スタビライザー強化ウレタンブッシュ交換
ヒビ割れたスタビブッシュをウレタンにて交換です。
●以前のショックアブソーバー交換のときに書きましたが、スタビライザーのブッシュのヒビ
割れが気になってしかたなかったので、とりあえずウレタン製のものに交換しました。

↑用意したウレタンブッシュ。 製品そのものは(株)ミスミの寸法指定の既製品です。
左からそれぞれショアA硬さ70、90、95となります。
製品番号は以下のようになります。 安いものなので(4個買っても360円ですし)、仕事関連でミスミ
が利用できる方は注文してみると良いかもしれません。
製品名:ウレタン
●ショアA70 AXNMK 25-15 (1個90円)
●ショアA90 AXNHK 25-15 (1個90円)
●ショアA95 AXNSK 25-15 (1個90円)
上記既製品の寸法はD25mm×d10mm×t15mmです。 対して純正ブッシュはD25.4mm×d10mm×
t16mmです。 ですので厳密にいうと1mm高さが少ないことになりますが、実際は問題になりません。
ですがもし、純正と同様高さ16mmのものが欲しい場合の製品番号は以下のようになります。
●ショアA70 AXNM 25-16 (1個160円)
●ショアA90 AXNH 25-16 (1個160円)
●ショアA95 AXNS 25-16 (1個160円)
(単価は2004/6現在のミスミのカタログ上のものですので、予告なく変更になることもあります)
ウレタンはゴムに比べて弾力の維持などの耐久性には劣る(ですのでメーカー純正部品や、メーカー
系のアフターパーツメーカーのブッシュにはあまり使用されないのです)のですが、切削加工が比較的
容易なので、比較的少量生産の強化ブッシュにはよく使用されます。
とくにこのように常に潰された状態で使われる場合は弾力を失うのが早いので、寿命はいいとこ2〜3年
と考えたほうがいいでしょう。
ちなみに、ウレタンには大別してポリエステル系とポリエーテル系があり、それぞれに一長一短
があります。 ポリエステル系は主に機械的強度、耐久性、耐油性に優れ、ポリエーテル系は
主に耐加水分解性、反発性(弾力)に優れています。
今回用意したものは70がポリエステル系、90と95がポリエーテル系です。
ですので、サスペンションのように耐候性、耐久性を求める場合にはポリエーテル系のほうが
向いていると言えると思います。
とはいえ、私の経験上、ウレタンの耐久性はどうしても純正のゴム製には劣ります。
また、両系とも共通してウレタンは基本的に耐熱性には乏しい傾向があります。

↑ゴムや軟質プラスチックの硬さを見るゴム硬さ試験器。
これはJISでのHs硬さAスケールですが、これはほぼショアAスケール硬さに相当します。
なお、試験は先端の圧子を押し付けることによっておこないますが、ゴムの特性上、ずっと押し続
けるとどんどん圧子がめりこんでいって、柔らかい数値になってしまいますので、基本的には押し
つけてから1秒以内に読み取ります。
なお、これとは別に15秒後の数値を読む方法もあります。
さて、上記硬さ試験器の数値での比較では、純正ブッシュがショアA65〜70、タニグチの強化
ブッシュがショアA80となっています。
ですので、今回はタニグチのものよりちょっとだけ硬い90のものをとりつけました。
95でも問題はないと思いますが、あまり硬いと、スタビ取り付け部のボルトに負担がかかるので
この程度で辞めておいたほうが良いかと思いますので。
ちなみに、これに限らず純正のサスペンションブッシュのゴム硬さはだいたいショアA60〜A70前後
が多いようです。 ですので強化ブッシュとなると、たいていは80前後が一般的になります。
とくにサスアームのブッシュの場合、ゴムを硬くすることでたしかにダイレクト感は増しますが、同時
に本来のサスアームの動きそのものも規制してしまうため、サスペンションの動きが悪くなることも
あります。 強化ゴムブッシュよりもピロボールのほうがかえって乗り心地がよい場合がありますが
これは、ピロボールのほうがサスアームが抵抗なく動きやすいことに起因するものです。
ですので、とくに強化ブッシュに交換した場合は、ブッシュのボルトの本締めはジャッキアップした
状態ではなく1G状態でおこなうことが基本です。 そうすることで普段からブッシュに無理なストレス
がかからなくなりますので、ブッシュの寿命も延びますし、サスの動きも良くなります。

↑これは外したタニグチの強化ブッシュ。 ウレタン製なのでやはり3年も使用するとボロボロです。
弾力もほとんど失っていました。 ちなみに、奥にある2個は純正ブッシュです。
見てもわかりますように5年ほど使用した純正ブッシュはまだきちんと元通りになる復元力および
弾力を持っていますので、やはり耐久性では純正ゴムに優るものなしと言うところです。
●取り付け

↑装着したところ。
とりあえず、まずはどのくらいの耐久性があるかをテストしてみないとわかりません。
ポリエーテル系なので水分による分解や弾力の維持には有利なので、けっこう持ってくれる
のではないかと思ってはいますが。
走行してみての変化ですが、やはり今までのブッシュが劣化していたせいもあってか、より
フラつき感がなくなって、直進時も、コーナーでのステアリングの切りはじめもシャッキリ
した感じになりました。 やはり定期的な交換が必要なようです。
●ただし、私のジムニーの場合はスタビライザーも強化しておりますが、それよりも重要なことは
スタビのフレーム側のブッシュも強化品になっています。
正直、ノーマルの状態で今回のホーシング側のブッシュだけを強化品に換えても、肝心のスタビ
本体をクランプしているフレーム側のほうがノーマルの柔らかいままでは効果は半減します。
ですので、宣伝するわけではありませんが、やはりまずはタニグチのスタビ強化ブッシュセット
を使用したほうが効果的です。
今回のウレタンブッシュはあくまでこの補修用として考えておりますので。
●硬さについての補足
上記について、ショアA硬さを出していますが、実際、日本ではゴム関係はHs硬さというのが
一般的に使用されておりますが、これはほぼこのショアAスケールとイコールなので、同じと
考えていただいて構わないと思います。
ただ、このHsと、ショア硬さの記号HSが非常に紛らわしいので、気をつけないといけません。
----------ここから先は脱線しますので、興味のない方は無視してください(笑)----------
私のような金属関係がメインですと、硬さのスケールはロックウェルCスケール(HRc)がもっとも
多く使用され、その他ヴィッカース(HV)、まれにブリネル(HB)が使用されます。
このへん、会社によっても設計時に使用する標準硬さの種類は異なりますが、実際に製作する現場
のことを考えるとロックウェルがもっとも親切(現場でやりやすいので)かと思います。
ちなみに、今回のようなゴム、樹脂関係の硬さ試験は通常はあまり当方ではおこないません。

↑当方で現場で使用しているロックウェル硬さ試験機。 これはもうだいぶ旧いタイプです。
押し付けるコーンはダイヤモンド圧子、Aスケールでは超硬球を使用し、かける荷重もスケールに
よって変えます。 これ1台でロックウェルA、B、Cの試験ができます。
私の場合は、扱うものが特殊鋼の熱処理品が多い関係で、HRcがもっとも使用されます。
さて、ここで硬さというものの概念ですが、これほど感覚的な表現方法はないのではないかと思える
くらい「いい加減」なものです。
物質にとって硬さというのは非常に重要なのですが、同時に硬さというものほど理解しにくい物性と
いうのも他にないのではないでしょうか。
硬さというものは、その物体単体に於いては何の意味もなく、他の物体と接触したときにはじめて
意味をなすものですので、絶対的なものではなく、相対的なものとなります。
たとえば、上記で硬さのいくつかの規格を挙げていますが、これらはそれぞれ比例関係にはなく、
しかも同じ規格でもその範囲によって比較できる範囲が限られてしまいます。
このように、硬さというものは「測定」と言うには絶対的な基準がないために、たとえば寸法などの
ようには比較できません。
ですので、注意していただきたいのは「硬さ」であって「硬度」ではないということ、「硬さ試験」
であって「硬度測定」ではないということです。
物質の硬さは「検査」することはできても「測定」することはできないのです。
硬さというのは面白いもので、硬ければ耐摩耗性が高くなるかと言えばそうではなく、同じ硬さでも
摩擦係数は異なりますし、それ以上に表面の残留応力のほうが磨耗に対しては影響を与えます。
また、硬い=強いかというとそれはある程度は当たっていますが、いわゆる引っ張り強さ(降伏点含む)
や伸びは比例するものではありません。
さらに、とくにスプリングで重要視されるヤング率(縦弾性係数)もHRc45程度まではほぼ比例して
いきますが、それを超えるとフラットになってしまって上昇しません(ですのでスプリングはどれも
この程度の硬さ以上には焼き入れしないのです)。
硬さのついでに書いておきますが、よくクルマの補強パーツで「剛性」ということが言われますが、
この「剛性」と「強度」というのは異なり、剛性に必要なのはこの「弾性係数」であり、強度に必要
なのが「引っ張り強さ」なのです。 (ちなみに、この「強度」という言い方もおかしいかもしれま
せんが、便宜上使用させていただきます)
ですのでよく軽量化パーツなどで、純正で鋼材製のものをそのままジュラルミンなどで造りかえている
ものありますが、ジュラルミン、すなわちアルミの弾性係数は鋼材の1/3程度しかありません。
(基本的に金属の弾性係数はその素材の密度(=比重)に比例しますので)
たとえば「S45Cに匹敵する強度をもつ」と宣伝されている超々ジュラルミン、A7075がありますが
たしかに引っ張り強さではS45Cに迫る数値を誇りますが、ではそのまま炭素鋼材と置き換えができる
かというとそんなに単純にはいきません。
実際に機械部品として使用する際には引っ張りだけではなく、曲げ、ねじり、くり返し応力などの様々
な力が加わりますが、それらはこの引っ張り強さや降伏点では比較にならないのです。
ですので、こうした外力に対しての抵抗力、耐久性を考えると実際の使用範囲はかなり限られるのが
現実です。 これらをふまえた上で材料、熱処理を選ぶことこそが適材適所というものになるわけです。
ですので、断面形状や構造によって剛性を出している場合は別として、ただ同じ寸法、形状で軽合金で
作り直しただけではかえって剛性はダウンすることがほとんどなわけです。