アンテナの強風対策・風向風速計

記 2003年12月10日〜  ja3npl

  私の集合住宅最上階では、強風、突風がよく吹きます。
  アンテナの装備は、目立たないようにするため、細く、保持金具は小さくしていますので、強風にさらされていると、繰り返し疲労で破損するのではないかと心配です。
  従って、強風時には抜き差し式アンテナを収納、仰角ローテータのアンテナを操作収納するのですが、窓を開け、バルコニーに出て風の様子をうかがうのが面倒です。

  一時は、市販の気象キットの購入も考えましたが、その目立つ形状や、100K前後の出費が気に入らず、結局、風向風速計を自作しました。

  これからの内容は次の通りです。
  
  1. 出来上がった風向風速計
  2. 動作原理
  3. 曲げモーメントの測り方
  4. 表示部の構成
  5. 風速計の較正方法
  6. 製作の要点
  7. 製作後感
<追加>  陽避け追加の改造を加えました。(このページの末尾に記述。2004/05/26)

<追加>  1年余の運用の結果をまとめました。(このページの末尾に記述。2004/12/30)


<1.出来上がった風向風速計>

  左の写真が、風向風速の検出部です。各辺約8cmの箱に50cm長のロッドアンテナ状の棒が立った形です。(向こう側の箱は、別の実験用です。)

  右の写真が、表示部です。LEDを使って、X軸、Y軸座標を表すやり方です。

<2.動作原理>

  動作原理は、ロッド・アンテナが風に吹かれて曲がる現象そのものです。
  風を受ける棒の根元の曲げモーメントを歪ゲージで検出します。

  別の見方では、アンテナ・タワーの耐風圧の強度計算と同じです。

  しかし、曲げモーメントが、風速(v)の二乗に比例すると言うのは不都合です。(例えば、風速10m/sで表示量を10目盛とすれば、20m/sで表示量が40、40m/sで表示量が160となります。)



  そこで、ちょうど風速20m/sで45°程に折れ曲がる様に、バネ系を棒の途中に入れると改善されます。
  45°付近では、風圧が強くなると棒が傾いて受風面積が減る..ということになり、曲げモーメントは風速に比例するようになります。




  風速(v)の二乗と、角度、三角関数の二乗が関係する計算式となります。数値を代入して計算した結果が左の特性カーブです。

  10m/s以下では、棒がほとんど傾かないので、v^2に比例のカーブです。10〜20m/sの間は、vに比例のカーブです。20m/s以上では少しずつ飽和のカーブです。

  計算式のメモは こちら にあります。

  垂直固定の棒の部分の長さを長くすれば、風速(v)の二乗で増える歪量を加算でき、特性カーブを、さらに、右上がりにできます。



<3.曲げモーメントの測り方>

  左の写真のように、棒の根元になる構造部分に歪ゲージを貼り、電気信号に変換します。
  棒の軸を上から見て、X軸(東西)、Y軸(南北)の直角方向を検出できるよう、四方に配置します。
  歪ゲージはブリッジに組み、数100倍の増幅をして検出部の出力とします。

  左の写真は、塩ビのパイプ(外径7mm)に、5mmのゲージ(薄膜検出部の長さが5mm、ゲージ全体の長さは10mm程度)を貼っています。ゲージ1枚が\210程度。




<4.表示部の構成>

  10点レベルメーターを4組使って、LEDを(+)形に並べ、±x、±yの信号を表示するものです。青色のVR4個はそれぞれ、x、y軸のゼロ点、ゲイン調整です。

  この仕組みは、オッシロスコープと同じです。この表示装置の代わりに、オッシロスコープに入力しても、光点の移動が風向風速を表すことになります。

  上方の+yの方向が北です。+xと+yの振れが同じ位だと、東北方向の風と判別します。 風速は、+xの振れと、+yの振れを目分量でベクトル合成して読み取ります。




<5.風速計の較正方法>

  私は、検出部を車に仮り取り付けし、月一ゴルフの往復で車を走らせて、風速の較正をしました。車の速度と風速の対比は次表のようになります。
km/h102030405060708090100110120130140150
m/s2.85.68.311.113.916.719.422.225.027.830.633.336.138.941.7


<6.製作の要点>

  各項の小写真をクリックで別ウインドウが開きます。
  1. 受風棒と歪ゲージ部

      内容は、受風棒と歪ゲージ部の製作要領を、
    拡大撮影の写真を並べて示すものです。



  2. 検出部

      内容は、基盤の拡大写真、回路図です。



  3. 表示部

      内容は、基盤の拡大写真、回路図です。



  4. 電源部

        内容は、基盤の拡大写真、回路図です。



<7.製作後感>

  1.   日常的に使用し、満足しています。寒い中、暖房の部屋内からアンテナの上げ下げを、安心して出来るところがステキです。風が弱いときは、表示部の感度切替SWを上げて(10m/s程度でフルスケール)、風向が判別できるようにして使っています。
  2.   突風が測れます。私の環境では、周囲が高層の集合住宅に囲まれているせいだと思われますが、安定した風ではなく、風が止まるタイミングと、瞬間(1秒位)の突風とが交互に来ます。(気象情報として発表される平均風速、最大風速と言う表現が合わないと感じています。)
      この突風の実態が、良く測定・表示ができていると思います。
  3.   この装置は、温度補償が要です。
      この風速測定法は、アイデアが簡単で、従来から在ったと思われますが、実用された例は聞いたことがありません。おそらく温度変化に伴い、ゼロ点が動き、実用に耐えなかったのではないでしょうか。この温度補償をカットアンドトライで根気良く調整するところに、面倒さ、あるいは、制御できた時の楽しさがあります。
  4.   欠点もあります。
      水平に吹く風に対しては、上述の理論通りでしょうが、風は、斜め上から、下から、吹くので、精度は期待できません。整流板を追加すれば改善できるのでしょう。
  5.   検出部(屋根上)と表示部(シャック内)とは多芯ケーブルでつないでいますが、ケーブルの引き回しが面倒です。将来は無線式(これから、デルタ・シグマ変調を学んで..)を試して見たいと思っています。
  6.   表示の仕方は、アナログ/シンプルで気に入ってはいるのですが、出来れば、これから、マイコンと液晶表示を勉強して、矢印で風向風速を表すよう試みたいものです。
  7.   この、”歪ゲージ検出”と”表示”は、アンテナ・タワーの基部にそのまま応用できます。タワー自身を風向風速計の代わりに、また、タワーの強度監視・応力監視をすることが出来ます。



<追加>  陽避けを追設しました。(2004/05/26 記)

  風向風速計は、冬季の半年程の間、トラブル無しで動作しています。先日、はしごを掛けて検出部を点検しました。
@内部の浸水、結露の気配なし。ケーブル引込み部の水きり構造の適当な隙間が良いようです。さらに、内部のICや歪ゲージ部の発熱が1W程度で、若干の温度上昇があり、結露対策に効果があるのでしょう。
Aプラスチックケースの上面が、日射により、白っぽく変色していました。

  左のように、0.5tのアルミ板を使って、陽避けを追設しました。さらに、黒色の防水カバー部にアルミ箔を巻きました。(写真は、アルミ箔を巻く前です。)
  陽避け対策前は、日射による温度上昇で内部は60℃程度に達していたと推測します。ゼロ点が1/10点(LED)ほど移動した時もありました。

  左向こう側が風向風速計、手前が雷センサー。



<追加>  1年余の運用の結果をまとめました。( 2004/12/30 記 )

  風向風速計は、1年程の間、そのままの状態で、動作しています。6月に検出部(屋根上)をテレーメータ化しましたが、その後、改造や、点検など、何もしていません。

  風受け棒は、杉の丸棒にニスを吹き付けた物ですが、今は、ニスが劣化して取れています。木の地肌が出ていますが、このままで支障なしと見ています。
  ビニール・チューブ(ストロー)は、劣化してぼろぼろに砕けていますが、バネが棒を締め付けているので、このままで支障なしです。
  10月20日過ぎの、台風21号、23号では猛烈な風が吹きました。瞬間的には、表示が振り切れ、推定50m/s以上です。風受け棒は、ほぼ、水平にまで、倒れていました。台風対策をしていたベランダの植物も倒れたり、転がったりしました。風向風速計には、損傷無く、そのまま、動作しています。
  歪ゲージのゼロ点バランスは、春から夏までの間、気温が上昇するに合わせて、ずれる傾向が有りました。(感度HighにてLED1/10個ほど) でも、夏を過ぎてからは、全く、安定しています。一度、最高温度までエージングして、ゲージ周辺の接着剤が応力緩和すると、安定するのだろうと思います。

  所期の目的の、強風時にはアンテナを上げない、アンテナを風圧から保護する、という運用に役立っています。

以上

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