軽量ブレーキドラム製作
フロントディスクが好結果だったで、続いて軽量リアドラムを製作しました。

↑製作したドラムAssy。
ダクタイル鋳鉄ドラム、超々ジュラルミンディスク部、ステンレスボルトの各パーツから構成されています。
組み込み重量は5kg弱で、ノーマルドラムよりも25%以上、重量にして1個あたり約1.6kgの大幅な軽量に
なります(フロントディスク製作ページの検討図のときの重量は、ノーマルドラムの体積を間違って計算
しておりました)ので、フロント同様にバネ下重量の軽量化にかなり貢献することになります。
フロントディスクのページで載せた検討図ではドラム全体をアルミで造り、鋳鉄ライナーを圧入&ボルト
固定する方法を考えていましたが、いろいろ検討した結果、ドラム本体をアルミで被うよりもドラム自身
に円周方向にフィンを設けそれ自体を露出させたほうが放熱効果も高いですし、なおかつそのフィンがドラム
の剛性向上のためのリブになることから、剛性確保にも貢献し、かつこの構造のほうが軽量になることが
わかったため、今回のような構造に変更してみました。
しかも、このほうが製作にかかる手間も省けるということになりますし。
●ハブボルト

↑ハブボルト部
ハブボルトは純正部品(09119-12003)を使用。 このボルトの廻り留めはセレーションによるものではなく
Dカットによるものです。 よくフローティング2ピースディスクローターのピアスボルトに使用されている廻り
留めと同じです。 これを選択したのは、ディスク部は硬質なANP89とは言え所詮はアルミなので、セレーション
だと長期的に見た場合は何度も締めつけと緩めをくり返すと、ガタが発生して空回りする危険性があるためです。
万が一、知らない人がインパクトレンチを使用して緩めたり締めたりした場合はとくに危険ですので。
●ドラム

↑ドラム本体。
材質はダクタイル鋳鉄、FCD450です。
フロントディスクとの利きのバランスをとるため、ディスクと同じ材質を使用しました。
ただ、ドラムはそれほど割れる危険は少ないので、性能面から言えばわざわざ高価なFCDを使用する必要はありません。
外周のリング状のリブは放熱面積確保と剛性アップのためのもの。 一石二鳥を狙ったものです。
表面は艶消し黒の塗装にしました。
●ディスク部

↑ディスク部
材質はANP89、表面処理は通常のアルマイトです。
ANP89材は現在、流通しているアルミの中ではアルミーゴに次いで高強度な材料です。
JA系ジムニーのリアドラムは、ドライブシャフトのハブがそのままホイールに繋がっている構造ではなく、一旦
このディスク部を介してからホイールに駆動力を伝達するようになっています。 そのために、あえてフロント
ディスクハブよりも高強度な材料を選択しました。 なお、JB23になってからは構造が変わり、素直にドライブ
シャフトのハブがそのままホイールハブになっています。
アルマイトカラーはフロントディスクベルと同じにしましたが、アルマイトはどうしても材質やロットの違い
で色調に差がでるので、若干の差は仕方ありません。 ですが、できるだけ統一性を持たせました。
●補強プレート

↑中央のドライブシャフトの締めつけ部は駆動力をそのまま伝達する関係で、さすがにアルミ直では弱いので、
この部分には厚さ3mmの45Cプレートを入れ、面圧を稼ぐようにしてあります。
表面処理は亜鉛メッキの有色クロメート2種、 いわゆる虹色(金色)クロメートです。
これは亜鉛メッキ後にクロメート(ユニクロムディップコンパウンド)という化成処理を施し、亜鉛そのもの
の耐蝕性向上と、美観を与えたものです。
このメッキはその表面の色により、1種(通称ユニクロメッキ)2種(通称クロメート)3種(黒色)4種(緑色)
などに別れています。 ボルトによく見るメッキですね。
なお、亜鉛メッキはトタン屋根でお馴染みですが、亜鉛の防錆理論は「犠牲防錆」と言われるもので、亜鉛その
ものが錆びることで素材の鉄を錆から守ることでおこなっていますので、たとえばクロームメッキやその他の
メッキのようにメッキそのものが錆びないというわけではありません。 亜鉛は錆びます。
言ってみればメッキ自身が錆びることで鉄を錆から守る、「身代わり」になるわけです。
ただし、亜鉛メッキは水素脆性が激しく、材質の強度を損ねるので、私は高強度を求められる箇所に使用される、
たとえばHRc40以上の硬さをもった熱処理鋼には使用しません。
●ボルト
ボルトは通常のA2-70規格のステンレスボルトです。 サイズはM5×20。
フロントディスクで使用したものと同様のものです。
●取り付け

↑装着したところ。
●取り付け後の変化。
気になるバネ下荷重の低減効果ですが、フロント同様、やはりバタツキ感やつき上げ感の低下がはっきり
感じ取れますので、効果としてはけっこう高いです。 荒れた路面でのトラクションの向上にも一役
かっています。 数十gではなく、kg単位になるとバネ下の軽量化の効果はたしかに大きいです。
どうせサスペンションチューンするなら、ただ固めるだけでなく、こうした部分にも注目してアプローチ
するほうが総合的な性能が上がるということが言えるでしょう。
少し走ってアタリがついてきてから高速に乗ったりして何度か連続して試しましたが、利きがよくなった
おかげで、フロントとのバランスも良好です。
踏力に対してのリニアリティも純正パッドということもありわりとマイルドな特性が残ってますので、
いきなりガツンと利くこともなく、温度の変化にも穏やかです。

↑フロントに比べるとドラムが思いっきりホイールの開口部から見えるので、見た目のインパクトはそれなり
に高いです。
ただ、取り付けてしばらく走ったあとに一旦外しました。 理由はシューとドラムが馴染んできたところで、
けっこう鳴きというか、ビビリ音が大きめに出てきたためです。
気にしなければ問題はないのですが、やはり街乗りだと気になります。 これの原因についてはハッキリとは
わかりませんが、まず、ブレーキの食い付きが良くなってμが上がったことに対して、ドラムを軽量化したため
に、共振してしまったものだと思います。 感じとしてはバックプレートと共振してるような感じです。
実は過去にも、他車でフロントディスクの製作のときに、ローターベルの剛性不足で同様にブレーキ鳴きの原因に
なった経験があります。 このへんは共振点とのバランスになりますので、なかなか特定の周波数の音を消すと
いうのは難しいところではあります。
ノーマルドラムであればその質量によって吸収できてしまうのでしょうけども、今回のように軽量化を最優先に
作ると、どうしてもこうした弊害も出て来てしまうということです。
それを除けばバネ下荷重の軽量化による乗り心地の向上、ブレーキ性能の向上といいことばかりなので、非常に
残念なのですが。 これについてはもうちょっと考えて対策を施したいと思います。
特定の性能を伸ばそうとすると他のマイナスファクターが顔を出すという、典型的なチューニングパーツ開発の
落とし穴にはまったという感じですね。