<その6.聴感と、サイド・バンド・ノイズの広がり>

記 2010年02月16日〜  ja3npl

  1. 聴感上の改善効果

      ケース5にて、良い結果が出た..ので、自信を持って、モニターをしてみました。
      TS-50Sを使い、ヘッドホンを付けて、ケース2とケース5の条件をスイッチで切り替えながら、マイクに声を入れる要領です。
      ..残念ながら、全く変化を感じませんでした..。

      私の、聴感は、一体どのレベルなのだろうと疑問を持ち、次の、簡単な実験をする事になりました。

    1. AFでの感度
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        健康診断の聴感検査と同じ要領です。パソコンでソフト「WaveGene」を起動し、パソコン出力をヘッドホンで聞く要領です。
        左は、AF信号のスペアナ画面です。
        400Hzで-10dbの音を出し、加えて、例えば1,400Hzで-50dbの音を出して、1400Hz/-50dbを感知するかどうかを確かめました。
        これは、歪が生じる場合に、主信号に対して、不要信号が派生する現象を模した訳です。


        可聴できる不要信号レベルは、次表の様な結果となりました。デシベル値は、パソコンの音量調整でどのようにも代わるので、絶対値では無く相対的な値です。「WaveGene」で-70dbあたりが可聴下限になるような音量調整としました。

      信号400Hz単1,400Hz単 400/900Hz400/1,400Hz400/2400Hz
      信号Δf00 500Hz1,000Hz2,000Hz
      信号レベル-65db-70db -10/-35db-10/-50db-10/-65db
      レベル差(-65db)(-70db) -25db-40db-55db

        500Hz差の信号では、25db差を検知するのがやっとですが、2信号が離れるに従って、単信号の場合と同じレベルまで感度が上がります。

    2. RFを介しての感度
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        SSB信号を、ノイズと共に受信している実際の状態で、どこまで歪を聞き分けられるか..を、実験してみました。
        左は、RF信号のスペアナ画面です。
        1台目のSGで14.16MHzを、2台目のSGで数100Hz離れた周波数を出力し、2つの信号をコンバイナーを通して、短いリード線につなぎました。IC-756PROは、通常のアンテナでDX局を聞く状態にしました。

        結局、-22db差が下限であると判りました。(ノイズレベルはS1弱の場合)
        強い方の信号レベルを「S9」に設定すると、弱い方の信号レベルは「S1」程度になります。IC-756PROのSメ−タは、S9〜S1の間のレベル差は、実測20db(Sひとつ当り2.5db)です。ノイズ・レベルはS1弱ですから、弱い方の信号は、ノイズ・レベルと同等です。
      「S9+10db」の信号の場合は、計算上-32db差が下限になりますが、QSBやノイズ・レベルが高い場合もあるので、控えめに見積もるのが合っていると考えました。


    3. 改善ケース1〜5の評価
      IM3特性

      @  改善ケース1〜5のグラフ、
      A  AFでの感度(灰色点線)、
      B  RFを介しての感度(黒色点線)、
      を重ねて、表示しました。

        「S9」程度のSSB信号を受信して聞く場合は、ケース1もケース5も同じ様に聞こえると言えます。
        音質(歪)の差は判別できません。

        「S9+60db」等の強力信号をモニターする場合は、灰色点線を境に、良否が判別できると思われます。
        しかし、私には、前述のとおり、ケース2とケース5の区別が出来ませんでした。

        SSBの送信音質の要素の内、歪については、IM3が-25db程度あれば問題なしと考えられます。
        従って、音質を考える場合は、他の要素に注目すべきと思いました。例えば、周波数特性(イコライザー)、変動するレベル制限、マイクの特性(ダイヤフラム緩衝や、過渡振動)、冷却ファン等の環境ノイズ、そして、声の個性など。


  2. サイド・バンド・ノイズの広がり

      IM3のレベルを改善したら、どんな良さがあるのだろう..という事で、今度は、サイド・バンドの広がりを見ました。

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      ケース1の条件です。SSB、100W、MID/2.4KHz。
      ボイス・レコーダーに記録した声を、繰り返し、10分程度送信し、ピーク・ホールドで表示しています。


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      ケース5の条件です。
      若干の改善傾向が判ります。ほぼ10db程度の違いです。

      S9/S1の差は、前述の20dbですから、S9の強さの時は、ケース1もケース5も区別は付かないでしょう。
      S9+10db以上の強さの時は、若干の違いが、サイド・バンドの広がりとして、隣接のQRMや、スペクトラム・スコープの表示で出てくるのでしょう。


  3. 中間まとめ

    1.   電圧変動の疑問を追いかけましたが、期待ほどの効果は無かったと言えます。
    2.   2.4KHz差の2信号では、ケース1とケース5の間で20dbもの改善があるのに、 SSB信号では、10db程度の改善に過ぎませんでした。
        やはり、200Hz差の2信号でのIM3(10dbの改善)が実態を表す事になるのでしょうか。

  4. 左上がり特性の原因

    IM3特性

      前項までは、扱ったデータは全て、ALCが動作している条件でした。

      左の特性曲線は、ALCが動作していない条件(出力が80〜90W)で、データを採り直したものです。

      前項までの左上がり特性の原因は、ALC回路を通して、AF成分が前段に回り込んでいるためと思われます。
      ALCのフィード・バック回路は、@トランスを使ったカップラーで出力検出、Aダイオードで整流、B差動アンプ、Cマイコン(おそらくADC変換とSSB/CW切替)、Dマイコン出力(おそらくPWM)、EALCアンプ、FFETのゲート・バイアスを使ったALC..となっています。途中に、RC時定数回路がありますが、より低い周波数で平滑され難い条件と推測されます。

      実使用状態では、ALC動作に頼らざるを得ません。(バンド切替時のレベル変動、マイク入力のレベル変動に対応)
      もし、ALCを動作させない微調整ができるなら、より良い性能が引き出せます。例えば、手動のマイク・ゲイン調整、リミッター、コンプレッサーです。

      この特性曲線では、500Hzあたりにピークがありますが、FILTER UNITのコモン・モード・フィルターのリアクトル成分に因る電圧変動があるためと思われます。このリアクトル成分が効きにくいケース5、ケース4では、ピークが見られません。
      ケース1の条件でも、この内蔵コモン・モード・フィルターを短絡すれば、歪特性は改善されるのでしょう。

      他のバンドの特性を調べましたが、3.5MHz帯では、約5dbほど良くなり、28MHz帯では、約10b程度悪化します。


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      ALCを動作させない条件での、SSBサイド・バンドです。
      ケース5、14MHz、SSB、80〜90W、MID/2.4KHz。

      縦、横軸とも、改善傾向となっています。


  5. まとめ

    1.   疑問を解きたい..という事をきっかけに、実験を繰り返し、電圧変動の実態、ALCの性能は万全でない事、IM3の実用的なレベル..等を知る事ができました。
    2.   マイク・ゲインや、ALCレベルの設定、電源電圧など、つまみの調節の要領を知る事ができました。
    3.   IC-756PROに今回の改造を加えると、例えば、電源電圧が仕様を超える過電圧となるリスクがあり、コモン・モード・フィルターの機能を省けば、外部からのサージ侵入を防げなくなります。PA UNITの2SC1971、2SC1972、2SC5125は、入手不可能と聞いています。
        トランシーバ全体の実用性能を考えると、ケース1や、ケース2の条件で使うのが最良なのでしょう。実験結果では、音質(歪)、サイドの広がりも満たされています。

以上

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