ラトルバックの力学
〜片腕を下げた静止状態から〜



【緒元】
ロール軸まわりの慣性モーメント Ir
ピッチ軸まわりの慣性モーメント Ip
ヨー軸まわりの慣性モーメント Iy
質量 m
【力および角加速度の定義】
力および角加速度の方向に関する定義は上図の通り。
【初期状態】
ピッチ角θp、ロール角0で静止状態。
接地点は図のように重心からロール軸方向にx、ロール軸に垂直な方向にyだけずれている。
【近似】
ピッチ角θpは微小と仮定し、2次以上を無視する意味で近似を行う(sinθp → θp、cosθp → 1)。
【運動方程式】
ロール軸まわりの方程式
Irα = Ny−fz ―――――(1)
ピッチ軸まわりの方程式
Ipβ = Nx−F(z+xθp) ―――――(2)
ヨー軸まわりの方程式
Iyγ = fx−Fy ―――――(3)
重心位置の水平面内ロール軸方向の方程式
m(zβ+yγ) = F ―――――(4)
重心位置の水平面内ロール軸に垂直な方向の方程式
m(zα−xγ) = f ―――――(5)
重心位置の鉛直方向の方程式
m(yα+xβ) = mg−N ―――――(6)
【解析】
上記の(1)〜(6)の連立方程式を解くことによりf、F、N、α、β、γ、を求めることができるが、それをすることは多少の労力を必要とする。
今関心があるのは、摩擦力成分fおよびFの比率、つまり摩擦力ベクトルの方向である。これを知ることにより、ヨーの角加速度γが摩擦力により生じるかどうかが判別できる。式(3)を見て分かるように以下の関係がある。
f/F = y/x のとき、ヨーの角加速度γ=0、
f/F > y/x のとき、ヨーの角加速度γ>0、
f/F < y/x のとき、ヨーの角加速度γ<0、
そこで、このf/Fを知ることのみを目的として、上記連立方程式を解くこととする。
(4)に(2)、(3)を代入し、β、γ、を消去すると、
―――――(7)
(5)に(1)、(3)を代入してα、γ、を消去すると、
―――――(8)
(7)、(8)よりNを消去すると、
―――――(9)
よって、f/Fは、
―――――(10)
式(10)を眺めてもなかなかピンとこないので、具体的な数値を代入してみることにする。
m =0.1[kg]
Ir =0.00001[kg*m*m](ロール軸まわり半径1cmに0.1kgの質量が分布しているとみなした値)
Ip =0.0002[kg*m*m](ラトルバックの縦横寸法比が4〜5程度なのでその約2乗である20をIrに乗じた)
Iy =0.0003[kg*m*m](やはりラトルバックの形状から、Ipの1.5倍程度が妥当と判断)
x =0.02[m]
y =0.005[m]
z =0.01[m]
θp =0.1[rad](約5.7度)
以上の数値を式(10)に代入したところ以下の結果が得られた。
f/F = 2.34 ( > y/x=0.25 )
以上により接地点の摩擦力がヨーイングトルクとなりラトルバックが回転を始めることが示された。