覗き魔耕一

作:inax




「うわぁっ!」
 俺は勢いよく布団から跳ね起きた。隆山の柏木家に着いてから毎日のように悪夢を見ている。このようにうなされて起きる朝はいったい何度目だろうか。見覚えの無いフローリングの床の建物の中で、野獣のような存在の支配から逃れようと朝を待つ夢。そして、時折聞こえる留守番電話の応答メッセージ。その全てがまるで自分が体験しているかのように鮮明な夢として感じる。これはどういう意味なのだろうか。まさか夢の中の野獣のような存在が俺の本性というわけではあるまい。気にしなければいいのだろうが、一度気にしてしまうと非常に気になるものだ。

 俺はこの夢のことを相談してみることにした。とはいえ、千鶴さんにこんな猟奇的な夢の話をするのは恥ずかしいし、楓ちゃんや初音ちゃんに聞かせるのも酷だろう。結局、俺は気軽に話のできる梓の部屋を訪ね、夢のことを話した。すると、梓の返答は驚くべきものだった。

「そうだよ。。柏木の家系にはそういう不思議な力を持つ人が現れるんだ。初音もそういう夢をよく見るって言ってる。私もそして他の姉妹も力を持っているよ。耕一の夢も力の一種だと思うな」
「じゃあ、俺のこの夢はいったいどういう意味があるって言うんだ?」
「たぶん、誰かの体験している出来事をそのまま感じているんだと思う。私達の力には思考を記号化して伝達するっていうのもあるからな。そいつも同じ力を持っていて耕一の意識とシンクロしているのかもしれないな」

 俺はオカルトやトンデモ科学の類は信じない性質なのだが、自分で体験してしまうとなると無視することはできまい。半信半疑ながらも、梓の言葉を信じることにした。ここで、はたと思いついた。柏木の人間は同じ力を持っている。同じ力を持つもの同士は意識を伝達できる。。。ということはだ、俺と柏木四姉妹との間でも意識の伝達ができるんじゃないか?俺は梓の部屋を後にし、自分の部屋へ戻った。

 俺は姉妹が出かけた後で実験してみることにした。先ほど出たばかりの布団に入りなおし、目を閉じて梓のことを思い浮かべる。いや、俺が梓だ。女子高に通っているところの梓だ。自分に言い聞かせるように精神を集中し続けた。精神が疲労し、思考能力の低下を感じ始めたその頃、目の前が真っ白になり、俺の意識が溶けていった。。


・・・


 気が付くと、まわりが明るくなっている。慌てて回りを見渡す。数メートル前方には黒板があり、銀縁メガネの初老の教師が方程式を書き付けている。ここは学校のようだ。しかし、俺の記憶にはない風景だ。周りにはセーラー服を着た女子生徒の姿しかない。この制服は知っていた、梓の学校の制服だ。俺は自分の姿を見た。周りの生徒とお揃いのセーラー服の中に入っているマスクメロン大の胸が2つ。成功だ!

 その時、学校のチャイムが授業の終了を告げた。梓は陸上部の活動に向かうため、バッグを持ち部室へ向かった。
「梓せんぱぁ〜い、調子どうですかぁ?」
 途中で声をかけられた。もちろん、声の主は日吉かおりである。
 (げっ、かおりだ。)という梓の心の声も俺にはしっかり聞こえた。
「あ。かおり、調子はばっちりさ」
「じゃあ、早く着替えて練習に向かいましょ〜」
 そういいながら、かおりは梓に抱きついた。かおりの手は梓の大きな胸を両手でつかんだのだ。同時に、俺は自分の胸から未知の感覚が沸き起こるのを感じた。こそばゆいような、それでいてジンと来るような、、胸を触られるってこんな感じなんだ。。
「や、やめろよかおり!」
 梓は叫びながら部室に入った。そして向かったのは。。部室内をロッカーで区切って作った女子更衣室だ。中では既に数人の女子部員がセーラー服を脱ぎ、あられもない下着姿を披露している。俺の目に入る部員の健康的に日焼けしたすべすべの手足、、、そして下着姿、、、揺れながら下着を持ち上げるお乳、、、スカートの下から覗く白いパンツ。。。それらの形を記憶しながら、俺の意識は闇につつまれていった。。。


・・・


 ・・・どうやら興奮のあまり精神の集中が途切れてしまったらしい。気が付くと柏木家の自室で布団の中にいた。しかし、高校生の着替えシーンくらいで取り乱すとは俺もまだ青いな。。
「ただいまぁ」
 そのとき、玄関から元気な声が聞こえてきた。あの声は初音ちゃんだ。俺は玄関まで行き、出迎えることにした。
「お帰り、学校はどうだった?」
「あ、耕一お兄ちゃん、ただいま。今日は学校で大変だったんだよ。体育の授業で1500m走をやらされちゃって、もう汗だくだく。早くお風呂に入りたいよ」
「ただいま」
 俺が初音ちゃんと話しているところに、初音ちゃんの姉、楓ちゃんが帰ってきた。
「お帰り、楓ちゃん」
「あ、お姉ちゃん、おかえり。確か、お姉ちゃんも今日は学校の環境整備があったんだよね。もし汗をかいたんだったら、一緒にお風呂に入らない?」
「ええ、、入りましょうか」
「じゃあ、お兄ちゃん、また後でね」
 そういうと、2人は自室に向かった。2人はこの後一緒にお風呂に入るのだ。


 一緒にお風呂、一緒にお風呂、一緒にお風呂、一緒にお風呂、一緒にお風呂。。。


ぷつん


 俺の頭の中にはそのフレーズが響き渡り、、、理性の紐が切れる音がした気がした。
 俺はすぐさま自室に戻り、再度布団に入った。すぐに精神集中を開始する。

 私は初音、一緒にお風呂、私は初音、一緒にお風呂、
 私は初音、一緒にお風呂、私は初音、一緒にお風呂。。。

 そして、目の前が真っ白になっていった。。。


・・・


 ぴちょん。
 天井から雫の落ちる音が聞こえる。頭にはタオルが巻いてある。髪の毛をお湯で濡らさない為だろうか、ちょっと重さを感じる。俺は今、湯船につかっている。隣には楓ちゃんが。。。俺は白くて小さな手で自分の肩を抱いた。小さいな。初音ちゃんの肩。俺はこのとき、自分の意識をもって他人の体を操ることもできるのだとわかった。
「初音、背中を流してもらえる?」
 楓ちゃんが俺に向かって声をかける。
「う、う、う、う、うんっっっ、いいよっっっ!」
 俺はどもりながらも返事をした。
「変な初音?」
 楓ちゃんは微笑を浮かべながら首をかしげて、俺のほうへ背中を向けた。ああ、あの笑顔、俺だけに向けられた最高の笑顔。ああーーーーーー。

 楓ちゃんの背中、楓ちゃんの体、楓ちゃんの胸、楓ちゃんのxx・・・・・

 いかん、意識があちらの世界に行ってしまっていた。なんとか理性を保って背中を流し終えたのだった。
 続けて一緒に湯船に入る。お湯につかって桜色になる楓ちゃんのお肌。俺はむしゃぶりつきたくなるのを我慢して風呂に入りつづけた。
 楓ちゃんの桜色のお肌、楓ちゃんの桜色のお肌、楓ちゃんの桜色のお肌・・・
 我慢がならなくなって、ついに俺は楓ちゃんに向かって抱きついていった、、、のだが体が動かない、というか目の前が真っ暗になっていく、あ、そうか、湯あたりしてのぼせたんだ。。。そう思いながら俺の意識は闇の中へと沈んでいった。


・・・


 ガバッ
 自室の布団から起きあがった。鼻の下にはかぴかぴになった血の跡がついている。どうやら寝ている間に鼻血を出したらしい。ティッシュで鼻を拭きながら今へと向かうと、梓と楓ちゃんが寝転がっている初音ちゃんを心配げに見つめている。初音ちゃんは頭に濡れタオルを置き、暑そうに汗をかきながら横になっている。俺に気がつくと、
「あ、お兄ちゃん、ちょっと湯あたりしちゃったみたい、だいじょうぶだから心配しないでね」
 なんてけなげなことを言ってくれる。くぅー、理想の妹だねぇ。梓も、
「あ、タオルを代えてこなくっちゃ」
 といいつつ看病を続ける。俺は、姉妹のやさしい心遣いに半ば感動しながら見守っていた。すると、楓ちゃんが俺のシャツのすそを引っ張っているのに気がついた。楓ちゃんのほうを向くと、無表情の目で俺にここから離れるように合図した。
 楓ちゃんと一緒に居間の廊下まで出ると、楓ちゃんはこう言ったのだ。
「耕一さん、今度同じことをやったら・・・殺します」
 楓ちゃんは居間に戻っていった。。。
 あの萌え姉妹風呂覗きの一部始終を気づかれていたのか。。。俺は心の底が寒くなるのを感じた。



つづく?


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