平成16年                        エターナリー湘南 




        実録「オレオレ詐欺」未遂事件   


       



4月7日(水)

◆10時28分「非通知で」
Y(息子と称する男):「ゴメン!事故起こしちゃった!ホントゴメン!」
M(母親):「エッ!事故って、今どこにいるの?」
Y:「伊勢原の事故の現場近く」
M:「何で伊勢原なの?大学に行ったんじゃないの?どういうこと?」
Y:「どうしても行かなきゃいけない用事があって・・・」
M:「今からじゃ学校も間に合わないような時間じゃないの!事故って歩いていて?」
Y:「車で・・・」
M:「えっ?車って一体どういうこと?」
Y:「友だちの車借りて運転してて・・・」
M:「誰が運転していたの?」
Y:「僕が運転してて・・・」
M:「どうして運転したの?まだ免許取ってないよネ!」
Y:「ゴメン!ホントにゴメン!」
M:「ところで一体どんな事故なの?」
Y:「ちょっと居眠りしちゃってぶつけちゃった」
M:「それで、相手の体は大丈夫なの?」
Y:「大丈夫」
M:「あなたは?」
Y:「大丈夫」
M:「車は?」
Y:「そんなんじゃ(それ程ひどくは)ないと思うけど」
M:「まず免許も無いのに運転したことはとんでもないことよね!しかも友だちに車を借りて
  事故を起こして皆に迷惑を掛けて、とんでもないことをしたことは分かっているよね!」

Y:「ホントゴメン!ホントゴメン!」
M:「取り敢えず起きたことはしょうがないから、まずどうしたら良いの?」
Y:「ここに相手側の保険屋さんが来ているから代わるね」
・・・・この間、Yは今にも泣きそうな声、半泣き状態の鼻声でボソボソと話す・・・・
・・・・ここでしばらく待たされる(話の内容状況を説明していたのだろう)
S(佐々木と名乗る偽の事故相手):「もしもし」(私は保険屋さんと思っていた)
M:「もしもし・・・」
S:「いゃ〜びっくりしましたよ!実は僕、会社の車で接待に行く途中だったんで、困っちゃっ
  て!聞いたら無免許だって言うんで・・・(これまでの
YMの会話でYが免許を持っていない
  ことが分かった)」

M:「すみません、ご本人様ですか?」
S:「はい、そうです」
M:「この度は息子が大変ご迷惑をお掛けしまして申し訳ございませんでした」
S:「それでね、メルセデスベンツって知っていますか?」
M:「はい知っています」
S:「そこに電話をしたら修理するっていってもかなりお金がかかるんで新しく買い換えた方が
  良いって言うんですよ!それで会社の上司に電話をしたら、接待に間に合わないんで直ぐに
  車を用意して、兎に角、接待に間に合わせろって言うんですよ!それで車代が300万円な
  んですよ!」

M:「えっ!300万円ですか?そんなにひどい状態なんですか?修理も出来ない位なんですか?」
S:「ええ!前がグチャグチャですよ!エンジン部分までやられましてねぇ、廃車状態ですよ!」
M:「大変申し訳ありませんが、事故の状況がさっぱり判らないので説明して頂けますか?」
S:「いゃ〜危なっかしい運転してるなぁって見てたんですよ!そしたら反対車線に入って来て
  バァーンですよ!」

M:「えっ!前からですか?」
S:「そうです、正面衝突です」
M:「そんなにスピードが出ていたんですか?」
S:「えぇ、どうも居眠りをしてブレーキとアクセルを踏み間違えたらしいですよ!」
M:「そうですか・・・」
S:「それでね、息子さんの友だちに連絡を取ってもらったら、しっかりと保険を掛けてたらしい
  んですよ!それでその友だちが運転してたことにすれば、保険が降りるらしいんですよ!そう
  いうことにしてくれるって友達の家族の人も、もう承諾してくれているんですよ!」

M:「えっ!そんなことしていいんですか?」
S:「えぇ、いいんです、承諾してくれていますから大丈夫ですよ!友だちも今こちらに向かって
  いるらしいんで・・・でもその保険が1週間後じゃないと出ないって言うんで取り敢えず300
  万円今日中に用意してもらえますか?」

M:「えっ!300万円を今日中にですか?済みませんがその保険からってどのくらい出るんです
  か?」

S:「あぁ全額ですよ!全額出ます!それでメルセデスベンツの人が今日中にお金が準備出来ない
  と車を用意出来ないと言うんですよ!接待までの時間も無いんでお願いできますか?」

M:「300万円ですよね?」
S:「あっ!312万円ですね!」
M:「申し訳ありません、こちらが悪いことをしたとはいえ、いくらなんでも直ぐに312万円を
  ということは私ではどうにも出来ないので、改めて主人の方からそちらに電話をさせますので、
  連絡先を教えて頂けますか?」

S:「はい、ちょっと待って下さい」

・・・・・しばらく待たされる(長く感じる)

S:「もしもし、いいですか?“080−3245−1463”佐々木です、復唱をお願いします」
M:「“080−3245−1463”佐々木さんですね。それでは直ぐに主人に連絡させますの
  で・・・」

S:「あっ!すみません、どれくらいかかりますかね?」
M:「出来るだけ早く連絡するように伝えますので・・・」
S:「急いでいるんで、よろしく!」

・・・・初めから20分ちかく話す・・・・

父親に連絡、大至急電話をするようにお願いする。

会社の朝のミーティングの最中に受けた妻の電話で、ひと通りの説明を聞いて息子が事故を
起こしたことを知る。その時、相手の携帯電話の番号とともに息子の携帯電話の番号も聞い
た。
最初に息子の携帯に掛けるが話中でつながらず、相手に切られているかな?と推測、直
ぐに相手の携帯に電話をする。

P(父親):「佐々木さんですか?」
S(相手の佐々木):「そうです」
P:「この度は息子がとんでもないことを致しまして大変申し訳ありません」
S:「無免許で正面衝突なんですよ!」
P:「直ぐにそちらに向かいますので、2、3時間かかりますが・・・。」
S:「接待の時間に間に合わないので直ぐに行かなければならないのに待てる訳が無い、兎に角、
  300万円を銀行に至急振り込んでください!」

P:「それじゃ、あなたの会社の社長さんにまず謝罪をしたいので、会社の電話番号と社長さんの
  名前を教えてもらえませんか?」

S:「忙しいから電話をしても取り次がないと思うよ」
P:「じゃ秘書室みたいなところがあったら教えて下さい、秘書の方にでもまず謝罪を伝えたいの
  で・・・」

・・・・ここでこちらが自分の身分を明らかにしないからかなと思い

P:「私は事故を起こした息子の父親の産経新聞社の松岡と言います」と言い「謝罪をしたいので、
  ぜひお願します」と再度お願いする。

S:「おぃ、おめぇ〜な!社長に謝罪するって何とか言って、俺に謝罪もしねぇ〜で、何だ!てめ
  ぇ〜! さっきから偉そうなことばかり言いやがって!」

・・・・ここで態度が暴力団風(チンピラ風)に豹変する

P:「何を言ってるんですか、最初に謝ったじゃないですか?車のオーナーにまず謝罪するのが当
  たり前じゃないですか!」

S:「うるせぇ〜、これはオレの車だ、ガタガタ言わねぇ〜で、早く銀行に行って振り込め」
P:「300万円って急に用意できる訳が無いじゃないですか!」
S:「サラ金に行けばいいんだよ、サラ金に。銀行でそんな金直ぐに貸してくれる訳ねぇだろう!
  
サラ金だサラ金だ!」
P:「東京の大手町にサラ金なんてある訳ないですよ!」
S:「うるせい!銀行でも、サラ金でも行って300万円振り込め、息子に代わるぞ!」
Y:「わぁ〜!ゴメンゴメン!ほんとにゴメン!向こう本気だよ!」
P:「何とかしてそっちに行くから、助手席にいた友だちはケガをしてないんだね?」
Y:「大丈夫、トイレから友だちが戻ったから、友だちと代わるね」
T(息子の友だちと称する男):「すみません、僕が運転したことにしますから・・・」
P:「そんなことしたら幇助罪になるぞ!止めなさい!」
T:「ハイ」
P:「君のお父さんだって300万円って直ぐに出せないと思うよ、ただ君に迷惑をかけないから・・・!」
T:「ハイ…、保険屋さんに代わります」
P:「もしもし?直ぐそばにヤツはいるの?“イエスorノー”で答えなさい!相手は聞こえる位置
  ですか?“イエス?”」

H(保険屋さんと称する男):「ノー、いいえ」
P:「警察はいるんだね、300万円を要求してきているけど、あとで1000万円を更に要求され
  るようなことはないだろうね? 専門家のあなたが判断してどうですか?」

H:「大丈夫です、絶対に大丈夫です!」
P:「わたしはそれだけを恐れているんだけど?」
H:「大丈夫です、じゃぁ代わります」
S:「銀行でもサラ金でも大至急振り込んでくれ!」
P:「分かった、何とかしよう、それじゃ、口座番号を教えて下さい」
S:「銀行に着いてからこの携帯に電話をしろ」
P:「分かった、少し時間がかかるかも知れないが・・・」

・・・・電話を切る・・・・(犯人は、銀行に向かった父親の電話を待っている状態!!!)

            ↓
銀行に行く準備をする、借りる手段を考える。(まだ13階の社内)

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父親が母親の要請通り“佐々木と名乗る偽の事故相手”の携帯電話に掛ける前に、会社の
PHSを使って
交通事故の内容の事実関係を事故の相手方ではなくて、息子本人からまず
聞こうと思い
、息子の携帯電話に度、掛けた時に話中だったので切ったが、息子の携帯
には「非通知」が表示された。 息子は家からとたまたま勘違いして母親の携帯に
メール、
ココから「オレオレ詐欺」判明の展開が始まる。

Y(本当の息子):10時45分:「電話した?」とメール
M(母親)   :10時46分:「パパが掛けたかも?」とメール
Y(本当の息子):10時47分:「家からだよ!」とメール
M(母親):   10時48分:「掛けてないよ!ごめん間違えて押したかも!」とメール
Y(本当の息子):10時49分:「2回もきたし!!何かあったかと思った、ならいいや!」
                   とメール
(母親):   10時54分:「ゴメンね!ところで相手の身体は大丈夫なの? 車は廃車
                 状態で買い替えしか方法が無いって言ってるけど、警察は
                 入ってないの?友達の保険でって言ってるけど…パパが今
                 連絡取っているはずです。」
とメール

「ここまでのメールのやり取り」で不思議に思った本当の息子が

Y:10時54分:「いったい何のこと??それ詐欺だよ!詐欺!詐欺!」と電話を掛けて
          きた。
初めて「オレオレ詐欺」と判る。

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◆妻から電話
M:「オレオレ詐欺よ!」「Yちゃん学校にいるよ!」「オレオレ詐欺よ!」聞いても瞬間、ピンと
  こない。息子が事故を起こしていないことに安心する。

P:「良かった!」
    ↓
社会部長に現在「オレオレ詐欺」の進行中であることを告げ、状況の説明をする。警察に届けるこ
とに。警視庁捜査2課に電話、「それなら110番の方が・・・」と言われ、110番する。茅ヶ崎
警察署に繋がり、現在「オレオレ詐欺」の進行中(電話を相手が待っている状態)であることを告
げ、上手くやれば“あみに掛かる”のではと処置を頼む。「直ぐに協議します」という返事を聞き、
電話を切った。

    ↓
◆11時25分
S:「佐々木です、直ぐにご主人に電話するように言ってくれませんか?」
M:「まだ連絡いってませんか?」
S:「いや、ありましたがまた連絡ほしいんで!」
M:「はい、分かりました!」

その後、何度も何度もひっきり無しに電話が鳴る。無視したら11時38分を最後に電話は途絶える。

ここで終了!

*************  警察の対応に不満  **************

約50分後、茅ヶ崎警察署に電話をするも担当が電話中ということで繋がらず。さらに約1時間後、
茅ヶ崎警察署に電話、捜査2課に相当する「知能犯(班)」に繋いでもらい、どうしたかその後を聞
くも「既遂の2件の処理をしていたので、電話も何もしていない」と担当の工藤氏が言う。折角、電
話を待っている進行形の状態で連絡したのにと抗議するも??? 既遂の事件処理で忙しかったのだ、
何が悪い!という感じの返事だった。

ストーカー事件で「殺されてからやっと動く警察などと言われているが、全くその通りかも知れない。
警察の対応は不満だ!」


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その茅ヶ崎警察署が、茅ヶ崎の「タウン誌」の取材に答えて・・・
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振り込む前に 確認と相談を

茅ヶ崎管内でも急増中
息子や娘、孫など家族を装って中高年者の自宅に電話を掛け、動揺を誘って現金をだまし取る「オレオレ
詐欺」の被害が全国で後を絶たない。
親族を想う心に巧みに付け入るという、計画的で悪質な犯行が
茅ヶ崎管内でも発生しており、
茅ヶ崎警察署では住民に注意を呼びかけている。今年一月から三月ま
での管内被害件数は九件で、被害総額は一二九六万円。
年間発生件数が二、三件だった昨年と比較し
ても、急増傾向にあることがわかる。
最近は犯行の手口も徐々に複雑化、多様化しており、警察官や
保険会社、交通事故の相手方などを装う複数犯のケースも多いという。「一方的にまくし立てられても、
慌てないでまず電話で相手を確認することが大切。要点を聞いたら親族等に相談して事実を確認する
とともに、直ちに警察に通報するように。」と同署では話している。

また、現金を振り込んでから被害に気付いた場合は、すぐに口座を管理している銀行支店に連絡
し、
犯人が指定した口座番号を伝えることが先決。 これは、口座を凍結させて現金引き出しを
防止するためだ。

いずれにせよ、落ち着いて冷静な判断と対応をすることが、被害を未然に防ぐ最大のポイントになる。

*************  何で騙されそうになった  ************

@息子の声がそっくりだった偽の息子の声質が、たまたま妻も私も見抜けないほど似ていたが
ために進行してしまったが、声質やイントネーションが少しでも違っていたらこんなことにならなか
った。声が違う!って・・・。妻は音楽が好きだから音に対して極めて敏感、私は私で突然15年振りに
掛かってきた旧友の電話の声を聞いても誰か直ぐに分かるほど、耳に自信があるのに、使っていた携
帯電話の帯域が狭いのもあったのでしょうが、そんな我々ですらホントに分からないほどたまたまそ
っくりだった。1日に30件から50件電話を掛けて、声が違うのでほとんどが「何言ってるの?」
で終わると思われる。

A<交通事故アレルギー状態だった>そして息子が現在自動車教習所に通っている環境にありながら、
無免許運転で事故を起こしたことに“何て馬鹿なことを”の思いが強かったので、夫婦とも舞い上が
ったかもしれない。私が単身赴任で大阪にいた2年前に息子がバイクで車と衝突して事故(息子が一
方的に悪い)を起こした。その時、相手が悪く、単身赴任で私がいない家に押し掛けられたり、居な
いがために直ぐに丸く収めようと結果的に不本意な賠償をした経験もあった。


C<やっぱり乗せられた1>“息子という大事な人”或いは“ご主人という大事な人”(家族)が事
故現場で人質になっている状況にあることが、前提にあり全ての行動が抑制されてしまう。また「可
愛そうだ、早く何とかしてあげよう」と当たり前に働く“親の家族に対する心理状態”を短い時間で
責め上げ、
家族を想う心に巧みに付け入ったり、人の弱みを突いてくる。

D<やっぱり乗せられた2>今回、「無免許で事故」という話の流れになったが、それは「免許取っ
てないのに・・・」という妻の“偽の息子”との会話の中で“偽の息子”が聞き出し、それを“偽事故相
手”に内容を引き継いで(=電話を代わる時にやたら時間がかかったという)巧みに突付いてきた。
「無免許で」という言葉が即「息子が大変なことをした」と当然結び付き、心理状態を高揚させた。

あと息子の電話が20分遅かったら、間違えなく銀行かサラ金から振り込んでいたと思う。
最終的に騙されなかったから良いが、散々罵声を浴びせられ、実に気分が悪く腹が立つ。


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今、「オレオレ詐欺」が流行っていることを兎に角、知らせるべきである。私たちは4月7日、
未遂に終わったが、同じ日、私たちの前(午前8時)に海老名で「314万円」を詐取され、昨
日8日は横浜市緑区で「386万円」、甲府で「未遂」と立て続けに発生している。

既に社会部長には前記のように今回の件を知らせたが、9日の午前4時、イラクの邦人人質事件で大騒ぎをして
いた社会部に行き、デスクと警察庁担当記者など6人を集め、今回の「オレオレ詐欺」未遂事件を報告、何か手が
無いか相談する。警察庁担当記者によれば「毎月全国で数千件発生している、何回か注意報道もしているし、
県版でも大きく扱っている」との話だが、何とか市民に「オレオレ詐欺」が今まさに流行っていることを知らせ、ひ
とごとでないことを認識させる必要があることを要請した。


何とかして「オレオレ詐欺」を未然に防ぎたいものだ。新聞でいくら報道しても大方の人は“他人
の出来事”しか思わず、頭に入らないものです。少なくともこれを受け取った方は、身近な未遂
事件として印象に残るでしょうし、「頭の隅」に置いておけば被害に遭うことはないでしょう。
お気をつけ下さい。


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<付録>
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「被害に遭わないために」という香川県警の指南書に対して
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○ @電話がかかってきても慌てないで応対する。
× A不審な電話に対して、相手より先に親族の名前を言わず、相手に名前を名乗らせる。
○ B事故等の対象となった関係者に、それが事実であるか直ちに確認する
  (直ぐに事実を確認した人は、被害に遭っていない。)
× C不審な電話がかかったら、すぐに送金しないで、直ちに警察に通報する。
◎ Dみなさんでこのような犯罪が起こっていることを話題にし、情報を
   共有して同種の犯罪に遭わないように注意しましょう

○ E疎遠になっている身内の方はいませんか? これを機会に連絡をとり、この事件の話や近況を伝え
   ましょう。


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声がたまたまそっくりで「息子からの電話」と思っている場合、全く疑わないのだからAやCのように
「不審な云々」という表記は無意味。


平成16年4月9日

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