サクション圧力の検証
サクションパイプの圧力の変動をみてみました。
●ここで言うサクションパイプはターボコンプレッサーより上流の、エアクリーナーボックスから
繋がるパイプのことです。
サージタンクまでのインテークパイプ全体を指して言う場合もあるようですが、ターボエンジンの
場合は「吸引」と呼ぶとするとイメージ的にはターボコンプレッサーより上流部分になりますので、
個人的にはターボ以降のインテークパイプ部とは別けて考えたほうが文面上ではわかりやすいかと
思いましたので、ここではそう定義させていただきます。
この部分はターボコンプレッサー前なので、通常は負圧になります。 ですが、アクセルをオフに
した瞬間など、コンプレッサーホイールの回転が急激に下がったときなどは、それまで流れていた
空気の流れがせき止められ、正圧に転じるときもあります。 いわゆる慣性過給というやつです。
今回は、その慣性過給が実際にどの程度のものか、また、フルブースト時のサクション負圧がどの
程度のものかを確認したくて実験してみました。
なお、私の現在のクルマのサクション部の仕様は以下の通り。
○純正ケース改造インテークチャンバー
○HKSパワーフロー(200φ)
○EA21Rサクションパイプ(内径拡大加工)
○45φジョイントパイプ(サクションパイプ〜エアクリーナー間)
○HT07-A/R12 ワゴンRワイド用スズキスポーツタービン(カットバック)
※書き忘れていましたが、サイクロンは今回のサクション一新にともなって
外しています。 ノーマルタービン時と違い、差が感じられなくなったこと
と、パワーを求めると単なる抵抗にしかならないので。
また、直接関係ありませんが、現在フロントパイプはノーマル(触媒つき)です。
●テスト方法

↑サクションパイプ。
見ての通り、サクションパイプにある4φホース穴(本来は純正ソレノイドのためのものですが、EVC等を
つけた際には不要なので普段は塞いでいます)から圧力を取り、アクセルのON/OFFでサクション部の圧力
がどのように変動するかを圧力計で見ます。
つまり、通常は負圧を示し、走行中アクセルをいきなり閉じたとき慣性過給効果があれば、圧力が高く
なるわけですので、それを見るわけです。
もちろん、この比較は吸気量が多くなる高負荷であればあるほど効果はあらわれやすいので、基本的には
3速以上で見たほうがわかりやすいでしょう。

↑圧力計
とはいっても、これはBLITZのターボメーター機能つきのターボタイマーです。
これのデジタル計測およびピークホールド機能を利用します。 こうした微妙な変化を見るためには
アナログよりもデジタルのほうがわかりやすいですので。
ちなみに、これは今回の計測のためだけに準備したもので、ターボタイマー機能などは使用しません。
●テスト方法
テストは4速から5速の負荷の高いギアのほうが吸入空気量が多くなるので変化としては見やすいです。
ですので、3速→4速→5速とシフトアップするときに、アクセル全開→全閉→また全開という動作の
とき、および、一定ギアの状態でわざとアクセルをオン/オフをしてみての変化をみます。
●結果
かなり微妙な数値だと予想されたので、はたしてこの圧力計で計測できるか不安な面もあったのですが、
わりとハッキリと数値にあらわれ、結果としては以下のようになりました。
○通常の街乗りでブーストをほとんどかけない運転のときはまったく数値に変化なし。 ほぼ大気圧。
もっと高精度な工業用精密圧力計ならわかるでしょうというレベルです。 つまり、サクション抵抗
はほとんどないと言っていいと思います。
○ブーストを0.5〜1kほどかけて全開加速していると、サクション負圧は−0.5程度を表示。
さすがにターボが本格的に過給と始めるとサクション部の負圧(=吸気抵抗)は大きくなります。
○高速での全負荷に近い条件での全開(ブースト1.4kほど)ではサクション負圧は−0.7まで上がる。
これはかなりの負圧です。 あれだけサクションパイプを拡大加工したのにもかかわらず、それだけ
サクションに大きな吸入抵抗があるということです。
○シフトアップ時にアクセルを戻した瞬間や、フルブースト状態から一気にアクセルオフした瞬間などは
やはり予想通り慣性過給により正圧に転じ、ピークホールドで最大0.04を記録しました。
これはインテークチャンバーによる相乗効果もあってのことでしょう。
以上のような感じになります。
まず、サクション負圧は−0.5hkpa≒−380mmHg、−0.7hkpa≒−532mmHgとなります。
絶対真空は−760mmHgですので、この全開時のサクション負圧がいかに大きいものかがわかると思います。
ターボはこれだけの吸気抵抗の中で一生懸命空気を吸込んでいるのです。 人間で言えば、抵抗の大きい
マスクをしながら深呼吸をしているようなものでしょう。 ちょっとかわいそうな気もします。
これはまだまだサクション負圧の低減の余地はあるということで、もしこの抵抗をなくすことができたら…
と考えるとかなりもったいない気がします。
次に、慣性過給による正圧のほうは、0.04kg/cm^2となりますので、圧力数値としてはそれほど大きなもの
ではありません。 しかし、たったこれだけとはいえ、たとえば一般的なラム圧過給に比べたら大きな数値
ですので、慣性過給をバカにはできません。
やはり少しでも圧力がかかっていればアクセルのツキが変わってくるものですので、無視はできません。

↑これは正圧時のピークホールド表示。 0.04を指しています。慣性過給の数値です。
負圧側はピークホールドはないので、走行中に目視での確認しかできません。
今回の測定はこれ自体はとくに意味はありませんが、今後の改良に活かすための参考データとして使えれば
と思います。 実際、これだけのサクション抵抗があったことと、インテークチャンバーによる慣性過給
効果がこれだけの圧力になっていたことがわかっただけでも個人的には驚きですので。
●最後に、上記数値の単位について補足です。
このBLITZのメーター表示単位は「hkpa」表示です。 つまりヘクトキロパスカル(?)となります。
本来はない表記ですが要はこういうことです。 まず、面倒なので1pa≒0.00001kg/cm^2と定義します。
次にk(キロ)=10^3、h(ヘクト)=10^2 なので、ヘクトとキロを掛けて1000×100=100000
これに先の0.00001を掛けると、0.00001×100000=1となります。
つまり 1kg/cm^2≒1hkpa と表わすことにより、従来のkg/cm^2の読み方でそのまま読めるようにと
のメーカーの配慮と思われます。 (個人的には「×100kpa」という表記でもいいのではと思いますが)
逆に、真空圧のほうは−760mmHg≒−1hkpaとなります。
現在は、SI単位移行のために全ての圧力単位は従来のkg/cm^2からkpaになっておりますので(移行のための
猶予期間はすでに終了)、自動車用に限らずこの単位でないと計器の製造販売ができなくなったためです。
たとえば、ブースト圧なども今までは「だいたい1.5kくらい」と言っていたものが、「だいたい150くらい」
などとなるわけです。 単純に100倍の値だと思えばさほど面倒なものではありませんが、私は旧単位のほう
が感覚的にわかりやすくて好きです。