K6Aエンジンのバルブクリアランスについて「攻撃的な反論」が来たので

これはあくまでも私の個人的なポリシーですが、理には叶っているはずです


↑私のJA22ジムニーのK6Aエンジンのシリンダーヘッド。HB21SアルトワークスR専用カムシャフトが

組まれており、ポート段付き修正研磨はもちろん、超高精度面研加工もしてあります。

 

私が過去に書いたバルブクリアランスの説明に対しクレームのメールがきました

まずはじめに断っておきたいのは、私のこのページはあくまでも「チューニングしたK6Aターボエンジン」

について書いているので、ノーマルの考え方では通用しない点が多々あるということです。そのうえで私は

今までに数回バルブクリアランス、とくに「排気バルブのクリアランスは基準値の範囲で最大を狙うべきだ」

と述べてきました。 これに対し異論のある方もいるかと思いますが、きちんと金属材料の勉強をされた方

であれば必ずその理由を理解していただけると思います。


チューニングターボエンジンの排気バルブクリアランスは基準値範囲内で最大を狙うべきである

↑オーバーホール時に私のK6Aエンジンから外したエキゾーストバルブ。 バルブフェイスのシート接触面が

カーボンの噛み込みによる凸凹でダメになったため、メーカー対策品の新品に交換しました。

 

<参考リンク1> →私のK6Aエンジンオーバーホールの記事

<参考リンク2> →K6Aエンジンの排気バルブトラブルについて

 

これにはもちろん後述するような理由があるのですが、このことを理解していない輩が「バルブクリアランス

は最小に調整すべきだ。それはバルブステムよりヘッドのアルミのほうが熱膨張が大きいため、エンジンが

暖まるとバルブクリアランスは広がる方向にいくから、カムの有効開度が減少してパワーに不利になるからだ」

とメールをよこしました。 耐熱鋼(SUH31相当)でできた排気バルブと、アルミ鋳物(AC4相当)でできた

シリンダーヘッドの熱膨張率が大きく違うことくらい私も百も承知で「コイツは私をバカにしてるのか?」と

非常に不愉快な思いをしました。 しかし私はそれをすべて知った上でチューニングターボエンジンにおいては

とくに排気バルブのクリアランスは「基準値内で」広めにとるべきだと主張しています。 もちろんこれには

理論的裏付けがあります。一般的にバルブクリアランス数値の計測方法では「冷間」と「温間」がありますが、

これは「バルブもヘッドも同じ温度である状態」でしかありません。ここに大きな落とし穴があります。

実際のエンジンの作動時、とくにターボエンジンの全開全負荷時はヘッドと排気バルブには何倍もの温度差が

生じるのです。この「最悪の状態になったときのクリアランス」をよく計算に入れてバルブクリアランスを設定

しなければなりません。 このあたりはけっこう見落としている人が多いと思います。

↑私のK6Aエンジンのシリンダーヘッドの組み立て中の写真。まだリフターは載っていません。


エンジン稼働中は部品によって温度が大きく異なることに注目すべき

実際のエンジン作動中はヘッドの温度はせいぜい150度から200度程度ですが、ターボエンジンの排気バルブ

は高温の排気ガスに晒されるため、最高900度にも達します。 ここで材質別に熱膨張を計算すればわかり

ますが、ヘッド本体はせいぜい0.2mm程度しか熱膨張をしません。 ですが、排気バルブは仮にステム長を

70mmと仮定すると900度では実に0.7mm以上も熱膨張で伸びるのです。 もちろん、バルブフェイス部と

ステム端部では温度差があるので実際にはこの数値の半分程度になりますが、それでも高度にチューニングして

パワーアップしたターボエンジンの排気バルブはノーマルエンジンより高温になりますので排気バルブステム

はノーマルより伸びます。私は予めそれを見越して「排気バルブのバルブクリアランスは基準値内で最大

を狙うべきである」と記述しているのです。 ハイレベルにパワーアップチューニングされたターボエンジン

とノーマルエンジンとを同じ視点で考えていること自体間違いなのです。 サービスマニュアルに書かれている

数値は一つの目安にすぎません。

それに対してチューニングエンジンでは自分の頭で考え、計算し直し「最適値」を導き出す必要があります。

たとえば、ピストンとシリンダーのクリアランスもただサービスマニュアル通りに組み合わせるのではなく、

フリクションロスを低減するためにあえて最大より0.005mmから0.01mmほどほんのわずか大きめにするの

がコツです。実際、私のJA22ジムニーのK6Aエンジンはそのように組まれています。

 

↑このように、エンジン稼働中は各部の温度分布はバラバラで、ヘッド本体は150度程度でも排気バルブは

800度から900度の高熱に晒されるのです。これがハイブースト、高回転のターボエンジンであればバルブ

フェイスからもっとも遠いステム先端部でも300度近い温度になりますので、ヘッドの熱膨張より排気バルブ

の熱膨張による伸びのほうがずっと大きくなるのです。このような状態になったときにもバルブフェイス面と

バルブシートがきちんと密着するようにしなければなりません。 もし、バルブクリアランスが狭すぎると、

バルブフェースとバルブシートが密着せず、圧縮漏れを起こすばかりか、バルブシートを通しての排気バルブ

の冷却ができなくなり、最悪は排気バルブが溶ける、つまり溶損してしまう危険性があるのです。これが私が

「ハイパワーチューニングターボエンジンでは排気バルブクリアランスを基準値内で最大に取るべきだ」

言い続けている理由です。 もしかしてK6Aエンジンの排気バルブトラブルが多い理由のひとつにこれも関係

しているのかもしれません。

 

排気温度計の数値でもその時点での排気バルブが晒されている温度が推測できる

ハイパワーにチューニングされたターボエンジンの燃焼温度ピーク値はおよそ2000度から2500度に達し、

境界層があるとはいえ当然、燃焼室壁の一部を構成するバルブフェイス面はその温度に晒されます。 その後、

吸気バルブは吸入混合気で冷やされますが、排気バルブは高温の排気ガスにもろに晒されます。

↑排気温度計のピークホールド。運転中、排気温度計の数値をリアルタイム見ることでも現在、排気バルブが

どのくらいの温度に晒されているかが推測できます。たとえば、全開全負荷走行時に排気温度計が850度を

指していたとすると、排気温度計センサーよりはるかに上流にある排気バルブはそれより50度から100度は

高い温度に晒されているということです。私が排気バルブの温度が900度にも及ぶと言う根拠のひとつがこの

排気温度計の値なのです。 そう考えると排気バルブというのはエンジンの中でももっとも過酷な環境で働く

パーツであるということができると思います。 フルブーストをかけパワーを出しながら往復運動をする排気

バルブは真っ赤に赤熱しながら限界ギリギリの極限状態でその役割を果たしているのです。そう想像するだけ

でもターボエンジンのエキゾーストバルブに求められる厳しい条件がわかるというものです。


参考までに上記で書いた熱膨張寸法の根拠について

まずシリンダーヘッドですが、アルミの熱膨張係数は23で、これは単純に書くと「1度温度が上がると長さ

1000mmあたり0.023mm伸びる(膨張する)」ということです。この計算でいくと、たとえばヘッドの底面

からカムシャフトジャーナルのセンターまでの寸法を70mmとした場合、全体が150度から200度まで昇温

したとき、その熱膨張寸法は前述したように約0.2mmになるということです。 同じようにバルブの鋼材の

熱膨張係数は11.7ですので、同じくステム長さを70mmとした場合に温度を800度から900度まで上げると

約0.7mmほど伸びる(膨張する)というわけです。 ただ、お断りしたように、実際にはバルブフェイス部

が900度になってもステム先端部はせいぜい300度程度が限度ですから、実際の排気バルブ全体の熱膨張寸法

はせいぜい0.3mmから0.4mm程度であると推測することができます。

これらの寸法から計算し0.05mmから0.1mm程度の余裕を見てバルブクリアランスを決めるのです。 いずれ

にしても、熱膨張による寸法変化量は「排気バルブ>ヘッド」になるということです。なお、吸気バルブは

吸入混合気で冷やされるため、排気バルブの半分から2/3程度しか熱膨張しません。 また、チタン製バルブも

熱膨張率が通常の鋼材の半分程度しかないため、バルブクリアランス設定時にはこれらの要素を充分考慮する

必要があります。 なお、チタン製バルブはその耐熱性から吸気バルブにしか使えません。 本格的なターボの

レーシングエンジンの排気バルブにはもっと耐熱性の高い耐蝕耐熱超合金であるインコネル材が使われます。

このインコネル材はニッケルが主成分なので一般的な耐熱鋼の排気バルブよりも熱膨張率が大きく、約1.5倍

程度になります。なので通常の排気バルブ材よりさらにバルブクリアランスは広めに取る必要があります。

以上がハイパワーにチューニングされたターボエンジンのバルブクリアランスに対する私の考え方です。

非常に繊細なものであることがご理解いただけましたでしょうか。 なお、現在は市販車でも排気バルブの

冷却を促進させるため、ステム内部を中空にし、そこに金属ナトリウムを封入した「ナトリウム封入バルブ」

もかなり普及しております。これらは通常のソリッドステムの排気バルブより若干バルブクリアランスを詰め

ることが可能です。

<参考ページ> →金属ナトリウム封入中空バルブについて

 

バルブガイドやバルブシートリングの材質によっても最適なバルブクリアランスは変わる

通常、量産車のエンジンのバルブガイドは耐磨鋳鉄製で、バルブシートリングも同じく耐磨鋳鉄でできて

います。これはもちろん長期の耐久性を重視してのことです。 しかし、一部のチューニングエンジンや

レーシングエンジンではこれらを銅系の材料、たとえばりん青銅やアルミ青銅、ベリリウム銅などで製作し、

より熱伝導性を向上させてバルブの温度を下げるようにしているのが当たり前となっています。

当然、鋳鉄製に比べれば磨耗は大きくなりますが、ル・マンなどの24時間レースでも充分な耐久性はある

ので、思ったほど磨耗はしないものです。これらの材質で作った場合は熱伝導性がより良くなりバルブの

温度が下がるので、若干ですが、バルブクリアランスを詰めることが可能となります。 なお、これら銅系

のバルブガイド、シートリングは軟らかいため、ヘッドに嵌めるときは圧入はできませんので、ヘッドを

温めておき、逆にバルブガイド、シートリングを冷やしておいて挿入する「焼きばめ、冷やしばめ」にて

おこないます。決して叩いて挿入してはいけません。

↑ベリリウム銅製のバルブシートリングとアルミ青銅製(吸気側)、りん青銅製(排気側)のバルブガイド

の例。なお、バルブステム外径とバルブガイド内径のクリアランスは排気側のほうを吸気側より若干大きめ

にするのが一般的です。

 

バルブクリアランスの「バラつき」はどの程度まで許容されるか

極端な言い方をしてしまえば、エンジンが問題なく動けばそれでいいというレベルならば0.05mmくらい

バラついててもなんら問題はないでしょう。 ですが、冒頭にも書いたようにこのページはチューニング

エンジンについて書いていますので、やはりバラつきは可能な限り最小にして、できれば0.02mm以内には

入れておきたいところです。これによってカムの性能が活かせることはもちろん「エンジン音」まで変わって

きます。バルブクリアランスとバルブスプリング張力が揃っているとエンジンは「いい音」になるんですよ


K6Aエンジンは後期型(新規格)より前期型(旧規格)のほうがバルブスプリングが強い!

最後にこの人は「前期のK6Aより後期のK6Aのほうがバルブスプリングが強い」などと自分の無知蒙昧さを

恥ずかしげもなく書いてきました。 そのくせ、具体的なバルブスプリング張力などのデータは一切書いて

いません。私が何度も書いているように「説明には説得力が必要だ」が原則ですので、私を納得させたいのなら

具体的な数値で示すべきです。 実際はK6Aエンジンのバルブスプリング張力は旧規格がもっとも強く、新規格

のほうが旧規格の70%程度まで弱められているのです。私はこれをある程度数値データとして持っています。

具体例を挙げると、旧規格のK6Aエンジンのバルブスプリング反発力は28.5mm圧縮時で15.5kgfから13.5kgf

となっていますが、新規格のK6Aエンジンのバルブスプリング反発力は同じく28.5mm圧縮時で11.3kgfから

9.7kgfしかないのです。 そのため、旧規格K6Aが8500rpmレッドゾーンなのに対して、新規格K6Aのレッド

ゾーンは7500rpmからさらに現在は7000rpmまで落とされているのです。 つまり、高回転チューニングをする

なら旧規格のK6Aエンジンのほうが断然有利なのです。

それと、よくバルブスプリングがヘタっているかどうかの比較でスプリングを並べて「自由長を比べて」比較して

いる人がいますが、これはまったく無意味です。重要なのは「スプリングのセット圧」なので、上記写真のような

専用のスプリングテスターで一定寸法に圧縮したときの反発力でバラつきを比較しなければ意味がありません。

これも勘違いしている人が非常に多いです。

↑K6Aエンジンのバルブスプリング。左側のスプリングのほうが自由長が短くなっていますが、これだけではヘタッて

いるかどうかの判断はできません。 重要なのは組み込んだときの「セット圧」なのです。

↑旧規格K6Aエンジンのバルブスプリングのサービスデータ。 見てのように自由長に関しては基準値があるだけで

使用限度は指定してありません。 対して、28.5mmに縮めたときのセット圧(バネの反発力)は厳密に指定されて

います。 そう、重要なのはここなのです。なのでバルブスプリングがヘタッているかどうかを調べるためにはただ

自由長だけで判断するのではダメで、きちんとしたバルブスプリングテスターを使って調べなければいけないのです。

そして、吸気側、排気側でなるべくバラつきの少ないように組み込みます。 前述したように、こうすることでより

「いい音のするエンジン」になるのです。

↑K6Aエンジンのバルブリフター(タペット)とアウターシム。弱いバルブスプリングのまま極端なオーバーレブ

させると最悪はサージングやバルブジャンプを起こしてこのアウターシムが脱落することがありますので注意。


最後に

私の元にくるメールはほとんどは好意的で友好的なものですが、稀に今回のような「攻撃的な文面で」自己の

知識自慢をしたいのか、理屈に合わない反論をしたり、持論を押し付けてきたり、データのない単なる思い込み

の反論をしてきたり、さらには私に対して説教するような輩までいて本当にウンザリさせられます。

こういうメールは私にとっては非常に不愉快であり非常に腹立たしい。言いたいことがあるなら自身のブログや

みんカラ、匿名掲示板ででも私の目の届かないところで勝手にやってろと言いたい。 どんな理由であれ私は私を

直接攻撃してくる者には容赦しない。こういう不愉快なメールが来るとページの更新をする気さえ失せる。

私だってバカの相手をしているほど暇でも寛容でもないのだ。

 

しかもこの人は「元リビルトエンジン製作の仕事をしていた」と言うのだから笑える。つまり、世の中のリビルト

エンジンはこのレベルの知識すら持ち合わせていない人間が作っているということだ。これならリビルトエンジン

にトラブルが多いのも納得できる。あらためてリビルトエンジンなんてとても信用できないと確信した。

↑リビルトエンジン、コンプリートエンジンなんて家でいえば「建て売り住宅」みたいな物で、完成した状態しか

ユーザーは見れないので、中身が見えないだけに「能書きは立派なことが書いてあっても、バラさなければ見えない

肝心なところは手抜き作業している可能性が高い」ので購入するのはそれなりにリスクを伴うことを覚悟の上で。

「安かろう悪かろう」はこの業界ではすべてにおいて通用すると思って間違いないですから


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~