秋月電子Cメーター(微小容量計)を改造したLCメーター

記 2003年06月20日〜  ja3npl

  LCメーターを製作しました。

  別項にあるとおり雑音低減の試みを重ねています。この中でフェライトコアを多用していますが、古いエアコンから回収したコアなど素性の分からない物もあり、特性不明のコアにコイルを巻いてインダクタンスを測る必要が生じました。
  これからの内容は次の通りです。結果として、簡単な回路のLCメーターが出来ました。
<追加>  改造を加えました。 各項をクリックすると別ウインドウが開きます。

  改造はこれで小休止です。続きの構想は、これまでの回路を統合して1枚の基板にまとめる、簡単回路を求めて工夫する、などがあるのですが、少しばかり、細かい部品の半田付けに飽きてきたので、特性不明のコアの調査に移ります。

<追加>  これまでの回路を統合して1枚の基板にまとめる改造を加えました。

<その1.LCメーター完成品の外観と回路図・Ver1.0>

a.外観

  秋月電子のデジタルボルトメーター(キット)、今回自作したLC検出回路基板、アルミ板、アルミ板の下は電源部です。

  LC検出基板の内容は、1MHz、100KHz、10KHz、1KHzの矩形波発生回路、C検出方法は秋月電子のオリジナルの回路そのまま、L検出方法はLに矩形波電流を流し、L両端の電圧を測る要領です。

  白色のICソケットが測定端子です。ここに測定したいLやCの足を差し込みます。左白端子はC用、右はL用。

  この基板の中央のディップスイッチは、C検出回路とL検出回路の選択切替、信号源周波数1MHz〜1KHzの切替用です。

  L、Cの測定原理は、こちら。(2003-09-11追記)



b.回路

  デジタルボルトメーター部、電源部の回路は省略です。


<その2.試作と測定値、失敗例>

a;Lメータ部の構成

  元はと言えば、HF帯の任意の周波数で未知のフェライトコアの特性を知る為のLメーターですから、次図のような構成を想定していました。

  未知のコイルに定電流を流して、コイルの両端の電圧を測れば簡単..と思いました。

  市販のLメーターはどんな回路になっているのだろうと調べて見ましたら、ほとんどが100KHz以下の低い周波数での測定になっています。より高周波での測定はCと組み合わせて共振周波数を測るものでした。
  こんな簡単な回路の測定器がなぜ世の中に無いのかと不思議に思いました。
  (あとで判りましたが、これは数千万円もするスペアナそのものです..。)

  秋月電子のホームページの微小容量計のキットはどんな回路なのか参考にさせてもらおうと思い、購入しました。なぜかLメーターは販売中止になっています。


b;Lメーターの試作

  秋月電子の微小容量計は簡単回路で大変参考になりました。本来はサイン波で測定するのが理論どうりなのに、矩形波で測定するようになっています。バラック回路で実験したところ、直線性も良く、うまく出来ています。

  それなら、L測定も矩形波で出来るかも知れないと思い..(このあたりは理論よりも、アマチュア的な興味が先行です。)、
回路を作り、カットアンドトライで定数を探し、ほぼ目的の動作が出来るようになりました。100KHz/100uHにて出力を100.0mvに合わせ、周波数とLを変えて測定した結果が次表です。
<Lメータの測定結果表>
信号源矩形波周波数共試Lの値(精度不明)とD.V.Mの表示
1KHz10000uH/96.8mv1000uH/10.0mv100uH/0.8mv
10KHz1000uH/99.1mv100uH/11.2mv10uH/0.6mv
100KHz100uH/100.0mv10uH/8.3mv1uH/0.0mv
1MHz10uH/66.2mv1uH/1.3mv0.1uH/0.0mv

  青色表示のところは何とか使えそうです。黄色のところは30%を外れていてダメです。 でも、共試Lが正確ではありません。この測定結果は目安です。

  左は共試したLです。ほとんどが旧いTVの基板から回収したものです。

  例えば、68uHと表示のL素子2個を測定すると、1個は69uH、もう1個は65uHと出てきます。どうも相互に10%(±5%)位には入っているようですが精度不明です。



  なぜ、黄色表示の測定範囲が合わないのでしょう。周波数の高い1MHz、レベルの低い10uH以下がうまく測れていません。どんな波形なのか測ってみました。

  本当は、1MHzの現象を見たいのですが、手元にはパソコン・オッシロ(Pico社ADC-42)しか在りません。わずか7.5KHzまでしか測れません。
  左は、1KHz、10,000uHの条件でコイル両端の電圧を測ったものです。約200mvピークのパルス状波形です。

  これでは、パルスの幅が狭く、しかも電圧が200mvではゲルマニュームの検波はちょっとしんどいと思われます。1MHzで、10uHの領域はもっと出力が得にくいのは推測できます。



c;Cメーターの試作

  続いてCメーターの回路も試作しデータを採りました。回路は秋月電子の微小容量計の検出回路そのままです。

  100KHz/100PFにて出力を100.0mvに合わせ、周波数とCを変えて測定した結果が次表です。
<Cメータの測定結果表>
信号源矩形波周波数共試Cの値(±20%)とD.V.Mの表示
1KHz10000PF/94.1mv1000PF/9.8mv100PF/0.8mv
10KHz1000PF/98.4mv100PF/9.8mv10PF/0.9mv
100KHz100PF/100.0mv10PF/10.4mv1PF/1.3mv
1MHz10PF/102.2mv1PF/13.9mv-
注;端子に何もつながない状態では、浮遊容量の為わずかに出力があります。100KHzでは0.2mv、1MHzでは3.0mvです。

  青色表示のところは使えそうです。黄色表示の所は、浮遊容量分を差し引けば使えます。さらに直線性を見る為に、100.0PFと99.6PFの2個のコンデンサーを直列につないで共試したところ、49.2PFを示しました。直線性は大変良いです。

  左は、1KHz、10,000PFの条件でC下流側の電圧を測ったものです。約50mv程DCシフトしています。結局は倍電圧整流回路となっていて、出力は100mvになるというわけです。

  また、各サイクルのC充電カーブは+0.3で始まって+0.1Vで終わっていますが、この+0.1Vは丁度使用しているGeダイオードの開始電圧です。



d;失敗例

  Geダイオードの代わりにショットキーバリアダイオード  
検波にSBD・1SS106を使用してみたところ次のようになりました。直線性がダメです。Lメーター、Cメーターともです。内部抵抗が低すぎるのか..直列に1Kオーム程度を入れれば良いのでしょうか。秋月電子のキットにはGeではなく、この1SS106が入っていました。このキットを組み立てた方は困っておられるのではないでしょうか。

<Lメータの測定結果表/1SS106を使用>
信号源矩形波周波数共試Lの値(精度不明)とD.V.Mの表示
1KHz10000uH/82.6mv1000uH/5.0mv100uH/0.4mv
10KHz1000uH/92.0mv100uH/5.6mv10uH/0.0mv
100KHz100uH/100.0mv10uH/5.6mv1uH/0.0mv
1MHz10uH/87.0mv1uH/2.0mv0.1uH/0.0mv

<Cメータの測定結果表/1SS106を使用>
信号源矩形波周波数共試Cの値(±20%)とD.V.Mの表示
1KHz--100PF/0.8mv
10KHz-100PF/8.5mv10PF/0.9mv
100KHz100PF/100.0mv10PF/9.7mv-
1MHz10PF/114.2mv--
注;直線性を見る為に、101.6PFと100.1PFの2個のコンデンサーを直列につないで共試したところ、46.5PFを示しました。直線性は良くないです。

  TTLの選択、74LS00とM53200
これは失敗ではありませんが、1MHzでの出力はM53200(7400相当)の方が優れていました。

  TTLの代わりにTrアンプ  
秋月電子の回路ではTrアンプを一部使っていますが負荷を取ると(共試コンデンサーの容量が増えると..)出力が下がり、直線性が良くありません。

左は、秋月電子の回路の抜粋です。




  TTLの代わりにOPアンプ
1KHzと10KHzでは動作しましたが、100KHzではゲインが下がってダメでした。

  矩形波にRCフィルター
矩形波をなだらかなサインカーブにしようとして、RCフィルターを入れてみました。当然ですが..できませんでした。三角波、のこぎり波は矩形波のお友達であることが分かりました。


<その3.電子回路シミュレーションソフトで確認>

  精度は良くないもののLメーターが出来上がりましたが、疑問点が数々あります。1MHzではどんな波形になっているのか、なぜ1MHzでは振れが悪くなるのか。もし高級なシンクロスコープがあれば波形を見ることが出来るかも知れませんが。1週間あまり期間が過ぎるうちに、回路をシミュレーションする方法があるはずと思いつきました。

  直ぐに見付かりました。有名なAltium社の「CircuitMaker 6.0 Student」です。http://www.microcode.comから無料です。

  1時間ほどで使えるようになりました。回路例が沢山付いているので、まねをして出来るようになりました。マニュアルを見る必要なしです。このソフトはプロ用のものを流用しており、簡単・高性能で優れものです、驚きました。部品数は50まで、デバイスデータは日本製のものは無く、全て2N○○○、1N○○となるなどの制限があります。

  キャプチャー画像でご覧の通りです。ダイオードのカーブトレースの例です。約500mv以上の電圧しか検波できていません。



  早速に、今回のLメーターの回路を組んで見た結果です。

a;Lの値と出力値の関係

  図中、V2の周波数、L1の値を入れ替えて、出力の値を読み取った結果を図の下の数表に表しました。


  100KHz/100uH/378.9mvの所をデジタルボルトメーター(DVM)の表示で"100.0"に合わせたとして換算すると、直線性が良くありません。
  特に換算値100より大きいところは飽和曲線です。1MHzではずいぶんとレベルが下がっています。

  この結果は先の実器での測定結果と良く合っています。このシミュレーションモデルでも同じ現象ですので原因追求が出来ます。(よかった..)

b;未知の波形を視る

  回路図中に緑丸Aの表示;L1の活線側の電圧が次図です。

  プラスに約800mv振れています。このうち約500mv以上の成分が検波されて出力となっています。マイナスには約3.4Vも振れています。プラスも検波回路の負荷が無ければ3.4V程度出ているのでしょう。

  波形は急峻です。これを拡大してみると、インパルスの幅は0.05uS程度です。これを半波とする周波数は10MHzとなります。つまり、この100KHz周期の矩形波は100uHのコイルに10MHzの動作をさせています。試しに計算してみると100uHと4PFで8MHzに共振します。4PFはダイオードの極間Cのレベルです。これから想像するに、1MHz矩形波/10uH以下の測定は100MHz以上の現象となっています。

  納得しました。さぞかし、100MHzでは現象のレベルが下がるでしょう。残念ながら100MHzの現象では測定する方法が分かりません、お手上げです..。



  続いて、Cメーターの回路の特性です。

a;Cの値と出力値の関係

  図中、V2の周波数、C2の値を入れ替えて、出力の値を読み取った結果を図の下の数表に表しました。

  100KHz/100PF/97.9mvの所をデジタルボルトメーター(DVM)の表示で"100.0"に合わせると、5PF〜20000PF(1〜100KHz)の間は10%以内に入っています。1MHzでは若干レベルが低いデータですが、前記の実測値にはこの傾向は表れていませんので、総じてCメーターは結果良しです。


b;未知の波形を視る

  回路図中に緑丸Aの表示点の電圧が次図です。

  100KHz/100PFのケース。プラスに約900mv、マイナスに1.2V程度振れています。ここではダイオードのプラス/マイナス負荷は一緒なので..矩形波の急峻さが立上がりと立下りで違うのかも知れません。各サイクルの波尾は500mvとなっており。ダイオード検波の効く限界あたりです。



  さらに、1MHz/10PFのケースの波形を見ましたら、100KHz/100PFのケースと相似波形です。うまく動作しています。
インパルスの急峻さは、プラス側は0.1uS(5MHz程度)、マイナスは0.05uS(10MHz程度)の現象でした。




<その4.まとめ>

  以上が、LCメーター(Ver;1.0)の製作結果です。

  実力(スペック)は次の通りです。
 
Lメーター
1KHzのレンジ;100uH〜10,000uH(mv計の表示は1.0〜100.0)
10KHzのレンジ;10uH〜1,000uH(mv計の表示は1.0〜100.0)
100KHzのレンジ;10uH〜100uH(mv計の表示は10.0〜100.0)
測定周波数は100uHのコイルで約10MHz、10uHでは数10MHzと推定。

<その他不備な事項>
各レンジとも、100以上は測定精度無く、測定不可。
10uH以下は測定精度無く、測定不可。
1MHzのレンジはレベルが他レンジと異なり、使用不可。
mv計は0.0〜199.9まで表示するが、使うのは0.0〜100程度まで。

<ご参考>
  フェライト・コアの特性を見分ける..等の目安を付ける目的にはこのままで使えます。較正する方法が無く精度は不明です。
手元のリアクトル素子を測って見た結果です。(表示が正しいかどうか判りません。)
1KHzのレンジ;10,000uH/96.8、 1,000uH/10.0、100uH/0.8
10KHzのレンジ;1,000uH/99.1、100uH/11.2、10uH/0.6
100KHzのレンジ;180uH/145、100uH/100、68uH/69.4、56uH/57.4、47uH/48.6、33uH/32.5、27uH/27.1、22uH/21.6、18uH/16.3、15uH/13.4、10uH/8.3、3uH/1.6、1uH/0.1
  
Cメーター  
1KHzのレンジ;10〜19,990pF(mv計の表示は0.1〜199.9)
10KHzのレンジ;1〜1,999PF(mv計の表示は0.1〜199.9)
100KHzのレンジ;0.1〜199.9PF(mv計の表示は0.1〜199.9)
1MHzのレンジ;0.01〜19.99PF(mv計の表示は0.1〜199.9)

<ご参考>
  手元のコンデンサー素子を測って見た結果です。(100PFのみ±2%です。他は精度不明です。)
1KHzのレンジ;10,000PF/92.6、3,300PF/30.6 1,000PF/9.5、100PF/0.9
10KHzのレンジ;1,000PF/96.2、330PF/32.4、100PF/9.9、10PF/0.9
100KHzのレンジ;150PF/149.6、100PF/100、56PF/56.8、18PF/18.3、10PF/10.4、1PF/1.3、0PF/0.2
1MHzのレンジ;18PF/173.8、10PF/101.3、1PF/14.3、0PF/3.0

状況写真

・・ヒント・・
  今後は、先に回路シミュレーションを行って、後に実際にバラックを組んでみることにします。バラック回路を組むのを省略できるかも知れません。シミュレーションは私にとってすばらしいものでした。

  今回のLCメーターは性能が未だ不満足です。
これから、特に10uH以下の精度を上げ、一番良く使う1uH あたりで実用できるようにする、
サインカーブの信号源を使って、特定の周波数でLの測定を行う、
特性の不明な各種フェライトコアを調べて、使い方を工夫する、
..ということを思い描いています。


次回に続きます。

以上

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