7MHz帯ルーフィング・フィルター

記 2011年03月04日〜  ja3npl

  この集合住宅に住んで、10年余が経ち、10年周期の大規模修繕工事も始まりました。 この10年余の間、ハム局設備に工夫を加えて来て、便利良く運用が出来るようになりました。
   電離層の反射が実感できるQSBのある弱い信号・・をワッチするのは、心地よく、自由な時間を、ハム局長として楽しんでいます。

  現在、気になっている事は、7MHz帯での、強力な商用局の信号によって派生するハムバンド内信号の抑圧です。   ( なお、より大きな問題は、近隣の給湯器の間歇(かんけつ)雑音があり、解決しておりません。 仕方なく、雑音発生の合間を縫ってのハム局運用です。)

  以下は、7MHz帯で、受信入力部(フロント・エンド)にフィルターを挿入して、抑圧の無い、普通に静かな,、制御の効いた受信をする試みです。
  トランシーバ;IC-756PROの受信部を対象にして、 を、行った結果です。

  ちょっと古い事ですが、QCサークル活動のQCストーリーを思い出しています。 「テーマ」「取り上げた理由」「現状の把握」「解析」「対策の立案」「対策の実施」「効果の確認」「歯止め」「残された問題と今後の進め方」..というものでした。
  品質管理の仕事を長い間していたので、懐かしい気持ちです。


<その1.現状の把握と解析>

  1. 夜間の7MHz帯の現状
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      IC-756PROの画面で見ると、このようになります。
      7,226KHzの強力な信号に合わせて、7,226±100KHzのスペクトラム観測です。

      強力な信号は、Sメータ指示でS9+60dbです。7,200KHz以下のハムバンドには、ほとんど信号は無く、低いレベルです。この段差が問題です。


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      ダイアルを回して、ハムバンド上限の7.2MHz±100KHzに変えると、画面のレベルは、全体に上昇したままで異常です。商用局の強い信号がQSBで変動するのに従って、画面の信号レベル全体が変動します。

      これは、IC-756PROの第3の受信部(スペクトラム・スコープ用の受信回路)の特性です。
      7.2MHzには信号が無く、AGCのはたらきで、ゲインが上がり、飽和している状態です。これでは、スペクトラム表示は、役に立ちません。
    (アッテネータを使い、-35dbの減衰をさせて、最強の信号レベルをS9+25db以下にすると、飽和状態がなくなりました。)

      一方、主たる、第1、第2の受信部を使った受信は、画面表示とは異なり、健全に受信できています。つまり、DXの弱い信号を受信する時に、少しバック・グランド・ノイズがあるように感じると、ATT 12dbをオンとし、解消できています。


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      左図は、より広い範囲の6〜8MHzの状況です。
      2011年7月18日22時ごろに、長さ10mのバーチカル・アンテナ、A.T.U.;kenwood AT-300を介して、スペアナに取込んだ信号で、ピーク・ホールドの記録です。

      7,326KHzの強力な信号は、なんと、-7.5dbmと超強力です。丁度、-75dbmの所がS9に相当しますので、この信号は、S9+67.5dbの強さです。コンディションによっては、もっと強力な場合があると思われます。
      6MHz帯にも強力な信号があります。


  2. IC-756PROの受信入力部の構成

      下は、フロント・エンド(1st Mixerまで)のブロック図です。送受切替や、BPFの切替、第2第3の受信回路は省いて描いています。
      7.3MHz付近の強力な信号は、ゆるい選択性のフィルター「BPF 6〜8MHz」を通って、1st Mixerに届いています。

    ブロック図
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      左図は、入力系途中にある「BPF 6〜8MHz」の周波数特性(回路シミュレーター「CircuitMaker 6 Student」による)です。
      これを見ると、7MHz帯の商用局の他に、6MHz帯、9MHz帯の強信号にも対処すべき状況です。


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      回路シミュレーターに入力した「BPF 6〜8MHz」の回路定数です。


  3. IC-756PROの受信入力部の特性

      強い、複数の信号があると、どの程度の弊害が生じるのか、測定して見る事にしました。

      2台のS.G.を使って、7,250KHzと、7,300KHzの信号を作り、コンバイナーを通して、IC-756PROに入力します。
      そして、IC-756PROの1st Mixerで生成されるであろう相互変調歪を測定します。
      7,200KHzにはIM3が、7,150KHzにはIM5が現れるので、その値をSメータで読み取ります。

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      画面は、左の様になり、強力な2信号と共に、7,200KHzにIM3が見えています。


    <結果表>                                      ( P.AMP OFF, ATT OFF )
    IM9
    7,050KHz
    IM7
    7,100KHz
    IM5
    7,150KHz
    IM3
    7,200KHz
    2tone Sig(S)
    7,250/7,300
    2tone Sig(dbm)
    7,250/7,300
    S0S1S4S9+23dbS9+65db x2-10dbm x2
    -S0S1S9+10dbS9+60db x2-15dbm x2
    --S0S7S9+55db x2-20dbm x2
    ---S1S9+50db x2-25dbm x2
    ----S9+45db x2-30dbm x2
    ----S9 x2-75dbm x2

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      2toneの信号源 -10dbm x2 のIM3は充分に低レベル、-81.7dbc以下であるという確認の測定です。


      結局、S9+45db を超える強い信号が2つ以上あると、ハムバンド内に、ノイズとなって現れる事になります。
      ATT 12db をオンとすれば、これが解消できるので、納得です。
      ATT 12db をオンとすると、Sのレベルが判らなくなる..そして、スペクトラム・スコープは、ATT 12dbでは不足で役に立たない..という点が、問題なのでしょう。

      Max;S9+45db、Min;S0、と言うレベル差がダイナミック・レンジになります。S9~S0間は22dbですから、ダイナミック・レンジは、67dbと言うことになります。   なお、表の値からIP3を導くと、IP3 = +19dbm となります。 IP3での表現は、実用状態との対照がむつかしい、直感の理解が出来ないので、いつも、困ってしまいます。

      IC-756PROのダイナミック・レンジは、67db と表しましたが、これは、低い方の信号レベルをS0(-97dbm)とした場合です。Sメータ表示を見ながらの実際的な運用、視覚的なダイナミック・レンジと言えます。
      IC-756PROのノイズフロア・レベルは、-130dbm(P.AMP OFF)です。この値を採用すると、IC-756PROのダイナミック・レンジは、「S9+45db;-30dbm」〜「-130dbm」の差、100dbとなります。
      つまり、Sメータが振れなくても、AFゲインを上げれば聞こえる..という状況です。

      さらに、実際の運用を考えて、外来ノイズのレベルがS5であれば、ダイナミック・レンジは、より小さくなってしまいます。アッテネータを入れて、より感度を犠牲にした方が、100dbの実力ダイナミック・レンジが有効に使えます。
      そして、アッテネータの減衰分だけ、Sメータの感度を上げれば、Sメータの振れが実用的になるのですが。
      今度、このような受信機を自作、あるいは、改造をしたいと思います。

  4. 現状の解析結果

      商業局の強い信号を、7.25〜7.5MHz付近の複信号、S9+65db と想定した場合です。
      7.0〜7.2MHzを受信状態で、スプリアスをS0以下にするには、
      つまり、7.2MHzより50KHz程上に離れた7.25MHz/S9+65db の信号を、S9+45db まで減衰させるには、-20dbの効果を必要とします。
      スペクトラム・スコープの画面表示を、正常に保つためには、つまり、S9+25db まで減衰させるには、-40dbの効果を必要とします。

次回に続きます。

以上

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