ラジエーターキャップ
パッキンに劣化が見られたら交換したほうがいいと思います。
●気がついてみれば私の車のラジエターキャップは新車時から1度も交換したことがありません。
ラジエターキャップの交換時期にはハッキリとした定義はなく、人によって毎年交換、車検ごと
交換とか、5年または100000kmで充分とか様々です。
高いものではないですしプラグ交換やオイル交換よりも簡単な作業ですので、頻繁に換えても
悪いことはないのですが、基本的にはパッキンの状態を見て判断する程度で良いと思います。
加圧力が低下する原因としてはパッキンが潰れた結果バネのセット圧が低下してしまっていたり、
パッキンの劣化(ヒビ割れや潰れによる変型、硬化による密着不良)によって密封性が落ちて
そこから圧が漏れたりするとラジエター加圧が低下してLLCの沸点が下がってしまいます。

↑交換したキャップ。
メーカー純正部品でも良かったのですが、どこでも売っているものですので市販の汎用品にしました。
NTK製(プラグのNGKと同じ会社)です。 ステンレス製ですが価格は意外と安いものです。
タイプはP539。 よく売られているSPACの品番で言えばSV53に相当します。
なお、社外品は1.2や1.3あるいは1.5とかのハイプレッシャータイプが多く、純正開弁圧のもの(0.9K)
は少数派ですが、私はあえて0.9Kのものを選びました。
加圧式冷却システムに於いては、暖機終了後は圧力が常に冷却系統にかかり続けていますので、圧を
上げるとそれだけ高圧の状態になる時間が長くなるので、無駄に高圧なキャップをつけても無意味
どころか、ホースやシール類に余計な負担をかけるだけです。
よくキャップ交換ついでにと深く考えずにハイプレッシャーラジエーターキャップに替える人がいますが
これは単に圧力が上がるだけではなく、冷却系内は冷えればまた減圧しますので、高圧と減圧をくり返す
ことによる圧力幅が大きくなることから、くり返し疲労が各部の寿命を縮めることに繋がります。
たしかに圧力を上げることでキャビテーションを減らすなどの期待はできますが、それとて僅かなもの
ですので、そのメリットとデメリットのバランスを考えると少なくとも街乗りメインの車には必要以上に
高圧なラジエターキャップの必要性はないと私は考えます。 使用するのであれば競技使用時のみとか
限定的用途で充分ではないかと思います。
ハイプレッシャーキャップの宣伝文句でよく「真夏のオーバーヒート対策に」などと書かれているのを
見ますが、そもそも0.9K(大気圧を加算した絶対圧では1.9K)でさえ沸点は約119度(これは水の場合で
実際のLLCの場合は濃度によって沸点はさらに上がる)になります。 つまりこの0.9Kのキャップでも
吹出してしまうようならば、その時点ですでに水温は120度以上の温度になっていることになりますので
それより高圧なキャップにしたところでオーバーヒート状態が改善されるわけではありません。
そもそも水温が120度に達する時点で正常ではないのですから、この沸点でも足りないようならキャップ
以前にラジエーターの放熱カロリー自体が不足しているなど、冷却系全体を見直さないとなりません。
高圧ラジエーターキャップは「オーバーヒートしない」ではなく「オーバーヒートしても吹き出しにくい」
だけで、むしろ水温が異常に上がっても吹出さないことからヒート状態を見過ごしてしまい、結果として
エンジンをより高温、高圧の状態で酷使することにもなりかねないので、かえってエンジンに負担を強いて
大きなダメージを与えることに繋がる危険のほうが大きいです。 ここをよく考えないとなりません。
人間の体にたとえるならば、風邪をひいて38度の熱を出したところで休ませるべきなのに、それでもまだ
無理をさせ、さらに熱が上がって40度を超えてぶっ倒れてからやっと異常に気がつくようなものです。
結局のところキャップを高圧のものに換えたからといって水温が下がるわけではないので、ハイプレッシャー
キャップにしたからオーバーヒートが防げるとか理屈にあわない認識や期待をするべきではありません。
それと冷却水内で発生する気泡についてですが、気泡といってもウォーターポンプベーンの裏側で発生する
いわゆるキャビテーションと、タービンハウジングやヘッドの排気ポート周辺のとくに高温になる部分で
局部的に起きる表面沸騰によるものがあります。
このうち後者の表面沸騰ですが、これはサブクール沸騰と呼ばれる現象で局部的に沸点を超える温度の部分
でごく表面的に冷却水が沸騰するのですが、これは決して悪いことではなく、このサブクール沸騰状態になる
ことで通常の流水状態での冷却の数倍の熱を奪うことができるので、むしろ熱交換効率は向上するのです。
メーカーのエンジンの冷却系の設計はこうしたこともトータルで考えておこなわれているのです。
ですので、下手に高圧のラジエターキャップをつけたり、LLC濃度を上げたりして沸点を上げすぎるとこの
サブクール沸騰を発生させにくくしてしまい、かえって局部的なオーバーヒートを誘発することさえあるの
です。
なお、蛇足ですが、LLCは真水よりも沸点は上がりますが比熱は下がります。 つまりどんなに高性能を謳う
LLCであっても真水より熱交換効率そのものは必ず低下するということです。
※お断り
一般的にはオーバーヒートの定義はラジエーターから冷却水が吹出すことを指して言うことが多いようですが、私の場合は
それ以前の段階、即ちエンジンが熱ダレを超えて過熱状態となり本来の性能が発揮できなくなった時点でオーバーヒート状態
と考えております。 たいていの場合このような状態になるとヘッドやブロックが歪み(とくにアルミブロックのエンジンは
要注意)ガスケット吹き抜けなどの危険度が高くなりますし、また、ECUが点火時期を遅らせたりなどフェイルセーフの対応
をするようになります。 なお、一度オーバーヒートして歪みが生じたエンジンは面研して修正しても、熱が入るとくり返し
歪みが生じるので交換以外に根本修理の方法はありません。 ですのでこうなる前にクールダウン走行する必要があるのです。
●キャップ開弁圧と水の沸点の関係(数値はあくまでも概算値。またLLCは濃度によって沸点が変わります)
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↑このように見てみると圧力を高くするわりには意外と沸点は上昇しないことがわかります。 つまり無駄に高圧
キャップをつけてもエンジンに負担をかけるわりには沸騰を抑える効果は低いのです。
※( )内の数字は大気圧を含めた絶対圧です。

↑外した純正キャップ。
機能には問題はなさそうですが、さすがに10年もそのままだとパッキンゴムはかなりヘタっています。
ただ、潰れているとはいえ、まだ弾力もありますし目立ったヒビ割れもありません。
日本のゴム製品の品質はたいしたものだと感心します。
なお、社外品のラジエターキャップにはパッキンゴムにシリコンゴムを使用しているものもあります。
たしかにシリコンゴムは耐熱、耐寒、耐薬品性などが高く一見、高級品のように見えますが、その反面、
機械的強度や耐摩耗性については通常使用されるニトリルゴムなどに比べると半分程度か、それ以下の
物性しかなく、強度という面では意外と不利なゴム材料だということはあまり知られていません。
ですので、常に圧力がかかり続けるラジエーターキャップのバルブのパッキンに使用した際、潰れやすい
傾向にあります。
その点、今回のNTKのキャップは純正部品相当の品質のゴムを使用しているため信頼性もあります。
●交換
純正のキャップとただつけかえるだけです。 当たり前ですが冷えているときにおこないます。

注)JA22のラジエーターキャップは製造ロットによって2種類の形状が混在しているようです。

↑今回のキャップ(P539)が使用できるのは赤丸の形状のものです。(加圧パッキン径28φ)
現在の国産車はほとんどがこの2種類の形状に統一されていますので見た目ですぐにわかると思います。
なお、右の形状の場合はP559という型番になります。
ちなみに最近の設計のエンジンは0.9Kというのはだんだん減ってきて、純正でも1.1Kを超えるのものが増えて
きてますが、これはエンジンの熱効率向上および排ガス浄化のために最適な運転温度域が昔よりも高くなって
いることが理由にあります。
エンジンは熱エネルギーを動力に変換する機械ですので、せっかく発生した熱を冷却するということはただの
損失でしかないわけですので、材料が持つ限り、また、ノッキングなどの異常事態が起きず、潤滑に問題が
生じない限りはできるだけ高い温度で運転させてやったほうがそれだけ多くの熱エネルギーを動力に変換する
ことが望めます。 そのほうが同じトルク(出力)を出すのであれば燃料消費は減りますし、また、温度が高め
のほうが燃料の霧化効率も向上する(ただし、あまり吸気温度が高くなりすぎると酸素密度が低下するために
トルクも落ちてしまいますので限度はあります)ために無駄なガソリンを使わずに済むため燃費も向上します。
当然、燃料消費が減るということはCO2の発生も減るということになるからです。 ですので最近のエンジン
はみな通常運転時から比較的温度が高くなるようになっているので、それにあわせてキャップの開弁圧も高め
になっています。 また、その他にはスタイル優先でエンジンルームのレイアウトや冷却に無理がある一部の
スポーツカーなど、局部的に熱が溜まってしまう構造の車で対症療法的に仕方なく高圧のキャップを使用して
いるものもあります。 特殊な例としてはR35GT-RのspecVはデフォルトで1.8Kという超高圧のキャップが
ついているようですが、これはサーキットでの極限走行状態を想定してのことだと思います。
(2011/7/28加筆修正)