レーシングプラグ

バイクレースでよく使用されている沿面プラグに替えてみました。


●私が現在使用しているプラグはDENSOのVXU24(NGK8番相当)です。

これは、中心電極がイリジウム、接地電極がプラチナのもので、耐久性に優れています。

実用上はこれでまったく問題ないのですが、今回は興味もあって、バイクのレースでも

よく使用されているレーシングプラグに替えて試してみました。

 

↑用意したNGKレーシングプラグ。 R2349-9。 レジスター入りプラグの9番です。

このプラグは他に10番、11番があります。 それぞれR2349-10、R2349-11となります。

 

このプラグは電極を見てもわかりますように接地電極が出っぱってない沿面プラグです。

この種のプラグはよくロータリーエンジンなどでも使用されるのですが、他に高圧縮NAエンジン

などで電極を出っぱらせることのできないエンジンでもよく使用されます。

中心電極を真ん中にして、360度すべてが接地電極のため、その時々に於いてもっとも火花の

飛びやすい方向へスパークすることができるのが特徴です。

通常の接地電極がフック状に出っぱっているプラグは、このフックによって火炎核の熱が奪われ

たり、吸気によって電極が冷却されたりして、最悪はミスファイアーを起こしやすいなどの

現象がおこりやすいと言えます。

ですので、極細プラチナ接地電極のレーシングプラグなどは、ほとんど電極が出っぱっていない

構造になっています。(もっとも、これには熱価の問題もありますが)

また、よく接地電極をいくつも出っぱらせているものもありますが、これらはその接地電極自体

が火炎核が広がるときに邪魔になってしまいますし、電極が熱を持ちやすく、接地電極の溶損

などを起こす恐れがあるので、とくに高出力エンジンには向かない面があります。

 

その点、この沿面タイプは見ての通りのオープン形状なので、点火してから火炎核が広がり、

燃焼していく際に邪魔になる部分がまったくありません。

また燃焼室に余計な出っぱりがなくなることから、言ってみれば燃焼室のフラッシュサーフェス

化によって、燃焼室内でおこるタンブル流などの流れを阻害しにくく、また、熱だまりとなる

接地電極もないのでノッキングが起こりにくいという効果もあり、このことからとくに高回転、

高出力、高圧縮のエンジンに向いています。

(ターボエンジンはスペック上の圧縮比は低いですが、当然ながら過給されるため、結果として

は「超」高圧縮エンジンと同じですので)

また、接地電極が出っぱってないということは、当然ながらプラグのトラブルでよくある

接地電極が溶けて落ちてしまうなどのトラブルの心配もありませんし、レーシングプラグは一般

のプラグよりもガイシなども耐久性のあるものが使用されています。

こうしたことがレースやハードチューンエンジンで好んで使用される理由でもあります。

なお、電極が出っぱってないことによって圧縮比が落ちてしまうと心配される場合もあるかと

思いますが、中心電極とネジ部の隙間が通常のプラグよりも狭いので、空間としてはたいして

差はありません。

 

こう書くと良いことばかりな気がしますが、最大の欠点としてはスパークするポイントが燃焼室の

上方になってしまうことで、本来はスパークポイントは燃焼室の中央付近のほうが良いのは明らか

なので、これが場合によっては悪影響を及ぼす可能性もあります。

具体的には、低温時の始動性の悪化や、街乗りなどでの実用域でのピックアップの悪化、最悪の場合

はミスファイアーの発生などです。 ただ、これらは燃調などがある程度しっかりとれていて、点火

系に劣化などがなければまず問題は起きないはずです。

 

結局、通常通りのフック状接地電極のあるイリジウムプラグのレーシングタイプも、熱価の関係から

スパークポイントはかなり上側ですので、その意味ではこの沿面プラグとほとんど同じです。

プラグの電極はハイパワーなエンジンになればなるほどより高温にさらされるので、冷却のためにも

突き出しができなくなるのが宿命です。 ですので、高熱価プラグのスパークポイントが上側に移行

するのはどの電極タイプのプラグでも必然的に同じことになります。

 

ただ、とくにこの沿面タイプはスパークギャップが通常のものよりもやや広め(点火パワーに余裕が

あればギャップは広いほうが強力な点火ができるので)ですし、もちろんギャップ調整などもでき

ませんので、要求電圧は決して低いとは言えません。

ちなみに、通常のフック電極のプラグのギャップは0.9mm〜1.1mm程度ですが、この沿面プラグ

は実測で1.3mm〜1.35mmもあります。 これだけスパークギャップが広いということは、点火系

にかなりのパワーを要求するということを意味します。

ですので、どちらかというとノーマルのフルトラのままよりも、C.D.I.システムなどとの相性のほう

が良いのではないかと思います。 プラグコードなども高効率のものにしたほうが良いでしょう。

少なくとも、純正プラグの状態ですでにミスファイヤーを起こしているようなエンジンではこの

レーシングプラグは活かせないどころか、ミスファイアーの嵐となるはずですので、点火系の強化

が必須となります。

ちなみに、私の現在のエンジンの点火系はプラグコードだけでなく、HKSのTwinPower装着および

社外の閉磁点火コイル(これについては後日掲載する予定です)に変更していますので、トータル

での点火パワーはかなり向上しています。

 

また、レーシングプラグはプラチナやイリジウムと比較して基本的に寿命そのものは期待できません

ので、従来のニッケル電極のプラグと耐久性なども同等だと思いますので、電極の角部の磨耗など、

こまめなチェック(とは言っても3000kmから5000km程度でのチェックで良いと思いますが)が

必要です。

※実際にレースでこのプラグを使用している人の話では、実際の寿命はけっこう長いようで、エンジン

のコンディション次第では下手なイリジウムよりも持つかもしれないとのことです。

 

なお、K6Aエンジンの場合、ネジサイズM12、ネジリーチ19mm、6角対辺16mmのものになります。

参考までに、F6Aツインカムも同じです。 (SOHCのF6A(4バルブ除く)はサイズそのものが異なり

ますので不可)


●取り付け後の変化

まず、心配された始動性、アイドリングや実用域でのトルクやピックアップの変化はありません。

電極位置が上方へずれたことから、アクセルのツキやトルクの立ち上がりに変化が出るのでは

ないかという懸念もありましたが、結果としてはまったく悪い点はありません。

たとえば3速1500rpmあたりの低回転からアクセルを開けていったときも、今までよりもモタツキ

感は改善されているようにさえ感じます。 もっとも、このへんは新品プラグに換えたときには

だいたいどんなプラグに換えても感じる程度のレベルの話ではありますが。

ただ、とくに実用域の低速トルクについては、たとえばアクセルを開けたときに「ドンッ」と

いう感じのトルクの出方が欲しい場合は、このプラグよりも突き出し電極のタイプのほうが向いて

います。

このプラグが真価を発揮するのは、やはり中〜高回転でのパワーや伸び、そして耐久性です。

ですので、高回転まで回した感覚は今までよりも確実に良いものとなり、6000rpm、7000rpm、

8000rpmからレッドゾーンへと上まで回すほど今までのイリジウムよりも速く、軽く回ってくれる

感じで、パワーの持続感があります。

まだ寿命や年間を通したチェックはしていないので、迂闊にお薦めはできないのですが、とりあえず

現時点では私の仕様のエンジンにはけっこう相性が良いと言えます。

 

いずれにしてもこのプラグはノーマルエンジンや、軽いブーストアップ程度のエンジンでは必要

ありません。 タービン交換などで、ノーマルの倍ほどのパワーになったエンジンなど、熱的に

厳しい要求がなされるエンジン、競技使用、あるいは高回転高負荷を多用した使い方をするなど、

ハードな条件が求められる場合にこそ効果が得られるものとお考えください。

そして、上でも書きましたようにC.D.I.などとの組み合わせで最大の効果を発揮します。

 

※注意

この沿面プラグとよく似た形状のものに、マルチエキサイトプラグなるものもありますが、あれは

このレーシングプラグとはまったく異なるものですのでご注意ください。

レーシングプラグは主にハイチューンエンジンでの限界領域の耐久性と信頼性を重視してつくら

れていますが、マルチエキサイトプラグはノーマルエンジンでの使用を前提とした、放電距離の

延長などを目的とした、主に低中速域でのトルクアップを狙ったものです。

ですので、マルチエキサイトプラグはメーカーでも言っているようにチューンドエンジンでは耐久性

や信頼性には難があるために使用する場合はリスクを充分に覚悟する必要があります。


↑これは私のエンジンで約10000km使用したイリジウムプラグの電極。 左から1、2、3番

シリンダーです。

さすがにイリジウム中心電極、プラチナ接地電極だけあって磨耗は認められません。 ギャップ

も新品時とかわらず、3本とも0.9mmを保っていました。

ただ、接地電極のプラチナチップはまったく消耗はないものの、それ以外の部分は1番シリンダー

はほとんど変化ないものの、2番、3番シリンダーのプラグはハッキリと面取りされたかのように

磨耗していました。

これはだいたいどんなクルマも共通なのですが、縦置きエンジン車の場合は熱的に厳しい奥の

ほうのシリンダーの燃焼状態が厳しいことによるものです。

それと、前後のシリンダーに挟まれた2番シリンダーもやはり熱的に厳しいです。

ですので、1番に対して、2番、3番の電極がやや消耗が激しいのは理屈にあっており、ごく

自然な現象です。

なお、以前にも触れましたが、現在の無鉛ガソリンおよびインジェクションエンジンの場合は

電極の焼け色は空燃比の目安にはなりません。焼け具合はプラグの熱価の判断をするものです。

私の場合は、基本的には問題なさそうですが、1番シリンダーに対して2、3番シリンダーの白さ

がやや気になりますので今回、9番にしたことでちょうど良いくらいかと考えています。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~