ころっけパーティー

              松本裕太 


 

 (二〇〇〇年八月十三日  午前九時)

「夏こみの準備も終わったな・・・」

「そうね」

「腹減ったな・・・」

「もう? 朝ご飯食べてないの?」

「ああ。時間なかった」

「仕方ないなあ。ちょっと待ってて。お弁当持ってきたから、少しあげるわよ」

「おっ、さすが瑞希さまっ!」

「まったく、調子いいんだから・・・はい、これ」

「助かったー。ありがたくいただきま・・・」

「どうしたの? 早く食べたら?」

「瑞希、これ・・・」

「コロッケよ」

「それはいいけど、なんでコロッケ『だけ』なんだ?」

「これ書いてる奴が、語呂だけで『ころっけパーティー』なんてタイトル付けたから」

「そんな理由で、コロ助みたいな食生活を送らなければいけないナリか?」

「そう」

「もうコロッケは懲り懲りナリーー!」

 

 

 

 (二〇〇〇年八月十三日  正午)

「あーーーっ、パンダっ! 何してんのよこんなとこでっ!」

「コンビニコピー機の前で中東和平交渉の仲介してるように見えるか?」

「ちゅ・・・?」

「ああすまんかったなあ。分からんなら分からんでええわ」

「意味は分からないけどなんだかすごくむかつくーーっ!」

「天然で懐かしセリフ言うな」

「そんなことどうでもいいの」

「本当にな」

「とにかく。そこどきなさいよ」

「はあ? 順番待ちいや。今はうちのコピー誌つくりよるねん」

「あとどれくらいかかるの?」

「早くて20分やな」

「間に合わない間に合わないっ! 私1時にコピー誌売るって言っちゃったのにっ!」

「自業自得や」

「うーっ!」

「・・・というのも可哀想やしな。こっちは2時から売るつもりやったから、変わったってもええで」

「ほんとっ? さっすがパンダ! これから下僕パンダに格上げしてあげるわ」

「やめた」

「なんでなんでなんでっ!」

「本気で言っとるとこが怖いなあ、こいつ」

「なんでなんでなんでなんでなん」

「ああうっとうしい。順番譲るから黙れ」

「ほんとっ?」

「ああ。その代わり割り込みで入り。縮小率とか細かく設定したから、後で戻すのめんどくさいねん」

「割り込み? 私のこと?」

「ちゃうちゃう。そういう機能あるやろが」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「(いままで押したことあるのは、あの青いボタンとお金の返却ボタン・・・)」

「・・・人間は文明を進化させたけど、人間自身は進化せんかったんやなあ」

「・・・う、うるさいっ!」 

「泣いて頼んだら、教えたってもええで」

「誰がパンダなんかにっ! ・・・あ、彩―っ! こっちこっちっ」

「・・・詠美さん。どうしましたか?」

「・・・・・・なあ、彩ちゃん?」

「このコピー機、『わりこみ』ってどうやるの?」

「・・・えっと、これは・・・」

「詠美も普通に会話すなっ!」

「パンダがぶった・・・・・・」

「彩ちゃん、その格好はなんや?」

「有明銀行の制服です」

「新手のコスプレか?」

「・・・いいえ。でもこれからコピーをしますから・・・」

「何でコピーするのにそんな格好やねん」

「・・・あそこの銀行にこの服で行くと、ただでコピーできるサービスがあるんです」

「・・・・・・・・・一応聞いとくけど、どこのコピー機や?」

「いろいろありますけど、今日は人事課に行く予定です」

「誰に断るん?」

「こっそりとします」

「ただの犯罪やっ!」

「では、失礼します」

「何事も無かったように行くなっ! その足で銀行に向かうなっ!」

「・・・ねえパンダ、紙の補給ってどうやるの?」

「・・・おまえも平然とコピー続けるなあっ!」

 

 

 

 (二〇〇〇年八月十三日  午後四時)

「夏こみももう終わりだね・・・」

「うん。おもしろかったよね。本もそこそこ売れたし」

「『ブギーロックの大爆笑』のコスしてた娘、可愛かったね。今度は私もしようかな・・・」

「だめだめ、年齢制限に引っ掛かるって」

「あっ、ひっどーい」

「ん? 玲子、どうしたの? 今更カタログなんか見て」

「・・・・・・」

「ねえ、どうした・・・」

「分かったーーーっ!!!」

「「「わあっ!」」」

「あれ? みんな、なんで床に座ってるの?」

「あんたが急に大声出すからよ」

「あ、ごめんごめん。すっごくいいこと思いついちゃったから」

「いいこと?」

「そ。次の本のネタよ」

「またゲームじゃないの?」

「ゲームも良いけど、そろそろ新ジャンルを開拓したいと思わない?」

「・・・・・・そうね、確かに最近マンネリかも」

「でしょでしょ? そこで夏こみでも希少価値のあるジャンルを探してたのよ」

「えー、夏こみにないジャンルなんて少ないと思うけど・・・」

「ところがところが。一つ見つけちゃったのよ。誰も手を付けていないジャンル」

「どうせマイナーな世界なんでしょ?」

「違う違う。この世界のことがテレビに出ない日はないわよ」

「何よそれ?」

「政治」

「「「は?」」」

「しかもやおい」

「「「・・・・・・・・・」」」

「これはまず見かけないでしょ? 私、菅×鳩とった」

「・・・玲子、本気?」

「もちろん」

「何考えてるのよっ!」

「あ、怒った?」

「当たり前よっ」

「やっぱり調子に乗りすぎ・・・」

「鳩×菅に決まってるでしょっ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

「菅は受けしかないじゃないっ」

「私は仙谷()×野中()が良いな・・・」

「あんた渋いトコつくわね。あたしはYKKの三角関係で決まりね」

「・・・・・・あの・・・冗談だったんだけど・・・?」

「ほんとは悲運の総裁・河野を絡めたいんだけどな・・・」

「えー、趣味悪ーい。モロ悪役顔じゃない」

「あたしは正統派で石原Jrも」

「・・・・・・分かったわよっ! 覚悟を決めた! 冬こみは『政治』で申し込む! チーム一喝の新しいスタートよっ!」

「「「おーっ!!!」」」

 

「私は銀行税導入時の全銀協会長が好きだったんですが・・・」

「南さん、それは『経済』です・・・」

 

 

 

 (二〇一〇年八月二十七日 午前十時)

「なあ美樹、夏休みの宿題は終わったのか?」

「まだ」

「もう27日だぞ・・・大丈夫なのか?」

「ダメだと思う」

「ならもうちょっと緊張感を持て。少なくともガリガリ君は3本目でやめとけ」

「いいの。ダメだけど大丈夫だから」

「なんだそれ?」

「残ってるのは、自画像と絵日記だから」

「・・・・・・おまえ、まさか・・・・・・?」

「そう。父さんと母さんに手伝ってもらおうと思って」

「仮にもプロの漫画家夫妻に小学生の宿題をやれと言うのか?」

「だって、お盆進行も済んだし、夏こみも終わったし、二人とも暇でしょ?」

「・・・・・・育て方を間違えたかな・・・」

「そんな遠い目してないで、しっかり手伝って。来月の締め切り前にはトーン貼り手伝うから」

「・・・まあ良いか・・・英才教育と言えないこともないしな」

「やったーーっ!」

「仕方ない、詠美を呼んでくるか・・・」

 

 

「先生、どうして私だけ居残りなんですか?」

「宿題の自画像のことです」

「え? ちゃんと出しましたよ?」

「その中身なんですが・・・」

「上手でしょ?」

「確かに上手ですが・・・・・・デフォルメが過ぎます」

「どの辺りがですか?」

「どうして瞳がカレー皿のように大きいんですか?」

「そのほうが萌えるからです」

「口が5円玉大なのは?」

「そのほうが萌えるからです」

「日常あり得ないポーズなのは?」

「そのほうが萌えるからです」

「・・・・・・・・・じゃあ、これは意図的なんですね?」

「はい」

「・・・では、取り敢えず良いとしましょう。次はこちらの絵日記です。どうして登場してくる人の髪が赤や紫や緑やオレンジなのですか?」

「キャラの見分けがつきやすいでしょ?」

「夏休み40日間で笑いあり涙あり熱血あり色恋ありの生活を送っているのは事実ですか?」

「だから巻末に、『この絵日記は実在する人物・団体とは一切関係ありません』って書きました」

「・・・・・・・・・やり直し」

「なんでなんでなんでなんでなん」

「反省しなさい」


あとがき

 

全方位にごめんなさい。

 和樹+詠美=美樹、というのは安易過ぎ。『ブギーロックの大爆笑』のネーミングは自分で気に入ってますけど。

 この年の夏コミに綺麗な死神が居たのは本当です。


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