(番外編)ターボのブースト圧などの圧力表記の違いについて
わかっているようでわかっていない圧力表記のされかたについて

↑これは私が今から25年ほど前に乗っていた愛車、RNN14パルサーGTi-Rです。
ダッシュボード上にある大きな80φのメーターがトラストの機械式ブースト計です。この
車は緑整備センターで2モード切り替え式のROMセッティングをしてもらい、0.8kg/cm^2
と1.3kg/cm^2の2モードに最適化したECUセッティングをして乗っていました。
●SI表記が一般化しても私は従来表記を使い続けます
最近はSI表記での表示が進み、メーター(計器)の表示もPa(パスカル)やkPaなどが
多くなってきましたが、私は直感的に感じ取れる以前からのkg/cm^2が好きなのでいまでも
この単位をプライベートでもビジネス上の文書でも用いています。 私はSI単位は嫌いなので。
これは何も空圧、油圧などだけではなく、金属材料の引っ張り強度の表記でも同じで、最近
はMPaなどで表示されることが多いですが、私は今でもkg/mm^2を用いています。
たとえば鋼材の引っ張り強さで「500MPa」というのはほぼ「50kg/mm^2」にあたります。
これはもう私のポリシーのようなものでおそらく一生変えることはないでしょう。 たとえ
外部から強制されても私はこの姿勢を貫くつもりです。 たまにアメリカで描かれた図面を
見ることがありますが、彼らだって相変わらず今でもインチで寸法を表記していますからね、
いくらグローバル化とはいってもなんでもかんでも右にならえする必要はないと思います。
だって、わかりやすいじゃないですか。 たとえば「2kg/cm^2」と書かれていれば、直感的に
「ああ、1平方cmの面積に2kgの力が加わっているんだな」と容易に想像がつく。それに対して
SI単位というのは感覚的に掴みにくい。 私に言わせればパスカル?何それ? ニュートン?何
それ?という感じです。 こんなものを法律的に強制化するのはいかがなものかと私は思います。
机に向かって研究ばかりしている学者さんからすれば問題なくても、私のような現場の人間から
すればいちいち換算しないとわかりにくいSI単位というのは非常に厄介な表記方法なのです。
なお、kgというのは重量を表わしますので、力学で言う圧力や応力については正しくはkgf
(キログラムフォース)と表記する(たとえば2kgf/cm^2のように)のが本来なのですが、
一般にfは省かれることも多いのでこのへんについては曖昧にしておきます。
●ターボやスーパーチャージャーのブースト圧表記には「国による違い」がある

さて、ターボエンジン(機械式スーパーチャージャーも含む)のブースト圧(過給圧)でも
いくつかの表記方法がありますが、今回はこれについて書きたいと思います。
というのも、一般的に我々日本人はブースト圧をたとえば「0.8kg/cm^2」というように表記
することが多いですが、一部の自動車雑誌、とくに欧州車の雑誌などではよく「1.7kg/cm^2」
と書かれていたり、ヨーロッパ車のカタログなどを見ても1.8kg/cm^2などかなり高い圧力で書
かれていて驚くことがあります。
しかし、これは決してヨーロッパ車のブースト圧が国産車よりも高いというわけではなく、圧力
の表示基準が異なるだけなのです。(一部の特殊なエンジンでは本当に高いものもありますが)
●「ゲージ圧」と「絶対圧」の違いに注意する
このような圧力(気圧)の表記の仕方には「ゲージ圧」と「絶対圧」という2つの表示方法があり
ます。 ※このゲージ圧のことを「相対圧」とも言います。
まず「ゲージ圧」というのは一般的に日本車のブースト圧で表示されるもので、「大気圧を0点と
してそこから正圧、負圧の相対圧」を表示するというものです。 たとえばブースト0.7kg/cm^2
というのは1気圧に対してさらに0.7kg/cm^2の圧力が加圧された状態ということです。
逆にマイナス値については-760mmHgを絶対真空として表記します。

↑一般的な「ゲージ圧」表記式のブースト計(正確には負圧も表示するので連成計と言います)。
大気圧である1気圧(水銀柱圧で760mmHg)をゼロポイント基準とし、そこから正圧をkg/cm^2、
負圧(バキューム圧)を-mmHgで表記するのが一般的です。 -760mmHgが絶対真空となります。
これに対して「絶対圧」というのは文字どおり「0気圧をゼロとした圧力」であり、ヨーロッパ車の
多くはこの絶対圧でブースト圧を表示しているのです。 つまり、大気圧である1+ゲージ圧である
0.7を加算して合計「1.7kg/cm^2」と表記しているだけなのです。
つまり「ヨーロッパ車の1.7kg/cm^2と日本車の0.7kg/cm^2とはイコールである」ということです。
たまにヨーロッパ車中心の自動車雑誌を読むと記事で「このエンジンは1.7kg/cm^2という驚くべき
高過給圧である」などと書いているアホなライターもいますが、おそらくこういう記者はこの絶対圧と
ゲージ圧の違いを理解していないものと思われます。 この程度はきちんと勉強していただきたいです。
※ヨーロッパ車のすべてが絶対圧表記であるというわけではありませんので念のため。

↑なお、オイルポンプなどの油圧については日本でもヨーロッパでも共通で「ゲージ圧」で表記して
いるのが一般的です。つまり油圧ゼロ=大気圧というわけです。(写真はF6A用大容量オイルポンプ)
●バール(bar)という単位
ちなみにこれとは別に「バール(bar)」という単位もありますが、これも本来は絶対圧による表記です。
つまり、大気圧である1気圧を1バールと表記します。 昔の天気予報では気圧をmb(ミリバール)で表記
していましたが、1気圧を1013ミリバールと表現していたことからも絶対圧であることがわかりますね。
しかし、このバールはしばしば曖昧に使われ、私も当サイト内では考えもなくタイヤの空気圧や過給圧に
バールという言葉を用いてしまい混乱させてしまっていることも事実です。
というのも、このバールという単位は本来は絶対圧であるにもかかわらず、相対圧(ゲージ圧)としても
使われることが多く、たとえばタイヤの空気圧も「2キロ」というのを「2バール」などと誤って書かれる
ことも多いのです。タイヤの空気圧は通常はゲージ圧ですから。
なので、バール表記の場合、これらの混乱を避けるためあえてゲージ圧力のことを「barg」、絶対圧のこと
を「bara」などと分けて表記することで誤解を招かないようにする場合もあるようです。

↑私が普段愛用しているタイヤエアゲージ。 これは相対圧でのバール表示となっていますので、そのまま
kg/cm^2に置き換えて読んで問題ありません。

↑この漫画ではkg/cm^2とバールを同じものとして扱っていますが、さりげなく「相対圧」と「絶対圧」
について触れています。 ただ、前述したように「バールは本来は絶対圧」であり、「kg/cm^2は日本式
ではゲージ圧」なので、「kg/cm^2をバール」とそのまま置き換えて書くのは誤った書き方だと言えます。
また、もうひとつ残念なのは「ターボで押し込む」という表現は正しいとは言えません。
<参考リンク> →ターボは空気を押し込んでいるという考え方の誤り
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●その他の圧力単位
また、アメリカなど「ヤード・ポンド法」の国では「psi」という単位も使われます。 たとえば「1psi」
と書かれていた場合「1平方インチ(25.4mm^2)あたり1ポンド(約453.6グラム)の圧力が加わった状態」
ということになります。 ただし、これも絶対圧なのか相対圧なのかはケースバイケースのようです。

↑psi表示の燃圧計。 面積と圧力の両方を換算しないとならないため、kgf/mm^2に換算するのはちょっと
面倒ですね。
さらにドイツなどでは「Torr(トール)」という単位も使われるようで、これは「760Torr=1bar」
となりますので、日本で言うとmmHgと同じ値になります。
そういえば、1980年代のターボF1の頃もよく「過給圧4バール」などと言われていましたが、あれは絶対圧
だったのかゲージ圧だったのかいまだにわかりません。おそらくは絶対圧だったのではと思いますが。

↑1980年代のターボF1時代の最強エンジン、ホンダRA16Eシリーズ。 私の記憶が曖昧で申し訳ないの
ですが、たしかこのRA166Eあたりが最高ブースト圧6barあたりだったと思います。 その後、FIAが
過激なパワー競争を抑えるため、4barに落とす規制をし、最終的には2.5barまで落とされたと記憶して
います。 それでも最後までホンダエンジンの強さは変わりませんでしたけどね。
●私のJA22ジムニーのファインチューンK6Aエンジンのブースト圧

↑私のジムニーのチューンドK6Aエンジンは通常はブースト圧1.3kg/cm^2から1.5kg/cm^2で使っています。
もっとも、私のエンジンはワークスRカムの特性とHT07 SPL仕様のA/R12タービンのため、5000rpm以上
回さないと1kg/cm^2のブースト圧はかからないので、街乗りでは0.5kg/cm^2くらいまでしか使いません。
たまに飛ばしたいときに8500rpm〜9000rpmまで回してフルブーストかけてドッカンターボを楽しむのです。

↑2010年に緑整備センター様でオーバーホール兼ファインチューンした際のタービン付近の写真。
「K6Aエンジンはハイブーストに弱い」なんていまだに言っているチューナーもいますが、高精度にキッチリ
加工し、強化すべきところは強化し、さらに高い技術で組み上げれば2kg/cm^2のハイブーストでも充分に
使えるポテンシャルがあるのですよ。
もっとも、私はなるべく長く使いたいので安全をみて現在以上のブースト圧で使うつもりはありませんが。