ブースト圧1.3kg/cm^2のままでの200km/hオーバーへの挑戦!
ターボのブースト圧に頼らずに簡易セッティングだけでどこまでいけるか限界への挑戦!

●私のJA22ジムニーは去年の12月に一時的にブースト圧を1.7kg/cm^2まで上げて最高速アタック、
メーター読みとは言え念願の200km/hをオーバーし、見事に214km/hを達成しました。
<参考> →ブースト圧1.7kでの最高速アタック、200km/hオーバー達成!
しかし、これはあくまでもイレギュラーなブースト圧での一度きりの限界性能の確認にすぎず、常用
できるブースト圧(過給圧)でのものではありませんでした。 そこで今回は前回装着して好印象だった
「BCNR33純正スペシャル触媒」の性能をさらに引き出し、ハイブーストに頼ることなく、常用できる
ブースト圧1.3kg/cm^2のままで、空燃比および点火時期セッティングを煮詰めていくだけでなんとか
200km/hオーバーの壁を越えられないものかとチャレンジしてみることにしました。なにしろ私の車は
スズキスポーツのECU(ECM)にフィールド技研のSFC-MULTIという非常に簡素なデバイス環境での
簡易なセッティングですので、勝算は五分五分というところでしょうか。 HKS F-CON V Proのような
キッチリとしたセッティングはできませんので、どこまで追い込んだセッティングができるかはやって
みないとわかりません。
<参考> →BCNR33 GT-Rスペシャルメタル触媒コンバーター(キャタライザー)
●これまでの暫定セッティングでの最高速度ピークホールドとSFC-MULTIのセット

↑R33 GT-R用純正スペシャルキャタライザー装着時のパワーメーターiDの最高速ピークホールド値。
この時のSFC-MULTIのセッティングはHKSスポーツメタル触媒のときとほとんど同じで、とても詰めた
セットとは言えませんでした。 もちろん、ブースト1.3kのままでのこの193km/hという数字はたいした
ものだとも言えますが、個人的な感触では「セッティングを煮詰めていけばまだまだトップスピード
は伸びる要素はあるはずだ」と手応えを感じていました。 なので、なんとかして現在の常用ブースト圧
1.3kg/cm^2のままでメーター読み200km/hの「大台」を狙ってみたかったのです。

↑前回のSFC-MULTIのボリュームセット。 MIDまではわりと軽く回ってくれるのですが、HI領域との
バランスが難しく、中間域を軽くすれば高速域の伸びがいまいち重くなり、逆に高速域を伸ばそうと
すれば中間域が重くなるというジレンマをかかえた状態になっていました。
●ブースト圧1.3kg/cm^2のままで徹底的にSFC-MULTIの限界を試してみました
まずは、街乗りでMID領域までの徹底的なハイレスポンスとブーストの立ち上がりの早さを詰めていき
ます。 この作業は3速全開までできれば比較的たやすいので、わりと簡単にセッティングを詰めること
は可能でした。 ガソリンタンク半分ほど走りましたが、そのおかげでだいぶ非過給域から0.5k以下の
ローブーストの領域での空燃比および点火時期のセットもかなり改善されて、アクセルをそれほど開け
なくても、あるいはブースト圧をそれほどかけなくても車が軽くなったように走るようになったため、
今までよりずっと乗りやすく、扱いやすくなり、さらに踏み込めばスッとブーストがかかってスムーズ
に加速していくという、いい感じになってくれました。 まずはここまでは完了という感じです。
●高速での全開、全負荷でのセッティング
ここからが本番です。なにしろ最高速度200km/hオーバーを狙っていくわけですから「命懸け」で覚悟
を決めておこないます。 SFC-MULTIのMIDボリュームまではすでに決まっているので、いじるのは
HIボリュームのみですが、これがとても微妙、繊細で、わずか1クリック回すだけでもトップエンドの
伸び、排気温度などが大きく変わってくるのです。 今まではHIボリュームは最大限絞ったままマイナス
いっぱいでほぼ固定だったのですが、そこから2クリック上げたり、また1クリック絞ったりしながら
そのたびに全開アタックするという作業を繰り返しました。 文章で書くとすごく単調で簡単な作業に
思えますが、これを何度も何度もくり返すのは肉体的にも精神的にも相当な緊張と疲労がともないます。
4速ギアまでは一気に8500rpmを超えて9000rpm近くまで回っていきますが、5速での回転の伸びに
「7500rpmの壁」が立ちふさがります。 純正サイズのタイヤなら楽勝でクリアーできる回転数ですが
外径の大きいタイヤを履いている現状ではこの5速7500rpmというのはけっこう大きな壁なのです。
●セッティング途中のパワーメーターの最高速度ピークホールド

↑何度も何度も試行錯誤のうえ、やっとここまで引っ張ることができました。 大きな壁となっていた
5速7500rpmを超え、もう200km/h目前です。ここに至るまでだいぶHIボリュームの特性を掴んできた
ので、あと1クリックだけ微調整してこの日の最後のアタックにかけます。

↑参考までにこの時のパワーのピークホールド数値。かなりオーバーに出ていますが、219PSでした。
●そしてついに念願のブースト1.3kのままでの200km/hオーバーを達成しました!

↑最後の最後に「これで決まりだろう!」というセットアップで全開踏み切りでアタックした結果。
走行中もパワーメーターの速度数値が200キロの大台をクリアーしていることを確認、さらにそのまま
アクセルを踏み続け、空燃比(A/F)や排気温度やブースト圧、油温などに異常がないことを確認しつつ、
タコメーター指針も5速8000rpm目前まで達しているのを確認してから全開最高速アタックを終了、
みごとに「ブースト圧に頼ることなく」念願のメーター読み200km/h越えを達成しました!
やればできるもんです! 実際にエンジン回転数やギアレシオ、およびタイヤ外径からの机上の計算上
でも5速7900rpmで200.87km/hですので、ほぼ理論計算通りの数値が出ています。
ちなみに、この日の外気温はおよそ8度ほどでした。天気はもちろん晴れで、風は若干の向かい風ですが
きわめて弱いのでほぼ無風と言っていいでしょう。 まぁ、比較的いい条件に恵まれたと言えるでしょう。
※もちろん、このスピードはあくまで「メーター読み」ですので、実測とはかなり差があると思います。
実測ではおそらく180km/hを超えていれば万々歳というところでしょうかね。
●SFC-MULTIのセッティング

↑最終的なSFC-MULTIの各ボリュームは写真の通り。LOWは以前と一切弄っていませんが、偶然にもMID
とHIはまったく同じで、めいっぱいマイナスより1クリックだけ上げた状態がベストになりました。
これより1クリックでもダイアルを上げたり下げたりするだけでもけっこう微妙に変わってしまい、とくに
HIは1クリック上げたり下げたりするだけでも排気温度のピークが取れなくなるくらい繊細なセットが必要
でした。
●排気温度ピークホールド

↑排気温度計のピークホールド。重複しますが、SFC-MULTIのHIツマミを1クリック変えるだけで全開走行
時の排気温度ピークは10度ほども変化するため、この「個人的にピークとしている860度」にセットアップ
できるポイントはまさに「ここしかない!」というボリュームセットになりました。ここまでくるのは本当に
大変でした。さすがに疲れました。
●参考までにパワーメーターiDの馬力のピークホールド

↑これはもうまったくアテになりませんが、いちおう今回の走行でのパワーのピークホールド数値です。
あくまで参考としてみてください。なぜか以前のブースト1.7kg/cm^2のときとまったく同じ251PSでした。
実馬力はどのくらいでしょうかね? インジェクター容量から考えても150PS前後ではないかと思います。
と言うか、そのくらいは出ていないと逆にこのトップスピードが出る理屈が成り立たないので。
●セッティング時のガソリンタンクの残量にも注意
セッティング開始時はほぼ満タンでスタートしますが、走行しているうちに燃料計の残量が半分を切ったら
10リッターほど給油して、常にガソリンが半分以上入っている状態でおこないます。 これは、ガソリンが
少なくなって車体が軽くなったことによる体感的錯覚を避けることと、旧型ジムニーはガソリンタンクが
リアオーバーハング上にあるため、ガソリン残量が少なくなるとリアが軽くなって車が跳ねてくるため、
それを抑えたいという意味があります。もちろん、ガソリン残量が減ってフューエルポンプが「空吸い」を
してしまうのを防ぐというのもあります。さらに重要な理由として、リターン式燃料系統のデメリットである
「ガソリン残量が少なくなると燃料の温度が上昇してしまう」弊害を防ぐためもあります。
●ターボエンジンは「ブーストに頼るのか」「ブーストを活かすのか」
わりとよく聞くことに「K6Aエンジンはターボに頼ってパワーを出しているだけだ」と言う人が
います。 しかし、エンジン本体を自然吸気(NA)に近い感覚で繊細にチューニングし、燃調や点火時期
なども詰めてやればけっしていたずらに高いブースト圧に頼らずとも目標とすべき馬力は達成できるのでは
ないかと思います。 たしかに、ターボエンジンはブーストを高めることで「ここ一番!」での勝負パワー
を出すことは容易いことですが、今回私が挑戦したような、あくまで常用できる範囲でのブースト圧のまま
でどこまでそのポテンシャルを引き出すことが可能かということもトライしてみる価値はあるのではないか
と思います。
これには「ターボエンジンと言えどもNAエンジンと同じ繊細な考えで弄らなければならない」と
いうポリシーが必要で、よく間違った表現で「ターボは空気を押し込んでいる」という文面を目にします
が、これは全くもって間違いな概念であり、現実は「ターボエンジンは気圧を上げた空気を吸い込んでいる
NAエンジンだと考える」が正解です。 この考えに徹したチューニングをすればいたずらにブースト圧に
頼ったパワーの出し方をしなくても目標とする馬力は出せます。 これについては話が長くなるので、また
あらためて別の機会に新たな記事としてまとめたうえで更新しますが、これを充分に理解するときっと多く
の人が「ターボは空気を押し込んでいるという考え方がなぜ誤りであるのか」ということに気づき、ターボ
エンジンのチューニングに対する考え方が180度変わると思います。

↑今回の成果の立役者となった「R33 GT-R純正スペシャルメタル触媒」。 これの性能を引き出すことが
今回いちばんの目標でした。結果は私が言うのもおかしいですが、苦労した甲斐もあって大成功でしたね。
触媒ひとつで、それに合わせてセッティングし直すだけでこうもエンジン性能が変わってくるものなのかと
いうことをあらためて思い知らされました。 エンジンチューニングというのはその成果が出るとそれまで
の苦労が報われた気分になって達成感、高揚感がハンパないです。 だから危険だと知りつつもやめられない
のでしょうね。 こうなるともう病気です。
●アイドリング負圧

↑これはアイドリング時のバキューム(負圧)数値。 実に-470mmHgとサービスデータ上のK6Aエンジン
本来の基準値(-450mmHg)を超えるくらいに強い負圧が得られています。 これはそれだけバルブや
シリンダーの気密性が高いという証拠ですので、エンジン本体のコンディションは絶好調という証明でも
あります。 やっぱり精度良くキッチリ組まれたエンジンは調子良いですね。しっかり組んでいただいた
緑整備センターさんには感謝しています。
●スパークプラグ

↑点火プラグはいつもと同じデンソーのイリジウムレーシングIXU01-27です。 現在つけているプラグ
はまだ走行距離は10000kmにも満たないですが、ここ最近ハードな走りを続けたのでそろそろ新品に交換
しようかなと考えています。
●タイヤおよび空気圧

↑私の車のタイヤはYOKOHAMAジオランダーA/T-Sの185/85-16です。 これはLT(ライトトラック)
用タイヤ、つまり貨物車用のタイヤなのでサイドウォールが強化されているタイヤですが、おそらく時速
200キロ近いスピードでの使用は考慮されていないと思われます。 ですので、少しでも安全性を考えて
今回は空気圧は通常よりやや高めの2.6kg/cm^2でおこないました。
私はガソリンスタンドに給油に行くと2回に1回はタイヤの空気圧を確認し、必要があれば調整しています。
わずか0.1kg/cm^2違うと走りも燃費も大きく変わってくるものなので、タイヤ空気圧管理は大切です。

↑私が普段愛用しているミシュランのタイヤエアゲージ。これはもう20年くらい使っているでしょうか。
ポケットにも入るコンパクトさで精度も高く、非常に使い勝手が良くて気に入っています。
<重要> 実走行全開セッティングでのリスク!
もうあえて書く必要はないとは思いますが、いくら軽自動車とはいえ、これほどのパワー、スピードの
領域になると実走でのセッティング作業は非常に高いリスクを伴います。 万が一のことがあれば命は
ありません。 ですので、私も毎回この「全開アタックによるセッティング」が終わるとホッとします。
なんとか無事に生きて終わることができたってね。 私は若かりし頃、R32 GT-Rで東名高速で280km/h
オーバーからの全損大クラッシュ事故を起こしていますので、スピードの恐さは解っているつもりです。
しかし、それでもまだスピードの呪縛から抜けられません。
ですので、皆様はこのような馬鹿な真似はできるだけしないようにして安全運転を心掛けてくださいませ。
しかし、実際の走行負荷、連続全開での耐久力を見極めるには実走がいちばんなのです。シャーシダイナモ
では短時間の一発のデータしか取れませんし、なによりかかる負荷が実走に比べ軽すぎます。 これでは
数字の上では高出力が出ていても実際に連続全開走行したときの耐久性や安全マージンはわかりません。
シャシダイのパワーチェックテストなんて私に言わせれば「線香花火」みたいなもので、一瞬だけのいい数字
を出してそれで満足できるようなレベルの人にとってはそれで充分なのでしょうけど、車は「盆栽」では
ありません。 やはり「車は走ってナンボ」です。「台上」ではなくやはり「実走」でその速さや耐久性など
のチューニングの限界性能を証明することに意義があると思います。 昔からシャシダイ上では立派な馬力を
出しているくせに谷田部テストコースで最高速アタックしたら1周も持たずにエンジンブローなんて情けない
車もたくさん見てきました。 やっぱり実際の極限走行でチューニングの成果、技術を実証、確認すること
こそが一番であると私は考えています。 そのためにはある程度のリスクを負うこともやむを得ないことと
考えているのです。ただ、他車を巻き込む事故を起こすことだけは絶対に避けなければいけませんが。
●ジムニーでの200km/h前後のスピードでの安定性について
たまに聞かれるのですが「ジムニーでそんなにスピードを出してマトモに走れるのか?」というのがあります。
たしかに車高を上げたジムニーではよくハンドルジャダーやシミーといった現象が起きるようですが、私の
JA22はノーマル車高ということもあり、ハンドルのブレだとかは全く起こりません。非常に安定しています。
もちろん、ホイールベースが短く、重心も高く、ダウンフォースなども効かないので、直進安定性は決して良く
はありませんし、ギャップで車も跳ねますが、とりあえず「まっすぐ走っている限りは」200km/h近い速度
でもさほど大きな不安は感じません。 この要因には「自作ストレーキ」の効果も絶大であると感じています。
ただ、もっとも怖いのは「横風の突風」です。これには気をつけないと1車線ぶんくらいは平気で車が振られて
流されます。 高速で走るジムニーにとって横風は大敵です。最悪は横転しますので。

↑200km/h前後のスピードでの直進安定性に大きく寄与していると言えるフロントバンパー両サイド下端部
につけている「自作ストレーキ」。 高速になればなるほど、これによる空力効果は間違いなく大きいもの
があり、ステアリングにどっしりとした安定感が生まれます。 160km/hを超える速度域になると、空力に
よるセッティングもかなり重要になります。 サスペンションセッティングのメカニカルグリップも大切です
が、それだけでは高速域では不十分なのです。空力効果を積極的に利用することも重要な要素となります。
<参考> →フェンダーストレーキ(ストレイキ/フェアリング)の製作
●おまけ● 触媒遮熱板の再メッキ処理

↑いろいろ試行錯誤の末、やっと使用する触媒が「BCNR33スペシャル触媒」に落ち着いたので、錆が出て
いた遮熱板を再メッキしてきれいにリフレッシュしました。 はじめはクロームメッキでもしてやろうかと
思いましたが、なるべく純正っぽく仕上げたかったので、亜鉛メッキ(ユニクロメッキ)にしました。ですが、
今回はメッキの厚みにこだわり、通常なら5ミクロンのところを4倍の20ミクロンの厚みでメッキしました。
これにより格段に錆びに強くなったはずです。 ちなみに、亜鉛メッキはクロームメッキとは防錆のメカニズム
が異なり、亜鉛自身が母材の鉄より早く腐蝕することで母材が錆びるのを防ぐのです。 これを「犠牲防錆」
あるいは「犠牲防蝕」と呼びます。ユニクロやクロメート処理というのはさらにこの亜鉛自身の腐食を遅らせる
ための表面処理です。

↑まぁ、せっかくきれいにメッキしてもつけてしまえば隠れて見えなくなってしまうのが残念ですが(笑)
●最後に
…しかし、ジムニーでこんなバカなことやってるのはたぶん日本中で私だけでしょうね。 賢明な皆様は絶対に
真似しないでくださいませ。 軽自動車でこんなことやってたら命がいくつあっても足りません。

※なお、念のため今回のこの走行は一般公道ではない場所でおこなったものと解釈してください。