アンテナの雷対策・雷センサー(帯電センサー)

記 2003年12月23日〜  ja3npl

  私の集合住宅最上階では、地上高が突出することになり、雷に対しては最も警戒を要する環境です。
  従って、雷発生の場合は、強風時と同じように、抜き差し式アンテナを収納、仰角ローテータのアンテナを操作収納しています。

  雷雲の襲来は、通例では、遠くからの雷鳴を聞いたり、雷ノイズを受信していれば分かりますが、例外的に、突然の雷鳴と、コロナ放電ノイズが発生することがありました。
  少しでも、早期に雷を検知したく、センサーを自作、装備しました。
  これからの内容は次の通りです。
  
  1. 出来上がった帯電センサー
  2. 動作原理
  3. 電極の振動のさせ方
  4. 表示部の構成
  5. 較正方法
  6. 製作の要点
  7. 雷の観測実績・他
<追加>  陽避けを追加しました。(このページの末尾に記述。2004/05/26)

<追加>  1年余の運用の結果をまとめました。(このページの末尾に記述。2004/12/30)


<1.出来上がった帯電センサー>

  左の写真の向こう側の各辺約8cmの箱が帯電センサー検出部です。(手前の箱は風向風速計の検出部です。)
  中央の写真が箱の中身です。

  右の写真の下半分の (−)形LED配列 が表示部です。レベルメーター2組で、+X軸、-X軸 を表すやり方です。

<2.動作原理>

  動作原理は、静電気に帯電した雲と地表の間の電界を測定するものです。
  図のように、電界が10kV/mを超えると、気中放電が起こり得るとのこと。

  でも、帯電した雲が無い場合でも、(地球自身が帯電していて)約100V/mの電界は存在するとのこと。

  雷センサーには、@放電のラジオノイズを方向・距離探知して、地図上にプロットするシステム(数百km)、A雷光を検出する方法・昼間でも可(数十km)、Bこの、静電気を検出する方法(数km)、があるようです。

  雷が放電する前に、警報できるのは、Bの方法のみと思われます。



  一定値に帯電した電極を振動させると、Q=CVの関係で電圧の変化として検出できます。

  もし、振動させない場合は、電荷量クーロンが変化した時のみに、放電電流として検出しますが、帯電していても安定して変化の無い時は検出不可です。

  電極は、円盤状で回転、接地スリットの円盤で開閉する方法もあるようです。




<3.電極の振動のさせ方>

  超小型のリレーを改造しています。12V、680Ωのリレーを10Vで駆動。
  リレーの可動部に腕を取付け、りん青銅の板0.2tを押し下げています。




<4.表示部の構成>

  10点レベルメーターを2組使って、LEDを(−)形に並べ、プラス信号とマイナス信号を表示するものです。青色のVRはゼロ点調整です。

  一般に、雲の帯電はマイナスで、地表側はプラスなのですが、稀に、逆帯電の場合があり、この時の放電は、高い所ではなく、高い建造物の中腹に回り込むことが有る..と聞いたことがあり、帯電の極性とレベルを表示できるようにしています。



<5.較正方法>

  上述の帯電電極と接地電極の間に約1kVを印加し、検出部の出力電圧、あるいは表示部の振れ量を読む要領で較正します。

  約1kVの電圧は、この間まで使っていたトランシーバ・TS-520に火を入れ、B電源・約980Vから導きました。
  上述の帯電電極と接地電極の極間距離は15mmなので、980V/15mm = 65V/mm = 650V/cm = 65kV/m の較正が出来たことになります。
  この検出部をそのまま(外部電極を付けずに)、空中に差し出せば、65kV/mの較正通りに測定検出できることになります。実際には、プラスチックケースの表面の状態(沿面抵抗)が湿気や雨滴によって変化して影響し、自身の、あるいは、周辺のアース電位によって電界集中の程度が異なり影響します。

  結局、DC980Vの印加で、LED 表示は6個(高感度Hにて)、1個(低感度・高感度の1/5)点灯します。雲の帯電時にはこれの10倍程度の振れとなります。

<6.製作の要点>

  各項の小写真をクリックで別ウインドウが開きます。
  1. 検出部

      内容は、検出部の 拡大撮影の写真、回路図、製作要領を示します。



  2. 表示部

      内容は、基盤の拡大写真、回路図です。



  3. 電源部

        前出の風向風速計と共用で、同じです。基盤の拡大写真、回路図。



<7.雷の観測実績・他>

雷と五感と受信機
これまでの雷の襲来パターンは次のような段階を経ていました。
  1. 天気予報で、前線の通過や雷注意報を知る。
  2. 受信機にて感知。特に3.5MHz帯は近距離雷ではQSOが出来ない位強い雑音となる。
  3. 目と耳で、怪しい曇り空、遠い雷光、雷鳴を感知する。
  4. 受信音が異常(S9+のビー音))となる。アンテナ先端からのコロナ放電。始まりは、パラパラ音で、まるで、2サイクルエンジンのアイドリング状態のイグニッションノイズの様。徐々に回転数が上がって、ブー音、強くなると、ビーの連続音。アンテナを下げて行くと、始まりの状態、そして、コロナは消滅。
  5. 数100mあたりで頻繁に落雷があるひどい状態。

  危険で困るのは、1,2,3を経ないで、いきなり、4,5の段階になる時です。夏季に2回ほど経験しました。 1,800kVのインパルス・ジェネレータを使った閃絡試験を仕事で日常的に経験していましたので、雷の威力は体が覚えています。
  4の段階になる前に、急いでアンテナを収納すべきです。

帯電センサーの利用
  移動運用の際には必携ではないでしょうか。
  このセンサーの電界検出の方向は真上を向いています。これを横にも向けて、方位を探ることも考えられます。

帯電センサーの動作状況
  毎日、安定した動作です。(ゼロ点が、日によってずれることも無く、安定しています。2004/01/06)
以下に、観測記録を列挙して行きます。11月末より観測しています。なお、極性表示は、雲の帯電極性を表します。

<2003/12月の観測記録>
2003/12/17 16時頃
  小雨/風速10m/s程度。急にレベルメータがマイナスに振れる。5分程度で今度はプラスに振れる。数回ほど極性が変化し消滅した。振れは数10kV/m。雷鳴は無かった。雷雲が、放電せずに、静かに通り過ぎた模様。プラスチックケースが雨で濡れても帯電検出していたので安心。疑問点;この現象は、雲の帯電なのか、それとも、雨が帯電しているのか。

2003/12/17 19時頃
  小雨/風速10m/s程度。入浴中に雷鳴を1回だけ聞く。急いで体を拭いて、表示を見ると、大きくマイナスに振れている。急に、プラスに振り切れる。(+100kV/m以上。放電した瞬間はこのようになるのか。雷鳴雷光は無かったが。)10秒ほどしてマイナスになり、徐々に消滅した。

2003/12/20 午後
  雪/1℃/風速20m/s、北。+数10kV/m、−数10kV/mに表示が5分毎に繰り返し変わる状況になった。アンテナを伸ばし全バンドをワッチすると、いずれのバンドもS9のザーというノイズ。時折に雷放電ノイズが入るが遠方のようで、強くは無い。これが、スノー・ノイズなのだろうか。
  疑問点;この状態は危険なのかどうか。
  もしかしたら、冬季雷なのか。北風が強く、日本海側で山沿い上昇気流により雷雲発生、下端がマイナスに帯電、プラス帯電の上層が大阪まで伸びて来ているのでは。冬季雷は高度が低く危険と言われているが。余計な心配なのか。

<2004/1月の観測記録>
01/10 23:20
  小雨みぞれ/6.5℃/風速10m/s、北西。−10kV/mの表示が出る。10分位、継続して消える。窓を開けてみると、部分的に星の見える状況で、雷雲らしきものは無し。雨/みぞれが帯電していると推測。

01/13 07:50〜08:50
  小雨/6.5℃/無風。−30kV/mの表示が出る。5分位継続して消える..の繰り返し。この間、1回程、受信機の雷ノイズと共に、+50kV/mに瞬間振れ、-30kV/mに戻った。雷光、雷鳴無し。空は半分が低い雲、半分が青空。(予報では、前線通過、雷、強風注意報。この後、09:30より西の強風/晴れとなった。)

01/18 23:35〜23:40
  小雨/6.5℃/無風。−30kV/mの表示が出る。5分位継続して消える。雷放電無し。

01/22 13:10
  くもり/1℃/強風。−10kV/mの表示が出る。5分位継続して消える。雷放電無し。14:53にも同じ現象発生。雪雲が通過した模様。

<2004/2月の観測記録>
02/14 16:03〜18時頃
  春一番。強風くもり。-100〜+100kV/m。雷光雷鳴は、観測開始から初めての本格的なもの。激しい雷の場合は、この帯電センサーは激しくプラス・マイナスに振れて点灯するだけ。(この帯電センサーは、微小な帯電を検知するのに向いている。)

02/15 22:10〜
  昨日に続いての春一番の嵐。強風小雨。雷光雷鳴あり、最大+250kV/mを示した。

02/22 18:45〜21時頃
  雨/16.3℃/南西約10m/s。−30kV/mの表示が出る。一時±100kV/m。雷放電無し。

観測記録は続けています。11月頃まで1年間ほど記録して、まとめてみる予定です。


<追加>  陽避けを追設しました。(2004/05/26 記)

      その1風向風速計の追加写真と同じです。(クリック拡大です。)

      手前が帯電センサー(雷センサー)、左向こう側が風向風速計。

      帯電センサーは、冬季の半年程の間、トラブル無しで動作しています。先日、はしごを掛けて検出部を点検しました。 @内部の浸水、結露の気配なし、Aプラスチックケースの上面が、白っぽく変色..など、風向風速計のページ末尾の記載と同じです。

      写真のように、0.5tのアルミ板を使って、陽避けを追設しました。プラスチックケースの外面が劣化して水分を含むと、沿面抵抗が下がることになり、帯電し難くなるので、この対策を施しました。プラスチックケースの表面は車のワックスで磨き、水をはじくようにしました。

      アルミ板は水平に絶縁して配置し、雷の電界を乱さないように配慮しています。従来どおり、雲の帯電を検出できています。。



<追加> 1年余の運用の結果をまとめました。(2004/12/30 記)

  1. 月ごとの発雷・帯電を記録した回数 と 内容 の表
    20032004
    121234567891011
    記録回数3回4回3回3回0回1回2回4回3回5回3回0回
      外出不在、就寝中は記録していません。実際の発雷と帯電はもっと多いものです。
      表中の回数をクリックすると、記録内容を、別ウインドウにて表示します。

  2. 装置の動作状況
      1年余、トラブル無く動作しました。 センサー部(屋外)の電極振動用のリレーも24時間動作をして、スペック寿命回数に達していますが、無事です。
      6月にテレメーター化した際に、回路を改造しました。(@センサー部出力リレー接点を、開放on/off→接地on/offにした。Aセンサー部出力を上げ、表示部アンプの感度を下げた。) これ等は、それぞれ前出の回路図を、新旧入れ替えました。
      やはり、絶縁性能は、不充分です。プラスチックの物差しを帯電させて、電荷を移し、電荷の残留時間を測りました。夏の湿気の多い時は、1sec程度、秋冬の乾燥時には、30分以上も残ります。これを平均化する対策は思い当たりません。でも、雷雲の検知には支障ありません。夏でも、30km位離れた積乱雲で電界を検出しています。
      
  3. 役立った程度
      1年の間、10回程度、アンテナの操作を思いとどまり、収納をした事がありました。 クラスターのアナウンスに従って、DX局をCallしようとしたが、帯電センサーが表示していた..、あるいは、ワッチ中に、突然、帯電センサーが警報を発した..という場面でした。
      この時は帯電センサーが有って良かった..と思った次第です。
      また、目視で怪しい雲り空であっても、帯電が無いと分かれば、安心してアンテナを上げて居れました。

  4. 色々な帯電現象
    •   今にも放電しそうな雷雲が、放電しないまま通り過ぎると言う、危険な場面が、1年間31回の記録の内に、9回程在りました。グランドで球技をしている時に、ゴルフのプレー中に、雷に打たれたと言う新聞記事を思い出して、あり得る事だと感じます。

    •   夏の積乱雲は、高さが8~16kmに成長し、青空をバックに、迫力ある姿を見せてくれます。このような時は、目視での観察と帯電センサーの表示との関係を確認できる機会となりました。

      左の写真は、南西(尼崎の方向)、20km位の積乱雲です。この写真を撮った後に、左方向に近付きながら移動しました。



      写真を撮った時には、帯電センサーは+30kV/m(雲の帯電極性)を示していました。つまり、左図のように、積乱雲頂部の帯電による影響ではないかと推定しています。(この時は、雲が近寄るに従って、帯電表示がゼロになりました。)

      積乱雲が遠い場合には弱いプラス、近付くと強いマイナスを示すと言う立体構造から、積乱雲の距離や移動する様子を推定できるのではと考えています。実際は、複数の積乱雲が影響して、うまくは出来ないでしょう。



    •   雷雲以外にも帯電警報が出る場合があります。
      @すずめ、ヒヨドリが帯電センサーをかすめて飛ぶ時があります。センサーが感知して、警報音を発してびっくりします。
      AXYLが布団を干して、たたくと、反応します。水平に5mほど離れた手すりです。
      B降り始めの雨は、帯電していることがあります。
      C台風で、猛烈な突風が吹いた瞬間に帯電する場合があります。60、70m/s位で風を切った場合は、空気が電離するのかも知れません。

以上

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