(番外編)プラグ電極形状の種類について
点火プラグのいろいろ
●ここのところプラグネタが続いているので、今回もその流れで。
今まで私のエンジンにも数種類のスパークプラグを使用してきましたが、今回はそれらの特徴や
プラグ選びのポイントについて「あくまで個人的な」意見を書きたいと思います。

↑今まで私のジムニーのK6Aエンジンに使用してきた各種点火プラグ。
左からDENSOイリジウムタフVXU24、NGKレーシングR2349-9、DENSOレーシングIXU01-27です。
それぞれの特徴、印象としては以下の通りです。
●VXU24… 普段の街乗りからライトチューンでベストな選択だと思います。 始動性、実用域のトルク
ともに良好で耐久性もおそらく5万キロ以上、ノーマルエンジンならば10万キロでも持つのではないか
と思います。
●R2349-9… 純粋なレーシングプラグで、沿面であることからサーキット走行や極限での連続全開走行
などでの信頼性では一番かと思います。 実際、本格的なレーシングエンジンではこの沿面タイプがよく
使われます。 ですが、低温時の始動性では多少問題の出るときもありますので街乗りオンリーという
ことではあまり向かないかもしれません。
●IXU01-27… このプラグについては、ひとことで言うと上記2つのプラグの「いいとこ取り」みたいな
感じで、街乗りでのフレキビリティと、極限走行での信頼性、長寿命性を合わせ持ったレーシングプラグ
です。
●プラグの電極種類について
K6Aエンジンに限らず、最近のガソリンエンジン乗用車はほとんどがプラチナやイリジウム
電極のプラグを採用し、10万キロ無交換とか謳っているものが多くなりました。
たしかに「寿命」ということから考えるとそのくらいは持つのでしょうが、やはりベストな
状態を維持したいとなると、プラチナ(白金)やイリジウムでもその半分くらいで交換する
のが良いのではないかと思います。
と言うのも、スパークというのは「角から角」に飛ぶものであり、仮にギャップが広がって
いなくても、角が消耗して丸まってしまった時点で点火性能というのは落ちてしまうもの
なのです。 ですので、点火ギャップが何ミリとか、走行距離が何キロとかではなく、実際
にプラグを外して見て電極の角が丸まってきていたら交換してやるのが良いと私は思います。
このサイトの過去の記事でも接地電極の磨耗によりミスファイアーがおきてかなりトルク
ダウンした経験があります。
この現象のタチの悪いところは、ある時突然に性能低下を感じるわけではなく、知らず知らずの
うちに少しづつ性能劣化していくので、ついつい見過ごしがちになることです。
その状態で新品のプラグに変えるとまるで別物になったかのようにエンジンが元気になります。
やはりプラグは「寿命まで使い切るのではなく、性能低下しはじめる前に交換するのが最良」
だと思います。
それで今回は純正品や、純正以外でもよく売られているプラグの電極形式別の特徴を書いてみたい
と思います。
●基本型

このタイプはもはや旧車でしか使われないでしょう。 あくまで基本的なものです。
中心電極はニッケル合金で、だいたいφ2.5mm程度の径が使用されます。
私も昔はよく原付とかで接地電極の先端をヤスリでV型に削ったりして加工して使っていました。
●中心電極細型

これが最近純正でも多く採用されているタイプで、中心電極は主にプラチナかイリジウムが
使用されます。 先端を細くして電気エネルギーを集約させて点火ミスを防ぐのが目的です。
イリジウムプラグや白金プラグはイメージとして「長寿命」というのがあると思いますが、
これは中心電極ではなく接地(側方)電極の材質によって変わってきますので、すべての
イリジウムや白金プラグが長寿命というわけではありません。
この接地電極(外側電極)が通常のスチールのタイプのものは寿命としては一般プラグと大差
なく、せいぜい持っても1万5千キロから2万キロくらいでしょう。
それに比べ、長寿命タイプのものは接地電極先端にプラチナチップが熔着されていて、この
タイプであればノーマルエンジンであれば10万キロ、チューニングエンジンでも5万キロくらい
は持つものと思います。 ただし上記でも書いた通り、本来の性能を維持するということから
考えますと、この半分くらいの距離で交換するのがベストではないかと思います。
具体的な製品名で書くと、一般寿命のタイプがNGKではイリジウムIX、イリマックシリーズ、
DENSOではイリジウムパワーシリーズになります。
長寿命タイプはNGKではイリジウムMAXシリーズ、DENSOではイリジウムタフシリーズに
なります。
●両電極細型(スラントタイプ)

いわゆるレーシングプラグに多いもので、チューニングエンジン用プラグとして適したタイプです。
前述しましたように、スパークというのは角から角、即ち鋭角部から鋭角部に飛ぶ性質があります
ので、中心電極、接地電極ともに可能な限り細くすることで点火エネルギーを集中させることで、
強力なスパークを飛ばして悪条件下でのミスファイヤーを防ごうとするものです。
また、接地電極が細いので電極による冷却作用が低いので消炎に強く、火炎核の広がりを邪魔しに
くく燃焼の広がりが良いというのも特長です。 そのため、耐久性および耐熱性を高めるために
両電極ともにプラチナやイリジウムが電極材として使用されます。(一部ニッケルの製品もあり)
よくイリジウムやプラチナはその材質が先に注目されますが、実際は材質が先にありきではなく、
電極をできるだけ細くしたいということが先にあり、その結果、耐久性を確保するためにプラチナ
やイリジウムなどの高融点金属を素材として使わざるをえないのです。
参考までに、プラチナの融点は約1770度、イリジウムは約2450度です。 対してニッケルは約
1450度です。(ちなみに燃焼時のガス温度は約2500度ほどになると言われています)
具体的にF6A/K6A用で書くと、NGKではR2525-9/10/11、デンソーではIXU01-24/27/31/34
になります。
●多電極型

図では2極ですが、3極、4極など様々なバリエーションがあります。
電極が多いからといってすべての電極に同時にスパークするわけではありません。 電極が2つ
であろうと4つであろうと同時にスパークが飛ぶのは1箇所だけです。
これの特長は、接地電極が多いことで一方の電極が磨耗してもまだ磨耗していない電極に
スパークが飛ぶのでトータルの寿命が長くなるということと、仮にどこかの接地電極がカブって
も他の電極にスパークが飛ぶので、カブリに対して強いというのがあります。
しかし、近年のエンジンでは制御技術が向上したので熱価さえ適切であればプラグがカブるなんて
ことはまずないですし、上記で挙げましたように両方の電極がプラチナやイリジウムになって
長寿命になった現在、多電極プラグでなくても充分長寿命になったので、このタイプのプラグの
必要性は薄くなったと思います。
また、接地電極が多いということはそれだけ発生した「火種」の熱が奪われやすい(冷却作用が
強い)ことを意味しますし、その多い接地電極が火炎核の広がりを妨げるので、燃焼効率という
点ではあまり良くはありません。 このことが点火条件が厳しい状態(混合気が濃い状態やターボ
での高過給状態など)ではかえってミスファイアしやすいというデメリットもあります。
また、高温になりやすい接地電極が多くなるのでプレイグニッション(早期着火)やデトネーション
(異常燃焼)の原因にもなりやすく、極限状態では接地電極が溶け落ちる危険性も高くなります。
このようなことからこのタイプのプラグはもはや時代遅れと言ってよく、とくにハイパワーエンジン、
ターボチューニングエンジンには向かないのであまりお薦めできません。
もしこのタイプのプラグが唯一適しているエンジンがあるとしたら、リーンバーンエンジンくらい
でしょう。 希薄空燃比運転下においてもっとも火花の飛びやすい電極にスパークできるため、安定
した点火が得られやすいからです。
●沿面プラグ(セミ沿面プラグ)

これは独立した接地電極を持たず、外周部全周が接地電極として機能するものです。
よくロータリーエンジンなどに使用されますが、レシプロエンジンでも使えます。
2輪、4輪問わずレースシーンでもよく使用されます。 F1エンジンなどもこのタイプです。
このタイプの特長は、電極の向きが関係ないので、もっとも飛びやすい場所にスパーク
が飛ぶのでミスファイアが少ないことと、接地電極がないため、チューニングエンジン
でたまにある接地電極が溶けて落ちるなどのトラブルの心配がないこと、また、燃焼室に余計
な出っぱりがないのでタンブル流やスキッシュなどの燃焼室内でのガス流動がスムーズ
になり、結果としてノッキングが起きにくいことがあります。
そのため、とくに燃焼温度が高く、極限状態で使用されるハイパワーなチューニング
エンジン、超高回転型のレーシングエンジンに向いていると言えます。 NGKでも「ある意味
では究極のプラグ形状」とまで書かれています。
逆にデメリットとしては、プラグギャップの調整ができないこと、比較的熱価の高いものしか
存在しない(主にレース用なので)こと、街乗りでは低温始動性が悪いことなどから、あまり
ストリートユースには向かないです。
このタイプでF6A/K6Aに適合する品番で書くと、NGKのR2349-9/10/11となります。
注)なお、この沿面プラグと似ていて勘違いされやすいプラグとして、360度マルチエキサイト
プラグ(360x3マルチスパークプラグ)なるものが売られていますが、このマルチエキサイト
プラグはあくまでも実用エンジンでの火花経路を延ばすことで、実用域での着火性能を上げるの
が目的(らしい)ので、チューニングしたエンジンやレース用エンジンには向かないどころか、
ハードな使われ方をするとガイシや電極の脱落等のトラブルの元になり、実際けっこうトラブル
を聞いていますので、少なくともチューニングエンジンには使用すべきではありません。
形状はやや似ていても上記の沿面プラグとは理屈も使用目的もまったく異なるものになります。
実際、メーカー(東亜システムクリエイト)もこのマルチエキサイト(マルチスパーク)プラグ
は主にノーマルエンジン用であり、チューニングしたエンジンに対しては一切保証はできないと
コメントを出しています。 →メーカーページ
私個人的にはこのマルチスパークプラグはいろいろな意味で「怪しい」のでノーマルエンジンで
あってもあまり使用はお薦めできないプラグです。 使うならまさに自己責任でしょう。
●熱価の選択基準について
なおK6Aエンジンに対応する熱価ですが、ノーマルではNGK-7番(DENSO-22番)ですので、ブースト
アップでNGK-8番(DENSO-24番)、スズキスポーツのタービンやHT07タービン等のボルトオンターボ
でNGK-9番(DENSO-27番)、それ以上のタービン(RHF4やTD-04等)でNGK-10番(DENSO-31番)
あたりが基準になると思います。

注)本記事の適合で挙げたF6AとはすべてDOHCのF6Aです。 SOHCのF6Aはプラグが異なります。
また、K6Aエンジンでも最新のJB23-7型等のK6Aエンジンはプラグがロングリーチに変更されて
いるらしく、本記事で示したプラグは適合しないと思いますのでご注意ください。