ペキンダックの夕食とベンツのリムジン
ブーンレイからMRTに乗り、オーチャードロード沿いにある中華料理の「パインコート」へ向かう。HDBが立ち並ぶ風景を横目に、シティのかなり手前のレッドヒルで下車する(写真下)。オーチャードまで行くのだから、このまま乗っていても良いのだが、実はMRTはシティを大回りしてオーチャードに向かうので、ここからタクシーに乗った方が近い。
駅の高架下にあるタクシースタンドで、希に通る流しのタクシーを待ち続ける(写真下)。駅前のHDBの1階にはところどころ果物屋や漢方薬などの店舗が営業しており、無機質なHDBのシルエットの中でここだけは人間が生活している雰囲気が漂う。
ようやくつかまえたタクシーに乗って、オーチャードロードのマンダリンホテルを目指す。
マンダリンホテルは、アジア各地にある高級ホテルだが、オーチャードロード沿いの他に、マリーナベイにマリーナ・マンダリンホテルというものある。こちらは壁面に「濱華」と書いてある。
目指す「パインコート」はホテルの35階にある(写真上)。やけに高いホールの天井が印象に残る高級レストラン(写真下)で、昼ならばさぞかし眺望もいいことだろう。
メイン料理に北京ダック、これに数品とビールを注文する。まわりのテーブルは現地の駐在員だろうか日本人のグループも多く、あちこちで北京ダックがカートに載って運ばれてくる。
北京ダックは、日本で食べると1万円近くする高級料理である。だが、物価の安いアジアに来るとありがたいことに、ふかひれスープと並んで、日本からやってきた旅行客にも安価に楽しめる料理となる。
まず、テーブルについて待っていると、やがてカートに載せられて、表面がこんがり飴色になるまで炙られたアヒルが1羽丸ごと運ばれてくる。初めてこの料理を見る人は、これを1羽丸ごと食べ尽くすように思うかもしれないが、この時に食べるのは飴色になった皮だけなのである。
店の人が恭しく目の前でアヒルの表皮をナイフで切り取り、付け合わせのネギと一緒に小麦粉の皮に巻いてくれたものを、タレにつけて食べる。味はこってりとした生春巻という感じで、結構お腹にたまる。全部食べようとすると持て余すほどだ。
では、残された大半の肉はどこへ行くかというと、厨房に持ち帰り、客の指定した料理法に従って挽肉にしたり、スープにしたりして再び持ってきてくれる。しかし、どう見ても持ってきてくれた挽肉は元の肉の量に比べて少ないように思う。ひょっとするとこちらの人数に応じて出される量も違うのかもしれない。
食事を終えて店を出る。お腹がパンパンに張って歩けないので、ホテル前からタクシーを拾うが、やってきたのはベンツのリムジンタクシー。少し高くても、たまにはベンツもいいかと乗り込んだが、我々がすぐ近くのリージェントホテルまでしか行かないのは運転手にとっては不満そうだ。
ホテルに着くまで、延々と「この車はドイツ製のスピードの出る車でこんな近距離を走らせるのはもったいない」とか「地下鉄で帰れ」だの身振りを交えて主張していた。こちらもちゃんとお金は払うのだし、客を乗せてから言っても仕方ないのだから、勘弁してほしい。
日本人でもそうだが、言っても仕方のない事を延々と言い続ける人というのは、それを主張する事で建設的な方向に物事をし向けようとしているのではなく、抑えきれない気分の動揺を言葉にして発散する事により心のバランスを取ろうとしているだけに過ぎない場合が多い。
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