HKS TwinPowerのアース変更と点火系強化デバイスについて

アースポイント1箇所の変更で思わぬ効果が


 

●最近アース、アーシングネタが続いておりましたが、少し前の記事「現在の追加アースライン接続ポイント」

で見落としていたというか、忘れていたものがありました。

HKSの点火系強化デバイス、「ツインパワー」のアースポイントです。 今まではとくに何も考えずに

バルクヘッドの集中アースポイントに他のグラウンドアースと一緒に留めていたのですが、考えてみればこれも

点火系では重要なアースなのではないかと思いイグニッションコイルと同じアーシングライン上にアースポイント

を変更してみました。

<参考> →HKS TwinPowerの装着

 

↑写真のようにTwinPowerのアースをそれまでのバルクヘッドから、バッテリーのマイナスターミナル

からシリンダーヘッドを経由して繋がる点火コイルへ繋ぐ追加アーシングラインと共留めにしてみました。

 

●たったこれだけで予想外の変化が

そうしたら驚いたことに、より一層発進時のトルクアップ、さらにフルブーストがかかるまでの間の中間域の

トルクとスムーズさが向上し、若干ですが乗りやすく変化したのです。 また、全開時のレッドゾーンまでの

吹け上がり感も良好に。 まぁ、劇的なパワーアップとまではいかないものの、とくに実用域でのトルクと

レスポンスの向上はハッキリと感じられ、あらためて「たかがアース、されどアース」とアース1本の重要さを

思い知らされる結果となりました。

というか、これでやっと本来のTwinPowerの本領発揮という感じでしょうかね。 そもそも私のK6Aエンジン

ではDENSOのイリジウムレーシングIXU01-27という純粋なレーシングプラグを使用しているにもかかわらず、

街乗りでもまったくくすぶりやかぶり、始動性の悪化などが感じられないのもこのHKSのツインパワーの効果の

おかげというのもあるのではないかと思いますので。

やはり、点火系デバイスのアースはおろそかにできませんね。 「ただ電気が導通していればそれでいい」と

いうものではないようです。 これはツインパワーに限らずでしょうけど、この類の点火系を強化するデバイス、

たとえばCDIやMDIなどもプラス線はもちろん、アースも適当にとらずに直にバッテリーから引いてきたほうが

よりその性能を活かせると思います。

 

↑新品で買って、かれこれもう11年も使っているHKSのTwinPower。

その向こうはワコーのブラックコイルC-110です。ツインパワーはすでにこの「タイプ-ディストリビューター」

はカタログラインナップから消えてしまい、DLIモデルのみになってしまいましたが、デスビを持つエンジンが

ほとんどなくなった今、これも時代の流れなのでしょう。 しかし、なかなかいい仕事をしてくれてます。


●その他の最近の代表的な点火系チューニング強化デバイスについての私の考え

 

◆ULTRA(永井電子) M.D.I.

↑ULTRA M.D.I(写真は最新モデルのM.D.I-DUAL)

 

これも考え方としてはツインパワーに近いものがあります。 火花持続時間の必要な低回転〜中回転域では

マルチスパークさせることで点火時間を延ばしたのと同様な効果を出してトルクを出しやすくし、逆に高回転域

では本来のC.D.I.の特徴である極短時間で一発の強力なスパークで適切なタイミングで確実に点火してやろうと

いうシステムです。 しかもこの最新モデルの「DUAL」では通常のCDIの容量成分放電に加え、誘導成分放電

に相当する「あと追い放電」もするというマルチなスパークシステムを採用しているらしいです。

理想論だけで言えば、低回転であろうが高回転であろうが点火は瞬間的な一発で火がつかなければいけないの

ですが、エンジンは常に負荷や混合気の状態が変動していますので、常に理想的な火がつきやすい状態ではない

わけです。 ですから低回転域からの加速状態とか燃焼室内の空燃比が不安定な状態では火花持続時間を延ばし

てやって、なんとか着火させるという方法もとらざるをえないわけです。 つまり、純正で多く採用される

フルトラ誘導放電式の良いところと、CDIのもつ容量放電式の良いところをそれぞれ適した回転域で使い分ける

ということです。こういう考え方は現実の理屈に合っていると思いますので、個人的には納得できる気がします。

アメリカ製のMSDイグニッションシステムなども同様な制御のようです。

 

◆オカダプロジェクト プラズマブースター

↑OKADA PROJECTS Plasma Booster(写真はType-B)

 

これはどちらかというと自動車用というより純正でCDI方式が多く採用されているオートバイの点火システム向け

のデバイスだと思います。 バイクの場合、多くはCDI式点火なので、本来は火花持続時間が必要な領域でも

極短時間しかスパークしないため、このプラズマブースター装着により実質的な火花持続時間が延びることにより、

トルク、パワーが向上しやすいものと思われます。 実際、メーカー公表のパワーグラフによる比較でも、4輪車

よりも2輪車のほうがトルク、パワーの向上率が高いことからもそれが推測できます。

この製品の特徴は「高回転域までのごく短時間でのマルチスパーク」と説明されており、1/100万秒単位での

複数点火をすると説明されていますが、そもそも通常のCDIでさえ火花の持続時間は0.0001秒(1/10000秒、

つまり0.1ms)もあるわけですので、個人的にはクランクシャフトの回転速度(角速度)が速く瞬間的な点火が

必要な高回転域でのマルチスパークはほとんど意味がないと考えています。

その理由、理屈については以下の参考ページにも書いています。

<参考> →スパークプラグのチェックと点火系強化について

 

低回転〜中回転域ではある程度の火花持続時間を持たせた点火がトルクアップに有効なので、マルチスパークさせる

のも理解できますが、高回転域では1発の瞬間的な強力なスパークが必要で、最適なタイミングでその1発に全ての

点火エネルギーを一気に注入するのが正しいチューニングだと考えます。

つまり、限られた点火エネルギーを3回も6回も分けて放出するくらいなら、その全エネルギーを1発に集約して一気

に放電するほうが高回転域では確実な点火につながると私は考えます。 たとえば仮に3回火花を飛ばしたとしても

実際に着火するのはそのうち1回だけなのですから、残りの2回の火花はまったくの無駄、まさに「捨て火」なのです。

ですので、もし高回転域において1発の火花で理想的な点火ができないとしたらそのエンジンは何かしらチューニング

やセッティングが間違っているなど、他の部分に問題があると考えるべきだと私は思うのです。 そういう意味でこの

プラズマブースターの「高回転域でのマルチスパーク」という考え方は私にはやや理解し難いものがあります。

 

それにこのプラズマブースターのwebサイトの解説も怪しい限りで「燃焼速度の向上、火炎伝播速度の向上」などと、

子供騙しのような説明がされてますが「点火系の強化で燃焼速度が向上するなんてことは絶対にありえません!」

点火系の仕事はあくまでも適切なタイミングでスパークプラグに火花を飛ばし混合気に着火するまでがその役目であり、

着火したあとの燃え広がり方や、燃焼の火炎スピード、火炎伝播速度などは点火系とは無関係で、それらは燃焼室の

形状や、燃焼室内の混合気のガス流動(タンブル流やスワール、スキッシュなど)に支配され、それによって燃焼速度

が決定するのです。 つまり、点火したあとの燃焼という現象はそのエンジン自体のハード的なポテンシャルにかかって

いるわけで、点火系をどんなに強化したところで燃焼の速度は変えられるものではありません。

点火系にできることは、あくまでも適切なタイミングでミスファイア(失火)することなく確実に混合気に着火させる

ことまでであり、火がついてからの混合気の燃え方までは点火系の手が及ぶところではないのです。

ちなみに、燃焼室内での燃焼速度は優れた燃焼室形状を持つ効率のいいエンジンではだいたい80m/secから90m/sec

前後に達すると言われています。

 

以上のような理由から、私個人としてはTwinPowerやM.D.I.については理論的に理解できますが、プラズマブースター

については低中速域での効果は解りますが、高回転域におけるその原理や効果についてはやや疑問が残るというのが

正直なところです。


●1次電圧の昇圧ブースター関係のデバイスについて

近年になって各メーカー、ショップから点火系に流れる12Vの一次電圧を16ボルトや18ボルトに昇圧するデバイス

が売られているようですが、これらの製品で注意してほしいのは、電圧を上げたぶんだけ点火コイルに過大な負担が

かかってしまい点火コイルの寿命が短くなってしまうというデメリットをきちんと理解したうえで使用することです。

考えてみれば小学生でもわかることですが、たとえば6ボルトの電球に9ボルトの電池を繋いだら当然、フィラメント

が切れやすくなりますよね。最悪は瞬間的に切れてしまうことさえあります。 それと同じことで、本来は12ボルト

で使用されるコイルに16ボルト以上の電圧をかけるわけですからコイルに無理がかかるのは当然なわけです。

ちなみに、キノクニ(RUN-MAX)が売っているNEW VOLTというデバイス(おそらくこの製品がこの類の昇圧装置

の元祖と思われる)では「点火コイルは18V以上対応のものを使用すること」と明記されています。

↑<参考> キノクニ(RUN-MAX)製 NEW VOLT

12Vの一次電圧を16Vまたは18Vに昇圧させる装置です。 現在はモデルチェンジされて最高18Vまでの昇圧と

なっていますが、モデルチェンジ前は最高20Vまで昇圧可能でした。 当然、使用するイグニッションコイルも

その電圧に対応したものを使用する必要があります。 もしこれをノーマルコイルで使用した場合は点火コイル

の寿命が短くなってしまうことを頭にいれておきましょう。 とくにダイレクトイグニッションの点火コイルは

高温になるシリンダーヘッドに埋め込まれるため、ただでさえ熱的ダメージを受けやすいのに、さらに高電圧に

よるコイル自身の温度上昇によるダメージが加わると極端に寿命が短くなるリスクがあります。 コイルは安い

ものではないのでそのへんをよく考えるべきかと思います。 12Vを16Vに上げるだけでもけっこうな負担が

コイルにはかかってしまう可能性があるものなので、この製品に限らず、この類の一次電圧昇圧装置をつける場合

はそのへんのリスクを充分理解したうえで使用する必要があります。

 

「そんなこと言ったらCDIはもっと高電圧じゃないか」という意見が出そうですが、CDIはたしかに数百ボルトという

電圧まで一次電圧を昇圧しますが、容量放電式ということで火花持続時間が通常のフルトラ誘導放電式の1/10〜1/20

しかなく、電気の総エネルギー量としてはそれほど変わらないことから、コイルへの負担も実はそれほどは大きくは

ありません。 ただ、理想を言えばCDIにはCDI専用の点火コイル(1次コイルの抵抗値が小さいもの)を使用するのが

望ましいことは間違いありません。 私が使用しているWAKOのブラックコイルは一次コイルの抵抗値が0.5Ωしかない

ため、CDI(コンデンサー・ディスチャージ・イグニッション)システムとの相性は良好だと思われます。

 

●最後に

点火系強化デバイスはいまいちコストパフォーマンスに見合わない製品が多いように感じますし、オカルトっぽい怪しい

パーツも多いですが、ご自身のエンジンのチューニング度合いに適した信頼できる製品を選ぶようにすれば決して無駄

にはならないと思います。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~