ジムニーの社外ラテラルロッドの信頼性、安全性についての疑問
最近、安価で危険な製品が多く売られているので要注意です。

↑私の車のリア側ラテラルロッド。(2004年の装着当時の古い写真ですが)
●ジムニーではわりとポピュラーに交換されるサスペンションパーツとして「ラテラルロッド」
(パナールロッド)がありますが、最近、私の元にも相談が来たのですが、某社外ラテラルロッド
が「街乗りで激しい走りをしてないのにいきなり折れた」「ピロボールやブッシュがすぐガタガタ
になる」というケースが目立ってきているようです。 どうも、ヤフオクなどで非常に安価な製品
が売られていて、そういったノーブランド品や安物ではかなり、造りが粗悪で危険なパーツも多い
ようです。

↑某ヤフオクで売られている激安ラテラルロッドの溶接部分。 こんな見るからに肉盛りも足りず、
熔接も充分に溶け込んでない「いい加減な素人溶接」では接合部が弱すぎていつ折れてもおかしくあり
ません。 こんな危険な製品が市場に出回っていること、また、こんなものを平気で売っている業者が
いること自体、私には信じられないことです。 きっと、ラテラルロッドにどのくらいの応力が
かかるものなのかなどまったく計算せずにカタチだけ真似て作っているいい加減な製品なのでしょう。
また、長さ調整式ラテラルロッドではこの調整ネジ部から折れることもよくあるようです。
●ラテラルロッドはただの「つっかえ棒」ではない
ラテラルロッドはサスペンションの横方向の位置決めと横方向の力を受け止める強度上重要なパーツ
なので、多少、価格は高くても信頼性のあるメーカーのものを選んでください。
それに、このラテラルロッドの出来がステアリングのジャダーやシミー発生の原因になっていること
も多いのです。 実際「何をやっても収まらなかったハンドルジャダーがラテラルロッドを純正に
戻しただけでピタッと収まった」という例もあるくらいですので。 ラテラルロッドはリジッドサス車
にとっては重要なパーツなのです。
●私のJA22に使っている「自作ピロボールラテラルロッド」

↑私の独自設計、製作の両端ピロボールラテラルロッド。
詳細はこちらを参照ください →ピロボールラテラルロッドの製作
私はこのラテラルロッドを製作するにあたって純正部品を切断、強度分析したうえで設計、使用
する材質や熱処理、表面処理を決め、使用するピロボール(ロッドエンド)も航空機用の最高級品
を採用し、純正をはるかに上回る剛性と強度を持たせて製作しました。

↑純正ラテラルロッドを切断し、パイプ内外径、溶接部の肉厚など調べ、最低限必要な強度を算出
します。 仮に、材質強度を約40kg/mm^2と少し余裕を持って計算すると、パイプ部の引っ張り強度
は約5.8トン、溶接部の強度は約4.8トンとなります。 これがひとつのクリアーすべき基準強度と
なります。もちろん、たわみ方向の剛性も充分に検討します。 しかし、これを聞いて「こんな箇所
に5トンもの力がかかるわけないじゃないか」と思われる方も多いと思いますが、たしかにマトモに
5トンもの力がかかることはありません。問題なのは「くり返し応力」なのです。 たとえば、1トン
程度の力でも何百回、何千回とくり返し力がかかると局部的に応力が集中し「金属疲労」で破損して
しまうのです。そのための「余裕」として5トン程度の余力が必要というわけなのです。 専門的には
この「何千回、何万回のくり返し応力で破損する力」のことを「バウンダリー値」と呼びます。通常は
1千万回同じ力をかけても壊れなければその部品は「永久に壊れない」と言われています。
●ただし「ラテラルロッドは強ければ強いほどいいというわけではない」
純正ラテラルロッドもハードなオフロード走行では曲がったりすることがありますが、これはわざと
大きな力がかかったときに曲がることで過大な力がフレームを歪ませないように、そこで力を逃がして
いるのです。なので、サスペンションアームなどもそうですが「純正は弱くてすぐに曲がっちゃうから」
と単純に強化品にするのは感心しません。 たとえばAPIOのラテラルロッドは「純正の2倍の強度!」
などと宣伝していますが、あまりに強くしすぎるのも考えものなのです。
自動車メーカーはちゃんと外部からかかった過大な力をどこで吸収するかを考えて造っているのです
から。 大切なフレームを守るために、わざとアームやロッドを弱くして、言わばヒューズの役目を
させているのです。ですので、社外のラテラルロッドも「強すぎず、弱すぎず」のバランスが大切なの
です。 過大な力がかかったときに「曲がる」ことで力を吸収する設計なら安全ですが、溶接部から
「折れる」なんて粗悪製品は危険で最悪、とんでもない話です。
●さらに重要なのは使用されている「ピロボールロッドエンドベアリング」
市販の社外のラテラルロッドを見ているとコストダウン重視のためか、明らかに強度不足で安物の
ロッドエンド(ピロボール/スフェリカルベアリング)を使っている製品が目立ちます。 前述した
ように、純正ラテラルロッドのもっとも弱い部分でも最低5トン程度の強度は確保しなければならない
わけですから、安物のピロボールではとても強度が足りません。 よく「国産ピロボール使用」など
と書かれている宣伝文句を見ますが、国産でもTHKとかIKOなどの安物では強度不足です。 国産の
ピロボールならなんでも良いわけではないのです。 詳細は後述しますが、日本製でも本当に信頼
できる高品質、高性能なピロボールは「NMB(ミネベア)」社製品だけです。

↑とあるメーカーのラテラルロッドのピロボール。これは16mmサイズのピロボールですが、2ピース
構造の簡易な安物で、破断強度はわずか3トン程度しかありません。つまり「純正部品の半分の強度
しかない」のです。 残念ながら、世の中で売られている社外品ラテラルロッドの大半はこのような
いい加減な製品ばかりです。 こんな製品を使っているとすぐにガタが出ますし、最悪はピロボールの
ネジ部が折れてしまいます。 非常に危険なので使うべきではありません。 そして安物のピロボール
のラテラルロッドを使ってる人に限って「ピロはすぐにガタが出る」なんて文句を言ってるのですから
笑えます。こういう人は本当に良いピロボールを知らないだけです。 一般に販売されているピロボール
ロッドエンドはあくまでも「一般産業機械用の汎用品」であって自動車のサスペンションに用いるには
強度不足です。 それに対して本当に良いピロボールロッドエンドは「航空機用、軍事産業用」として
まったく桁違いの高い強度と高い品質で製造されているのです。実際、私のような本物のレーシングカー
のパーツを製作している世界では以降で説明する本当に性能に優れた「本物のピロボール」を使って
いる人ばかりなので「ピロはすぐガタになるから…」なんて言う人はいませんよ。
ただ、レース用ではクラッシュ時にフレーム(モノコック)を守るためにわざと破断強度をギリギリまで
落とすためにあえてワンサイズ下のロッドエンドを選択することはあります。ただしこれは「1レース
だけ持てばいい」ということが前提でのものですので、ストリート用では充分に強度に余裕のある
サイズのピロボールロッドエンドを選択する必要があります。
●本当に信頼できるピロボールは「NMB製3ピースロッドエンドだけ」

↑私が使っているピロボールはNMB製HRT16Eです。 本当に強度を求めたらこのNMB製の3ピース
構造のロッドエンドしか選択肢はありません。 このHRT16Eはボールの材質にステンレスSUS440C
焼き入れ材、ボディにはクロモリSCM435熱処理材を使用していて、破断強度はなんと12.7トンもあり、
他の安物ピロボールの3倍から4倍の強度を誇ります。もちろん、純正部品のラテラルロッドの強度を
充分満たし、なお余りある強度を誇ります。 ですので、社外品の強化ラテラルロッドを選ぶ基準は
「ピロボールにNMB製3ピースロッドエンドが使用されているかどうか」が重要です。
実際、私のJA22ジムニーでも、このピロボールのラテラルロッドを使ってもう10年以上経ちますが、
ノーメンテナンスでも全くガタは出ておりません。 ただ、注意していただきたいのは、同じNMB製
ロッドエンドでも、2ピース構造の廉価版である「RBTシリーズ」は強度的に不足していますので、
「NMB製ピロボールだからすべてが安心というわけではないことを注意してください」。信頼できる
のはNMB社製品の中でもHRTシリーズおよびHRHTシリーズのロッドエンドだけです。 このシリーズ
のロッドエンドは米軍用規格(いわゆるミルスペック)を満たす世界でも数少ない最高級ピロボール
ロッドエンドです。

↑本当に信頼性のあるピロボールロッドエンドを製造しているのは世界でもNMB(ミネベア)だけと
言っていいです。 THKだのIKOだのの安物の強度不足なピロボールとは強度、精度、品質がまったく
違います。そのぶん、価格も他社製品と比べると「目玉が飛び出るほど高い」ですが、「本物」を
求めるのなら必要な出費と考えるべきです。 このラテラルロッドに使うサイズ(16mmから18mm)
で、1個2000円や3000円程度で買えるような安物のピロボールロッドエンドではオモチャ同然で
まったくハナシになりません。使うならやはり「本物」を使うべきです。
●ピロボールは「無給油タイプのほうが良い」
上記で挙げたNMBのHRTシリーズは摺動面にテフロンライナーを使った「無給油式」です。
レーシングマシンなどではこれが常識です。ですがジムニー用のピロボールラテラルロッドではなぜか
給油式のピロボールを使ったものが多いようですが、給油式はすぐに砂やゴミがボールとライナーの
間に入り、摩耗させてガタになってしまいます。 中にはピロボールにゴムブーツ、ダストブーツを
被せてある製品もありますが、これも完全密閉ではないため、所詮は気休め程度でしかありません。
仮に外部から砂が入らなくてもブッシュ自体の素材が摩耗してそれが原因でガタを発生させてしまう
ので、いずれにしても給油タイプのピロボールはガタが来るのが早く、これが原因でジムニーの持病
であるハンドルジャダーやハンドルシミーの原因にも繋がっていきます。 そもそも、給油タイプの
ピロボールは新品時からすでにガタ(クリアランス)がありますからね。 対して、無給油タイプの
ピロボールは、もともと与圧(プリロード)がかけられておりガタがなく、ほとんどゴミの入る隙間
がないため、摩耗に強く、ガタになりにくいのです。
ですので、私は使うのならNMB社製のHRT(HRT-E)シリーズのロッドエンドをオススメするのです。

●ウレタンブッシュ型ラテラルロッドの問題点
ジムニー用のラテラルロッドには、ピロボールタイプの他に、ウレタンブッシュを用いたタイプも
ありますが、私はこのタイプは正直あまりオススメはしません。
ウレタン樹脂は加工しやすく、初期の弾力はあるものの、ゴムと違ってすぐに弾力を失い変形したり
潰れたり、摩耗も早く、また、水分と反応し加水分解して素材が短期間で劣化するなど、正直、安い
だけで耐久性が乏しく良いところはひとつもありません。

↑ウレタンブッシュのロッドエンドは製作する側は安くて楽なのですが、実用性においては「消耗品」
と割り切る必要があります。 通常、1年も使えばもう初期の弾力はなく、ガタガタになってしまう
でしょう。これならまだ強化ゴムブッシュ(ラバーブッシュ)のほうがずっとマシというものです。
あと、中には「片ピロ、片ブッシュ」タイプのラテラルロッドも多いようですが、私には何のメリット
があるのかまったく理解不能です。 単に剛性と衝撃吸収性を両立したいのなら、両側強化ゴムブッシュ
製にしてしまったほうがジャダーの発生も抑えられるというものです。

↑片ピロボール、片ウレタンブッシュのラテラルロッド。 耐久性のないウレタンブッシュと安物の
ピロボールという最悪の組み合わせですね。 本当に、安物の低品質なラテラルロッドにはうんざり
させられます。 そのくせ、見た目だけは立派で「ピカピカのステンレス製」なのですから。
「見てくれ」な部分でなく、本当に機能上重要な部分にお金をかけて真面目に、質実剛健に造って
いただきたいものです。
●アフターパーツのラテラルロッドを製造、販売している業者様へのお願い
冒頭にも書きましたが、ジムニーでほんとに最近「街中で普通に走っていていきなり社外ラテラル
ロッドのロッドエンド部や溶接部が折れた」という相談が来て驚いています。 これは一歩間違え
れば大事故に繋がる危険なことなのは誰でも分かると思います。 いちおう、現在の車検の法律上
では「サスペンションアーム類および操舵関係は強度計算書が必要ですが、補助リンク、補助ロッド
の類はとくに書類は必要ないことになっています」。つまり、ラテラルロッドは車検上「フリーパス」
となっているのですが、それをいいことにこのような低品質で危険な製品が多くなり、走行中に破損、
ましてや大事故につながったりすれば、こうしたリンクやロッド類にも強度計算書が必要になってくる
可能性があり、業界自ら「自分達で自分の首を絞める」結果につながっていくだけです。 ですので、
ぜひともパーツ製造業者様には「とにかく安く作って多く売れればいい」なんて自分勝手な甘い考え
はせず、きちんとユーザーのことを第一に考えて「安全意識」をもって製品を作ることを心掛け、
きちんと強度計算や破壊試験をした設計製作をし、いい加減な製品を作って売るのはやめてください。
ユーザーが危険なだけでなく業界全体の信頼の失墜、迷惑になります!
また、ユーザーの皆様も安全第一で考えヤフオクなどで売られている「粗悪な安物ラテラルロッド」
は購入しないようにしてください。 ご自身と周囲の安全のためにも、多少高くても信頼性のある
製品を選んでください。 ジムニーという車は「オモチャ感覚」で弄る人が多いようですが、クルマ
は決してオモチャじゃありません。ひとたび事故を起こせば殺人ができる「走る凶器」なのですから。

↑フロント側 (注)この写真はまだスタビライザーのホーシング側がウレタンブッシュのときのもの。

↑現在はこのようにスタビライザーバーのホーシング側もピロにして「フルピロ」になっています。
<参考記事> →スタビライザーリンクのピロボール化(ホーシング側)