(番外編)スーパートラップのテスト
だいぶ前になりますが、スーパートラップのテストをしたときのものです。
●これを試したのは2004年ですので、すでに2年近くも前のことです。
今さらな感もありますが、更新ネタがなくなってきたので掘り起こしてみたいと思います。

↑スーパートラップサイレンサー、443スーパーショート。
内径50φ、外径90φ〜100φテーパ、サイレンサー本体長さ150mmのステンレス製です。
●正直言いますと、私はスーパートラップはあまり好きではありません。 説明されているその
原理と実際の効果に疑問を持っているからです。
スーパートラップの構造についての詳細はインターネットで検索すればいろいろ出てきますので
興味のあるかたは各自調べていただくとして、簡単に申しますと、重ねられたディスクの隙間を
排気ガスが通ることによって、ベルヌーイの定理により隙間の圧力が下がり、それによって流速
が速まるという、いわゆるベンチュリー効果によって排気ガスを「吸い出す」効果によるもの
だと説明されています。
このベンチュリー効果を最大限に発揮させる領域を、ディスクの枚数によって調整し、もっとも
効果を発揮させたいトルクバンドを変化させようとするものです。
たとえば、排気ガスの量そのものがあまり多くない中低速域でのトルクを大きくしたい場合は、
ディスクの枚数を減らして、排気ガスの量が少ない(=流速が遅い)領域でもベンチュリー効果
を高めてやって、排気ガスを積極的に吸い出すことで排気効率を高めてやるわけです。
ですが、逆にこのままでは排気ガスの量の多くなる高回転、高負荷領域では排気抵抗が大きく
なってしまいます。 ですので、高回転域重視の場合は、ディスクの枚数を増やしてやって、
ベンチュリー効果の発生ポイントを高回転高負荷側に移してやるわけです。
つまり、このベンチュリー効果の効率の良いポイントを [低速]ディスク減←・→ディスク増[高速]
とすることで、その走行シチュエーションによって適宜変更することができるというのが宣伝文句
となっていまして、これがスーパートラップの効果の概要です。
よく「ディスクの枚数によって排気抵抗を調整して…」などと記述されているものを見ますが、
単純に抵抗を変えているわけではなく、ましてや音量調整のためのものでもありません。
いちおう上記のような理屈があるのです。
早い話、排気の抵抗を変化させているのではなく、ベンチュリー効果の発生ポイントを変化させる
ことにより、トルクピークのポイントを変化させると考えたほうがいいです。
しかしながら、やはり問題はエンド部で排気の方向が強制的に変えられてしまうことは大きな排気
抵抗になります。
さらに、ディスクの隙間からの吸い出し効果についても、あのようなプレスで打ち出しただけのディスク
では断面形状的に流体力学の効果は望めないと思われます。
極端な話、飛行機の翼の断面を単に平らな板にしても空が飛べるのかということです。 翼断面を
しているからこそそこに有効な流速の変化が起き、それが気圧の変化を発生させるわけですので。
要するに、理屈のみが先行して、実際の製品はただそれっぽいかたちをしているだけのように思える
わけです。
スーパートラップは何故このような見た目に排気抵抗の大きい構造を採用しているのか疑問では
あるのですが、その理由は諸説あって本当のところはわかりませんが、有力な説としてアフター
ファイアーを後方に出すことを防ぎたい(これがレースのレギュレーションによるものとも
山林の走行などで山火事を防ぐためとも言われています)即ち、フレームアレスターとしての役割
があると聞いています。
つまり、アフターファイアーを出さないようにしながら、ストレートマフラーと同等の排気効率を
両立しようとこういう構造にしたというのが理由のようです。
(だとすると、スーパートラップのメリットは触媒装着車では得られないことになります。
触媒があればそれがフレームアレスターとなるので、元々アフターファイアーは吹きませんから)
●このように、理屈で考えればそれなりの意味があるように思えても、実際の製品効果には疑問点の
多いスーパートラップの構造ですが、100歩譲って仮にもし上記の理屈が正しいものと仮定した場合、
以下のような条件では多少なりとも効果があるのではないかという考えもできます。
それは単気筒や2気筒程度の、もともと燃焼間隔が空いているエンジンや、マルチシリンダーでも
排気管が集合していないようなエンジンで、これらのタイプのエンジンの場合、排気ガスが出る間隔が
空くため排気管内での圧力変動が大きく、負圧になった瞬間は一時的に排気口から大気の逆流が起こる
ことがあります。
当然ながら逆流が起こると次に排気ガスが出るときにそれを押し出さなければならず、それが排気抵抗
になるのですが、スーパートラップのディスクの隙間が逆にちょうどいい抵抗となるためこの外部から
の逆流を防ぐ効果があるのではないかというわけです。
つまり、逆に言うと排気間隔の短い高回転型エンジンや3気筒、4気筒以上のマルチシリンダーエンジン
で排気管が集合しているものなどでは効果は薄く、さらにターボエンジンのようにほぼ連続流となる場合
は効果が薄くなるどころか、単に抵抗にしかならないということになります。
つまり結論として、スーパートラップはバイクの単気筒エンジンのようなものには効果が「あるかも?」
しれませんが、マルチシリンダーエンジン(排気管が独立しているものを除く)、ましてやターボエンジン
でははっきり言ってメリットなしというのが私の考えです。
それと、エンドキャップですが、これは排気の脈動によって発生する圧力波を跳ね返しているはずです。
ですので、これも良い意味で考えればタイミングさえ合えば排気の抜けすぎを抑える効果もありますが、
そのタイミングが合う領域というのは限られますので、もしそのような効果があるとしてもごく狭い
領域のみです。 これは2ストエンジンのチャンバーのコーン部と同じ理屈です。
ですので、このエンドキャップについては排気ポート出口からの距離や容積(つまりパイプの長さや太さ)
などすべてが影響してきますので、ここだけを考えても意味がありません。
やはり、エキゾーストはシステム全体として考えなければ意味がないということです。
なお、オープンエンドもこれの一環だと思いますが、これだと圧力波だけでなく排気ガスもここから出て
しまいます(排気ガスそのものの抵抗と、脈動による圧力波とはまた別物です)のでディフューザーディスク
の意味がない=スーパートラップの本来の意味がなくなるのではないかと思います。
●とはいえ、好き嫌いは別として試してみないとなんとも言えないので、とりあえず今回はどのように
変化するのかだけを実際に体感して見ようと考えたわけです。
私の現在のJA22のマフラーはフロントパイプにサクソン改R34GT-R純正メタル触媒、リアマフラー
もサクソンのマフラーで、テールエンド部を切断してそこに300mmアルミサイレンサーという構成
ですが、このテストをしたときには触媒はつけておらず、サクソンのストレートフロントパイプでした。
装着はこのテールエンドサイレンサーをスーパートラップに置き換えておこないました。
●取り付け
まず、スーパートラップ本体の組み立てですが、これが本体のネジ(カシメナット)が非常に固く
そのままでは10mm前後しかネジが入りませんでした。
ですので、まずはこのネジをタップでさらうという作業が必要でした。 このへん、国産品では
考えられないところではありますが、アメリカ製ということでかなりアバウトです。

↑ディスクを留める6本のネジをすべてタップを通してさらいました。
なお、ネジサイズはユニファイネジの「No.10-24UNC」か、ウィットネジの「3/16-24W」の
どちらかです。 この2つはピッチは全く同じ、外径もほとんど同じため正確にはわかりません
でしたが、私はNo.10-24UNCのほうのタップを通しました。
ちなみに、付属ボルトの頭部には316の刻印がありますが、もしかしてSUS316(相当)を使用
しているのかも知れません。
SUS316はSUS304に対してニッケルの含有量を増やしたもので、とくに海水などの腐蝕に対して
強化させたステンレスです。 強度的なものはSUS304とほとんど違いはありません。
余談ですが、このネジをいっそのことM5のタップに立て直してしまうという手もあります。
ネジが2重になってしまいますが、上記インチネジよりもM5X0.8のほうが、ピッチが細かいぶん
ネジの断面積が大きくなるので折れにくくなります。 実際、このネジはよく折れるようです。

また、スーパートラップはその構造上、排気が真後ろではなく、外側45度の角度で放出される
ため、私のように樹脂製バンパーだと排気が直接バンパーに当たって、バンパーが熱で溶けたり
変型する可能性があるので、排気シールドをつけて保護してやることが必要です。

↑オプションパーツの排気シールドをつけた状態。 上方への排気をカットします。
なお取り付けは、もとつけていたサイレンサーを外し、そのまま入れ替えました。
パイプ径もそのまま、サイレンサーバンドもそのまま使用できるので簡単に置き換えできます。
●取り付け後の変化。
まずはディスク枚数の設定です。
これには基準というのはないので、まずはパイプ径50φに相当する総面積を基準に考えました。
かなり大雑把ですが、内径50φで1枚あたりの隙間1.5mmですので、ディスク2枚に挟まれた隙間の
開口面積は約235.6mm^2となります。 実際にはボルトの通るデッドエリアが54mm^2ほどあります
ので、それを引くとだいたい181.6mm^2となります。
対して、50φのパイプ径からパイプ肉厚を除いた断面積は約1661.9mm^2となります。
これにディスク枚数をあわせると、だいたい10枚あたり(隙間の数は9)でイコールとなります。
ですので、まずはこの9枚を基準にセッティングをはじめてみたいと思います。
●ディスク9枚
まず、走りはじめて感じるのはターボ過給がはじまる前のごく低速域での若干のトルク感の向上です。
ただ本当にごく低速域のみなので、あまりメリットと言えるほどの効果はありません。
特性的にはフラットで下から上まで平均的な特性ですが、過給がかかってからのパワー感はほとんど
ありません。 糞詰まり感とまでは言いませんが、ブーストがかかるとやや苦しそうな印象です。
音量、音質は以前よりも若干静かな感じです。 音質は若干の金属音っぽい音が混じっていますが、
これはおそらくエンドキャップに排気が当たって出す音質なのではないかと思います。
●ディスク12枚
さすがに9枚よりは抜けが良い感じで、4速以上の高負荷時の伸びも多少は改善はされますが、やはり
フルブーストがかかってからのパワーの伸びはストレートサイレンサーにはかないません。
音量、音質は9枚とたいして変わりません。
●ディスク6枚
これは音量はかなり静かになりますし、非過給域での低速でのトルク感も9枚時以上に感じられます。
ただ、6000rpm以上ではかなり詰まり感が強く、とくに3速以上での高負荷時では明らかに排気抵抗
が大きくなりすぎてエンジンが苦しそうな感じがします。
やはりガスが抜けずに詰まるため、タービンやエンジンに熱的な負担も多くなりそうであまり良くない
と思われます。
ただ、トライアルなどの低速競技など、ごく限定的な用途で使用される場合は良いこともあるかも
しれません。
●結果として
とりあえず私の好みにはあてはまらないので、上記特性を確認してすぐに外しました。

↑※この写真は2004年時のものですので、現在とはかなり異なります。
●終わりに、スーパートラップは車検のときには以下の2点に注意が必要です。
まず、標準エンドでは排気ガス濃度測定用のプローブが入らないためNGですので、オープンエンドに
する必要があります。
次に、保安基準に照らして「排気の出口の向きが車両の前後方向の軸線から30度以内」というのが
ありますので、スーパートラップのように排気がパイプの円周方向に出るようなものはその時点でNG
になります。 この場合も、ディスクをすべて取った状態でオープンエンドにする必要があります。