奉祝ムードとソフトな沈黙をはね返そう!

 〜皇族の事情で空転する「皇室典範改正」論議

本来「私事」であるはずの一人の女性の妊娠が、国政をも左右する……。秋篠宮妃 紀子の妊娠報道に、政府は、これまで強硬におしすすめてきた「皇室典範改正」案の 今国会への提出を、急遽とりやめました。「女性天皇」論に対し激しく反発してきた 「男系男子」維持派は勝ち誇ったかのように「男子誕生」を妄想し、逆に小泉首相と 「皇室典範に関する有識者会議」が世論づくりに邁進してきた「女性天皇」容認ムー ドは水を浴びせられたように沈静化。皇室典範改正準備室も縮小され、メディアも一 気に沈黙。何事もなかったかのように奉祝ムードばかりが先行し、この9月にも出産 とのニュースが報じられています。

「皇室典範改正」法案がめざす、皇位継承要員獲得のための女性天皇容認に、私た ちは反対してきました。世襲、すなわち女性への妊娠・出産の強制、男系による血統 支配、婚外子の排除という体系化された性差別によってその地位を保持し、身分差別 ・民族差別の正当性を内外に誇示する天皇とその後継者は、どのような形であっても 要りません。そもそもこの法律の存在自体が、戦前と何も変わらない、家父長制その ものである天皇家を温存させてきたのです。「皇室典範改正」法案は差し戻し、皇室 典範それ自体をなくすべきです。

一方で私たちは、今回の国会空転劇にも違和感を禁じえません。どのような内容で あれ、法案作成とその検討の場である国会は、私たちにとって最低限の民主主義の場 であるからです。「象徴」としての天皇が「国民の総意」の上に成り立っているなど と言うわりには、なぜそれが多額の税金を投入してまで存続されねばならないか、民 主主義的な手続きの上で確認されたことなど、戦後一度たりともありません。王制廃 止の世界的潮流を無視し、「皇室典範改正」の過程でも意図的に無視されてきた「天 皇制の是非」こそ、国会で一から検討されねばならない重要な論点です。

しかし、それもこれもすべては皇族の事情でたやすくひっくり返る。一転してソフ トな沈黙に支配されている今の日本の状況に、私たちは戦慄すらおぼえます。

このかんメディアにはかつてないほど皇室の話題が溢れ、同情めいたものもあれ ば、スキャンダラスな物言いも目立ちます。しかしそこに批評性など一切なく、スキ ャンダラスに報じられれば報じられるほど、天皇制を論ずれば論ずるほど、天皇制の 強化につながっていく。天皇・皇族による政治的言動も頻発しています。皇室外交も 国内漫遊もやりたい放題。無駄に税金を浪費しようが、憲法規定に反しようが、すべ て不問に伏され、賛美の声ばかりが高まっています。まさに一億総タイコモチ状態。 そう、いつのまにか、天皇空間は急速に拡大しているのです。

私たちの民主主義は、天皇制との対し方において明らかに後退をしいられていま す。右往左往する「皇室典範改正」法案も、生まれてくる子の「性別」によっていか ようにも形を変え、またぞろ浮上してくることでしょう。そのすべては天皇(家)の 安泰のため。好戦国家と差別社会の頂点に立ち続けてきた天皇制のため。時代を逆行 させる天皇制はもういらない! 今後どのような展開になろうと、それが天皇制を存 続させるものであるかぎり、私たちは拒否します。奉祝ムードとソフトな沈黙をはね 返そう! 今こそ、私たちの大切な民主主義のために。

               2006年8月15日   女性と天皇制研究会

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