< その2.インストルメンテーション・アンプの工夫 >

記 2017年04月04日〜  ja3npl

  LMH6702(超低歪み、広帯域、電流帰還型オペアンプ)を使って、実験を行い、 相互変調歪の改善が得られましたので、紹介します。

  1. 回路図
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      インストルメンテーション・アンプの構成で、LMH6702を3個使っています。

      インストルメンテーション・アンプは、平衡で高インピーダンスの入力が特徴なのですが、後述する実験の結果、違った使い方をしています。

      これを、”wsml_opamp ”と称する事にします。


  2. wsml_opamp の基板
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  3. 実験の経緯
    1. LZ1AQ局の回路
      wsml_25

        Trのエミッター入力(ベース接地)の回路で、インピーダンスは、10Ω以下と思われます。
        Trゲイン特性(Ib/Vbe)が非直線なので、歪特性には、限度があるのでしょう。
        ループ・アンテナの内部抵抗は、1Ω程度、リアクタンスは3uH程度で、インピーダンスは、周波数によって大きく変わります。
        一体、どの様に、このアンプが対応しているのか、不思議です。

        とにかく、このループ・アンテナとアンプは、FBに動作し、実用できます。

        LTspiceのシミュレーションで確認した所、入力のインピーダンスは、約8Ω(7MHzにて)でした。
        一方、アンテナ側(1Ω、3uH)のインピーダンスは、8Ω@450KHz、20Ω@1MHz、程度なので、HF帯では、どんどんミスマッチになります。


    2. インストルメンテーション・アンプの実験1
      wsml_26

        通常のインストルメンテーション・アンプの入力です。
        信号が弱く、内部雑音レベルが高く、全く実用になりません。

        51Ωの入力抵抗を、1Ωにするなどをやってみましたが、改善の気配はありませんでした。


    3. インストルメンテーション・アンプの実験2
      wsml_27

        ステップ・アップ・トランスで、インピーダンス整合を採った回路です。
        これも、信号が弱く、内部雑音レベルが高く、全く実用になりません。

        3T:10T、1T:10Tなど、変化させてみましたが、改善の気配はありませんでした。


    4. インストルメンテーション・アンプの実験3
      wsml_28

        オペ・アンプの"-IN"は、常に"+IN"と同電位になるように動作しており、低インピーダンスです。
        (ベースとエミッターの関係に似ています。)

        "-IN"に入力した所、真に、うまく動作しました。

        ”wsml_opamp ”の回路です。

        LTspiceのシミュレーションで確認した所、入力のインピーダンスは、約1Ω(7MHzにて)でした。
        一方、アンテナ側(1Ω、3uH)のインピーダンスは、20Ω@1MHz程度にあるので、ミスマッチなのですが、アンテナのループ電流を検出するには優れている様です。

        このオペ・アンプの使い方は、電流-電圧変換回路(Vo=-I x R)です。   使用するオペ・アンプは入力バイアス電流・Ibnの小さいものがS/N比で優れています。
        しかし、LMH6702のIbnは、-6uA で、ピコ・アンペアのオペ・アンプもある内では、大きい方です。   周波数特性、低歪、低Ibnを満たすオペ・アンプがあれば良いのですが、まだ、見付けていません。
        ” I/Vアンプ ”で検索下さい。


    5. Trと合成した回路
      wsml_28

        WSMLをTrで受けて、インストルメンテーション・アンプで出力する構成です。

        内部雑音で優れて居り、歪の程度は”wsml_tr”よりは良いと思われますが、”wsml_opamp”と比べてどうなのでしょうか。

        未実験です。


  4. 性能・特性のデータ

      この、”wsml_opamp”(実験3の"-IN"に入力した回路)の性能・特性のデータです。利得は、2SC3325のアンプとほぼ同等になるように調整しました。

    <受信レベル><指向特性>
      ほとんど同じなので、省略です。トランス結合が無いので、周波数特性は、より、平坦です。

    <内部雑音>・・()内は、2SC3325の前作の値
      アンプの入力を短絡(つまり、ループ・アンテナをつながない場合);-101dbm  (-105dbm)
      ループ・アンテナをつないで、信号の無い状態での雑音レベル;-98dbm  (-100dbm)
      正規の受信状態、7MHz帯にて。
      アンテナ接続の有無によるレベル差によれば、2SC3325の前作の方が内部雑音が少ないのですが、使用感では、判別できません。

      この無信号時の熱雑音の様相が大きく違います。
    2SC3325の前作;ジーーという安定連続した音、蛍光灯の雑音のイメージに似ている。
    wsml_opamp;ササーーという、遠方の雷ノイズに似て、少し変動している。静かなイメージ。

    <歪特性>
      素晴らしく良い特性です。
      スペアナの測定限界を超えていて、測定できませんが、混変調・相互変調歪は、10〜20dbの改善があります。

    <入力部の周波数特性>
      入力部の周波数特性を回路シミュレーションで調べました。

    wsml_25


      アンテナを、0.5Ω x2、1.5uH x2 として、オペアンプの"-IN"の入力を、1Ωとして、回路構成しました。

      ”CircuitMaker 6 Student”、緑丸Aの電圧レベルが次特性カーブです。


    wsml_25

      100pFと250nHの共振周波数 33MHz辺りで持ち上がって居り、30MHz以下をいくらか平坦にする効果となっています。
      平坦とは言え、10db以上の変動があります。
      もし、220Ωの値を大きくすれば、持ち上がりが大きくなります。

      もし、100pFと250nHが無い場合は、アンテナの1.5uH x2のせいで、周波数増と共に急激に下がります。

      ループ・アンテナの利得は、(波長比を考慮して)周波数増と共に上がるので、相殺する傾向がこれに加えられます。

      しかし、この回路が、実用レベルにあるとは、まだ、理解できません。アンテナの出力から-40db超の減衰が有りながら、使えます。


  5. 評価・まとめ

      約3か月、試した結果です。

    1.   混変調・相互変調歪が改善されました。
        9MHz帯、11MHz帯、13MHz帯などで、強い信号(-10〜0dbm)が発生している時、-95dbm(S5)程度の信号、A3の音声が混じった信号が、発生します。
        2SC3325の前作では、-80dbm(S8)程度でした。
    2.   WSMLアンテナを高くすると(床上2m→4m)、受信の信号レベルが上がるのは確かです。
        伴って、混変調・相互変調歪のレベルも上がります。
        しかし、下がる..信号もあります。周辺のアルミ製手すりで相互変調歪を生じている場合があるのかも知れません。
    3.   ワン・ターンのループ、そして、アンプとのマッチングには、疑問が残ります。
    4. wsml_31


        バーティカル・アンテナ、IC-756PROを使った送受信系統、
      さらに、WSMLアンテナと受信機の系統を設けています。

        受信時に、好ましい方を切り替え選択する事で、聞きやすくなっています。


次回に続きます。

以上

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