ただいまマイクの試験中
2002年8月11日〜
QSOの中で、あるいは雑誌の記事の中にあった音についての話で、長い間疑問に思っていました。
- 高音を強調した方が声が良く通る..。
- トリオのトランシーバの音は良い、長い間聴いても疲れにくい..。
一体 なぜ、どれ位強調するのか、トリオとヤエスとどこが違うのか..。
新たに パソコンと周波数分析のプログラム(音のデータの周波数成分を求めてグラフ表示する簡易FFTアナライザ)を入手
したので 素人っぽく何かをやってみることにしました。
<その1.パソコンとマイクの接続アダプターを作る>
パソコンの入力は 3.5Φのピンジャックになっています。ここに各種マイクをつなぐため、小箱に8ピンのマイクコネクター、3.5Φのピンジャック等を取り付けたアダプターを作りました。
これではあまりに簡単なので、次のような 要素を追加しました。
パソコン入力アダプター
- KENWOODのマイク、アドニスのマイク他 を パソコンに入力する。録音、スペアナ分析、マイク比較。(8ピンマイクコネクター → 3.5Φピンジャック)
- ICOMのトランシーバのAF出力をパソコンに入力する。録音、スペアナ分析。(ICOMマイクコネクター → 3.5Φピンジャック)
- テストリードでサンプリングした信号/20Hz〜100KHz を パソコンに入力する。オッシロスコープ。(BNC → 3.5Φピンジャック)
トランシーバ入力アダプター
- KENWOODのマイク を ICOMのトランシーバ に接続する。(8ピンコネクター → ICOMマイクコネクター)
- 市販のエレクトレットマイクを ICOMのトランシーバ に接続する。 (3.5Φピンジャック → ICOMマイクコネクター)
- パソコンの音声ファイルの再生音出力を ICOMのトランシーバ に入力する。(3.5Φピンジャック → ICOMマイクコネクター)
- パソコンのシグナルジェネレータ出力を ICOMのトランシーバ に入力する。(3.5Φピンジャック → ICOMマイクコネクター)
- テストリードでサンプリングした信号/20Hz〜100KHz を ICOMのトランシーバ に入力する。(BNC → ICOMマイクコネクター)
結局、90x73x34のプラスチックケースにコネクターを7個、トランシーバ操作用のPTT押しボタンを配置した物となりました。
1.アダプターの箱外観
2.裏側
3.使用状況
4.各マイクの比較作業状況
マイクは左側から、
@KENWOODおにぎりダイナミックマイク、
AKENWOODおにぎりエレクトレットマイク、
Bパソコン用エレクトレットマイク、
CアドニスエレクトレットマイクAM-7500イコライザー付き、
です。
回路図は こちら 。
<その2.各マイクの特性比較>
1.ラジカセの音をパソコン用エレクトレットマイクで拾った特性
この特性を基準にして 他のマイクの特性を比較することにしました。厳密には特性が平坦なホワイトノイズの中にマイクを置くのが正しいのでしょうが。
手近にあるスピーカの音を調べて回ったところ、ビクターのラジカセがより平坦な特性でした。パソコンソフトで発生させたホワイトノイズをCDに録音し、そのCDをラジカセで鳴らしました。(80MHz付近の放送の無い周波数に合わせてレシオ検波ノイズを出す方法も試みましたが高域が少しだけ下がっていました。ディエンファシスかもしれません。)スピーカの正面5cmの至近にマイクを置きました。少々の外来ノイズよりはスピーカの音が大きい状態です。縦軸はdb、横軸はHz。マイク形名;MS-STM54/ELECOM。
2.KENWOODおにぎりダイナミックマイクの特性
基準とした上の特性カーブと比べて、300Hz以下が低減、300〜900Hzあたりが約7db低め、1〜3KHzあたりが0db、それ以上はカット、というのが特徴です。KENWOODの通信用のマイクとして 高音を強調させた意図があるのでしょう。意図のレベル、周波数配分がうかがえます。
3.KENWOODおにぎりエレクトレットマイクの特性
なんと 1KHz以下に比べ 高音がずいぶんとレベルが高い。人の声を扱うには適していない特性に見えます。しかし もしかしたら ビクターのラジカセの高域が強調されているのかも知れない。このマイクの特性がより正しく平坦なのかも知れない。ラジカセの設定を調べてみたら低音=±0、高音=±0(調整幅-6〜+6でゼロが真中)の設定でした。ここで言えるのは、相対的にこのマイクは高音の感度が高いのでしょう。何を正しい基準とするかは難しいと分かった次第です。よく見ると300Hz〜3KHzの間のカーブは通信機用として好いカーブではないでしょうか。
60Hzと120Hzの山はハムです。
4.アドニスAM-7500の特性
300Hz〜3KHzの間がほぼ平坦で、この範囲外が減衰しています。これも通信機用の設定なのでしょう。
5.アドニスAM-7500+イコライザーの特性
イコライザーは4個のツマミで調整できるようになっており、それぞれ 270,540,1000,2000Hz ±12dbとなっています。このうち270Hzを-12dbに設定しその他は0dbとした結果が左のこの特性です。KENWOODおにぎりダイナミックマイクの特性に似せようとして設定しました。
実際の交信ではこの設定を使用しています。次項の特性で見れますが、トランシーバのDSP帯域設定は2.4KHz(0.3〜2.7KHz)で、この帯域を外れると急激に落ちてしまうので、このことを考慮して特性カーブを見る必要があります。
(注)特性カーブ抽出にはCQ誌2002/4付録CD-ROM・ウエーブアナライザ32を利用しました。
<その3.各局の音声の周波数特性>
各局の音声の周波数特性とは、QSO中の局を受信し、話す声を 10秒間サンプリングし、10秒間のデータを平均したものです。
1.信号の無い受信音/ノイズの特性
ザーというノイズ音の特性です。DSPによって0.3〜2.7KHzの範囲だけ切り取られています。低音の方が-20db減衰で少ないように見えますがフーリエ分析の精度を上げるともっと下がります。精度を上げるとスピードが落ちて面倒なのでこのレベルを選んでいます。
2.高音を強調しすぎた局の特性
0.3〜2.7KHzの間でほぼ平坦にレベルが出ています。帯域をいっぱいに効率よく使っていて、与えられたリソースを無駄なく利用していて好ましい..とは言えます。しかし、耳に入る感触は高い声がキンキンして聞くに耐えられない、聞きたくない..というものです。
3.ちょっと高音を強調した、アスタティックマイクを使っている局の特性
DX局とラグチュウをするのに適している了解度の良い音の例。
1〜2KHzあたりが少し持ち上がっています。
4.一般的な局の特性
普通に聴かれる音。7MHzやモービルでほとんどの局がこの例となっています。
5.高音が足りない局の特性
なんとなくモゴモゴとして聞き取り難さを感じる音。S=8 or 9 位の強さでQSBがあると、もう少しはっきり発音して欲しい..と思う状態。
1KHz〜は少しレベルが低い、さらに 200〜300Hzのあたりの成分が見られます。結局、高音が足りないとの印象でしたが そうではなく 低音が伸びているためにこのように聞こえるのでしょう。
5.私の On Air の特性
自分の声はモニターしても録音してもよく分からないものです。
これは 送信中にMONITORボタンを押しAF出力をパソコンに入れたものです。
300Hzで-20dbとよく減衰していること、1.5KHzあたりも成分があることなどから 硬い音 になっていると思われます。全体に より滑らかにしたいところですが、「只今マイクの試験中..」という自分の声の成分がこのようになっているのであって、フィルター回路の特性で調整するのはこれ以上は困難でしょう。
というのは、この特性は既にずいぶんと変歪されています。通信形マイクの特性、イコライザー、トランシバーのDSP回路等を通って私の元の声とはえらく変わっています。(私の元の声・パソコン用エレクトレットマイクを使ってパソコンに直接入力したものの特性はこちら。)比較してみて下さい。
5.○○局の特性
ここには、時々 違う局の特性を載せる事にします。載せた場合はその局長さんに別途お知らせします。
以上の各局の例は 2.4KHzの帯域に限っての見方でした。 これを 3KHzの帯域にすると別の評価ができます。例えば 3.5MHzのハイパワー各局の狙いは良い音質と見られますが、0〜3KHzの特性カーブを採ると 確かに 80Hzあたりまで平坦に音の成分が出ています。でも、ある局は100Hzあたりに山があったり、それが特徴的に聞こえる原因だったりします。コリンズのフィルターを使った場合に独特のリンギングの特徴が出ますが、これは低音域の固有周波数に山があるためと見られます。
しかし、3KHzの帯域で発見できることはあるのですが、これらが効果的に経験できるのは S=9+40dbクラスの強い信号のときです。実際のQSOでは次の様に 音声帯域と信号強度(あるいは相応のS/N比)を適用するのが目安ではないでしょうか。
帯域3KHz → RS=59+10db〜
帯域2.4KHz → RS=55〜59
帯域1.8KHz → RS= 〜55
6.IC-756PROの表示するスペクトラム
スペクトラムスコープの表示でも 周波数特性は同じように表れています。中央に表示の局は低音と高音の差が15db程度あり、右側の局は差が5db程度と読み取れます。(図中では一般的特性と記したが少し高音が強調されていると言うべきでした。)
<その4.各スピーカーの特性比較>
1.比較対象のスピーカー
手前/左から、
@TS-50Sのスピーカー口径約50mm
Aパソコンのスピーカー口径約25mm
Bモービル外付けスピーカーP700口径約45mm
CIC-R10ハンディレシーバー口径36mm
Dビクターラジカセ口径約70mm
EIC-756PROのスピーカー口径約70mm
FDENONのスピーカー口径80mm(地球儀の右側)
です。
Gウォークマン用ステレオヘッドホン(前のマイク紹介の写真に写っています。)
2.ラジカセのスピーカの特性
口径約70mm。
パソコンソフトで発生させたホワイトノイズをCDに録音し、そのCDをラジカセで鳴らしました。(FMモード、無信号時のレシオ検波ノイズを出して見ましたが高域が少しだけ下がっていました。ディエンファシスかもしれません。)
5cmの距離にパソコン用エレクトレットマイクを置いてサンプリングしました。これを基準に以下のスピーカーを比較します。
3.IC-756PROのスピーカ
口径約70mm。
パソコンのソフトでホワイトノイズを出し、パソコンの出力端子をIC-756PROのEXT・SPジャックに直接つなぎました。(プラグを半挿入の要領です。)
(FMモード、無信号時のレシオ検波(DSP検波)ノイズを出して測りましたらえらく高域下がりの特性でした。どうもAF回路の特性がそのようになっています。)
ケース上板のスピーカー周辺部分に手で触れると板のびびりが感じられます。そのせいだと思われるカーブの凹凸は好くはないと思います。
300HZあたりの山はできればより低くあって欲しいものです。長くワッチしているとこの音がこもったように感じられ(ダイアルを回してもいつも同じような音に感じられ)、聞き飽きてきます。
4.TS-50Sのスピーカー
口径約50mm。
信号源、上板のびびりはIC756PROと同じです。
カーブの凹凸は好くはないと思います。
鉄板に取り付ける内蔵スピーカーはこのようになってしまうようです。
しかもスピーカーの方向が自分の方を向いてくれません。スピーカーの中心方向から30°はずれると特性の凹凸がひどくなっています。この点からも内蔵スピーカーはお奨めではないと分かりました。
このTS-50Sは長い間気に入って使っていました。音もなかなか良いと感じていました。しかし、さらに良い音が外付けスピーカーによって得られることが分かりました。
5.IC-R10のスピーカー
口径36mm。
信号源はレシオ検波ノイズ。
耳で感じる印象は クリアでいい音です。
6.ノートパソコンのスピーカー
口径約25mm。
パソコンのソフトでホワイトノイズを出しています。
耳で感じる印象は 高い音でシャリシャリと鳴って長くは聞きたくない音です。
7.Diamond Antenna社P700モービル外付けスピーカー
口径約45mm。
パソコンのソフトでホワイトノイズを出し、出力端子に直接つなぎました。(少し音量は不足です。)
耳で感じる印象は クリアでいい音です。(内部にスポンジを入れて手を加えてあります。)
8.DENONのスピーカー
口径80mm。
パソコンの出力端子に直接つなぎました。(少し音量は不足です。)
耳で感じる印象は ソフト、静かでいい音です。
170x105x110、木製板厚10、2ウェイ、密閉、ずっしりと重い。形名SC-A11R/(株)デノン。サラウンド用スピーカーでしょう。日本橋で2個セット5Kでした。
台所用のテレビに外付けしたところ びっくりするほど 改善しました。(静か、聞き取りやすい。)
9.ステレオヘッドホン
ヘッドホンにマイクをくっつけてサンプリングしました。耳に当てたように周囲を囲うともっと平坦になるのでしょう。
さすがに滑らかな凹凸の無いカーブです。
ホワイトノイズ生成用のパソコンソフトはCQ誌2002/4付録CD-ROM・WaveGene を利用しました。
<その5.最後に>
・・・総合特性の比較、IC-756PRO、TS-50S と 外付けスピーカー・・・
これまではスピーカー個々の特性を見てきましたが、さらに、AF回路の特性、IFフィルターの特性を重ね合わせた特性を見ることができます。つまり、リグにアンテナをつないで 自然雑音を スピーカーで鳴らし、そのスピーカーの音をマイクで拾い、特性を見れば、そうです・・いつもの、DX局を探してワッチする状態で耳に届く音を分析すれば、IFメカフィルの特性まで加えられているわけです。以下は24MHz帯USB、DXノイズを受信の状態です。
1.IC-756PRO
なるほど、2.4KHz幅のDSPフィルターと内蔵スピーカーの特性がその通り出ています。
2.TS50S
IC-756PROの場合と同じ状況です。2.4KHz幅の10.7MHzクリスタルフィルターと内蔵スピーカーの特性です。この特性を見る限りは
IC-756PROのほうが平坦です。でも、耳に聞こえる印象はIC-756PROよりクリアで澄んだもの、深いものとなっています。なぜでしょう。位相が関係しているのでしょうか。
3.IC-756PROに外付けスピーカー
期待以上の良い特性になりました。耳に聞こえる印象もこれまでの中で最高です。クリアで澄んで深いという印象です。
今はこの条件でノイズリダクション(N.R.の効果はこちら。)をかけて真に静かなDXワッチを楽しんでいます。パソコンの作業中等、バックグランドミュージック代わりに28.495MHZに合わせDX風のノイズを心地よく聞いているのが常です。うちの奥さんは「この音は私の一番嫌いな音!」と一言のもと向こうに行ってしまいますが。
注;外付けスピーカーとは前出のDENONです。
4.TS-50Sに外付けスピーカー
良い特性です。クリスタルフィルターのなで肩の特性が良く出ています。
5.結論
- 外付けスピーカー(音楽鑑賞用、値段は5K以上で、ずっしり重たいもの。)を選ぶ。
- スピーカーの面を真っ直ぐに自分のほうに向けるよう配置を工夫する。
という簡単なことで改善効果抜群です。
さらに、「パソコン」と「エレクトレットマイク」は測定器、メモ録音機として役に立つので、シャックに一台置くべきではないでしょうか。
CWのAFフィルターの調整、Xtalフィルターの調整、暗騒音の調査、DXとのQSO記録/コールバック確認..。
以上
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