小 樽 弁 事 典
| まえがき | 私の生まれ育った小樽は、港から山へと向かう斜面にへばりつくように広がっている町ですが、その丁度真ん中を海側と山側を隔てるようにしてJR函館本線が横切り、海側の地域は(以前は色街を伴った)商店街や問屋街といった商業エリアであり、かたや山側は住宅地で、官庁、銀行、商社の官舎社宅などが並んでいました。 運河を中心としたたくさんの観光スポットが出来て久しい今でも、山側の雰囲気はおおむね昔と変わらず、ひっそりと時代に取り残されたように息づいています。 私の生家は"小樽の山の手"とも言えるこの山側の一角にあって、小学校では日銀や三井物産の支店長のお坊ちゃんお嬢ちゃんと席を並べていたせいで、日常はほとんど標準語を話していたような記憶があります。 しかし中学高校と進むにつれて交流エリアが拡大し、八百屋の息子や乾物屋の娘といった"下町"のガキとのつきあいが増えるにつれて、そいつらの話す漁師言葉と標準語が次第に入り乱れ、札幌に就職後しばらくして北海道を離れることになる30歳までこの混沌が続きました。 そのせいか、その後内地を転々とし東京暮らしも長くなる中で、日常話す言葉から私が道産子であることを見抜かれた経験はほとんどありません。そのくらい私は、時と場合によって標準語と方言を使い分けるスキルを身につけていたようです。 (関西出身者以外の)地方出身東京在住者はことごとく出身地の方言を隠すもののようですし、そのくせ里帰りなどすれば1日で方言だらけになるのも事実であって、隠すことに対して文句を言ったり反省したりするつもりなど毛頭ないものの、ここで少し気になることもあります。 それは、世代が新しくなるにつれて、方言本来の意味や使い方が変質しているのではないか、ということです。 また、ネット上には様々な方言辞典のサイトがあり、北海道弁の項目をつぶさに読んでいくと、どうも私の憶えている意味合いと微妙に異なる説明や用例があったりもしますし、もっと言うと、方言の奇異さ滑稽さをことさらに誇張するあまり、誤解を招いているふしもあるのです。 例えば、北海道弁で「ゴミを捨てる」ことを「ゴミをなげる」と言うことは広く知られていますが、では「(女を)捨てる」場合にも「なげる」というのか、というと(相撲やプロレスじゃあるまいし)そうではありません。 辞典というからにはそこらへんの情報も網羅していなくてはいけないのに、「ゴミをなげる」と1行書いて終わっている項目が多いのです。 これでは北海道弁が的確に伝承されないのではないか、と大袈裟に考えてしまった私は、忙しい生活の合間を縫って、自分なりの方言事典(説明、語源までを出来るだけ詳しく記述するつもりのため、あえて「辞典」ではなく「事典」とします)を作ってみることにしました。 しかし、同じ北海道でも東北に近い函館地方や、ロシアに近い根室、稚内地方では、微妙な言葉の違いも多々あり、一概に「北海道弁」と括ってしまうことには無理が生じるため、タイトルは「小樽弁事典」としました。これで小樽以外の出身者から文句が来ても平気です。 語源の項目は当然ながら私の推論の域を出ませんので、「公式見解」をご存知の方や、「私はこう思う」という異論がある方は、ぜひご指摘をいただきたいと思います。勝手な希望を言えば、こういう推論もあるということを軽く"ご笑納"いただければそれで結構です。 更に、方言すべてを取り上げてあるわけではないので、「この言葉を取り上げてほしい」というご要望も歓迎いたします。 尚、項目説明の参考とさせていただいたいくつかの方言サイト管理者の皆様には、この場を借りて(あ、自分のサイトでした)厚く御礼申し上げます。 考えてみると、方言は「言葉の裏通り」。 ジャズ、音楽関連の「裏コンテンツ」しかない弊サイトにも十分になじむものです。 末筆ですが、このコンテンツを、小樽弁の達人だった亡き母に捧げます。 |
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