雑誌
OPTIONの企画でカプチーノのチューニングをおこない、F6Aとしては最高速となる240km/h
オーバーの記録を出した(しかも排気量は660ccのままでです)ことを覚えている人も多いと
思います。このときは私もパーツ製作や加工でお手伝いさせていただきました。 今回私の
エンジンのOH作業をしていただいた方はこのエンジンを組んだ方です。
それで、私がこのホームページを作っていることを知っていて忙しい中、ありがたいことに
写真を撮って残しておいてくれました。 今回、その際の写真を送っていただきましたので、
せっかくですのでその写真とともに作業内容を簡単に説明いたします。
●シリンダーブロック面研&ホーニング加工

↑ブロック上面面研後の様子。 研磨量は最少にと指定し、0.055mmとなりました。
決して歪みがあったから研磨したのではなく(歪みは基準内で0.03mm以下でした)あくまでも
社外メタルガスケット使用にあたり、さらに面精度、面粗度を向上させてメタルガスケットの
性能を活かしてやるための研磨です。
シリンダーヘッドが0.045mm研磨ですので、合わせてちょうど0.1mm研磨したことになります。
これで圧縮比は純正が8.4と仮定した場合、0.1未満のアップですので誤差の範囲という感じに
なります。 ちなみに整備書の指示では限度量は0.15mmですので充分に許容範囲内となります。

↑シリンダーホーニング加工後の様子。
2番シリンダーの縦傷は100%は取りきれていませんが、このくらいならまったく問題ないレベル
でしょう。 もちろんホーニングは3気筒ともすべておこなっています。
こういう面研やホーニング加工は、むしろ新品のブロックではなくこのようにある程度使用して
歪み等が出る心配のないブロックを加工したほうが結果として良好なことが多いです。 新品の
ブロックはまだ熱が入っていないために使用中に歪みが出る恐れがあるのですが、一度使用して
火の入ったエンジンならその心配はもうありません。 何でもかんでも新品が良いというわけでは
ないのです。
●オイルギャラリー開口部の加工

↑ややわかりにくいかもしれませんが、オイルフィルター部からブロックのメインギャラリー
に繋がる穴をオイルがスムーズに流れるようにリューターで拡げ、R面取り加工がしてあります。

これはオイルポンプの吐出部。 ここも同様にオイルがスムーズに流れるようR面取りしてあります。
このことにより、とくに高回転時、高油量時のオイルの流れがスムーズになり潤滑性能に余裕が出る
ということです。 このへんもノウハウなのでしょうが、なかなか細かい気配りだと思います。
実際、こうしたオイルラインの交差部、合流部のR面取りは効果が高く、単純に油圧アップするだけ
よりも実質的なオイルの流量アップには効果的です。 このへんもエンジンチューニングのポイント
になるでしょう。
●バルブ

↑燃焼室側面を磨いた吸気バルブと排気バルブ
前回の更新でも書きましたが、排気バルブのシート当たり面が虫食いのようになっていて、密着性が
損なわれていました。 通常ならばフェース研磨するのでしょうが、今回は安いものですしどうせなら
新品にしてしまおうということで、6本すべてを新品の排気バルブに交換しました。
おそらくカーボンの噛み込みによってなったのだと思います。
前にも書きましたように、新品の排気バルブは「対策品」となっており、部品番号も12915-73G00から
12915-73G20に変更されています。これは初期型(旧規格)K6Aで排気バルブのトラブル(溶損や変型、
割れや摩耗)が多発したことから材質の変更がされたのでしょう。
もし旧規格K6Aターボエンジンでエンジンやヘッドのオーバーホールをする際はついでですのでこの
新品排気バルブに交換しておいたほうが良いかと思います。 ちなみに吸気バルブは変更はありません。
バルブクリアランスについてですが、とくにターボチューンの場合は規定の範囲内で最大にするべきです。
とくに排気バルブはそうすべきで、これはパワーアップによってより燃焼温度や排気温度が上がること
から、バルブステムの熱膨張がノーマル時よりも大きくなることがあるため、もしバルブクリアランスが
小さいと最悪の場合はこの熱膨張によってバルブがシートに密着せず、圧縮漏れするのはもちろんのこと
バルブフェースからの熱伝導が悪化することで排気バルブが溶けてしまう可能性があるからです。

↑これは摺り合わせをした排気バルブ。 当たり面幅は整備書では吸気が1.1mm〜1.5mm、排気が
1.2〜1.6mmとなっています。 放熱のためにも排気側は広めにしたほうが良いかと思います。
本来、チューニング用としては当たりの位置は外周ギリギリまで広げる(カーテンエリア面積を少し
でも稼ぐため)のでしょうが、今回はとくにそこまで追い込んではいません。
なお、単なるOHでもよくバルブとシートの摺り合わせをする人がいますが、たとえば当たり面に問題
があったとか、バルブを修正研磨あるいは新品に替えた場合は摺り合わせの必要がありますが、何も
問題がない場合は摺り合わせの必要はありません。 なぜならある程度距離を走って当たり面に問題
がないエンジンはすでに当たりが出ているわけですのでわざわざ摺り合わせする意味がないからです。
●バルブスプリング

↑スプリングテスターにて反発力を測り、吸気側、排気側それぞれできるだけバラツキの少ない個体を
選んで組み込んでいただきました。(吸気、排気ともスプリングは共通です)
なお整備書の指示では、旧規格K6Aのバルブスプリングは28.5mm圧縮時の反発力は13.5〜15.5kgf
となっています。(下限値12.8kgf) これはNAもターボもワークスRも共通です。
ちなみに、バルブスプリングのバラツキはけっこうあり、メーカー純正部品の新品はもちろん、社外の
チューニングパーツとして売られているものでもけっこう同一ロット内でもバラツキが大きいそうです。
そういう場合、2セットとってバラツキの少ない個体を選んで組むこともあるそうです。
なお、バルブスプリングはとくに強化はしません。 何かというとすぐ強化スプリングを組みたがる人
もいますが、ノーマルカムやワークスRカム程度では強化バルブスプリングは必要ありません。
強化スプリングが必要となるのはもっと加速度の高いカムを入れたり、レブリミッター(9000rpm)を
越えて回したい場合です。 純正のレブリミッターの範囲内でしか回さない場合はノーマルスプリング
で充分です。 むしろ下手にバルブスプリングを強化してもフリクションロスが増え、タペットやカム、
バルブやバルブシートの摩耗を促進させるだけでエンジンにとって何一つ良いことはありません。
●ピストン/ヘッドガスケット

↑シリンダーブロックに組込まれた新品ピストン。ホーニングしたこともありグレードはすべて1です。
ピストンは6個発注しそのうち重量のバラツキの少ない3個を選んだとのことで、ほぼ1g以内に収まって
いるとのことです。(以前にも書いた理由により無意味な重量合わせの加工はしていません)
写真でもわかりますが、モンスタースポーツ製の強化シールメタルヘッドガスケット(0.7mm厚)が
載っています。 K6Aはいくら純正でメタルガスケットとはいえ、あのシール層の弱さを知ってしまう
とさすがにもう純正ガスケットは信用できませんから。
ちなみに純正ガスケットの場合のヘッドボルト締めつけトルクは600kg-cmですが、このモンスターの
ガスケットの指定締めつけトルクは700kg-cmとなります。
●クランクシャフトジャーナル

↑ジャーナル部は写真のように磨きを入れてから組み込みです。
本来は専用の機械でラッピング加工(スーパーフィニッシュ加工)すべきでしょうけど、それほど状態が
酷いわけでもありませんので、軽く手作業によるラップで磨きを入れる程度です。
このクランクのメインジャーナルの磨きによる摩擦損失の低減効果は高回転ではかなりの違いが出ること
がわかっていますのでエンジンOHの際は必ずおこなったほうが良いでしょう。
ちなみにK6AもF6Aも同じですが、写真でもわかるようにフルカウンタークランクではありません。2番
シリンダーにはカウンターウエイトがないため、どうしてもこの2番の両側のメタルが片当たりしやすい
ので高回転になるほどクランクメタルには辛くなると言えます。

↑プラスチゲージによるメインジャーナル(クランク親メタル)のクリアランス測定。
整備書では0.02mm〜0.04mmが基準で使用限度が0.065mmとなっています。 ただ、これは
あくまでもノーマルエンジンをメーカー基準通りに組む場合で、単なるOHやリビルトではなく
「チューニング」の場合はこの基準よりも若干大きめにしたほうが高回転でのフリクションロスが
減りますので(あくまで限度内で)若干広めのオイルクリアランスにしたほうが良いと言えます。
●クランクスラストメタル

↑これは今まで使用していたエンジンから外したクランクのスラストメタル。
片方だけに擦り痕がついていますが、これは意外な盲点ではありますが、強化クラッチにするとその
クラッチペダルを踏んだときの大きくなった反力はこのクランクメタルにかかります。
つまり、圧着力の高いクラッチカバーにするほどこのスラストメタルに負担がかかってくるわけで、
必要以上に高いプレッシャーをもつ強化クラッチにするのも考えものというわけです。
もちろんこのスラストメタルも含めてすべてのメタルを新品に交換しました。
●クランクシャフトその他を組み込んだ状態

↑スズキスポーツの強化オイルクーラーも組み込まれています。
K6Aエンジンは最近のエンジンの主流とも言える「ラダービームロアケース」を採用している
エンジンです。 この構造はメインベアリングキャップの剛性を非常に高く取れる構造で、少し
前までは本格的なレーシングエンジンでしか見られなかった構造です。 それも今や市販エンジン
でも当たり前の構造となっています。 F6AからK6Aへの進化で劇的に変わった部分です。
なお、写真でも写っているオイルストレーナーからオイルポンプに行くサクションパイプですが、
これが意外な盲点でして、よく大容量オイルポンプに交換してもこのサクションパイプの径がその
ままだとここが抵抗になって結果としてオイル流量が増えず、中を流れるオイルが減圧され気泡が
混入、それが原因でメタルにダメージがいくことがあります。 もし大容量オイルポンプに替える
場合は必要に応じこのサクションパイプおよびストレーナーを大径、大容量化する必要があります。
ちなみに私は今回はオイルポンプはノーマルのままです。 ただ、レギュレーターバルブ(リリーフ
バルブ)のスプリングに1.5mm厚のワッシャーを入れて「気持ちだけ」油圧アップしています。
あまり油圧を上げ過ぎるとオイルポンプの負担になりパワーロスが大きくなりますし、オイルリーク
によりポンプの効率が低下しますので、最低限の油圧アップで済ませたほうが良いです。
●カムシャフト(HB21S ワークスRカム)を組み込んだ状態

↑ワークスRカムが組み込まれた状態です。 この後期型カムはベースサークル部の幅が狭くされて
いて軽量化と低抵抗化が図られています。 今回のチューニングの目玉となるパーツです。
このワークスRカムによる総合的な変化については、慣らしが完全に終わってからまたあらためて記事
にまとめるつもりです。
●タービン周辺

↑タフトライドをした新品エキマニを組み込んだHT07-A/R12ハイフロータービン周辺です。
オイルパンも付き、腰下は完全に組み上がった状態となっています。
タービン周りはエキマニの変更だけで、タービン本体も含め以前となんら仕様は変えていません。
いわゆる「ボルトオン最強仕様」という感じです。
●サージタンク周辺

↑サージタンクをはじめ、スロットルボディ、その他アルミ鋳物部品はすべて一度分解し、本体
もサンドブラストおよび洗浄機で洗い、綺麗にしていただきました。
なお、写真下方のウォーターパイプは何らかの対策品なのか、メーカーで変更となっていたため
これも新品に交換してあります。
●以上のような感じです。
「たかが軽自動車」のエンジンにも大排気量エンジンのOHと同様に手間と時間をかけて細部に
至って細かい作業をしていただきました。 おかげで素晴らしいエンジンに仕上がりました。
一般的には軽自動車のエンジンでここまで手間をかける人は少ないと思いますが、よくある
リビルトエンジンでは不安がありますし、私もこのジムニーにはまだ長く乗るつもりなので
ここでちょうどいいリフレッシュという意味も込めてやれることはやっておきました。
これであと10年は戦える(笑)

旧規格K6Aエンジンは低速トルクがないとか、とくに初期型は問題が多いとか言われますが、
現在まで続くK6Aの中でもっとも高回転型であり、しかもワークスRというグレードがあること
からもわかるようにチューニングベースとしてはじつはけっこういい素材と言えるのです。
流用できるパーツも多いですし、お金をかけずにいろいろ楽しめる良いエンジンだと思います。