(番外編)タービン交換時の注意点について
ここのところタービン交換後の白煙などの不都合についての問い合わせが続いたので。
●軽自動車は比較的ターボチャージャーの交換が簡単なことから、DIYで交換される方が多いの
ですが、その後の不都合について質問を受けることがあります。
とくに、当ページを参考にされてご自身で交換した方などから、交換後、白煙を吐くとか、異音
が出るようになったとかで何が悪いのかという不都合に関する問い合わせがあります。
ただこれに対する答えはケースバイケースですのでわかりません。 喩えて言うなら、良い医者
ほど「実際に診てみないとわかりません」と言うのと同じです。
ちなみにここで言う不都合とは、燃調とかセッティング面、および他のパーツとの相性とかの
側面ではなく、あくまでタービン交換作業そのものに伴う不都合という意味です。
●まず、いちばん多いのは交換して間もないうちのオイルによる白煙、酷い場合はタービンブローです。
「タービン交換して100kmも走らないうちに白煙を吹くようになった」とか「初期馴染みが終わった
頃に全開にしたら、タービンから異音がしてそのうちブーストがかからなくなった」等です。
もちろん、ブースト圧を上げすぎていたとかそういうのではなく、基本的に一般的に見て使用に
問題のない範囲と思われる条件のうえでの話です。
●そのうえで、よく言われるのが「このタービンは耐久性がない」とか「このタービンはシールが弱い」
とかタービンのせいにしていることです。 もちろん、タービンは工業製品ですので当たり外れはあり
ますし、市販の社外タービンの多くはリビルトベースのタービンが多いので、品質管理の悪い業者の組み
立てたタービンの場合は、そういったタービン本体の不都合もあり得ない話ではありません。
ですが、私の見解ではその多くがタービン取り付け作業での不手際、それもけっこう初歩的ミスが原因
となったり、エンジン本体がそもそも完調でないのに、無理をした例が多いのではないかと思います。
こうしたことを棚に上げてタービンのせいにされてはたまったものではありません。
ターボチャージャーはもともと精密機械ですので、雑な扱いに対する許容はほとんどありません。
ですので、今回はタービン交換する際に確認したほうが良いこと、また、気をつけるべきことを書いて
みたいと思います。
ですが、これはあくまでも私のクルマについてのポイントですので、他の車種については適用されない
部分もあります。 ですが、基本的に構造は単純なので、置き換えて考えていただければと思います。
●オイルインレット系統
これはタービンにオイルを送るオイルラインで、この部分がいちばんトラブルの元になっているのではない
かと思われる部分です。
通常、タービンキットを買うと、ガスケットキットなどはついてくることが多いですが、肝心なのはタービン
にオイルを送るオイルインレットパイプと、その両端を留めるユニオンボルトで、これもできれば純正部品
の新品を購入しておくべきです。
リビルト業者によってはこれらのパーツを新品にしなかったために起きたトラブルについてはクレーム対象外
にしているところも多いです。
まず、オイルインレットパイプは内径が3mm程度の金属製パイプで、エンジンブロックからタービンへオイルを
送るものですが、オイル管理の悪いエンジンなどはこの内部がスラッジやカーボンで詰まっていることがあり、
そのまま組みますと、オイルの流量が足りずに、せっかくのタービンもオシャカになってしまうことがあります。
ですので、これはできれば新品を購入するか、再使用する場合は高圧エアーとパーツクリーナーなどでしっかり
と内部を洗浄しておくことを忘れずに。

↑オイルインレットパイプ
次にユニオンボルトで、これが非常に重要な役目をしております。
このパーツは上記オイルインレットパイプの両端を留めるもので、上流側、下流側の2種類があるので、間違えない
ように注意します。 また、これに使用するガスケット(シーリングワッシャー)も新品を用意します。 ここから
のオイル漏れが非常に多いためです。

↑ユニオンボルトとシーリングワッシャー。 このワッシャーの再使用は厳禁です。
このユニオンボルトは単にオイルの通路としての役目だけではなく、タービンに送るオイルの流量を規制する
オリフィスとしての役目をしているのです。
タービンへ送るオイル量は多すぎても少なすぎてもダメで、少なすぎる場合はもちろん焼き付きの原因になりますが、
多すぎてもセンターハウジング内部のメタル部分へかかる圧力が上がりすぎてオイルが排気側に漏れ、それが白煙を
吹く原因となるのです。 タービンの排気側は高温になるためにゴムを使用したシーリングはありませんので。
その証拠というわけではありませんが、私は今までタービン交換する際、その都度ユニオンボルトを購入しており
ましたが、新品で購入したユニオンボルトのほうが側面部に空いている穴の数が少なくなっており、私のクルマに
もともとついていたユニオンボルトよりもオイル流量が少なくされていました。
これは、おそらくメーカーでの白煙対策だと思います。

↑ユニオンボルト
見ての通り、サイドに1φほどの小さな穴が1箇所だけ空いていますが、この小さな穴をオイルが通るわけで、
タービンを潤滑、冷却するオイルはたったこの小さな穴ひとつからしか供給されないのです。
こんな小さな穴は、スラッジが溜まれば簡単に詰まってしまうことがよく解ると思います。 これだけ見ても
ターボエンジンはオイル管理が大切という理由のひとつだということが解っていただけると思います。
ちなみに、この写真のユニオンボルトは白煙対策後の製品で、私のクルマにもともとついていたユニオンボルトは
この穴が反対側にも空いており、2箇所となっていました。 つまり、対策後のほうがオイルの流量が少なく
されているわけです。 ですので、私はこの対策後ボルトは使用せず、もともとついていたボルトのほうを
使用しました。
さらに、この新品で購入したユニオンボルトにはオイルの入り口に細かいメッシュでできたフィルターがついており、
オイルラインからのゴミがタービンにいかないようになっておりました。 これも私のクルマにもともとついていた
ユニオンボルトにはなかったものです。
一見すると、このメッシュがあったほうがタービンの保護になりそうな気もしますが、じつはこれが問題で、私は
あえてもともとついていたメッシュのないボルトをよく洗浄して使用しました。
その理由は、まず、ハイパワータービンに換えるのですから、オイルの流量は多いほうが潤滑だけでなく、冷却面でも
有利だと考えたので、万が一多少の白煙が出たとしても、あえて流量の減らされている対策部品に交換するのは気が
退けたからです。
もうひとつの改良点のメッシュについても、こんな狭いところにこんな細かいメッシュをつけても、仮にここにゴミが
溜まって詰まってしまったら結局はタービンは焼き付きますので、無意味だと考えたからです。
もっと大きな濾過面積をもった部分にフィルターをつけるのならわかりますが、ただでさえ詰まりやすいこんな狭い
流路に、さらに詰まりの原因となるようなものをつけることに何の意味があるのか疑問です。
こんなことしなくても、きちんと良質なオイルを使用し、定期的なオイル交換およびオイルフィルター交換をして
いればトラブルは避けられるはずです。 現に、私のクルマに関してはまったくのノートラブルですし。
ですので、私は「対策後」のユニオンボルトは個人的に納得いかないので使用しておりません。

↑同じユニオンボルトを向きを変えて見たところ。
ご覧のように、茶漉しのようなステンレスメッシュの細かいフィルターがついています。 しかし、こんなところ
にフィルターをつけても、スラッジが溜まってしまえばすぐに詰まってしまうわけで、私は納得できません。
結局、穴の数とフィルターの2つの理由でこのボルトは使用しませんでした。
※最終的にどのボルトを使用するかは本人の判断になります。 メーカーもわざと悪くするために部品を変更する
ことはないわけですので、上記見解はあくまで私の考え、個人的意見によるものです。

↑タービン組み込み前に、矢印のオイルインレットに数滴のエンジンオイルを入れて、あらかじめメタルに
オイルを馴染ませておくことも忘れずに。
ちなみに、よくフラッシングオイルを使用してオイルラインを洗浄する場合がありますが、新車時から定期的に
おこなっている場合は問題になることは少ないですが、たとえば中古車などでそれまでのオイル管理や使用オイル
がわからないもの、あるいは数万キロ単位でフラッシングしたことがない場合、いきなりこうしたフラッシング
などをおこなうと、それによって剥離したスラッジやカーボンといった汚れがタービンのオイルラインを詰まらせ
て、それが引きがねとなってタービンをブローさせる原因になりかねないので、何万キロもフラッシングをおこな
ったことがないエンジンはフラッシングは基本的にはおこなわないほうが良いかと思います。
目安としてはオイルフィラーキャップを開けて内部を見たときに、明らかにスラッジが溜まっているような場合は
やめたほうがいいでしょう。
ですのでおこなうとした場合、タービン交換前におこなったほうがいいでしょう。 タービン交換前にできるだけ
エンジン内部を綺麗にしておき、タービン交換後は通常のオイル交換、フィルター交換をしておけばいいのでは
ないかと思います。
ちなみに私は今まで乗ってきたクルマも含めて1度もフラッシングはおこなったことはありません。
●オイルアウトレット系統
とは言っても、アウトレットパイプはインレットに比べてはるかに太いので、このパイプそのものでトラブルが出る
ことはまずありません。 ですので、これについてはエンジン本体の問題になります。
どういうことかと言いますと、まだ新しいエンジンや、異常磨耗などを起こしていないエンジンではあまり問題は
ないのですが、シリンダーやピストンリングの磨耗が多いエンジン、あるいはピストンにクラックが入っていたり
して棚落ち寸前のようなエンジンの場合は、吹き抜けによるブローバイガスの発生が多く、その結果、クランクケース
内部の圧力が上がり、そのせいでタービンからのオイルリターンが悪くなって結果としてタービンにまわるオイル量
が減少しタービンのメタルの潤滑不良および温度上昇の原因となったり、また、その圧力がセンターハウジング内部
の圧力を上昇させることから、タービン排気側にオイルを漏らせ、白煙の出る原因になります。
つまり、簡単に言うとブローバイガスの量の多いエンジンはタービンブローを起こしやすいということです。
また、これは滅多にないことですが、オイルの量にも注意する必要があります。 オイルレベルゲージの上限ライン
を大きく超えてオイルを入れていると、油面が上昇し、クルマの角度によってはオイルリターンパイプの出口をオイル
が塞いでしまって、これもタービンにオイルが回らなくなる原因になります。

↑オイルアウトレットパイプのアダプター。 このパイプはインレットに比べて遥かに太く、内径10φほど
あります。 ですので、ここが詰まるということはまず通常はありません。
●とりあえず、タービン交換時のオイル系統に関する注意点についてはこのような感じですが、これらは決して
特別なことではなく、ごく基本的な事柄だと思います。
冒頭にも書きましたが、タービンは毎分20万回転近く回る精密機械です。 交換作業時にはそのことをよく考えて
おこなう必要があります。
もし、ちょっと手抜きしたり、「まぁいいや」という感じでおこなうと、機械は正直ですので、すぐに結果として
表れてきます。
以上、参考になりましたら幸いです。