アコライトだらけ

松本 裕太  


プロローグ




 ある新月の夜だった。

多くの資産家や貴族が住むプロンテラの中でも、特に豪奢な住居が立ち並ぶ一角。眠ることのない冒険者目当ての露店もここにはなく、星の瞬く音すら聞こえそうな静寂があった。

先刻までは。

今、それを破った人影がそこにある。それは、城壁のようにすら見える塀を乗り越え、大きな音を立てて道路に落ちてきた。小さな呻き声を漏らす人影は、激しい痺れを伴っているであろう足首に手を伸ばしかけ、両手に持った大きな包みに遮られる。それで自分の目的を思い出したのか、立ち上がり後ろを振り返る。

その人物が先ほど飛び出してきた屋敷では、日付もとうに変わった時刻だというのに朝を迎えたような忙しさで明かりが灯され始めている。

慌てた影は、もはやそれを顧みることはなかった。未だ痺れが残るであろう足を気にもせず、まっすぐ屋敷から離れていく。

遅れること数瞬。
 芸術品としてだけでなく材質だけでも一財産になりそうな大きな門の隣、それとは対照的に生活感を漂わせる木製の通用門から、一人の女性が現れた。とうに眠っていたのだろう、薄い衣の寝姿にカーディガンを羽織っただけの軽装で路上に現れる。だが、はしたないと咎める者はここには居ない。
 彼女は、その身を撫でる夜風を気にも留めず、闇の中を遠ざかっていく人影を、食い入るように見つめていた。






「今日はどこで食べようかー」
「そんなこと言いながら結局は『春眠亭』に行き着くパターン、そろそろやめにしない?」

「…だって、あそこのビール美味しいんだから良いじゃない。『この一杯のために生きてるーっ!』とか言いながら仕事の疲れを洗い流そうよ」

「……」

 夕暮れのプロンテラを私と一緒に歩く、精神年齢四十六歳の少年。名前をローフィという。発言に似合わない柔らかな童顔は、黄金色の短髪や私より頭一つ半ほど低い背丈と相まって、遠目には少女のように見えなくもない。

…ちなみに実年齢は十六歳である。

 ついでに説明しておくと、私の名はシャリーという。かつては騎士として魔物退治に明け暮れていたが、左腕に怪我を負って廃業し、今ではここプロンテラでカプラ職員の仕事をしている。

一方、ローフィは駆け出しに毛が生えた程度のアコライトだ。ここプロンテラを本拠地に、さまざまな仕事を引き受けては修行にいそしんでいる……と本人は主張している。私には、彼が贔屓にする酒場の名前と同じく、人生の春眠を貪っているようにしか見えない。もっとも、常春の首都プロンテラでは、春眠すなわち永眠となるのだが。

 

カプラ職員とアコライト。本来は仕事以外の接点がないはずだが、ロー(面倒なので普段はこう呼んでいる)と私はほんの数か月前にちょっとしたきっかけで親しくなり、お互いの仕事を手伝ったりしている。

私が手伝うことは、昔の経験を生かした戦い方の指導だ。アコライト、それも駆け出しの彼は、愛用のメイスを自在に使うどころか、その重さに振り回されるような始末だった。私は以前、彼とファミリアとの死闘を見て以来、危なっかしくて放っておけなくなり、暇なときに戦い方の基本を教えている。

そして。アコライトがどのようにしてカプラ職員の仕事を手伝ってくれたのかと言うと…ちょっと説明しにくいので、それはまた別の機会に。

 

 

私たちにとってのその事件は、なんとも可愛らしい呼び声から始まった。

「先輩!」 

 同じ通りを歩いていた数人の商人や剣士が振り返るが、すぐに自分への呼びかけではないことに気づいて立ち去る。隣を歩くローに目で尋ねようとして、その金髪の頭が既に後ろを振り返っていた事に気づいた。

「やっぱり…ローフィ先輩!」

「ああ、久しぶり…でもないね。先週の日曜日、イズルードで会ったっけ」

「は、はい。あの時は大聖堂の使いだったんです。初めてだったから道に迷っちゃって、着いたらもう夜中でしたよ…」

「慣れないうちは、行くまでに丸一日は掛かるからね」

 橙が濃くなりつつある光に照らされたのは、染み一つないおろし立ての装束に身を包んだ、十代前半と思しき少年アコライトの姿だった。

 

 …やはり公平ではないと思うので、第一印象は漏らさず書いておこうと思う。

 そこに居たのは、十代前半と思しき『美少年』アコライトの姿だった。

 茶色がかった髪の毛をローと同じように短く切り揃えた髪形、曲線ばかりで構成された顔立ち、声変わりも済んでいない中性的な声色。

ローが「少女に見える」だとすると、こちらは「まるっきり少女」だろうか。

 

 ローとあわせて、男のアコライトが二人。

そのどちらもが女の私よりはるかに可愛らしいという事実は、『神は誰に対しても公平です』という彼ら聖職者の言葉と矛盾していると思うのだけど。

 

 フランツという名前の彼は、ローが大聖堂で修行をしていたときの後輩だという。歳は一つ下だというから、まだ十五歳だ。ゲフェン近くの教会の家に生まれたが、数年前に両親を疫病で失い、妹とともにプロンテラの大聖堂に世話になっていたという。

ローが私の紹介をした(『僕の恋人だよー』という説明には実力行使で反論した)あとで、用があるという彼の話を聞くため、三人で春眠亭に来ている。良く言えば気楽な、悪く言えば薄汚い、という冒険者御用達の酒場だ。私が騎士として冒険に出ていた頃とまったく変わらない。少し前までは知人に会うのが嫌で絶対に来なかった店だが、もう気にしなくなった。馬鹿みたいな大声で話す髭のマスターも片手を上げて挨拶する旧知の狩人も、決して疎ましくはない。

「十五歳かあ。可愛いなあ。その服着てなかったら、女の子と間違えちゃうね」

 どうせおばさんだ、と開き直った発言。この若い二人と並んじゃあ仕方がない。なにせこちらはローより八歳、フランツ君より九歳も上なのだ。木のジョッキになみなみと注がれたビールが、口を滑らかにしている。

「…良く言われます……」

「シャリー……若い子を毒牙にかけちゃダメだよ」

「かけないっ!」

 呆れ顔で余計な釘を刺したあと、彼は後輩に笑顔を向ける。私に向けたこともない優しげな表情に見えるのは、きっと気のせいに違いない。

「その歳でもうアコライトになれたんだ。凄いね」

「いつまでも大聖堂に厄介になってもいけませんから…。それに、まだ駆け出しですし」

 先輩に感心されて真っ赤になるフランツ君。このあたり、年相応の素直さが見える。

「フランシスカちゃんは? 元気かい?」

 ローが口にしたその名前は、あとでローに聞いたところ、フランツ君の双子の妹だという。双子だが顔は似ていないらしい。

この兄に似ていないのは、彼女にとってはちょっと不幸なことかもしれない。

「あ…はい。あいつの方が先にアコライトになったんですけど、今はちょっと病気で…」

「え? 二人で暮らしてるんだよね? 大丈夫?」

「家でおとなしくしてますから…」

 言いながら思い出したのか、彼も少し目を落とす。鶏肉が豪快に放り込まれたスープの湯気で、額が少し濡れている。

「早く帰らなくても良いの?」

「はい…」

 無駄話をする余裕がないと気づいた私たちは、目で彼に話を促した。

 

 フランツ君は、プロンテラでも有数の資産家であるヴァール卿の屋敷に通っている。ヴァール卿は元からの貴族ではないが、その資産の力によって貴族に準じた称号を得た実力者である。

 その卿は熱心な信者でもあったそうだ。毎週日曜日の夕方に聖職者を呼んで、教義についての質問を行うのが日課になっているらしい。

先月までヴァール卿の家に行っていたのは別のアコライトだったが、都合により職を辞したため、募集に応じて手を上げたフランツ君が採用されたという。

 そして、先週の日曜の深夜。ヴァール卿の家に賊が入った。

 ヴァール卿の家には現金や貴金属の他にも、値段がつけられないような貴重な芸術品が多くあるため、警備も厳重だった。高い塀で囲まれ、夜を徹して警戒にあたる人間も多い。当然ながら、対空間転移用の結界も張っていた。

アコライトやプリーストが使用する術に、テレポートやワープポータルという空間転移がある。テレポートは近距離かつ不特定の場所かカプラ職員が持つカプラオーブへ自分一人が移動する術、ワープポータルはあらかじめ準備しておいた場所へ自分や仲間を移動させる術だ。

だが、これには簡単な対抗策がある。聖職者が作成した結界用の石を並べることで、空間転移による進入を防ぐことが出来るのだ。神の奇跡を利用した窃盗犯が続出すれば聖職者への信頼は地に落ちるから、教会も必死だ。悪用を防ぐためにタダ同然の費用でこれを配っているから、さほど裕福でない一般家庭にも常備されている。

ヴァール卿の家となれば、さらに大掛かりかつ強力な結界が張られているだろう。屋敷全体がカバーされている大規模なものだろうし、さらに侵入を試みた人間に報復を行うくらいのことはしているかもしれない。

だが、犯人はこれを物ともせず、屋敷の書斎に侵入したという。その上で『ある物』を盗み、庭から木に登り、塀を越えて脱出したらしい。賊が逃げる際にガラスが破壊されたため使用人が気づいたが捕らえるにはいたらず、一人の使用人が逃げていく犯人の後姿を見ただけだった。

 

 フランツ君の話をまとめると、概ねこのようになる。

「うーん…」

「……」

 目を閉じて聞いていたローが、話が一段落ついたところで首をひねる。考えていることは、おそらく私と同じだ。

「あ…言い忘れましたけど、ヴァール卿は成功報酬として五十万ゼニーを用意するとおっしゃっています。それでどうでしょうか」

 私たちが報酬のことで考え込んでいると勘違いしたのか、フランツ君が二人の顔を覗き込む。

「いや、そういうことじゃないんだ。根本的に分からないところがあってさ」

「はい?」

「この話を僕たちに話して、いったいどうして欲しいんだい? 犯人を捕まえたいのなら、騎士団にでも訴えればいいと思うけど」

 私も同じことを考えていた。プロンテラにはたくさんの冒険者が集まっているが、彼らが街の治安を守っているわけではない。むしろ、モンスター退治をしてくれるという一点を除けば、山師のような冒険者は治安のマイナス要因だろう。治安維持には自警団や守備兵という専門家がたくさん居る。まして訴えたのが有力政治家にも顔が広いヴァール卿となれば、彼らも全力で調べてくれるはずだ。後ろ暗いところがなければ、さっさと正当な手段で被害を届ければ……。

 そこまで考え、ようやく理解した。『後ろ暗いところ』があるのだ。

「事を公にしたくないそうです。できれば内密に進めたいと」

「だから、盗まれたのが『ある物』なんだね。それが何なのか、あなたも聞いていないの?」

 コクンと頷くフランツ君。つまり彼は、ヴァール卿から冒険者の勧誘を頼まれ、知り合いのローに声をかけたということだろう。

「それから、もう一つ。どうして僕なんだい? 自慢じゃないけど、僕は荒事が苦手だよ。頼りになる冒険者は他にたくさん居ると思うけど」

 言って、ローは右腕を捲り上げる。筋肉の無さを披露しているようだ。

…今にも折れそうな細腕は、確かに自慢にならない。

「最初はヴァール卿も、アサシンやシーフの方に依頼しようと思われたそうなんですが、どうも聖職者が犯人だという証拠が出たらしくて…」

「……結界が壊されていたんだな」

 腕組みをし、再び目を閉じるロー。頭の中に絵を描くように、小さく頷きながら考え込む。長考に入ったようなので、私はデザートの木苺をフォークで刺し、口に入れる。砂糖によらない、柔らかい自然の甘味が舌に広がった。

「分かった、引き受けるよ。可愛い後輩の頼みとあっては断れないからね」

 フランツ君の頭に、ローの右手が伸ばされる。子供のように撫でられたフランツ君は、恥ずかしさより嬉しさが先に立ったらしい。頬を赤らめて照れながら、目を細めている。

「ありがとうございます。では、先輩の都合の良い日を教えてください。ヴァール卿とお話しする場を設けます」

 

 

 


「ここ…よね」

「うん」

 フランツ君がヴァール卿との会見をセットしてくれたのは、それから三日後のことだった。

日の光が微かに赤味を帯びてくる時刻。私たちは、もはや『城門』と言っても差し支えない扉の前で萎縮していた。庶民の悲しさ、想像力の限界を超えた資産を目にすると思考が停止してしまうのである。

 フランツ君が急な用事で立ち会えなくなったため、私たちは二人でヴァール卿の家に来ている。事前に渡されていた地図には大きな丸印がついていたが、まさかその丸印の面積がそのまま屋敷の広さを表しているとは思ってもみなかった。ヴァール卿の名前もその莫大な財産も知っていたが、その屋敷に用事があるはずもなく、二人ともそれが初見だったのだ。

「塀の先が見えないわ…」

「それよりほら、塀の向こうに建物が見えないよ…門からどれだけ歩けばいいのかな」

 二人並んでばかみたいに半口を開いてぼうっとしていると、門扉が重々しい音を立て始めた。思わず数歩下がると、やがてその屋敷の内部と、門を押す鎧姿の男が二人現れる。肩から露出した腕はよく鍛え上げられており、守るべき城の威容に恥じぬ門番に見えた。

 数十秒かけて大きく開かれた門扉の間には、いつのまにか若い女性が立っていた。年の頃は十代後半だろうか。私と同じ黒の長髪、私と違う小さな身体。目の前の客を品定めするような冷たい視線。そしてその身に纏うものは、肩口にもスカートの裾にも派手なフリルが施された、実用性無視のメイド服だった。ちなみにそのスカートは、膝上より股下で測ったほうが早いような代物である。

 ヴァール卿の趣味が垣間見えたようで偏頭痛がしてきた私をよそに、彼女は自分の職務を全うしていく。

「ローフィ様ですね…もう一人の方は?」

「シャリーといって、僕の恋人…もほひ、ほふのにゃははだお」

「お仲間ですか…わかりました。ローフィ様お一人と聞いていましたので、臨席の是非を主人に相談いたします。申し訳ありませんがこのまま少々お待ちください」

 懲りない男の頬を思いきりつねったのだが、これで意味が通じたのだから彼女のヒアリング能力はなかなかのものだ。

赤くなった顔をさすっている涙目の男は無視して、私は屋敷の中に戻る彼女を見送った。

 

「よく来られたよく来られた。一人と聞いていたが、仲間さんなら大歓迎じゃよ。まったく、カルミアもそれくらいで儂の許可を求めんでもいいのにのお」

 地位と家屋敷、そして使用人の衣装から、肥満体で脂ぎった顔と禿頭、革張りの椅子でふんぞり返った鼻持ちならない老人を想像していた。しかし意外にも、彼は玄関まで私たちを出迎え、両手で握手までして丁寧に歓迎してくれた。一介の冒険者の出迎えにここまでするその態度から、性格についての勝手な想像は誤りだと分かった。

 …容姿についての想像は、嫌になるほど当たっていたが。

「ところで、そちらのお嬢さんはどんな方なんじゃ?」

「シャリーと言います。以前は騎士をしておりました」

 最近ローに付き合って冒険者の真似事を再開しただけで、今の本職はカプラ職員だ。しかし、当然それは伏せておく。自分から好奇の的になりたがるほど歪んではいないつもりだ。

「それは頼もしいの。よろしく頼むぞ」

 安心したような笑みで私に頭を下げる。アコライト一人では不安だろうが、騎士がついていれば大丈夫と判断したのだろう。

 私はもはや自慢できるほどの剣技を披露できないのだが、せっかく取り戻した心の平安を乱すのも悪いので、誤解をそのままにしておいた。

「ま、現場を見ながら話をしたほうが良いじゃろう。とりあえず書斎へ…」

「ご主人様」

「ん? どうした?」

 カルミアと呼ばれた先ほどの使用人が、小さな声で注意する。

「書斎はいま、ご依頼の品を届けに来た職人がお入りになっておりますが…」

「そうかそうか、新しい額縁は今日届くのだったな。では仕方ない、書斎は後で見てもらうとして、応接間にご案内しようかの」

「かしこまりました」

 

 応接間の豪奢さは、屋敷の外見を裏切らないものだった。高名な芸術家の彫刻、サスカッチの毛皮、壁に散りばめられた金箔など、成金趣味の完成形を見る思いだった。

 その中で一際異彩を放っていたのは、先ほどの使用人とお揃いのメイド服を着た女性の肖像が、何枚も飾ってあることだった。それも、廊下から見えただけで二十枚はあり、肖像の下部に書き込まれた各人の名前を確認しただけでも、五人の女性がいた。

主やその家族の肖像ならともかく、使用人の肖像を屋敷に飾るのは珍しい。ローも興味深そうに見ていた。

「気になりますかな?」

 眼前のご老人はソファに深々と腰掛け、説明したくてたまらない様子。この家の客は、今から始まるありがたい薀蓄を聞くのがルールらしい。

「はい。変わったご趣味ですね」

 ローの無遠慮な物言いにも腹を立てず、ヴァール卿はそれを合図に嬉々として説明を始める。

「おお。儂の可愛いメイド達の肖像画じゃよ。有名な画家を雇って描かせたんじゃ。妻を亡くし子供もおらん儂にとっては、家族同然の者たちじゃからの」

 実に残念ながら、私の目はヴァール卿の顔に浮かんだ浅ましい表情を捉えていた。家族同然、とは上手く言うものだ。実態はそんなに綺麗なものではあるまい。

「それは良い心がけです。彼女たちも良い主人を持たれましたね」

「そうじゃろうそうじゃろう。…とと、本題を忘れるところじゃったな。例の事件についてだが…」

 ヴァール卿が気の抜けた表情をなんとか引き締め、話が今日の用件に移る。

「はい。あらましはフランツ君から聞きました。ここに伺ったのは、フランツ君も知らないことをいくつか尋ねるためです」

 ローの声が一段小さくなる。彼もこの依頼の裏を感じ取っているのだろうか。

「はて? 何のことかな」

「盗まれたものは何なのですか」

 それまで愛想の良い商人のようだったヴァール卿の顔が、瞬時に強張る。

「…それは言えん。フランツにも伝えたはずじゃが」

「言える範囲で結構です。盗まれたものが小さな宝石か大きな金庫か、全く分からないのでは捜しようもありません」

 にこにこと相槌を打っていたローはもう居ない。厳しい顔つきには、依頼を完遂しようとする職業意識が見てとれた。つばを飲み込む音が聞こえる。

「……それもそうじゃな。うむ。盗まれたものは…これくらいの幅と長さで…」

 ローの言い分に利を認めたのか、ヴァール卿は両手を横に目一杯広げるゼスチャーをする。脂肪の詰まった腹がいっそう目立つ体勢だ。

「ほぼ正方形のものじゃ。厚さは薄く、板状の形になっている。その上から布で全体を覆った……ここまでで許してくれんかの」

 内ポケットからハンカチを取り出し、滝のように流れ落ちる汗を拭う。

「分かりました。では次の質問に参ります。犯人が聖職者だと疑われているそうですが、空間転移を防止する結界の異常に気づかれたのはいつですか?」

 相手に考える暇を与えず、できるだけ多くの情報が漏れるのを期待する作戦らしい。確かに今回のような謎だらけの事件では、それが有効かもしれない。

「この前の金曜日じゃ。屋敷の掃除をしておった使用人が発見した。屋敷を取り囲むように庭に埋めていた宝玉が、本来の位置から外れた植え込みの陰に転がされておった」

「事件があったのが先週の日曜日ですから…約1週間の時間がありますね。なぜすぐに気づかなかったのですか?」

「最初は普通に塀を乗り越えるなどした泥棒だと考えたんじゃ。使用人…さっき会ったであろう、カルミアじゃ、あれが逃げていく賊の後ろ姿を見ておるからの」

「逃げていく姿を?」

「うむ。カルミアの話では、庭木に登って塀を越えたそうじゃ。あとで本人から話を聞くといい」

「分かりました。それでテレポートやワープポータルによる盗みだとは思わなかったんですね」

 卿は大きく頷く。自分に不手際はなかったと主張するように。

「ところが、今週になって結界の異常が分かったんじゃよ。偶然にしては出来過ぎておるから、賊はおそらく屋敷への侵入の際に空間転移を使ったんだろう」

「侵入の際に空間転移を使い、逃走の際に塀を乗り越えた……」

「あくまで推測の域を出んことじゃ。侵入の際に賊を見たものは誰一人としておらんからのう」

 存在証明は一人の証言で足りるが、不在証明は難しい。侵入の際にどのような手段を使ったかは、結界の異常という状況証拠から推測するしかないわけか。

「分かりました。では、盗まれた現場…書斎に入らせて頂けますか?」

「うむ。そろそろ仕事も終わったじゃろうしな」

 

 ヴァール卿の書斎は、応接間で見られた眩いばかりの装飾が少なくなり、多少は落ち着ける雰囲気となっていた。何より、メイド服の女性の肖像がないというのが大きい。肖像画も一枚くらいなら良いが、三枚も四枚もあっては何だか落ち着けないものだ。

 部屋はきれいに片付けられ、チリ一つ落ちていないほど整頓されていた。壁の三面を天井まで覆う蔵書の数々も、黒光りする書物机も、徹底的に磨かれている。非生産的な制服に身を包んだ使用人が、悪条件にも負けずしっかりと仕事をしているおかげだろう。

 だが、ヴァール卿はさほど几帳面ではないのか、引出しはほとんど開け放たれ、書きかけの書類らしき羊皮紙が乱雑に散らばっている。

その中で、先ほど運び込まれたであろう大量の額縁らしき包み紙が壁に立てかけてあるのが妙に目立っていた。ヴァール卿は、まだ肖像画を増やすつもりなのだろうか。

「ここから盗まれたんじゃ」

大げさに身を震わせ怒りを思い出すヴァール卿を無視して、ローは周囲を覆う書棚に目をやる。歴史、地理、数学、魔術、古代語などさまざまな書物が並ぶ様は、壮観の一言だった。農家に生まれ、学問などろくにせず剣の道を志した私は、これほどの量の書物を一度に見たのは初めてだった。

「妙だな…」

「ん?」

 ヴァール卿が問い返すが、ローの言葉は人に尋ねたというより、自分の考えが漏れてしまったという様子だった。

「いえ、なんでもありません。それより、賊はどのようにしてここから逃げたのですか?」

「それは、ここの窓を…」

 言って、書棚に覆われていない唯一の面、大きな窓が並ぶ場所に近づく。部屋の中から見て右側だ。

「何かで叩き割り、力づくで脱出したんじゃ。もう修理してしまったがな」

「修理されたんですか…」

「いかんかったかの?」

「いえ、大丈夫です。それより、ガラスの破片は部屋の内と外、どちらに飛び散っていましたか?」

 ローが確認したいのは、ガラスがどちらから割られたのかということだ。もし部屋の中に破片があれば、犯人は侵入も逃走も徒歩で行ったということになり、聖職者への疑いが薄まる。

だが、ヴァール卿はそれをあっさり否定した。

「破片は全て外にあったそうじゃ。ガラスが割れる音を聞いて駆けつけた使用人が見ておる」

「割った音が聞こえたのも逃走のときか…いや、それは錯覚させるためにわざと音を立てたのかもしれないけど…確かに侵入の時には空間転移を使った可能性が高いな」

 ローもやはり、仲間のアコライトやプリーストに犯人が居るということが気になるのだろうか。私にはその表情の判別がつかない。

「それからもう一つ。賊が入ったあと、書斎のドアの鍵は閉まっていましたか?」

「ガラスが割れた音を聞いて駆けつけたときには閉まっておったそうじゃ。多くの使用人がここに集まり、体当たりでドアを破壊したらしいから、間違いない」

「…分かりました。ここで調べることはもう無いようです。ご協力ありがとうございました」

「そうかそうか。では、分からないことがあればまた聞きに来てほしい。連絡は…そうじゃな、フランツに伝えてくれ。君たちはフランツの知り合いらしいからな。あれは毎週日曜にこの屋敷へ教義を伝えるために来ておるから、急ぎでなければそれで間に合うはずじゃ」

「分かりました。その前に、先ほど出てきたカルミアさんと話をさせてもらえませんか」

「そうだったの。今は…庭におるはずじゃ。すまんが儂はこれから仕事をするから、二人で話を聞いてもらえるかな」

「分かりました。では、失礼いたします」

 二人揃って頭を下げ、書斎の椅子に腰を下ろしたヴァール卿に暇を告げた。

 

 この広い庭で探すのは骨が折れると思っていたのだが、意に反してカルミアさんは呆気なく見つかった。玄関のすぐ外で、私たちを待っていたのだ。

「ご苦労様でした」

 先刻と変わらぬ無表情で出迎えた彼女は、人形のような正確さでお辞儀をする。

「あ、ちょうど良かった。ちょっと聞きたいんだけど」

「はい」

 ローの場違いなほど明るい声と、カルミアさんの小さな声が妙なコントラストになって敷地に広がる森を包む。

「君が逃げていく泥棒を見たんだよね? そのときの状況を教えてくれるかな」

「少々お待ちください。主人に許可を…」

「あ、それはもう貰ってあるから」

 そう言われてカルミアさんは少し迷っていたが、ローの笑顔に根負けしたのか、質問に答えた。

「先週の日曜日の夜でした。使用人の部屋で眠っていた私は、大きな物音で目が覚めました」

「あ、使用人部屋ってどこにあるの? 屋敷の中?」

「外です。使用人は五人いるのですが、主人に何かあった時のために二人から三人は屋敷の中の一室で就寝します。その日は私の当番ではなかったので、別棟にある使用人部屋で眠っていました」

 言って彼女は、屋敷に向かって右手を見る。その視線の先には、古い平屋の建物があった。

「分かった。続けて」

「時刻は憶えていませんが、その物音で異変に気づいたのです。同じ部屋では別の使用人が眠っていたのですが、彼女は眠りが深かったのか目を覚ましませんでした。私は起こすのも悪いと思い、上着だけを着て外に出ました」

 ローが黙って頷くのを見て、カルミアさんは話を続ける。

「屋敷の中からは、警備にあたる人たちの『逃げたぞ』『外だ』という声が聞こえました。犯人は外に居るのだと知って注意深く木々の合間に目をやると、何か動くものが見えました。それが人間だと気づいたとき、私は『こっちです』と叫びました。ですが、それは屋敷に居る警備の人たちには届かず、犯人に警告を与えるだけに終わりました。その人影は私の声を聞いて、いっそうスピードを上げて逃げ出したのです」

 ポツリポツリと話す彼女。確かにこの声量では、いくら叫んだところで屋敷の中まで声が届くことはないだろう。

「恐ろしかったのですが、せめて何か証拠が見つかればいいと思い、その人影が逃げた方向に走りました。影は塀に近い庭木によじ登り、その上から塀を一気に飛び越えました。私は同じ側の塀にある通用門に向かい、急いで錠を外して外に出ました。遠くにしゃがみ込んでいた泥棒は、背後から見ていた私には気づかないようでしたが、屋敷に明かりが灯されていくのを見てすぐに走り出しました」

 中空を見つめ、状況を思い出しながら話しているようだ。怖い思いをしたのだろうが、相変わらずの無表情でその内心は見えない。

「もう一つ。君は、犯人の人相や体格は憶えているかな」

 うつむいて考え込む彼女の答えを、ローはせかさずに待った。

「当日は月のない夜だったので、星明かりだけでは顔まで分かりませんでした。背丈はかなり高かったように思います。身体の線は細く、女性のようでした。髪の色は分かりませんが、かなり長めだったと思います。後ろで一つにまとめているようでした」

 ローはその答えに満足したのか、大きく一つ頷いた。

「ありがとう。助かったよ。嫌なことを思い出させちゃってごめんね」

 自分とさして変わらぬ目線にある暗い表情に、つとめて明るく礼を言う。

「ついでに頼んじゃって悪いんだけど、庭掃除担当の人を呼んできてもらえるかな。ちょっと聞きたいことがあって」

「あ、それは私です」

「え、君なの? じゃ、空間転移を防ぐ結界が壊れていたのを見つけたのは…」

「私とクレンが二人で掃除をしているときに見つけました」

 クレンというのは他の使用人の名前だろう。ローは少し驚いたようだったが、すぐに気を取り直した。

「じゃ、もう一つだけ君に質問があるんだ。結界が壊れていたのを見つけたのはいつで、どんな状況だったんだい?」

「異常を見つけたのは、先週の金曜日の午後です。いつものように落ち葉の掃除や水やりをしていると、塀の傍のある場所に、人の手によるものと思われる穴が開いているのを、クレンが見つけました。それほど重要なこととは思えなかったのですが、一応主人に報告したところ…」

「結界用の石が埋めてあったところが掘り返されていた、と」

 続きを引き取ったローに、カルミアさんが頷く。

「正しくは宝玉のようなものだったそうです。大聖堂の高位のプリーストに依頼した特別なものだったということです」

「さっきの口ぶりからすると、君やクレンさんはそこに宝玉が埋まっているなんて知らなかったんだね?」

「はい」

 間を置かずに答えが返ってきた。ローは満面の笑みで応じる。

「ありがとう。今度こそ、もう終わりだから」

「はい。お役に立てましたかどうか」

「十分だよ。助かった」

「はい」

 

 その後私たちはクレンさんと会い、カルミアさんの証言の後半、結界の異常を発見した時の様子を尋ねた。得られた証言はカルミアさんから聞いたものと全く同じものだった。口裏合わせでもしていない限り、二人は事実を述べているのだろう。

 ヴァール卿の屋敷を後にした時には、もうすっかり日が落ち、街灯の仄かな明かりだけが道路を照らしていた。私たち二人は、飽きもせず『春眠亭』に立ち寄り、少し遅めの夕食を取っている。今日のメニューは、仔豚の肉を乱雑に切って焼いただけの自称「肉料理」がメインディッシュになっている。見た目以外に難点が存在しないため、この店の看板商品だ。ローは相変わらずビール、私はさほどアルコールが好きではないためハーブティーを飲んでいる。

「今日分かったことは…これくらいかな」

「そうね」

 話題はどうしてもヴァール卿の事件に行き着く。皿の肉が7割方消えてしまうまでに、私たちは卿の屋敷で知り得たことを確認しあった。ちなみにローのビールはすでにジョッキで3杯目だが、顔の紅潮すら見せない。彼は見た目によらず、結構な酒豪である。

「じゃ、事実確認はこれくらいにして、お互いに気になったことを話そうか」

「えっと…あなたからお願い」

 ローの仕事に付き合うのは初めてではないが、頭脳労働はいつも彼の担当になる。私は冒険者時代から、頭より先に剣が動く型の人間だった。

「犯人は、なぜワープポータルで逃げなかったのか」

「ああ、不思議がってたわね、あのとき」

 それは、ローが卿との会見中に気にしていたことだ。鈍い私は、そのときのローの言葉ではじめて気づいたけど。

「結界は壊されていて、なおかつ侵入の際に賊を見たものは誰もいない。普通に考えればワープポータルを使って侵入したに決まっている」

「結界の破壊は偽装で、実は侵入も逃走も徒歩だったという可能性は?」

「限りなく低いね。あの屋敷の警備をかいくぐって侵入できた泥棒なら、力づくでガラスを割って逃走なんて間抜けな真似をするはずがないもの」

 確かにそうだ。あの逃走方法はあまりに手際が悪い。書斎の窓ガラスは小さくて盗んだ品が通らなかったのかもしれないが、だからと言って屋敷中に響くような音でガラスを割るなんて、筋が悪いにもほどがある。

「だから、侵入にはワープポータルを使ったと考えるのが妥当だよ。となると問題は、なぜ犯人が逃走の際にワープポータルを使わなかったのか、ということだ」

 私たちが同じ空間転移の術であるテレポートを除外して考えているのには訳がある。カプラ職員が持つカプラオーブを目標として移動するか、自分で行き先を決められないランダムワープの二択しかないテレポートは、まず盗みに使えないからだ。侵入に向かないのはもちろん、逃走の際にも誰に見られるか分からないという危険がつきまとう。対してワープポータルは、術者があらかじめ準備した場所へ自分や仲間を移動させる術だ。移動先を人気のない森の中にでもしておけば、まず目撃されずに済む。ブルージェムストーンを必要とするのが唯一の弱点だが、ヴァール卿の屋敷で盗みを働けるという利益からすれば、さほど高い買い物ではない。

 だから、この事件ではそこが気になるのだ。賊が聖職者本人なら逃走の際にもワープポータルを使えばよいし、聖職者が共犯ならその人物にも一緒に卿の屋敷に来てもらい、その上で逃走の際にワープポータルを使えば良い。いずれにしろ、危険を冒して結界を壊したのに、それを侵入の際の一回だけしか使わないのは理屈に合わないのだ。

事実、ワープポータルを使わなかった逃走の際に、屋敷の人間に気づかれるというミスを犯してしまった。

「逃げる時にワープポータルを使わなかった理由って、何だと思う?」

「え? えっと…共犯の術者が屋敷の中に入ってこれない事情があった、とか?」

「そうだね。あとは…何らかの事情で逃げる際に術が使えなかった、ということかな」

 何らかの事情、という曖昧な表現が、ロー自身この説を信じていないことを窺わせる。屋敷の住人に追われて精神集中の暇がなかったのならまだしも、この犯人は逃走のためにガラスを割るまで、誰にも見つかっていない。詠唱など幾らでもできたはずだ。

「ま、これは分からないままにしておくしかなさそうだね。次に行こう」

 言って私の方を見る。私たちの体格差は、共に椅子に腰を下ろしても埋められず、下から覗き込まれる格好になる。

「私は特に何もないけど…強いて言えば、ヴァール卿と使用人たちの関係が…」

「ああ、絵がたくさん飾ってあったなあ。仲が良いんだね」

 一瞬、自分もその幼児的発想を信じたくなったことは否定できない。

「それ以上の関係があるんでしょ…」

「え? そうなの?」

 私をからかって言っているのだとすれば、ローは相当の名優だ。なんだか馬鹿らしくなってきて、返事を無雑作に投げつけた。

「…そうなの! …別に私がどうこう言うことじゃないけど」

 ローは感心したように頷くが、未だにその根拠が分からないのか、少し首を傾げている。

「ま、いいか。他には…そうだ、書斎のこと。ちょっと変なとこがあったよね」

「え?」

 今度は私が聞き返す番だった。つい数時間前の書斎の光景、そこでの卿とのやり取りなどを思い出すが、それほど妙なことはなかったように思う。

ぼけっとした私を見て反撃の好機と捉えたのか、ローは意地の悪い笑みを見せる。

「よく考えてみてね」

 大皿に盛られた最後の肉を摘み上げるや瞬時に骨に変え、ローは急に立ち上がった。

「ちょ、ちょっと。何のことか教えなさいよ」

「そうそう、明日は昼のうちに調べたいことがあるから、それを済ませてから迎えに行くね」

「こら! 気になるでしょ!」

「それからもう一つ」

 だんだん口調が厳しくなる私を置いて、ローは私に背を向ける。顔は見えないが、あの嫌味な笑い方がエスカレートしているに違いない。

「カルミアさんのこと、どこかで見たことがあるなってずっと思ってたんだけど、やっと思い出したよ」

 そして、混乱する私にとどめの一言を置いていった。

「あの人、大聖堂で何度か見かけたことがあるんだ」

 

 

 

「おーい、赤ポーション五十個だしてくれー」

「はい」

「モロク行きのポータルお願いね」

「はいはいっ」

「鉄鉱石二十個預かってもらえる?」

「はいただいま!」

 冒険者に昼夜の区別はない。イコール、カプラ職員も昼夜の区別なく忙しいということだ。遥かな山々にはオレンジの残光が残るばかりの時刻となっていたが、私の前を目まぐるしく行き来する冒険者の数は一向に減らない。

カプラ職員が持つカプラオーブには、主に二つの機能がある。一つは、顧客の荷物を預かったり引き出したりするため本社の倉庫と空間を直結させる倉庫サービス。もう一つは、大陸の主要都市を結ぶ空間転移サービスだ。聖職者のワープポータルを応用した二つの画期的なサービスを発明し、それを簡単に扱えるカプラオーブというアイテムにしてしまったことで、それまで小さな倉庫業者に過ぎなかったカプラサービスは、世界中に支店を持つ大会社に急激な成長を遂げた。

 以上、私が入社した時に上司から聞かされた会社自慢の抜粋である。

 交代の先輩が少し早くやって来たので、私の仕事は五分ほど早く終わった。にもかかわらず、プロンテラ西門の持ち場から三歩も歩かないうちに、ローが手を振りながら駆け寄ってきた。

先輩と、ダンジョンから満身創痍で戻ってきた冒険者たちの視線が痛い。私はローに好かれているというより『懐かれている』という感じなのだが、他人はそう見てはくれないだろう、とは思う。

いつものことだが、ローにはもう少し人目を気にして欲しい。おそらく無理だろうが。

 

 一口に『プロンテラ』と言っても、その中には様々な場所がある。昨日訪れたヴァール卿の屋敷がある高級住宅街、冒険者がたむろする広場、雑多な店が軒を連ねる商店街などなど。

 いま私たちが歩いているのは、そのうちでもっとも汚い通りの一つかもしれない。細い道路には正体も分からない腐臭が漂い、道端では物乞いの子供が座り込む。そういう場所だ。ローが「行きたいところがあるから」と言うので、目的地も聞かずについて来たら、ここまで歩かされたのだ。

 ちなみに、彼が人気のない場所に私を引きずり込んで、という三文小説のような展開は絶対にあり得ない。彼にそれだけの腕力があれば、私が戦い方を教える必要などないからだ。

「今日、大聖堂に行ってきたんだけど」

「カルミアさんのこと、調べたの?」

「うん。彼女、やっぱり以前はアコライトだった。いや、やめたわけじゃないから今もアコライトなんだけど」

 昨日の思わせぶりな一言は、いちばん妥当な結論に行き着いたようだ。

「そう」

 昨日、ローと別れてから考えていた。彼女がアコライトだとすれば、ヴァール卿に忍び込んだ泥棒が彼女だという可能性もあるということになる。ヴァール卿と彼女を含めた使用人たちとの間には主従以上の関係があるらしいから、その関係がこじれてヴァール卿に何らかの恨みがあっても不思議ではない。それに彼女なら、書斎をワープポータルの移動先に定めて侵入するのも容易だ。庭掃除を担当する彼女なら、結界用の宝玉の場所を知っていてもおかしくはない。そして、彼女は唯一の目撃者だから、嘘の証言で犯人像を歪めている可能性もある………。

「それから」

 ゆうに三十秒は過ぎてから、彼は次の言葉を口にした。あとから考えると、ここで私を悩ませるために間を置いたとしか思えない。

「クレンさんっていう人も、アコライトだった」

「へ?」

 実に間抜けな声は、私の感情を暴露していた。

「屋敷に飾ってあった絵、下に名前が書いてあったでしょ? ついでに大聖堂で調べてみたんだけど、他の三人の使用人も、みんなアコライトとして名前が残ってたよ」

 あまりに異様な事実に愕然とする。一人ならともかく、使用人全員がアコライトなんてところ、プロンテラ中を捜しても大聖堂とあの屋敷以外にないだろう。

「それともう一つ」

「…ヴァール卿もアコライトだった、とか」

「…………当たり。何で分かったの?」

 目を丸くしたロー。だが、投げやりな冗談のつもりだったので自分でも驚いた。

「ヴァール卿って、あの家の四男だったんだ。親のあとは長男が継ぐ予定だったから、家を出て聖職者の道を歩んだことがあるらしい。ただ、兄たちが疫病で次々に亡くなって、ヴァール卿に後継ぎのお鉢が回ってきたんだって」

「アコライトだらけね」

「うん」

 思わずためいきをつく。書斎のドアの鍵はかかっており、窓ガラスも逃走の際に割られたものらしい。となると犯人は、書斎に直接ワープポータルで忍び込んだ可能性が高い。しかしワープポータルは術者が一度その場所に行かなければ転移先にできないため、これまでにあの書斎に入ったことのある聖職者の中に犯人(またはその協力者)がいるはずだ。

 だが、使用人全員がアコライトとなると、誰が協力者か分からない。

ヴァール卿が自分の持ち物を盗むとも考えられないから、卿のアコライト経験は無関係だろうけど。

「それに…よく考えると、ヴァール卿はお抱えの聖職者を雇って屋敷に呼んでるのよね。フランツ君の前にもそういう人が沢山いたんでしょうね…」

 つまり、あの家に出入りし、かつ書斎をワープポータルの転移先に指定できた者は無数にいるわけだ。

「それはあんまりいないよ。いや、いるんだけど人数はあんまり増えない、という方が適切かな」

「どういうこと?」

「カルミアさんやクレンさん、それに他の三人の使用人たちって、みんなヴァール卿の屋敷に出入りするアコライトだったんだ」

「あ、なるほど」

 ヴァール卿がお気に召したアコライトを使用人として雇ったのだろうか。あり得る話だ。

「もちろん、お抱えの聖職者がみんな使用人になったわけじゃないよ。そんな例外もここ数年で何人もいるんだけど」

 ローはある家の前で立ち止まる。軒先には、かろうじてパンの形をモチーフにしたと分かる汚い看板がかかっていた。

「いちばん最近では、フランツ君の前にヴァール卿の屋敷に出入りしていたアコライトも、屋敷の使用人にはなっていないんだ。それが……」

 彼の視線の先には、その家の主と思われるものの表札がある。その下にささやかにぶら下がっているのは、まだ新しい小さな表札だ。そこに書かれた二つの名前には、心当たりがあった。

「フランツ君の妹、フランシスカちゃんだよ」

 

 主人による金払いの悪い下宿人への愚痴を聞き流し、私たちは店の奥の階段を登った。共にアコライトである双子の兄妹は、小さな天窓だけが西日を取り入れる薄暗い部屋を宿としていた。そこには目立つほどの家具もなく、二人の洋服とごく少ない炊事道具が部屋の片隅に積み上げられているだけだった。

 ローは事前に約束もしていなかったらしく、応対したフランツ君はひどく慌てていた。しかし、それ以上に目を引いたのは窓際の椅子に座った妹さんだった。顔見知りのはずのローが目の前で挨拶しても、彼女は何の反応も示さず、ただじっと来訪者の顔を見ているだけだった。ブラウンの瞳は確かにローの姿を映していたが、それが心に届かない。そんな様子だった。

息が荒いとか体が痛そうとか、そういった様子は窺えない。だが、その顔の尋常でないほどの白さを見れば、彼女が数週間は太陽を見ていないことは確実だ。

 私たちはフランツ君と共に、妹さんと離れて床に座り込んだ。応接用の椅子はなかったため、車座になって話す態勢になる。

「すみません。何も用意できなくて」

「謝るのはこっちの方だよ。何も言わずに来ちゃったんだから」

「そうよ。突然押しかけてしまってごめんなさい」

「いえ…」

 先日話したときより覇気がない。妹と同じ部屋にいては、彼女のことを忘れてカラ元気を出すこともできないのだろう。

「フランシスカちゃん、長いの?」

 ローも不安そうな様子で彼女を見る。

「一か月ほどです。ちょっと具合が悪くて…」

 とても『ちょっと具合が悪い』だけには見えないが、ローもそれ以上は尋ねられないことを察したようだった。

「お金とか、大丈夫? 二人で働く予定で大聖堂を出たんでしょ?」

「…何とかやってますから」

 嫌味なパン屋の愚痴を思い出す。心情的にはフランツ君の味方をしてあげたいが、正当な家賃を寄越せという主人の言い分はまったく正しい。

それなら一体、誰が悪いのだろう。

 嫌な考えが頭をよぎる。困り果てたフランツ君は、突発的に盗みを思いついてもおかしくないのではないか、と。

「…力になれないどころか邪魔になっちゃうから、もう帰るよ」

「すみません…」

 重苦しい空気は、最後まで変わることはなかった。

 

 二階の部屋から降りて再び家の主人に会ったとき、ローは兄妹の家賃の幾らかを肩代わりするため、持っていたお金のほぼ全てを手渡した。私も少し出そうとしたが、『先輩としてちょっと貸しただけだから』という理由で固辞された。

 

 

「ねえ、目的は何だったの?」

 パン屋の玄関を出たところで、私は聞いた。

「お見舞いだよ」

「なら、私を誘ったのはどうして? ヴァール卿の依頼と関係なければ、私を連れてくる理由もないはずだけど」

 深く息を吐いて、ローが肩を落とす。

「ごめん。半分は嘘。彼にヴァール卿が家を空ける時間を聞きたかったんだ」

「家を空ける?」

「そう。あの書斎で、卿に知られずに調べたいことがあって…留守のときに約束を取り付ければ、僕たちだけで書斎に入れるかなと思ったんだけど」

 これ以上は、聞いても答えてくれないようだった。おそらくその調査には、彼も自信がないのだろう。書斎は泥棒が入った現場だから、何か調べたいことがあるというのは理解できるが。

「でも、半分は本当だよ。フランシスカちゃんに会っておきたかったんだ。フランツ君の前任者なんだから、間接的にでも事情を聞けるかと思ったんだ。あんな状態になってるとは知らなかったから」

「事情って…………」

 意味ありげな言葉の意味を問う前に、私は、背後から私たちのほうを見つめる眼の存在に気がついた。

 剣を持つことは少なくなったが、それ以前に養われた感覚は簡単には消えない。それは、明らかに害意をもった視線だった。

「どうしたの?」

「振り返らないで。私たちを見ている奴等がいる。少なくとも二人」

 かろうじてローに聞こえるだけの声量。

「え?」

「私について来て」

 戸惑うローの手を引き、私たちはパン屋を後にする。

 そのまま十数歩も進んだだろうか、微かな足音が鳴りはじめた。

「できるだけ大通りに近づきましょう。次の角を左に」

「う、うん」

 もはや、ローに事情を説明する暇はなかった。相手の気配の消し方は尋常ではない。相当の経験を積んだアサシンだろう。

日が落ちたとはいえ、まだ街が眠りにつくには早すぎる時間だ。堂々と仕掛けてくる可能性は低いだろうが、用心に越したことはない。

 

 追いかけてくる影がかき消えたのは、それから二度ほど角を曲がり、冒険者目当ての露店が並ぶ噴水通りを目にしたときだった。

 

 

「どうして僕たちが狙われなくちゃならないんだろう」

「理由なんていくらでもあるでしょ」

 私たちが腰を落ち着けたのは、アコライトがワープポータルを提供してお金を稼ぐ、いわゆる『ポタ屋』が大勢集まる通りの片隅だった。あれほど鋭い悪意に背を撫でられては、うかつに大通りを動けない。どれほど凄腕のアサシンでも、いや、凄腕のアサシンだからこそ、冒険者が無数に集まるこの場所で事件を起こすことの危険は理解できるだろう。

「たとえば?」

「あのね…少なくともヴァール卿の家に盗みに入った本人は、私たちを邪魔だと思ってるわよ」

「ああ、そっか」

 緊張感のかけらもない顔と答え。力が一気に抜けるのを感じた。

「自分の身は自分で守りなさいよ」

「でもね…狙われてたのは本当に僕たちなのかなあと思って」

「私、そこまで勘は鈍ってないつもりだけど」

「違うよ。シャリーを疑ってるんじゃなくて」

 ちょっと怒った私に、ローが慌てて首を振る。

「ほら、シャリーが視線を感じた場所って、あのパン屋の前だったよね?」

「何が言いたいの?」

 商談が成立したのか、近くに座っていたアコライトがブルージェムストーンを取り出し、依頼者の剣士に向けてワープポータルの詠唱に入る。私たちはその邪魔にならないよう、座っていた場所を少し移動した。

「その人たち、僕たちじゃなくてあのパン屋を…フランツ君たちを見張ってたんじゃないかなと思って」

「……」

 確かに一理ある。彼らの追跡は私たちがあの家から離れたから終わった、とも考えられる。それに私たちを追ってきた者は一人だけだった。全員が追ってこなかったのは、あの兄妹の見張りを残したためなのかもしれない。

「もし泥棒が追跡を逃れたいのなら、そしてそのためには実力行使も辞さない覚悟があるのなら、さっさと襲ってくれば良いんだよ。シャリーはさっき、見張っていたのは二人以上だと言ったよね。それがあの人通りのない路地で襲ってきたら、シャリーは勝てたかな」

「……勝てない、と思う」

 追跡してきたのはそのうち一人だけだったが、その相手だけでも難しいはずだ。騎士として現役だった頃ならまだしも、左腕が戦いの役に立たない今では尚更だ。

 でも。じゃあ何のために、彼らはあの兄妹を見張らなくてはならないんだろう。

「まあ、同じことがフランツ君やフランシスカちゃんにも言えるんだよ。彼らも今日まで無事だったんだから、これからもすぐに傷つけられることはないと思う」

 ローの説明は楽観論だ。だが少なくとも、ある程度は説得力のある楽観論だった。

「納得した? じゃ、ヴァール卿の屋敷をもう一度調べることについてなんだけど」

「……ええ…」

 

 

 私たちがヴァール卿の書斎を訪れたのは、二日後の午後のことだった。ローがヴァール卿の屋敷に出入りする庭師に聞いたところによると、毎週金曜日の午後に卿は商談のため家を空けるということが分かったからだ。昨日のうちにフランツ君を通じてヴァール卿に話をつけ、留守の間に書斎を調べることを了解してもらった。ちなみにフランツ君は、今日も同行していない。妹の病状を見ればそれも仕方ないだろう。

 そしていま。私とローは、三方の壁にそびえる本の山と格闘していた。と言っても、決してヴァール卿秘蔵の蔵書を無断で読もうとしているわけではない。

試みているのは、もっと悪いことだった。ローの言うところの『隠し部屋』なる存在を見つけるため、本を取り出しては棚を調べ、また元に戻すという作業を延々と行っていた。

「そんな変な細工、本当にあるの?」

 自信満々のローには悪いが、数回目の愚痴をつぶやいてしまう。そして彼は、今回も律儀に応えてくれた。

「あるよ。だって、ヴァール卿が言ってた『盗まれたもの』に当たるものを隠しておく所が、ここにはないんだから」

 卿が私たちに盗まれた物の形を告げたとき、両手を広げて大きさを表していた。だが、この書斎は三面が本棚、一面が大きな窓ガラスとなっている。そのようなものを収納するスペースがない。だからこの部屋のどこかに隠し部屋があるはずだ、というのがローの主張だった。

盗みの被害を公にできず、しかし取り返すことを諦められず冒険者に調査を依頼するような怪しい代物を、どこにもしまわず床に放り投げておく。

…確かに考えにくいことではあるのだが。

「あ……」

 種類ごとにきちんと仕分けされた書棚の一角、神の教えを記した書物が並ぶ場所に手を伸ばしたローが、小さな声を上げた。

「何かあったの?」

「なるほど…このレバーか…」

 古代遺跡に関する書物を漁るのをやめて背後に駆け寄ったとき、すでにローは本棚の後ろから生えたレバーに手を伸ばしていた。

「ちょっと、そんな不用意に……」

 言いかけた注意は、永遠に不要なものとなった。私たちの背後、本棚のレバーの向かい側にある書棚が、音も立てず九十度回転し、その右半分に地下へ続く階段が現れたからだ。

「シャリーはここで待ってて」

 様子を窺う私を置いて、ローは早くも階段へ第一歩を踏み出す。

「ちょ、ちょっと。私も行くって。罠でも仕掛けてあったらどうするの」

「大丈夫だよ。それに、この中にはシャリーに見せたくない物があると思うから」

 いつも軽薄そうな笑みを絶やさないこのアコライトは、たまに見せる真剣な表情がどれだけ効果を発揮するか熟知しているに違いない。

私は、言われるままにそこで待たざるを得なかった。

 

 

部屋の中から鍵を閉め、「調査のため」と言って誰も通さないこと。

ローの指示はごく簡単なものだったが、実際にそれを守るのは難しいように思えた。使用人は当然鍵を持っているだろうから、鍵など単なる時間稼ぎにしかならない。もしヴァール卿の隠し部屋に無断で入ったと分かれば、まず許してもらえるとは思えなかった。

 だから、彼が階段を下っていってからここに戻るまでの凡そ十五分間は、生きた心地もしなかった。

 

 そのときは、厚手の布に包んだ一抱えもある物体を持って帰ってきたローが、さらに神経を消耗させることを言うとは思わなかった。

 

「これを……あなたの家へ?」

「うん」

「……ふ…ふ………」

「どうしたの? 面白いことを言った覚えはないんだけど」

「ふざけないでっ!」

 次なる無茶な要求は、『ワープポータルで荷物を家まで送るから見逃して』だった。にこやかな表情ですごいことを言うものだ。

「……あ、心配しないで。庭の結界は屋敷に入る前に壊しておいたから」

「準備万端ね…」

 それはローが持参した(であろう)布に包まれたもので、ローが両手を広げてようやく掴めるほどの長さを辺とする、正方形に近いものだ。かなりの大きさだったが、彼の細腕で持ち上げられるところを見ると、それほど重いものではないらしい。

「ある意味、泥棒じゃない」

「間違いなく泥棒だね」

 いちおう彼の判断能力は確かめられたが、これはこれで問題だと思う。

「泥棒の手伝いなんかしないわよ」

「頼むよ。これを持っていかないと、今回の依頼が解決できないんだ。でも、このまま持ち出したらばれちゃうし」

「それなら、ヴァール卿に頼めばいいでしょう」

「正直に頼めるなら苦労はしないよ」

 荷物を支える両手に力がこもったのか、布に長い皺が刻まれる。

彼が何の理由もなしに盗みを働くような人間でないことは、十分に分かっている。隠し部屋の中でも詠唱は出来ただろうに、わざわざ私の了解を求めるためここに戻ってきたことが何よりの証拠だ。

 ただ。

「せめて理由くらい言いなさい」

「…………ごめん。最後の確認ができるまで、言いたくないんだ」

 書棚の探索で時間を取ったのか、赤に染まりきった陽光が数本、部屋に侵入する。そのうちの一つが、ローの顔にぶつかっていた。

「でも、これだけは約束する。明後日の日曜日が終わるまでに、きっとシャリーも納得してくれると思う。もし納得できなかったら、すぐに僕を捕まえて自警団に突き出すといいよ」

 そんな条件まで持ち出されては何も言えなかった。私は黙って身を引き、壁際の書棚近くまで下がる。

 ローは笑顔で一つ頷くと、懐からブルージェムストーンを取り出し、ワープポータルの詠唱に入った。

 

 




 その後の二日間、ローが何をしていたかと言うと。

 …何もしなかった。

「本当に大丈夫なの?」

 何度尋ねたか分からないが、その度に彼は「日曜の夕方になれば分かるから」と答えるだけだった。

 

 そして日曜日の夕方。私たちはヴァール卿の屋敷が見える路地に居た。私の仕事が終わるのを待って、ローに連れてこられたのだ。

 彼は目的を何も話さなかったが、道の遠くを見つめるその仕種から、誰かを待っていることだけは分かった。あせっている様子はない。急いでここに来たわけでもないから、まだ時間に余裕があるのだろう。

「そろそろかな」

「ヴァール卿が帰ってくるの?」

「違うよ。卿がいま屋敷に居るのは分かってる。彼を訪ねる人を待ってるんだ」

「え? 誰なの?」

「あ、来たみたい」

 言いつつ、彼の足は大通りに…屋敷の正門前の道に向かう。私も慌てて後に続く。

 夕食の買い物も終わったのか、通りには人が少ない。ローの視線を追えば、目的の人物はすぐに分かった。女のアコライトの衣装にショールを巻き付かせ、大きめのフードを目深にかぶった人物だ。揺れ動くフードから覗く口元を見るに、歳は十代半ばだろうか。服が描く体のラインはかなり華奢だ。その子は前で待つ私たちを不審に思ったのか、急に速度を上げて私たちの右手を通り過ぎようとする。

 そのとき。

「先輩に挨拶ぐらいしたらどうだい?」

ローが伸ばした右手が、身長の関係から相手の眼前に迫る。やむなく立ち止まった相手は、怒るでもなく、ただ足元を見つめているだけだ。

震えながら次の言葉を待つその面影に、私は見覚えがあった。

 

 ローの右手がサイズの合わないフードを持ち上げ、一緒に赤味がかったロングヘアーのかつらも奪い去る。その下から茶色がかった短髪が露になって、その感覚は疑いようもない事実に変わった。

 はじめて出会ったときに私は、男のアコライトの衣装を着ていなければ女の子と間違えてしまう、と言った。その言葉は正しかった。女性用のアコライトの装束に身を包んだ彼は、まったく違和感を覚えさせない。

「2回とも僕たちの調査に同行しなかったのは、これがヴァール卿にばれちゃうからだよね? フランツ君」

 何かを握り潰すように拳を固め唇を噛み締める彼は、この時どんなことを考えていたのだろうか。

 

 一言も発しないフランツ君を連れ、私たちも無言で歩く。向かうのは大聖堂だ。ローが司祭に頼んで、ヴァール卿の屋敷にほど近いここで、小さな部屋を使わせてもらうよう頼んだらしい。私たちは何も言われずに中へ通され、二階のある部屋へと通された。質素なテーブルと椅子が四脚あるだけの内装に、ごく小さな明かりとりの小窓がある。備え付けの小さなランプに火の勢いはなく、照らされたフランツ君の陰鬱な表情を消すことはできなかった。

「一つ言っておくよ」

 ローの声は、やや本調子ではなかった。いつものおしゃべりが珍しく十数分も黙っていたものだから、声が少し死んでしまったらしい。

「僕は君の味方だから」

「……ありがとうございます」

 ローの正面、私の右斜め前に座るフランツ君は、机に額を擦りつけんばかりのお辞儀をする。

「…もういいよ」

「はい」

 ローの許しを得てはじめて、彼は頭を上げる。それでもローの目を見ることは決してない。

その手も足も拘束されていないのに、心が先に囚人になってしまったかのようだ。

「申し訳ありません。ヴァール卿の屋敷で盗みを働いたのは、僕です」

 今の段階で明らかなのは、彼が性別を偽ってヴァール卿の屋敷へ仕事に行っていたことだけだった。だが、彼は少しも抗わなかった。こちらが何も聞かないうちに、自分から言葉を紡ぎ出す。

「妹の病気で生活が苦しくなって、僕の稼ぎだけでは家賃も払えなくなりました。だから、ヴァール卿の書斎でお金になりそうなものを盗んだんです」

「本当かい?」

「はい」

 淀みなく語られる言葉には関心がないのか、ローは机に乗り出しフランツ君の眼前に身を乗り出す。それほど幅があるわけではない小さな机だから、二つの顔は今にも触れそうな距離まで近づいた。それでも、フランツ君は机の一点のみを見つめ、ローに視線を向けない。

 そのとき、ローは思いがけない行動に出た。普段ののんびりした所作からは想像もつかない早業で右手を伸ばす。ショールの下、女のアコライトの衣装に襟首から手を入れ、彼が反応する前に再び引っ込めた。

「大事なものを左の内ポケットに入れる癖は、変わってないね」

「返してください!」

 この部屋に来てはじめて、フランツ君の表情に変化が生まれた。ローが手にしているのは、親指ほどの小瓶だ。しっかりとコルクで栓をされたその中には、薄い紫色の液体が入っている。

私はそれが何か知っていた。ある植物の根から生成した毒物だ。アサシンが使うこともある殺傷力の高いもので、その瓶に入った分量は致死量を遥かに超えている。

「僕は君の味方だって言っただろう? 勝手に死のうなんて考えちゃいけないよ」

 その瓶を弄びながらフランツ君を見つめるその目は、とても優しいものだった。

「……っ」

「君のことも、フランシスカちゃんのことも、絶対に守るよ。約束する」

 妹の名前を出されて、ローへの怒りに震えていた肩が止まる。

「君たち兄妹が大聖堂に来てから、僕が約束を守らなかったことはないよね。屋根に止まった蝶を捕まえることから、司祭様の髪の毛がカツラかどうか確かめることに至るまで」

「……」

「だから、本当のことを教えて欲しい。それを知らないと、君たちを守れないから」

 彼は少しだけ頷いてくれた。実に間の抜けた説得だったけど、フランツ君の気持ちを動かしたのは間違いなかったようだ。

 

「僕の考えを話していくから、間違っている所があれば教えて欲しい。いいかい?」

「えっと……」

 フランツ君の表情が曇る。遠慮がちな視線は、私へ向けられたものだった。

「あ、席を外した方がいいわね」

 立ち上がった私の手を、ローが掴んだ。フランツ君に顔を向けたまま。

「大丈夫。シャリーは他の人に話を漏らしたりする人じゃないよ。僕が保証するから」

 ローに寄せる信頼は絶大なものらしい。その一言で、フランツ君は納得した。

「分かりました。すみません」

 それを聞き、ローの手に力が込められる。中腰で止まっていた私の身体は、椅子の上に引き戻された。

「本当にいいの?」

 私の問いに、同意の頷きが二つ返された。

「じゃあ、起こった順に出来事を並べていこう。ヴァール卿は修道士に教えを乞うという理由で、若い女性のアコライトを次々と雇った。週一回の仕事で高給が貰える好条件の仕事だったにもかかわらず、彼女たちは何故か次々とやめていってしまう。ある者は自ら仕事を止め、ある者は屋敷の使用人となった。一人くらい長く続く人が居てもいいのにね」

「はい」

「それには理由がある。教えを乞うというのはただの口実で、ヴァール卿がアコライトを雇うのは別の理由だったからだ」

「口実?」

 穏やかでない単語を、黙って聞いていようと思った私が思わず口に出す。

「思い出してよ。彼自身、かつてはアコライトだったんだよ。高位のプリーストにならともかく、修行中のアコライトに教わることなんてあるわけがない」

「そっか…」

「本当の理由は」

「雇ったアコライトに……手を出すこと」

 ローの言葉を引き取ったフランツ君の言葉に、半ば驚き半ば納得する。主と使用人の関係については、私がローに言ったことだった。

「そう…雇った時からそれが目的だったのね…」

「彼は何も知らずにやって来るアコライトたちを、部下とともに襲い、そして脅した。『このことをばらされたくなかったらうちに来い』とね」

 努めて淡々と話すよう、心がけているようだった。話し上手な彼らしくない、抑揚のない台詞。

「……どうしてみんな言いなりになっちゃったのかな…」

「卿は切り札を用意していた。それがあの肖像画だ」

「どういうこと?」

 答えようとするローを右手で制して、フランツ君が静かに答える。

「ヴァール卿は、女性を襲ったときの姿を、肖像画として残しているんです。そのために、精緻な画風で知られる画家をわざわざ雇っていました」

「『おまえのホクロの位置まで知ってるぞ』って奴だよ。実に古典的だけど、効果はあった」

 無数に飾られた、使用人たちの肖像画を思い出す。

凌辱され、さらにその姿を余すところなく記録された彼女たちの気持ちは、私には想像も及ばない。

「あなたが盗んだのはその絵だったのね」

 フランツ君が小さく頷く。

 最初にあの屋敷を訪れたとき、書斎に運び込まれていた大量の額縁。その書斎にある隠し部屋の入り口。その二つが繋がった。

 そしてもう一つ、そこに繋がるものがある。ローがそれを、改めて言葉に乗せた。

「フランシスカちゃんも、ヴァール卿の屋敷で働いていたんだよ」

 フランツ君が、見ている方が痛くなりそうなほど強く、唇を噛み締める。

 彼の妹は、外に出られないほど重い病気だった。身体ではなく、心の。

「その証拠の絵画を盗み出すため、彼は自分がフランシスカちゃんの兄であることを隠して、ヴァール卿の屋敷で働くことにしたんだ。もちろん卿は女性しか雇わないから、自分の性別を偽ってね。だから彼は、僕たちがヴァール卿の屋敷へ行くとき、一緒に来なかったんだ。卿は彼のことを女の子だと思っていたんだからね」

 その先はフランツ君が説明を続ける。

「数か月は騙せるはずでした。妹もそれくらいの間は無事だったんです。だから、その間に使用人さんと仲良くなって、庭に何か変わったところがないか確認しました。彼女たちは気づいていなかったけど、僕にはそれが結界のための宝玉が埋められた場所だと分かったんです。先々週の日曜日に、ヴァール卿の屋敷から帰る途中に宝玉を掘り返し、結界を無効にしました。

「数時間後、屋敷の人間が寝静まった頃を見計らって、ワープポータルで書斎の隠し部屋に転移しました。妹の断片的な話から、隠し部屋の仕組みは知っていました。そこは絵の隠し場所であるだけでなく、物音を外に漏らさず事を運べる『現場』でもあったんです。僕は隠し部屋に入り、妹の絵を布でくるんで書斎に戻り、窓を割って逃げ出しました」

「どうして逃げる時にワープポータルを使わなかったの? もっと簡単に逃げられたはずなのに」

 いまや『泥棒』の味方になってしまった私は、そんなことを聞いてしまう。答えたのは、フランツ君の視線を受けたローだった。

「彼はいざ決行というときに、冒険者向けの露店で、ブルージェムストーンを二つ買った。彼らの家の経済状態から言えば安くはなかったから、余分に買うことはしなかった。それが仇になったんだ。侵入するとき、彼はポータルの行き先を間違えてしまった。その時にたまたま僕が居た、イズルードの街中に」

「あ…」

 先週の日曜日、彼がローに仕事を依頼するため呼び止めたとき、ローは何と言ったか。「先週の日曜日、イズルードで会ったっけ」だ。

ヴァール卿の家に泥棒が入ったのは、ローがイズルードでフランツ君と会ったのと同じ日なんだ。

「経験の浅いアコライトなら、ワープポータルの目的地を間違えることが稀にある。ポタ屋が目的地を間違えると大問題になるけど、彼の場合はもっと致命的な場面で間違えてしまった。なお悪いことに、再びワープポータルによってイズルードからヴァール卿の家へ移動するまで、そのミスの意味に気づかなかった」

「正確には、逃げ出そうとする瞬間まで気づきませんでした。侵入用と逃走用、二個しかブルージェムストーンを持っていなかったんですから、侵入のときに一度間違えてしまった以上、逃走用のブルージェムストーンが足りなくなるのは当たり前です。絵を抱えて途方に暮れましたが、仕方なくメイスでガラスを割り、必死で逃げたんです」

 それでようやく、侵入にはワープポータルを使い、逃げるときには徒歩という不思議な泥棒のからくりが納得できた。

「もちろんヴァール卿は、泥棒の正体には推測がついた。目的を隠すため、フランツ君は隠し部屋のお金や貴金属も盗んではいたけど、フランシスカちゃんの絵がなくなっていれば犯人の推測は簡単だ。卿はいつも使っているアサシンに金を積み、フランシスカちゃんの家を見張らせた」

 それまで淡々と説明していたフランツ君に、初めて驚きの表情が生まれる。その上に諭すような言葉が送られた。

「あれで誤魔化せたと思ったら大間違いだよ。卿は、犯人がフランシスカちゃんだと思ったんだ。ヴァール卿は彼女にも屋敷に来いと言ったんだろうけど、彼女は事件のショックで外に出られなくなっていた。でも、卿はそれを自分への反抗だと思っていた。彼はアサシンにこう命じたんだ。『あのパン屋に住む女のアコライトが一人になるときを狙って、屋敷に連れて来い』と」

フランツ君の家を訪れたときに私たちを追ってきたのは、そのアサシンたちなのだろう。彼らはあの時のローの推測どおり、フランツ君の家を見張っていたんだ。

「卿は、騒ぎになって自分が糸を引いているのが発覚しても困るから、家に侵入するような強硬手段は禁じたんだろうね。アサシンたちはずっと、女のアコライトが出てくるのを待っていたんだよ。フランシスカちゃんは家に閉じこもっているし、フランツ君が毎週日曜日に女装するのは屋敷への道中にある空家かどこかだろうから、あの家から『女のアコライト』が出てくることはないんだけど」

「だったらどうして、新たに私たちを雇ったんだろう?」

「一週間もあのパン屋を見張らせた結果、返ってきたのは『女のアコライトは住んでいません。今は男のアコライトが一人で暮らしているようです』という報告だけ。卿も自信をなくしたんだろうね。実は単なる金品目当ての泥棒が、絵を気に入って持っていっただけなのかもしれないと考えた。そこでアサシンたちには見張りを続けさせる一方、冒険者を使って別口でも犯人を探そうとしたんだ。もしそっちのルートからフランシスカちゃんの絵も含めた盗品が出てくれば、自分の犯罪も依頼相手にばれてしまうけど、そのときは口封じをすればいいと思っていたんじゃないかな」

「え…?」

 フランツ君は言葉を失った。『口封じ』などという言葉は想像もつかなかったに違いない。だからこそ、ローに仕事を持ち込んだのだろう。危険があると分かっていれば、ローを巻き込むことなど考えなかったはずだ。

「気にしなくてもいいよ。黙ってやられる僕じゃないから」

「……そのためにヴァール卿が持っていた他の絵も盗んだのね。交渉条件にするために」

「そういうこと」

 フランツ君が私たちのやり取りを見て呆然としている。彼は見た目どおり、世間知らずでまっすぐな性格なのだろう。そしてローは、その優しげな外見とは正反対に、捻じ曲がった性格とそれを支える頭脳の持ち主だった。

 いつもは私が火消しに回る立場だが、今日ばかりは逆に油を注ぐ係だ。

「これを証拠に何を引き出すつもり?」

「暴露すれば信用を失って商売には大打撃だから、何でも言うことを聞くと思うよ。とりあえずは反省とお金だね。被害者みんなに土下座でもさせて、向こうが捨て鉢になってしまう半歩手前まで財産をふんだくろう。最低でも一人百万ゼニーだね」

「生かさず殺さず、ね。使用人のみんなの安全はどう確保するの?」

「あの絵はもう大聖堂に預けたよ。僕やシャリーが向こう二十年の間に不審な死を遂げたら開けるよう頼んでおいたんだ。彼も大聖堂に喧嘩を売るほどの権力は持ってないしね」

「そして私たちが、使用人たちの安全を確認するわけね」

「そのとおり」

 フランツ君が先輩の頼もしさと恐ろしさに硬直する間にも、ヴァール卿の処遇が決定されていった。当人の預かり知らぬところで。

 

 

 その後の展開は、ここで書いた台本通りとなった。ヴァール卿と面会し、絵を証拠に交渉すると話は簡単に進んだ。とりあえず彼には、五人の使用人とフランシスカちゃんに対して謝罪させた。

しかし、彼女たちは事が公になることを望まなかったので、卿の資産を頂くことで(私とローが)手を打つことにした。

示談金が一人あたり二百万ゼニーとは破格の安値だったと思う。卿も涙を流して喜んでいた。悔し涙だったかもしれないが。

ちなみにヴァール卿は、目をつけたフランツ君が実は男だったということに、相当ショックを受けたらしいことを付け加えておく。

 

 


 


エピローグ

 

 五人の使用人が主の家を出る日、私とシャリーは屋敷の前に来ていた。四人の元使用人を見送り、そしていちばん最後に、少しだが確かに笑顔を取り戻したカルミアさんに手を振る。彼女は門の外で待っていたローの耳元で何か言い、ローもそれに一言二言答えた。少し離れた場所にいた私には、強い風の音が邪魔をして声は届かない。感謝の言葉でも伝えたのだろうか。

私より少し長い黒髪をなびかせて彼女が遠ざかるなか、二人残された門の前で、ローが呟く。

「これで良かったのかな」

「え?」

「彼女たちにしてあげられること、他になかったかなって」

 あまりに似合わない表情をしていたので、背中を思い切り叩いてやった。羽のように軽い身体が二、三歩よろける。

「痛っ! な、何するんだよ…」

「なにを聖職者みたいなことを言ってるの」

「…いちおう聖職者志望なんだけど」

「聖職者が安っぽい同情するより、破戒僧がヴァール卿を懲らしめてお金ぶん取った方がずっと前向きじゃない」

「破戒僧って…」

「誉め言葉だから」

「そうかなあ?」

 話題を変えたかった私は、曲がり角で消えた長髪を見て、思い出したあることを口に出す。

「そういえば」

「…?」

「カルミアさんの証言は、やっぱりフランツ君をかばった嘘だったの?」

「そうだね。彼女の証言では犯人を遠目にしか見ていないということだったけど、実際にはもっと近くで見たんだと思う。非力なフランツ君が樹を伝って高い塀を乗り越えるには、相当の時間がかかったはずだよ。だから彼女は、門を出た所で追いついて、泥棒の正体を確認したんじゃないかな」

「だから『背が高く髪が長い女性』なんていう、彼とは正反対の犯人をでっち上げたのね」

「彼女は、フランツ君がヴァール卿の犠牲者に関係ある人で、絵を盗む目的で屋敷に入り込んだことに気づいたんだろうね。それもあって、危険を冒してまで彼をかばったんだと思うよ」

「奥歯に物が詰まったような言い方ね。『それもあって』ということは、何か他の理由もあるの?」

 ローはやっと、いつもの嫌味な笑いを取り戻していた。

「シャリーは一つ忘れてる。フランツ君は屋敷に来るとき、いつも女装してたんだよ。その彼と正反対の犯人を作り上げるなら、体型や髪型はともかく、普通は『男性』って言うと思うけど」

「あ……」

「屋敷の中で彼女だけは、毎週日曜日にやって来るアコライトが男だと気づいてたんだよ。フランツ君は、屋敷の秘密を知るために使用人と仲良くなったと言ってたけど、その使用人ってカルミアさんなんじゃないかな」

 無責任に励ましたくせに、私も弱気になっていたのかもしれない。後味の悪い依頼に終わりを告げる、ローの言葉を待っていた。

 

「彼女は僕に、フランツ君の家はどこかって尋ねてきたんだよ。彼に助けてもらったから、今度は自分があの兄妹の力になりたいんだって」

 

 

 

 

 

 

 



あとがき

 

 以上。

本編と同時に出す、意味不明な番外編でした。

 

 ラグナロクオンラインでミステリー。いろんな意味で間違えた企画ですが、意外に食い合わせは良いかもしれません。

 オンラインゲームって世界のルールがしっかり決まっていて、かつプレイヤーもそれを熟知しています。

 ミステリーで言うフェアプレーの最低条件は、簡単に満たせるような気がします。

 

 あとは書き手の技量、ですが。   

 

 

 ちなみに今回、発表前に相方のLeijiさんに見てもらいました。いただいた感想はいろいろありますが、2点ほど忠告を頂きました。


   ・双子兄妹の年齢(設定時は13歳)を上げること
  ・タイトルが脱力系すぎ。 

 前向きに検討(役所言葉)した結果、足して2で割る玉虫色の決着を見ました。

 

 藤子Fオタクとしては『ドラえもんだらけ』のインパクトが忘れられないのです。知らない人はてんとう虫コミックスの5巻を買いましょう。


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