(番外編)純正タービンと社外タービンの見分けかた。
社外ボルトオンタービンと純正タービンの外観上の違いについて。
●最近、ネットオークション等でタービンが出品されているとなぜか私のほうに適合等をメールで問い合わせ
を下さる方が意外にいらっしゃるのです。 大変嬉しいのですが、私も自分の知っている範囲の知識しかない
ので、無責任にいい加減なことは言えないのでなかなか返答が難しいところではあります。
とくに問題なのは、明らかに純正タービンとしか見えないものを社外タービンとして出品されているような
場合で、私自身もいくつか見ました。
もともとHT06やHT07、RHB31シリーズのタービンはボルトオン形状ですので、ある程度判別できる知識が
ないとたしかに外観上の区別はしにくいというのはあります。 ポイントさえ押さえれば割とわかるのですが。
それで、今回は誤って純正タービンを社外タービンとして買わないための外観上の見分けるポイントを簡単に
書きます。
●なお、このページはJA22ジムニーのページですので、ここで取り上げるタービンはK6Aエンジン、それも
縦置きエンジンの場合がメインになります。 (F6Aツインカムエンジンでもほぼ共通になるかと思います)
とくにシングルカムエンジン用の社外タービン等はコンプレッサーサイズ等が異なりますので、ご注意下さい。
●刻印による見分けかた
スズキスポーツ製タービンはIHI製のものもHITACHI製のものも新品であればこれがいちばんわかりやすい
でしょう。
HT06、HT07、RHB31ともコンプレッサーハウジングには刻印がありますが、スズキスポーツ製タービン
ならメーカー出荷時にはこの刻印にはパーツN0.が刻印されています。(例:4GA36-T20や4LA36-T10等)
これはHITACHI製タービンもIHI製のタービンも同じです。
とくにわかりやすいのはIHIのタービンで、ここが例えば「13900-83GA0」のように「13900-」で
はじまるようなNo.の場合、あるいは後半の5ケタ「83GA0」だけの刻印のものは純正タービンです。
ただ、同じ純正タービンでもHITACHI製の純正タービンの場合は「13900-XXXXX」のようなパーツNo.が刻印
されてない場合があり、単に「HT06-4B」「HT-06-3E」のようにタービンの型番が刻印されているだけのもの
もあります。

しかし、スズキスポーツ以外の、例えばチューニングショップオリジナルのタービンの場合は刻印はあてに
なりません。
これは、スズキスポーツから直接販売されているタービンはタービンメーカーで造られた新品として出荷された
ものであるのに対して、ショップが出しているタービンの中には、タービンメーカー以外のサードパーティーで
造られた「リビルト品」の割合が多いからです。(と言うよりも、ほとんどがリビルト品だと思います)
リビルト品というのは、中古パーツのハウジングやローターを使用して、それをベースにメタルやシャフト
などのパーツを自社製作、あるいは新品パーツを組み込む、いわば再生品をベースとしたものです。
ですので、使用されるハウジングにも統一性がなく、刻印はもはやあてにはなりません。
中には、リビルトされた際に刻印を一度削って打ち直してある場合もありますが、これは刻印が削られているか、
あるいは銘板がついていたりするのでハッキリわかりますので識別はできるでしょう。
しかし逆に言えば、刻印までしっかりと打ち直すくらいのリビルト品はそれなりにきちんと手を加えたもの
であるとも言えます。 通常はそこまで面倒なことはしませんので。
出所というか、組み込んだところがハッキリしていたほうが買うほうも安心できますし。
(ちなみに、タービンメーカー自身も中古タービンの回収をしているようですので、メーカーから出荷された
新品の中にもリビルトベースはあると思います。 ただ、メーカーの出す製品の美観上の品質基準はサード
パーティーよりも厳しいものですので、新品と見分けがつかないものも多いと思います)
さて、新品かリビルト品の外見上の見分けでわかりやすいポイントに排気側ハウジングの表面処理があります。
新品はガスケット面がきちんとフライスにて切削加工されていますが、リビルト品はベルトサンダーで仕上げ
たようになっているか、あるいは全体にサンドブラスト処理がなされています。
もっとも、本当に手のこんだリビルトタービンの場合は面修正を兼ねて切削加工してある場合もあるので
これだけでハッキリするとは言い切れませんが。
ただ、リビルト品だからといって別に性能的に不利であるとかそういうのはありません。 きちんと組まれ
バランス等もちゃんと高精度に取られたものであれば、純正パーツよりも信頼性は高いくらいでしょう。
むしろ、たとえばシリンダーブロックなどもそうなのですが、鋳鉄というのは全くの新品よりもある程度熱の
入ったモノのほうがクラック等のトラブルの心配がない場合も多いものです。
●インデュース径による見分けかた
これもわかりやすいポイントです。

コンプレッサーハウジングの導入部の穴ですが、入り口の径は同じなのですが、いちばん奥の径がノーマル
とスズキスポーツ他の社外タービンとは違いまして、ノーマルは奥にいくにつれてかなり絞ってあるのですが
社外タービン(F6AワークスRとK6AワークスR純正も含む)および、HT07ラージコンプレッサーの場合は
ほぼストレート(実際には極めてゆるいテーパー)に近くなっており、実質的な吸入面積が大きくなっています。

上の写真でよくわかると思います。緑の線は平行ですので入り口部の径はほぼ同じなのがわかると思い
ますが、インペラーの見える奥のほうの径はぜんぜん違うことがよくわかると思います。
この判別ポイントはRHB31でもHT06/07でも同じです。
ちなみに、HT07スモールコンプレッサーの場合もけっこう絞ってあるように見えますが、実際のインデュース
径は社外のHT06とほぼ同じです。 入り口の径が07のほうが大きいのでそう見えるだけです。
●排気タービンホイールの径による見分けかた
これもわかりやすいポイントですが、ちょっと一概には言えない点があります。

写真から出口部のタービンホイールの見える口径がぜんぜん違うのがわかると思います。
純正に対して、社外タービンのほうの口径はかなり大きいです。 ただし、この大きいほうのタイプは
社外タービンだけでなく、純正でもK6AワークスRはこうなっています。 またHT07タービンも同じ
口径です。 ちなみにF6AワークスRおよびF6Aワークスの後期仕様のRHB31はこれの中間くらいに
なっていますので、この部分の見た目の印象だけで「純正か、社外か」を見分けるのは、違いがわかって
いる人じゃないとちょっとややこしいです。
なお、社外タービンの場合はRHB31系よりもHT系タービンのほうがこの径はやや大きいです。
ちなみにHITACHIタービンの場合はこの同じ口径でA/R7、A/R9、A/R12と3種類の排気ハウジングが
出回っていますので、これを交換することでタービンの特性を変えることができるので便利です。
たとえば、スズキスポーツのHT06タービンをつけたけど、ブーストの立ち上がりがモタついてどうにも
乗りにくいなどという場合は、ワゴンRプラスの純正HT07タービンの排気ハウジングと交換することで
A/Rが12から9に落とせますので、よりブーストのかかりが早くなるという感じです。
(この逆をやってるのが私の使っているタービンになりますね)
ただ、この排気ハウジングはタービンホイールの径が同じハウジングどうしのHT07タービンとHT06
タービンでのみ互換性がありますが、その場合でも排気ハウジングの組み込み方法(ボルト&プレートに
よる組み立てか、バンドによる締め込み式か)が違うものどうしでは互換性はありませんので注意を。
●以上、大雑把ですが参考になれば幸いです。
※ただし、私もすべてのタービンについてデータをもっているわけではありませんので、上記判別ポイントは
あくまでも外観上の区別の目安としてお考えください。そのためにあえて寸法等、具体的な数字は挙げており
ません。(間違いがあるといけませんので)
とくにRHB/RHFタービンに関しましてはかなり多くの種類が出回っているようですので、ご注意ください。
とりわけ新規格になってからのK6Aエンジンとタービンの組み合わせは仕様によりいろいろあるようです。
また、繰り返しになりますが、上記タービンのマッチングはすべてK6Aエンジン、それもJA22ジムニーを基準
に考えています。
他のK6Aエンジン搭載車や、F6Aツインカム搭載車でもマッチング自体は大きな違いはありませんが、
他の補機類との干渉による追加工が必要になったりする場合があります。
あと、例えばJA11ジムニーのようなSOHCのF6Aは、排気側ハウジングの取り付けフランジそのものの形状
(三角形の向きが違う:下の写真参照)が違いますので、このタイプのタービンのエンジンにはツインカム用
タービンはボルトオンでの取り付けは不可です。
ただ、ジムニー以外のSOHCのF6AでもDOHCと同じフランジのものもあるようですので、一概には言えない
ようですし、また、アウトレットパイプの取り付け部の穴位置も異なるものも一部あるようです。
他車種のタービンを流用する場合は、このあたりをよく調べてからのほうがいいでしょう。

あと上の写真でもわかると思いますが、車種により冷却水パイプも上下に向いているもの、2本とも前方に
向いているもの、1本は前方1本は下方に向いているものと主に3種類がありますが、これらのパーツは純正
部品でも、スズキスポーツのパーツでも部品で購入できるので、別に気にするほどのことではないでしょう。
ちなみにHT07タービンの水パイプはHT06用のものがそのまま使えます。
●最後に
以前にK6AワークスRタービンとスズキスポーツのN2タービンのHT06は同じスペックだと書きましたが、
同様にサードパーティー製タービンの場合も、同じスペックのタービンでも組み立てる業者、工場によって
耐久性やレスポンスといった性能に違いがあることがあります。
これらはバランス精度やクリアランス、軸受け、ホイールのカットバック加工等にそのタービンを組んだ会社
独自のノウハウによるところが大きいです。
タービンは速いものでは200000rpmを超える回転で回ります。 同じタービンであればブーストを上げると
いうことはそれだけタービンホイールの回転数が上がるわけですから、より高回転でのダイナミックバランス
が求められることになります。 当然、純正タービンは純正のブースト圧力での使用が前提ですから、それ
に見合う程度のダイナミックバランスで組まれています。 ですが、社外のチューンドタービンは同じ形式
でもよりハイブーストで使用することを前提としておりますので、より高回転での耐久性を考えて純正よりも
ワンランク上のバランス精度やメタルの材質で組まれていることが多いです。
これだけの回転数になるわけですから、タービンホイールのバランスをとる機械は例えばタイヤのバランサー
のように数百rpmという回転ではなく、高精度なものだと100000rpm以上の回転でダイナミックバランスを
取ります。 回転が高いほど発生する遠心力によるGが大きくなりますのでより高精度なバランスをとること
が可能になるわけですが、これもそのタービンを組んだ会社の設備や技量によって差が出る部分でもあります。
このへんが単なるリビルト再生タービンか、チューニングタービンとして造られているかの差でもあります。
蛇足ですが、よく個人の方でタービンホイールの組み換えを行なわれている方もいますが、上記のような理由
から、きちんとダイナミックバランスが取れない環境では回転部分のオーバーホールは感心できません。
ひどい時はタービン回転中にバランスが崩れてコンプレッサーホイール破損→エンジンに破片が流入→エンジン
ブローという図式になります。
また、そこまでいかなくてもバランスが崩れていると回転時の調芯が取れなくて、メタルの消耗が早まったり
タービンの回転音が「キーン」と出たりするなど、不都合を生じることになります。
「ヒューン」という空気の流れる音ではなく、「キーン」というようなやや金属的なタービンの回転音が聞こ
えるのはバランスが崩れている証拠です。 最近のタービンはバランス精度が高いのでほとんどこの手の音は
聞こえなくなりましたが、昔、まだターボエンジンが出始めの頃はバランス精度が現在ほど良くなかったので、
よくターボエンジンはこの手の音を発してましたね。
また新品時は音がしてなくても、使用中にゴミを吸い込んだりしてコンプレッサーホイールやタービンホイール
が欠けたりしてバランスが崩れたときにも、同様の音が出ることがあります。
いずれにしましても、タービンのオーバーホールや組み換えは信頼できる専門業者に任せたほうが賢明です。
タービンは精密機械ですので。
※使用した写真の中には私が撮影したもの以外に書籍やネット上から拾ってきたものを比較のために使用したものも含まれて
います。 出所のハッキリしないものもあるため、使用上問題がありましたらご連絡ください。写真の削除および著作権表示等、
速やかに対処いたします。 ただ、ページの主旨はご理解いただけるものと思いますので、より多くの方への情報提供という
ことでできるだけご理解、御協力のほどお願いいたします。