アーシング(アースチューン)とバッテリーについて
否定される方も多いと思いますが、私なりの解釈を書いてみます
●少し前にとある本を知人に薦められ読んだのですが、そこでは銅線ではなく「銀線」を使ったアーシング
(追加アース線、アースチューン)について記述がありました。
それによると「銅と銀では電気抵抗の差は僅かだが、電子の動くスピードは約1.5倍ほど銀のほうが速い」
と書かれていました。 ようするにこの本の著者は銅線に比べて銀線を使ったアーシングのほうが電子の
流れるスピードが速いため、電圧の立ち上がり瞬発力が高く、効率がずっと高いと言いたいわけです。
たしかに、電導率から考えれば銅より銀のほうが上ですが、それはあくまでも電気抵抗の低さの差であって
電子の動く速さの差は関係ありません。 たとえば、電線をパイプに見立ててその内部に小さなボールが
たくさん詰まった状態を想像してください。そのボールがいわば電子です。 電流が流れるということは
電位差が電線を伝わっていく「波」ですから、そのパイプの片方から内部のボールを押し込めばその力が
次々とボールを伝わって反対側から押されたボールが出てくるだけです。 ひとつの電子そのものが線を
移動してくるわけではないのですから、たったひとつの電子の移動速度がどうこうはまず影響しません。
電気が効率よく流れるためにはその「たくさん詰まった電子がいかに自由に動けるのか」が大切であって、
それを決定づけるのが「電気抵抗の低さ」です。 ですので、その意味では銅でも銀でもたいして差はあり
ません(もちろん、銅より銀のほうが若干有利なのは否定しませんが)。 しかし電子の動く速さそのもの
は非常に遅く、電流の流れる速さ(理論上は光速)に比べれば無視できる程度のものでしかありません。
以上のことから電子の動く速さなどというのは(少なくとも車のアース配線程度では)現実的にはまったく
影響のないレベルの話なのです。 しかし私の読んだその本ではそのへんをなんとなく誇張した表現をして
読者をミスリードしようとしているように感じ取れるように記述されていました。 こういう怪しい内容に
は惑わされないように注意する必要があります。

↑たとえばですが、もしこの本の著者が言うように銅線より銀線のほうが電圧の立ち上がりや電流の流れが速く
なるのであれば、もしプラグコードの芯線に銀を使えば点火時期が早まったりするのでしょうか(笑)
●最近は「銀線」を使ったアーシングラインやプラシングラインも出てきており、実際に使用されている方もいる
ようですが正直、価格に見合った効果があるかというと無駄なことでしょう。
なぜなら、自動車の電装部品への配線はすべて銅線です。 電気回路(サーキット)を考えたときにその一部
だけを銀線に換えたところで他の銅線の部分で電流の流れる速度や量は律則(ボトルネック)となっているわけ
ですから無意味です。 もし、車の配線のすべてを銀線に変えるとかなら多少の効果はあるかもしれませんが。

↑アーシング(アースチューン)、プラシング(プラスチャージング)を施工する場合でも使用する線は銅線で
充分です。 無駄に高価な銀線を使っても意味ないと思います。
●アーシングをバッテリーマイナスに戻す意味
よくアーシングを否定する方の中に「エンジン回転中は電力はオルタネーター(交流発電機)から供給される
のだからバッテリーのマイナス端子に戻すのは意味ない」と言われる方がいますが、これは私は違うと思います。
オルタネーターはそれ単体ではアイドリングや低回転では充分な発電能力はありません。 エンジン回転数が
ある程度上がって(エンジンによりますが、軽自動車の場合でだいたい2000rpm〜3000rpm)からは安定して
電力供給できますが、それ以下の回転数では余力のある電力供給はできないのです。
ましてや他の電装品(エアコンやライト、ワイパー、オーディオなど)を使用している際はなおさらで、こうした
状況では不足分や電圧を安定させるのにバッテリーの電力に頼らざるをえません。 たとえば、アイドリングで
信号待ちしている状態から発進するときや、2000rpm以下くらいの低い回転数で巡航している状態からアクセル
を踏み込んで加速しようとした際などはオルタネーターの発電力だけでは一時的に電力不足になります。
こうしたときにバッテリーがアシストしてやるのですが、ここで高性能なバッテリー、および適切なアーシングが
してあると、電圧および電流が安定し、スパークプラグの点火力やインジェクターのレスポンスに差が出ることから
結果としてトルク、加速力などに若干とはいえ差が出ることもあるわけです。
たとえば同じ加速をする場合、アクセルペダルを踏む量が少なくて済むことから燃費の向上が期待できるとかです。
オルタネーターにとってバッテリーは巨大なコンデンサーのようなもので、考え方としてはオルタネーターは
バッテリーを介して車に電力を供給しているのが現実です。 ですので、アーシングのマイナス側をバッテリー
のマイナス端子に繋ぐことは理にかなっています。
●しかしアースはすべてバッテリーのマイナスに帰せばいいというものではない。
私の考えではここが重要なのです。 これは以前にも書いたことがあるのですが「アーシングとひとことに言っても
2つの意味がある」ということです。 それは「マイナスアースライン」と「グランドアースライン」です。
ひとつめの「マイナスアースライン」は、純粋に電気回路(サーキット)を構成するプラス、マイナスのマイナス線
アースです。 これはたとえばスパークプラグの接地側やヘッドライトのアース、オルタネーターのマイナス極などで、
これらは純粋にマイナス線ですのでそのままバッテリーのマイナス端子に戻して差し支えないです。 ただ、現実問題
として考えると、いたずらにマイナス側の線ばかり増強してもプラス側の配線がそのままでは無意味です。 なので、
一般的に考える限りエンジン性能に影響を与える要素は点火系しかないわけですので、スパークプラグの接地部品である
シリンダーヘッドからのアースをバッテリーのマイナス端子に繋いでやればそれで充分です。
それ以外のオルタネーターやヘッドライトなどは、プラスライン側の増強(いわゆるプラシング、プラスチャージ等)と
併せてバランスを考えておこなわないとただアース線だけを強化しても効果は薄いです。プラス側とマイナス側をセット
で考えないと意味がないということです。 カーオーディオのアンプの常時電源などもプラス側、マイナス側ともに
バッテリーの端子に直接コードを繋ぐいわゆる「バッ直」で配線することではじめて意味があるのではないでしょうか。
ふたつめの「グランドアースライン」というのは電気回路を構成するものではなく、たとえば静電気の帯電などによる
電位差をなくすため、あるいはノイズを消すためのものです。 たとえばよくおこなわれるマフラーアースなどもこの
類で、その他、シリンダーブロック、スロットルボディ、エキマニなどからのアースラインなどもそうです。 どちらか
と言うとこっちのほうが本来のアース(接地)ボンディングの意味合いに近いんだろうと思われます。 これらの
アースは前述したマイナスアースラインとは異なり、単にボディ(フレーム)に電気を逃がしてやることが目的なので
わざわざバッテリーのマイナス端子に戻す必要はなく、ボディの適当な位置で構わないので、最短距離で繋げられる箇所
をアースポイントとしてアースを落としてやれば充分です。 むしろこれらのグランド(グラウンド)アースをバッテリー
のラインに戻すとかえって電源系統にノイズが乗ったりしてオーディオに雑音が入ったり、ECUなどに悪影響が出ること
さえ考えられます。
以上のことをまとめると、基本的には「バッテリーのマイナス端子に戻す追加アーシングラインはシリンダーヘッド
からの1本だけ(ヘッドが2つあるV型エンジン等では当然2本になる)で充分である」と言えます。 もちろん、
たとえばヘッドライトを明るくしたい場合などはそれらもバッテリー端子に戻すことは有効ですが、それは同時に後述する
ようなオルタネーター(ジェネレーター)への負担増加というデメリットもあるということをよく理解したうえでおこなって
ください。 その他のグラウンドアースの追加アーシング線は前述のような理由から、あえてバッテリー端子に戻すのでは
なく、ボディアースで充分事足りるわけです。 実際、たとえばマフラーアースをわざわざバッテリーに戻している人なんて
いませんよね?
要するに「なんでもかんでも全部マイナス端子につなぐアーシングはおかしいのではないか?」と考えています。
●追加アーシング(アースチューン)にも目的によってメリットとデメリットがある
考えなしにアーシングを追加することは逆効果になることもあります。 たとえば、よくアーシングをしてヘッドライトが
明るくなったというのがありますが、これはつまりそれだけ流れる消費電流が増加したということですから、オルタネーター
への負荷が増大したということになり、結果としてオルタネーターを回すエンジンのメカニカルロス(パワーロス)が
増えるわけですから、かえって燃費の悪化、トルクの低下につながるということです。 さらにライトが明るくなったという
ことはライトバルブに流れる電流量も増えたわけですので、当然、ライトバルブの寿命も短くなってしまいます。
つまり、アーシングをするにしても「燃費を良くしたいのか」「ライトを明るくしたいのか」「トルクを増強したいのか」
「オーディオの音を良くしたいのか」などの目的によって追加アースをするべき箇所、逆にしてはいけない箇所があり、
目的によって施すべき位置、場所(ポイント)が変わってきて当然ということです。
言ってみれば、そのいちばんバランスの取れた状態がメーカー純正(ノーマル)のアース配線ということになります。
このようにアースチューンにもメリットとデメリットがあり、よく考えて施工することが重要で、なんでもかんでもアース
線を張ればいいというものではないのです。 自動車メーカーだってそのへんは充分に考えて設計しているのですから。
なお、市販のアーシングキットでは「純正のアースは残したまま追加するタイプ」と「純正のアース線を外してバッテリー
ターミナルごとアース線を引き直すタイプ」がありますが、個人的には純正のアースはそのまま残すべきだと思います。
今回、このページで記述している内容はすべてこの「純正アース線に追加しておこなう場合」を想定して書いています。
●以上のような理由から私は「高性能なバッテリー+目的に応じた適切なアーシング」は的を絞っておこなう
ぶんには決してすべてがオカルトチューンではないと考えています。
まして最近の車のオルタネーターは必要なとき以外は無駄な発電をしない「充電制御」をしていますので、なおさら
バッテリーの役割は大きくなっておりますので、むしろこれからはバッテリー中心に電装系を考えたほうがいいと
さえ思います。 今やバッテリーは「ただスターター(セルモーター)を回すだけの存在ではない」のです。
「バッテリーはエンジン始動用のものだから」などと言っている人はまったくもって時代遅れと言っていいでしょう。
ですので、これからはバッテリーも性能にこだわった製品を選んだほうがより車の性能向上に繋がると思います。
バッテリーも立派な「チューニングパーツ」のひとつと考え、こだわって選んだほうがいいのではないでしょうか。

↑私のオススメのバッテリー、パナソニックのカオスです。 私の世代の車でもバッテリーによってその違いが体感
できるのですから、現在の充電制御をしている車ならなおさらバッテリーの性能による違いは大きく出るものと思います。
●今回の記述はあくまでも「現時点での私の解釈」です。 車の電装系はどんどん進化、複雑化していますので今後、
また新たな事実が出てくれば考え方も変わってくることもあるでしょう。 とくに最近の車両は先に述べた充電制御のため
に微妙な電流、電圧の差をコンピューターが監視しているらしいので、下手にアースラインやプラスラインの増強や配線
の引き直しをすると、これらの制御に悪影響を与える可能性があるとも言われていますので、場合によってはかえって
アーシングをすることでデチューンになり、最悪はトラブルや故障に至ってしまうこともありえますので注意が必要です。
結局、チューニングというものはどんなものでもメリット、デメリットが共存しますので最終的な判断は皆様でよく勉強
されて、ショップや販売業者の言葉や宣伝に踊らされず、ご自身の賢明な判断と責任でおこなってください。
私のJA22ジムニーも現時点では10年ほど前に装着した追加アースラインをそのまま使用していますが、そのうちまた機会を
みて今回の考えに基づき適切な(と思われる)最小限の追加アースラインに引き直そうかと考えております。
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