近年のアフリカでは、世界の他の諸地域と同様に、急激な政治経済的変化に伴う社会・文化変容が生起しており、それは都市部においてもっとも劇的・集約的な形であらわれています。現代アフリカの諸都市では、新たな生活環境のもとで新しい文化的様式が次々に生成し、それは同時に人口の大多数が居住する農村部に対しても多大な影響を与えつづけてきました。そこでは、新たな経済状況に対応した種々の生業・職業が生まれていることはもとより、ポピュラー音楽、スポーツ競技、ラジオドラマ、新聞小説などマス・メディアにより伝播される多種多様なポピュラー文化や、新たな形での宗教運動などが展開しています。経済発展や都市化に伴う新たな都市文化の生成や文化変容の過程に関する考察は、現代アフリカの社会・文化を理解するためにいまや必要不可欠の作業となっていると思われます。
日本のアフリカ研究においては、ここ30年ほどの間に、研究者の数が飛躍的に増加すると同時に、研究の対象とされる地域や現象が驚くほど多様化しています。個々の研究者のレベルにおいては、そのような大局的な変化は、研究対象と地域を狭く限定し、確立された手法によって精密な分析を行なうという態度が支配的になりました。このような「研究領域の専門分化」が、アフリカに関する(部分的だが)正確な知識をもたらす、という点で大きく貢献してきたことには疑いありません。しかし他方で、専門分化の趨勢は、既存の手法に依存する傾向を強め、同時に研究分野間の連絡を妨げ、結果として、激動の波にさらされている現代アフリカ社会の動態を把握することを困難にしているように思われます。 現代アフリカ都市文化研究会は、このような困難に鑑み、アカデミズムの制度的枠組みや既存の研究分野を越えるオルタナティブな研究者のネットワークとして構想されたものです。具体的には、現代アフリカの都市部における諸文化(生業、生活様式、言語、宗教、芸能等のポピュラー文化、その他のサブ・カルチャー)に関する研究を推進します。現代アフリカ社会の動態的側面のなかでとくに都市文化に注目するのは、そこでは現代アフリカの文化や社会に関する問題がもっとも先鋭的な形で提出されている、と考えられるからです。しかしいうまでもなく、都市は都市だけで成り立っているのではなく、アフリカはアフリカだけで成り立っているのではありません。したがって私たちは、現代アフリカの都市だけを研究するのではなく、アフリカの農村や、アフリカの歴史や、アフリカ以外の地域を研究している人々とも連携しつつ、グローバル化する世界のなかでの一地域社会の変容を同時代人として正確に記録しておくことを目標としたいと考えています。 <2001年8月現在> |