そして生まれる夢

 

松本 裕太


 

 夢を見ている。

 

オレらしくもない、奇妙な夢だ。

戦う牙も爪も持たない弱い人間が、ただ一人の人間を思って泣いている、そんな夢だ。

この、地上最強の生物であるオレがそんな夢を見るなど、笑い話にもならない。

実際、オレが見ているわけではない。

先日オレが閉じ込めたもう一人の自分、人間としてのオレの意識が、夢となって漏れ出ているのだ。

 

もっとも、それが明らかな害をもたらすわけでもない。もはやこの体は完全にオレの支配下にあり、奴が再び出てくることはあり得ない。だからこれも、何かの前兆などではなく、ただの夢に過ぎない。

だが、無視してしまうには印象が強すぎる。今日など、自分の涙で目覚めてしまったほどだ。これではせっかくの狩りで得た高揚感も吹き飛んでしまう。

最初はごく一時的なものだと思っていた。だが、今のところそれが消える気配はない。暗い部屋も冷たい床も、全て現実そのものだ。

 

オレの意識が、奴の夢に繰り返し現れていたように。

 

 

 

 

 

…それにしても。

 

 

毎夜毎夜、男の夢で目覚めるのはキツイって。オレ、基本的に見境ないけどけどそっちの趣味だけは無いし。

隣の山のあいつが羨ましい。同じように人間のときの夢を見ているのに、出てくるのは可愛い女の子らしい。

この身体の前の主、名前を柳川とかいうオレの半身も、もう少し普通の奴だったら良かったんだが。

 

今晩も、あの夢を見るのか。

……はあ。


 

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