タイにおける狂犬病の現状 2001, May, 12

 バンコク週報の記事の転載です。

バンコク週報 956号 2001年5月4日〜10日号 1面

狂犬病 サムイ島で「撲滅宣言」
     全国で毎年50人が感染・死亡
 バンコク都内の大手私立病院によれば、「犬に噛まれた」という邦人旅行者が、月に数人は訪れるという。日本で一九五七年に撲滅された狂犬病は、タイではなくなっておらず、現在も毎年約五十人が感染して死亡する。保健省では狂犬病予防接種の普及に務めているが、野良犬や飼い主の管理が不十分な犬がまだ少なくない。(小林ゆかり記者)

 狂犬病による死者の数は、一九八〇年に三百七十人を記録。八十年代には年間二百人を超える年もあったが、九二年に狂犬病予防法が施行されてからは徐々に減少した。それでも年間百人を下回るようになったのは九三年以降で、九七年からは毎年五十人前後の横ばい状態が続いている。

 地方別の死者の数は、中部が全体の約半数を占め、次いで東北部、北部、南部の順に多い。感染源は犬ばかりではなく、昨年も猫に噛まれて感染・死亡した人が三人いた。また、感染源となった狂犬病の犬は、野良犬と飼い犬がほぼ半々ただし飼い犬の中には、放し飼いにされている犬や、複数の人々が適宜に餌を与えている犬も多いと見られる。
 狂犬病予防法では、飼い主が年一回、予防接種を受けさせるよう義務づけている。飼い主には注射済票と犬の首輪に付ける鑑札が交付されるので、飼い犬に噛まれた場合は、まずこれらを確認することになる。
 狂犬病は、症状が出てしまえば確実に死亡する。このため予防接種を受けたことがはっきりしない犬に噛まれたら、早めに病院へ行かなければならない。また、狂犬病ウィルスは嫌気性なので、噛まれた傷口は清潔な水で洗って消毒したら、絆創膏や包帯で覆わず、空気にさらしておく方がよい。都内私立病院によれば、ワクチンの注射は五回受ける必要があり、一回目のあとは三日目、七日目、十四日目、三十日目に行っているという。
 バンコク都内ではここ五年間に、二十人以上が狂犬病で死亡した。都庁の調査によれば、都内の犬の数は約五十五万匹で、うち十万匹が野良犬。また飼い主に捨てられる犬は年間三万匹に上っている。
 都庁では狂犬病撲滅を目指し、予防接種を無料で提供したり、野良犬の管理や捕獲を進めてきた。サマック・スントラウェート都知事は今年初め、狂犬病や野良犬の対策費用として六百万バーツの予算を計上すると共に、野良犬を管理する基金の設立計画を発表した。
 都庁では今年、僧侶の協力を得て、都内三百四十カ所の寺院に犬の仮診療所を設け、野良犬の狂犬病予防接種と不妊手術を行う。都内にはすでに、ディンデン地区に狂犬病管理センターが、プラウェト地区に野良犬の保護センターが設けられているが、サマック都知事は、地域に密着した寺院で行う方が効果的だとしている。
 農業協同組合省畜産局は先日、南部スラタニ県のリゾート、サムイ島を「狂犬病フリー地域」に指定した。同局は保健省伝染病管理局、政府観光庁、タイ赤十字と協力して狂犬病撲滅運動に取り組んでおり、これまでにも狂犬病のなくなったラヨーン県のサメット島を「狂犬病フリー地域」にしていしている。
 観光庁では、これらを安全な観光地として旅行者にアピールしていく方針。指定第二号となったサムイ島では、一九八五年を最後に狂犬病は見つかっておらず、島の犬はすべて予防接種を受けているという。


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